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〜第十章〜 カリスマと仮面の心 【後編】

麗子の精神は、驚く程青く澄んでいた。

ただ、その澄んだ色は何故かとても悲しそうな色にも見えた。

そして今までの精神とは何かが違うことに、二人は気付き始めていた……


(舞)「……いないな麗子……どういうことだ?」


(フローラ)

「ここが仮初めの世界で無いとするなら」

「この人は精神を操られているか」

「もしくは精神を閉じ込めたかのどちらかですね」


(舞)「どういうことだ?」


(フローラ)

「精神はそれぞれ形が違います」

「そしてそれはその者が生きてきた環境で大きく変化します」

「もしその環境が複雑だったり激変したりしていてその度に自分の心を殺していたなら……その者は自分を見失ってしまう事でしょう」

「そして自分を見失った者は周りから求められた者になろうとします」

「そしてそれはやがて自分がこういう存在であるという偶像を生み出します」

「そしてその偶像はいつしか本物の感情となって行きます」

「でもそれは所詮偽りの感情であり本心では無いのです」

「だから求められている姿を演じている方が自分を見失い心が病んでしまうなんてことはこの世界でもよくある話なのです」


「人間はそこまで心が強い人ばかりではありません」

「そしておそらく麗子さんも実際は心がとても弱い人間だろうと思います」

「ただそんな中で麗子さんは周りの期待に合わせてどんどん自分の中で偽りの偶像を作り上げそれを毎日演じてきました」

「その偶像の麗子さんが鬼女の正体だと私は思います」


(舞)

「……よくわからんが」

「つまりどうすればいいんだ?」

「本人の精神が出て来ないと何も出来なくないか?」


(フローラ)

「……そうですね」

「とりあえず呼び掛けてみますか?」


(舞)「そんなやり方効くのか?」


(フローラ)

「私は転生界の守り人ですよ」

「私の言葉は全ての精神に届きます」


 フローラは自信満々にそう言い切った。


(フローラ)

「舞さん出て来て下さい」

「私と話しませんか?」


だが、そのフローラの言葉は空に消えていくだけだった。


(舞)「……何も起こらないぞ」

(フローラ)「……そうですね……おかしいですね……」

(舞)「……仕方ない……俺様の出番だな!」


舞は深く息を吸った。


(舞)「ファイア!」


舞は、右手に大きな火の玉を出して、それを前方に飛ばした。

だがその炎は真っ直ぐ飛んで行くだけで、やがて消えたのだった。


(舞)

「……ダメか……」

「何か目に見えない壁でもあるかと思ったが」

「ここは本当にただの何も無い空間みたいだな」


(フローラ)

「まったく貴方という方は……」

「でもアイデアとしては悪く無いのかもしれませんね」

「少し刺激を与えてみますか」

「但し物理的ではなく心理的にね」


 フローラは優しく語り掛ける様に空に向けて話し出した。


(フローラ)

「麗子さん……私達は貴方の秘密を全て知ってます」

「貴方が養子だったこと……そして何故養子となったのか……お父様の鬼頭冷道さんとどう知り合ったのか……そして何故貴方のお父様が変わったのか」

「全て私達は知っています」


フローラがその言葉を言った直後、今まで澄んでいた青い空間だった場所が急に辺り一面真っ黒な世界となった。

そして、その空間のどこかからとても低い女性の声が聞こえてきた。



「……何故貴方がそれを……?」

「誰も知らないはず」

「その過去はパパによって消された過去だから」

「誰も知らない知っちゃいけない過去」

「そこまで言うなら聞かせてよ」

「私の人生そのもの全てを」

「もし嘘だったらここに閉じ込めるからね」



その声に対して、フローラは語り始めた。


(フローラ)

「貴方は最初のママの命と引き換えに産まれた女性です」

「そして貴方の最初のパパは貴方が5歳の時に自殺しました」


そのフローラの告白の後、その空間に亀裂が入った。

フローラは続けて語り出した。


(フローラ)

「そして貴方は施設に引き取られることとなりました」

「でも貴方は自分のパパが死んだことを受け止めれなかった」

「そしてその理由も何もわからなかった貴方はこう考える様になった」


『私のことが嫌いになったんだ……』


「そして貴方は心を塞ぎ込んでしまった」

「でもそんな貴方に施設の方達はとても優しく接してくれた」

「そしてそんな日々は貴方のその心の傷をとても癒してくれた」

「でもそんな自分にばかり養子の話が来る様になり貴方は困惑していた」

「何故自分の様なパパに愛されなかった子供をここまで欲しがるのか」

「そして貴方は気付いてしまった」

「自分が他の人よりも容姿端麗であると言うことに」

「でもその気付きが貴方を更に苦しめてしまう事になった」

「それは自分ではなく自分の顔だけが目的であることを子供ながらに気付いてしまったから」

「だから貴方は誰から養子の話が来ても受けることもなければ愛想を振り撒くこともしなくなった」


『どうせまた捨てられる……顔目的ならどうせまた捨てられるだけだ……』


そのフローラの言葉の後、更に空間に亀裂が入った。


(フローラ)

「でもそんな貴方の前に鬼頭冷道と鬼頭陽菜が現れた」

「そして二人は貴方がどんなに冷たくしても微笑んでくれた」

「そして何度も何度も訪れてくれた」

「貴方も子供ながらに気付いたのでしょう」


『この人達は私の顔じゃなく私自身を求めてくれている……』


「そう思う様になった貴方は誰に言われるわけでもなく自然に笑顔になっていた」

「そして貴方の笑顔を見て、二人は微笑み返してくれた……」


そのフローラの言葉の後、更に空間に亀裂が入った。


(フローラ)

「そして貴方のその気持ちの変化を職員達も見ていた」

「だから貴方の事を養子に出す事を決めた」

「そして貴方は鬼頭麗子になった」

「おそらくこの頃が一番幸せだったのだと思います……」


 そのフローラの言葉の後、亀裂が入っていた空間が大きな音と共に割れた。

 そして次の瞬間、空間が捻じ曲がり、その空間は姿が見えない程の闇に覆われた場所に変貌した。そして先程よりも低い女の声が聞こえて来た。


『ソレイジョウ……フミコムナ! コロスゾ!』


フローラはそんな脅しなど全く気にしない様子で話を続けた。


(フローラ)

「でも……貴方が望んだその生活は長くは続かなかった……」

「始まりはそう……貴方のイジメだった……」

「貴方は鬼頭冷道の勧めにより小学校に通いながらモデルとして働く様になった」

「だがそれを良く思わないクラスの女子から陰湿なイジメをされるようになった」

「それは直接的な暴力では無く心を壊すイジメ」

「無視をされたりネットに誹謗中傷を書き込まれたり」

「でも貴方は特に何も気にしていなかった」


「だけどある日そのイジメの様子を鬼頭陽菜に目撃されてしまった」

「そして鬼頭陽菜はそのイジメを担任に告発した」

「だが担任は何も動かなかった」

「鬼頭陽菜が告発した生徒の中にその小学校の理事長の娘がいたから」

「そしてこの告発の件は理事長の娘の母親に知らされた」

「そして怒った母親は学校中の母親に連絡した」

「『この母親の事を無視しろ』と」

「そして鬼頭陽菜はその日からママ友の全員から無視される様になってしまった」


 そのフローラの言葉の後、断末魔の様な声が辺り一面に響き渡った。


『ヤメロ……ヤメロ……ヤメロ……』


 その悍ましい声が響き渡る中、フローラは更に話を続けた。


(フローラ)

「そしてこの一件以降貴方のイジメもエスカレートする」

「貴方へのイジメは今度は直接的な暴力や更にもっと酷いことも加わる様になってしまった」

「流石に今回のイジメは貴方も無視出来なくなっていた」

「だがそれよりも先生も誰も助けようとしてくれないその状況を貴方は不思議に思っていた」

「そんな時貴方は知ってしまった」

「自分のママがイジメを告発していたことを」

「そしてそのせいでイジメがエスカレートしたことを」

「怒った貴方は鬼頭陽菜を責め立てた」

「だが貴方は知らなかった……」

「その鬼頭陽菜自身もイジメを受けて悩んでいた事を……」

「そしてそれを貴方の前では一切見せずに気丈に振舞っていた事を……」

「そして鬼頭冷道が鬼頭陽菜とちゃんと話をしていなかった事を……」


 そのフローラの言葉の後、その闇の中から小学生ぐらいの長い髪の少女が姿を現した。

 だが、その少女はまるで死んでいる様な青白い顔をしていた。

 そして人を呪う様な眼を見せながら、フローラに向かって言い放った。


「……そうよ……私のせいよ……」

「私が……ママを……自殺に追い込んだのよ!」


 そしてその少女はある日の出来事を語り始めた。


「あの日の事はずっと忘れない……」


『余計な事しないで! ママのせいで余計イジメが酷くなったのよ!』

『もう学校にも行きたくないしママの顔も見たくない!』

『もう私……死にたいよ……』


「私はもう色々限界で泣きながらママに自分の気持ちをぶちまけたの」

「そしたらママは泣きながら私を抱き締めて言ったわ」


『……ゴメンね……』

『ダメなママでゴメン……』

『でもね……麗子は生きなきゃダメ!』

『たとえこの先どんなに辛い事があっても絶対死んじゃダメなの』

『麗子には人を幸せに出来るだけの魅力がある』

『そして貴方のその魅力は、いつかこの世界を救うと私は信じている』

『だから絶対貴方は生きてね』

『たとえどんな事があってもね……約束だからね……』


「私はママの言葉を聞いても、その時はママの異変には気付けなかった……」

「そしてその夜、ママはマンションの屋上から飛び降りて死んだ……」

「私は最初全く意味がわからなかった……」

「でもその後、寝室でママの日記を見つけて、ママがどれだけ苦しんでいたかを知ったのよ!」

「そしてママの葬式の日、後悔して泣き叫んでいた私を抱き締めてパパが言ったの……」


『ママが死んだのはパパのせいだ……』

『パパがもっとちゃんと話を聞いてあげれば良かった……』

『もう遅いかもしれないけど……罪滅ぼしをさせてくれ……』

『麗子、お前を虐めていた奴らとママを自殺に追い込んだ奴ら、全員まとめて復讐するぞ!』


「そしてパパは復讐を開始したの……」

「まずパパは私を虐めていた理事長の娘とその取り巻きを知り合いの悪い人達に攫わせた」

「そして私の目の前で、その悪い人達は目隠ししたままその女の子達を殴り続けた」

「急にそんな怖い目に遭ったからその女の子達はとても号泣していたわ」

「でもそんな女の子に向かってパパは言ったの」


『痛いか?』

『でも麗子はもっと酷い目に合わされていたんだぞ!』

『今度麗子を虐めたらこんなもんじゃ済まさないからな!』


「その女の子達は泣きながら私に謝ってたわ」

「私はその瞬間、とても気分がスーッとした……」

「でもそれと同時に、明日からもっと虐められるかもとも考えていたの……」

「でも翌日、その不安は意外な形で無くなった……」

「その理事長の娘が学校に来なくなったのよ」

「私は昨日の出来事がそれだけ効いたのかと思っていたけど、真相は違ったの」

「実はパパは裏で理事長にも復讐をしていたの」


「実は、パパはママが死んでからすぐにママの自殺の真相を探っていたの」

「そして探偵を雇って極秘に調査を開始していたのよ」

「そしてママの自殺が理事長の妻によるものだと暴いたパパは、それを友人だった当時ゴシップとして駆け出しの記者として活動していた曲見に渡したの」

「そしてパパは曲見に言ったわ」


『こいつらの人生を滅茶苦茶にする記事を書いて欲しい』

『もし書いてくれるなら、今後お前のバックアップもするし、もしいいネタを仕入れたら最初にお前に提供することを約束する』


「そして、曲見は記事を書いた」

「その記事の見出しはこんな感じだった……」


【卑劣!青年実業家の妻を自殺に追い込んだ理事長妻】


「そしてその記事でパパはママがされた事全てをネタとして提供した」

「この事件はすぐにメディアに取り上げられ、曲見はこのネタでその年の報道局賞を受賞した」

「そしてこの事件で、理事長家族はメディアに激しく糾弾されることとなり、結果理事長は解任となり、そして理事長家族はその街を引っ越すこととなったのよ」


「そして、全ての復讐を終えた後でパパは私に言ったのよ」


『麗子、これが本当の力だ』

『私達は虐められる側の人間じゃない! むしろ奴らを支配する側だ!』

『だからパパはこれからそんな学園を作ろうと思う』

『麗子が自由に振る舞える学園、いやむしろ麗子の為にある学園』

『そこで麗子はカリスマとしてその学園に君臨するんだ!』


「私は最初パパが言っている意味が全くわからなかった……」

「でもパパが私に期待してくれていることだけはわかった……」

「そんなパパの期待を裏切りたくなかったから、私は何も言わずパパに従う事にした……」

「そしていつしか何が本音か見失っていった……」

「そしていつしか私は微笑みの鬼女と呼ばれる様になったのよ……」


 全てを話し終わった少女は、その直後現在の麗子の姿に変貌した。

 舞は、麗子の様な姿をした少女に尋ねた。


(舞)「それで貴様は一体どうしたかったんだ?」


(麗子)

「私は……ただ普通に幸せな暮らしがしたかった……」

「パパとママがいる……そんな当たり前な生活……」

「誰もが手にする事の出来るそんな生活……」

「何の変哲も無いただ毎日を家族と暮らす生活……」

「今のパパとママとなら今後もずっとそれが出来ると信じていた……」

「でも……それすら叶わなかった……」

「私が人よりも可愛いから?」

「もし私が普通の子だったら……そんな事も無かったのかな?」

「もしそうなら……私は普通の子として産まれたかった……」

「そしたら最初のパパも私の事を愛してくれただろうし……ママも自殺することも無かったと思う……」 

「でもそれはもう叶わない願い……」


「だから私は考えを変えたの!」

「それが私の宿命なら……私は自分の容姿を武器として生きようって」

「そしてパパの力を使って支配する側になろうって」

「私はもう誰も大切な人を失いたくないから……だからその為に私はカリスマとして生きる事を決めたのよ!」

 

 麗子の姿をした少女は、涙を流しながらも力強く二人に言い放った。

その麗子の言葉の力強い言葉は、波動の様に二人に襲いかかって来た。

 舞はその見えない波動に押されていたが、フローラはその波動に負けない様に麗子に向かって歩き続けた。

 そしてその波動の中、フローラは麗子の前まで行くと麗子をそっと抱き締めた。


(フローラ)

 「貴方はそうやっていつも自分を責めていたんですね……」

 「そして……自分を責める事で心の平穏を保っていた……」

「でも貴方はその生活がとても辛かった……」

「だから貴方はその生活を苦しく感じない様に自分を偽りだした……」

「そして貴方は鬼女となったんですね」


 フローラの言葉を聞いて、麗子は更に号泣した。

 そしてそれと同時に、それまで舞とフローラに襲い掛かっていた波動は停止した。


(フローラ)

「……過去は誰にも変えれません……」

「あの時ああしていれば良かったと思っても……もうそれをやり直す事は誰にも出来ません……」

「ただ私は魂の守り人なので亡くなった者達の魂をここに呼び出す事は出来ます」

「もちろん貴方がそれを望むならですが……」


 フローラの言葉を聞いていた麗子は涙を拭うと、フローラの事を大きな眼で真っ直ぐに見つめた。


(麗子)

「もし……そんな事が可能なら……私は知りたい!」

「いや知らなきゃいけない!」

「命懸けで産んでくれたママがどう思っていたか……自殺したパパが何を思っていたのか……そして自殺したママが私の今の生き方をどう思っているかを!」


 フローラは麗子の力強い言葉を聞くと、小さく頷いた。

 そしてその直後フローラは詠唱を始めた。


(舞)

(おいおい……まさかこの女にまであの方法で……?)

(流石に無理じゃないか?)


舞は、以前フローラが用いたその能力のカラクリを聞いていたので、今回は流石にバレるだろうと思っていた。

だが、同時に以前とは何か違う雰囲気をフローラから感じていた。

それは単に詠唱が前回よりも長いとかそれだけではなく、フローラがその詠唱に費やしている力そのものが前回とは比にならなかったからだ。

そして、フローラの詠唱の凄さで空間に歪みが生じ始め出していた。

そしてフローラ自身も鬼気迫る表情をしており、その姿はまるで魂を削って唱えている様にも舞には見えていた。


そして、フローラの詠唱は眩い光と共に終わった。

フローラはその詠唱の直後、まるで力を使い果たしたかの様に、よろめいて自身の錫杖に持たれかかった。

そしてその眩い光の中から、三人の人物の魂が現れた。

舞はその魂を一目見て気付いた。


(舞(精神))

「貴様……どうやったんだ……?」

「この魂の色と形は……本物だぞ……」

「まさか……本当に呼び出したと言うのか⁉︎」

「異界の魂を呼び出すのは不可能と言われていた方法だぞ!」


(フローラ(精神))

「……この人には偽りの魂では何も響きません……」

「だからどうしても本物を呼び出す必要がありました……」

「たとえ……私の持てる全ての力を使ったとしてもね……」

「これでも……魂の守り人なので……多少無理すれば……何とか……ね……」

「しかしちょっと……無理……し過ぎました……ね……後は……頼みます……」


 その直後、錫杖にしがみついていたフローラはその場に倒れ込んだ。

 そしてそれと同時に魂達はそれぞれ形を変えていった。

 そして1つ目の魂が女性の形になると、自然と麗子の眼から涙が流れていた。

 その人物と麗子は一度も会ったことは無かったが、麗子の魂がその人物の事を自分を産んだ母親だという事を認識していた。

 そしてその人物は麗子に向かって語り出した。


『麗子……私は貴方を産んだ事を後悔してはいません……』

『むしろ私はたとえ自分が亡くなっても貴方を産みたいと思ってました』

『だから私が亡くなった事は貴方のせいではありません……』

『これは私が望んだ結果です……』

『麗子……貴方の名前はどんな境遇でも強く自分らしく生きていける様に私が考えました』

『だから貴方には自分が自信を持って生きれる人生を歩んで欲しい』

『本当に産まれて来てくれてありがとう……』


 その言葉を言い終えると、その魂はその場から消滅した。

 そして、その直後二つの目の魂は男性の形へと姿を変えた。

 麗子はその人物の事をよく覚えていた。

 そしてもう二度と会う事のないその人物を見た瞬間、麗子は溢れ出る涙を止める事が出来なかった。

 その人物は麗子が5歳の時に自殺した最初のパパだったからだ。 

 そしてその人物は麗子に向かって語り出した。


『麗子……ゴメン……』

『パパのせいで麗子には辛い思いをさせてしまったね……』

『なのに麗子は自分を責めている……』

『違うんだよ麗子……悪いのはパパなんだ……』

『パパがママのところに行きたいと思ったからなんだ……』

『でもそれは麗子の事が嫌いになったからじゃない……』

『むしろ麗子といた時間はとても楽しかった……』

『でもそれが余計にママを思い出すことになってしまったんだ……』

『そしてただパパが弱い人間だっただけなんだ……』

『嘘に聞こえるかもしれないけど……』

『麗子はパパにとってかけがえの無いたった1人の娘だったよ……』

『それだけは間違いないからね……』

『だからもう自分を責めるのはやめて自分が生きたい様に生きてくれ……』

『それがこの不甲斐ないパパが唯一麗子に願う事だよ……』


 それだけ言い終えると、その魂はその場から消滅した。

 その直後、三つ目の魂がい一つ目の魂とは別の女性の姿に変わった。


(麗子)「……う……そ……」 


 麗子はその人物を見た途端、涙が止まらなくなった。

 その人物こそ麗子が一番会って謝りたかった人物だった。

 麗子はずっとあの日の事を後悔していた。

 そしてその後悔の念から、本音を隠して生きる事を選んだのだった。

 そしてその人物は麗子に語り始めた。


『麗子……ゴメンね……』

『私が自殺を選んだことで貴方を更に苦しめてしまったね……』

『ママは貴方の事を一生守るって決めていたのに……』

『本当に弱いママでゴメンね……』

『私の事は一生許さなくてもいいから……』

『でもその代わり麗子には自分らしく生きて欲しい』

『麗子は本当に笑顔が可愛い私の自慢の娘だから……』

『常に心から笑っていて欲しい』

『そしていつまでも人を気遣える優しい娘でいて欲しい』

『それがママからのお願いです』

『麗子……あなたと過ごした日々はママの宝物だったよ……』

『ママは自分の弱さでそれを手放しちゃったけど……』

『それでもあなたを愛した日々は掛け替えのないものだったよ』

『ママに幸せな日々をくれて本当にありがとう……』


 その言葉を言い終わった後、その魂はその場から消滅した。

 麗子はしばらくの間号泣しながら、懺悔と感謝の言葉を消滅した魂に向けて叫んでいた。

 そしてそのまま辺り一面が眩しい光に覆われていった……



 舞とフローラは現実世界に戻って来た。

 そしてフローラは白い猫の姿に戻っていた。

 そんな一人と一匹の目の前には、座り込んで俯いた顔で脱力状態となっている麗子がいた。

 だが次の瞬間、脱力していた麗子はゆっくりと立ち上がりだした。

 そして深く深呼吸をした後で、ゆっくりと顔を上げた。


 もうそこには鬼女はいなかった。

 そこにいたのは本当の笑顔を取り戻した少女だった。


(麗子)

「……私……間違ってた……」

「今までずっと私のせいで私の好きな人が不幸になってるって思ってた……」

「だから私はこれ以上自分の好きな人を失いたくない思いから本音を封印していた……」

「でも……そうじゃなかった……」

「……私を産んで良かったと言ってくれたママ……私の事を掛け替えのない娘と言ってくれたパパ……そして私といた日々は幸せだったと言ってくれたママ……」

「私は誰も不幸にしていなかった……」

「私は今日始めて、私で生きていいんだって思えた……」

「ううん……むしろ私を愛してくれた三人の為にも……私は私らしく生きなきゃいけない!」


「ありがとう」

「貴方のおかげよ」

「貴方ならパパも助けれるかもね……」


(舞)「助けれるってどういう事?」

 

 すると麗子は急に神妙な顔つきになって舞の質問に答えた。


(麗子)

「……おそらくパパは何者かに操られている……」

「確証も無いし何言ってんだって話かもだけど、間違いなくパパはどんどんおかしくなっている……」

「そしてそれはもう復讐とかじゃなく、何か別の意思でそうさせられている様に見えるの」


「だから……私が案内するからパパと会って欲しい」

「そして本当のパパを取り返して欲しい」

「こんな事貴方以外に頼めない! どうか力を貸して!」


 麗子は舞に向かって頭を深く下げた。


(舞)

「私は元々そのつもりで貴方のところまで来たのよ」

「私に任せて!」

「だから私を貴方のパパのところまで連れて行って!」


 舞の言葉を聞いた麗子は一度頭を上げると、再び舞に向かって頭を深く下げた。


(麗子)

「ありがとう……本当にありがとう」



 そして、麗子は舞と白い猫を連れて学園に向かった。

 その道中、舞と白い猫は精神上で会話をしていた。


(フローラ(精神))「いよいよですね……」


(舞(精神))

「ああ……ここまで長かったな……」 

「ところで……貴様はもう大丈夫なのか?」


(フローラ(精神))

「おや? 私の事を心配してくれているんですか?」


(舞(精神))

「いや……そうじゃなくて……」

「これからいよいよルシファーと合間見えるわけだし……邪魔になるなら下がってろって意味で聞いただけだ」


(フローラ(精神))

「フフフ……」

「お気遣いありがとうございます」

「でももう大丈夫ですよ」

「実は私は気絶と同時にもう現代の白い猫に戻ってその間にゆっくり回復させておきました」

「なので今の私は何も問題無く普段通り戦えますから何も心配いりませんよ」


(舞(精神))

「そっ……そうなのか……ならいいんだ……」

(あんな短時間で回復……こいつやっぱりとんでもない奴だな……)


 二人がそうやって精神上で会話をしている間に、二人と一匹は学園内の理事長室の前に辿り着いた。


(麗子)

「着いたわ……それじゃー開けるわね……」


「麗子です。お話があるので入って宜しいですか?」

 その麗子の言葉を聞くと、中にいた人物が声を掛けて来た。


『ああ、連れて来たんだね』

『私も彼女に話があったんだよ』 

『入っておいで……』


 中にいた人物はなぜか舞がそこにいた事がわかっているかの様に答えた。

 そして、麗子は理事長室のドアを開けたのだった……




(ナレーション)

 遂に七鬼衆最後の一人である麗子を改心させることに成功した舞とフローラは、鬼頭冷道まで辿り着いたのだった……

 果たして鬼頭冷道とは何者なのか?

 そして鬼頭冷道は本当にルシファーに操られているのか?


〜第十一章 教育と支配〜

 へ続く

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