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〜第九章〜 金の魔力【前編】

(ナレーション)

 その男は今日も金をばら撒いていた。

 見た目はそこそこイケメンのホスト風の男。

 そしてその金の力で男も女も自分の意のままに操っていた。

 誰も彼に逆らうことは無い。

 彼は逆らった者には容赦はしない。それは男でも女でも同じだった。

 そしてその男は今日も自分の行きつけのクラブで金をばら撒く。自分よりも歳上の女性キャスト達に。

 様々な悪戯をしては金で解決する。その繰り返しだった。

 そしてそれは普段の生活でも同じだった。

 彼は自分の悪事を全て金で解決して来た。


「結局この世の中は金だ! 金さえあればどんな悪事でも揉み消せる」

 それが彼の口癖だった。


 彼は、誰もが知る世界第三位の財前グループ総帥である、財前剛介の孫だった。

 そして両親を幼い頃に交通事故で亡くして以来、ずっと財前剛介に育てられて来た。

 だから彼はお金で困ったことは一度も無い。

 産まれてからずっと金に恵まれて来た存在。

 人は彼をこう呼ぶ。金王財前剛と。



― 英傑学園 教室―

 麗子はこの日、四鬼衆を集めていた。


(麗子)「ねぇ……やっぱり最近変じゃない?」


(剛)「変ってのはどういうことですか?」


(麗子)

「なんて言うか何か最近私の周りにいる人が少ない気がするの」

「でもそれが真実かどうか分かんなくて」

「何か忘れている……いや忘れさせられてる感覚みたいな」

「何かよくわかんないけど、思い出が丸々消されてるみたいな感覚なのよ」


(カイゼル)

⦅それ実は僕も感じてた⦆

⦅神様の仕業かなとも思ってたけど、でも何かそれとは違う感覚⦆

⦅それに僕ははっきりと覚えている⦆

⦅ここに虎次郎さんと知恵さんがいたことを⦆

⦅でも昨日はそのことを忘れていた⦆

⦅どういうことなんだろうか?⦆


(真実)

⦅確かに昨日とは何か違うわね⦆

⦅虎次郎さんと知恵さんはここに確かにいた⦆

⦅今までフローラ様がその記憶を消していたんだと思うけど、何かそれだけじゃ説明出来ないこの感覚⦆

⦅私は二人がただそこにいたということだけを、漠然と覚えている⦆

⦅でも、麗子さんが感じていることは私のとはまたちょっと違うみたい⦆

⦅一体何が起こっているんだろ?⦆


(カイゼルと真実)⦅後で神様(フローラ様)に聞こう⦆


(麗子)「ねえ! 聞いてるの? 2人共!」

(カイゼルと真実)「はい! 聞いてます!」


(麗子)

「ったく……そういえば今日は四鬼衆の雰囲気も何かいつもと違うわね」

「何か寒さというか怖さが無くなった様な」

「……そう言えば判士は? いつもいるはずだけど今日はいないの?」


(剛)

「あいつ昨日あれだけの大口叩いたのに、結局麗子さんのモヤモヤ解決出来なかったから、合わす顔無いんじゃないですか?」

「あんな奴別にいなくてもいいでしょ?」

「麗子さんにはこの俺がいるじゃないですか?」

「それで充分じゃないですか?」


(麗子)「別にアンタなんか頼ったことは一度も無いけどね」


(剛)

「おお手厳し〜〜〜」

「まーけど昨日も言ったけどただの思い過ごしですよ」

「それか疲れてるだけか……良かったら二人だけでどっか旅行でも行きませんか?」


(麗子)「アンタなんかと行くわけ無いでしょ!」


(カイゼルと真実)⦅コイツは変わらずなんだな……⦆


(麗子)

「は〜〜っ……」

「アンタなんかに聞いた私がバカだったわ」

「はい! もう解散解散!」


 その後、それぞれは別々に動き出した。


(麗子)

⦅間違いなく何かが起こってる⦆

⦅そしておそらく判士が今日ここにいないこともそれに関係している気がする⦆

⦅一体誰の仕業なの?⦆


 麗子は心のモヤモヤがずっと消えないままだった。



―良子の部屋―

 主がいなくなった部屋で、舞と一匹の白い猫は会話をしていた。


(舞)

「魔族では勝てない非道さ……ね」

「あのメフィストがあそこまで言うなんて財前剛って何者なの?」

「まさかまた同じ魔族?」

「いやでもそれならメフィストが気づくか……」


(白い猫)

「色々見てもそんな大した人間には思えないですけどね」

「特に何かに秀でたものがある様にも見えませんし」

「ただ何て言うか……悪……ですねこの人間は」


(舞)「悪? この人が? 誰も殺していないのに?」


(白い猫)

「貴方の世界と悪の定義がこの世界は違います」

「ちょっとこれ見てもらえますか?」


 白い猫は、SNSに上げられていた動画を舞に見せた。


(白い猫)

「これは少年の自転車に火をつけて燃やしている様子を撮影した動画ですね」

「こっちは少女のお尻をいきなり鷲掴みにしている動画」

「その他にも人に迷惑を掛けている動画がいっぱいSNS上に上げられています」

「そして驚くことに彼はその迷惑を掛けた人に大金を渡していてその様子も動画で撮っています」

「これで無かったことにしろ? ってことなんでしょうか?」


(舞)

「ふーん……こんな動画何が面白いんだろね?」

「しかもわざわざこんな証拠まで残して」

「これじゃーまるで私がやりました! って言ってるみたいなもんじゃんか」

「本当この世界の人間はよく分かんないね」


(白い猫)

「私もよくわかりませんが」

「どうやらこれで再生数? ってものを稼いでるみたいですよ」

「それが何になるのかはよくわかりませんが」

「結局こういう方ってこういう方を求めている人間がいるからいるんじゃないでしょうか?」

「もしこういう動画に注目する方がいなくなれば……こんなことする人間もいなくなるんじゃないでしょうか?」

「もちろんそれでやめない人もいるかもですが……」


(舞)

「ふーん……まあどうでもいいけど……」

「それで結局今回はどうすんの? 何か策はあんの?」


(白い猫)

「策って程ではありませんが……まずはこの方のお金の流れを堰き止めにかかりましょうか」

「ってことで私は財前剛介に会いに行こうと思います……」


(舞)「ふーん……って誰それ?」


(カイゼル)「財前グループ総帥ですよ」

 

 不意にフローラのパソコンからカイゼルの声が聞こえて来た


(カイゼル)「あれ? 繋げて大丈夫でした? 神様?」

(白い猫)「ええ構いませんよ」


(舞(精神))「ちょっと待て! 説明しろ! フローラ!」


(フローラ(精神))

「説明も何も……もうあそこ使えないでしょ?」

「だから今後はここで話すことにしたんです」

「あそこには判士さんの遺体があるし」

「それにそっちに力使ってるから何かもうここでいっかなー」

「何て思いましてねウフフ……」


(舞(精神))

「ウフフじゃねえよ! 俺様は知らんからな! 大体貴様の心配何かする義理もないし!」


(真実)「ヤッホー! フローラ様! へぇそんな部屋に今いるんだね? 舞ちゃんも一緒?」


(白い猫)「ええここにいますよ」


(真実)「そうなんだ。いいなぁ……私もそこ行きたい!」

(カイゼル)「真実! 煩い! 邪魔するならインして来るなよ!」

(真実)「何よ邪魔って! 私も呼ばれたんだからさ!」


(白い猫)

「喧嘩はやめて下さい」

「それでどう思いますか?」


(カイゼル)

「いい考えだと思いますよ」

「僕が見た感じだと、確実に財前グループはここ最近総資産が減って来てます」

「それなのに剛さんの生活が何も変わっていないことに、ちょっとした違和感を感じています」

「もしかしたら……」


(真実)

「ちょっと! カイゼル! ここからは私の出番よ!」

「おそらくここ数年以内に財前グループは破綻するわ」

「これは実はゴシップ業界ではずっと言われて来たことなんだけど、ここ数年財前グループは年間の売り上げが落ちていないのに、業績が悪化しているのよ」

「そして噂だと、財前剛が信じれない額のお金を自分の会社に流しているから経営が傾いてんじゃないかって言われていて、既に何人か記者がマークを始めたところなのよ」

「もちろん財前剛介は否定してんだけどね」


(白い猫)

「成程……何かわかって来た気がします」

「やっぱり全ての鍵は財前剛介にあるみたいですね」

「カイゼルさん真実さんありがとうございます」

「……ところで……最近何か変に思うことありますか?」

「何か記憶が抜け落ちている? 様なそんな感覚感じてたら教えて下さい」


(カイゼル)

「さすがですね神様! その通りです! 何でもお見通しなんですね」

「実は急に虎次郎さんと知恵さんのことを思い出したんです」

「ただ、理由はわからないですけど、何て言うかはっきりとは思い出せないんです」


(知恵)

「えっ! カイゼルも同じ現象出てるの!?」

「私も全く同じ! 虎次郎さんと知恵さんがそこにいた記憶はあるんだけど、どんな人だったかまでは全く思い出せないのよ」

「何て言うか、本当にぼんやりとそこにいただけ? みたいな感覚」

「私でも言葉にするの難しいんだけど……そんな感覚」


(フローラ)

⦅……やはり記憶に綻びが出て来ていますね⦆

⦅メフィストさんの言った通りですか⦆

⦅おそらくは麗子さんももう……さてどうするべきでしょうか……⦆


(カイゼル)「でも何か麗子さんだけ違ってたよね?」


(真実)

「そうそう! 一番一緒にいた麗子さんからその名前出て来なかったもん!」

「どういうこと?」

「フローラ様、麗子さんだけに何か細工したんですか?」


(白い猫)

「!?」

「どういうことですか!?」


(カイゼル)「どういうことも何も……僕にもわかりません」

(真実)「私もそうだよ……でも何て言うか私達とは違う感じしたよね?」


(舞(精神))

「奴だ! ルシファーだ! 奴がおそらく鬼頭麗子の記憶の上書きをしたんだよ!」


(フローラ(精神))

「確かにそうかもしれません」

「でも何で麗子さんだけなんでしょうか?」

「何か我々は大きな勘違いをしている様な……何か大事なことを見落としている様な……そんな気が少しします」


(舞(精神))

「貴様の感覚等知るか!」

「とにかく冷道に会ってマインドオペレーションをぶっ放せば全てわかることだ!」


(フローラ(精神))「……確かにそうですね……」


(カイゼルと真実)「どうしたんですか? 神様(フローラ様)?」


(白い猫)

「いえ何でもありません」

「ありがとうございました」


 白い猫は通信を切った。


(舞)「それで私はまたその時間お留守番ってわけね」


(白い猫)

「あら? 何を言ってるんですか?」

「まさか私に何も知らない人間とこのまま会えと?」

「直接話をするのはむしろ貴方ですよ」 


(舞)

「えっ!?」

「えーーーーーーっ!」


(白い猫)「さっ! そうと決まったら行きますよ!」


 次の瞬間、舞の指輪が光った。

 

(舞(精神))「こら! 貴様! 勝手に人の精神に入って来るなよ!」


(フローラ(精神))

「だってこうでもしないと貴方は付いてこないですよね?」

「さあ行きますよ」


(舞(精神))「クソッ! 貴様! 覚えていろよ!」


 こうして舞はフローラの能力で、財前コーポレーション前まで瞬間移動した。



―財前コーポレーション前―

 その建物は都会の駅近くに建っていた。

 地上100階建の超大型ビル。

 その全てに財前グループの企業が入っていた。

 そしてその最上階の部屋に、総帥である財前剛介はいた。


(舞(精神))「それでどうすんだ? こんな中どうやって入る?」

(フローラ(精神))「あら? 魔王様は随分人間らしい考えをする様になったのですね?」

(舞(精神))「貴様! それはどういう意味だ!」

(フローラ(精神))「お忘れですか? 我々は異能の持ち主だということを」

 

 その直後、舞はその場から消えた。

 そして次の瞬間、舞は財前剛介がいる部屋まで移動した。


(財前剛介)「なっ! 貴様! どこからこの部屋に入って来た! 何者だ!」


(舞(精神))「成程な……でこの後はどうする? 多分人間共がわらわらと湧いてくるぞ」

(フローラ(精神))「そうですね……ではこうしましょう……」


 舞は詠唱を始めた。すると次の瞬間、全ての時間が止まった。


(舞(精神))「貴様……本当に何でもアリなのか?」


(フローラ(精神))

「何でもってわけではないですが……この程度なら造作も無いことです」

「それに止めているのは時間ではなく正確に言えば空間です」

「なので所詮人間相手には使えるかな程度の能力です」


(舞(精神))

「……成程……」

⦅たまにコイツ自分で自分の能力の凄さに気付いていないことあるけどこれは素で言ってるのか?⦆


 舞はフローラの方を見ながら、改めてフローラの凄さを感じていた。


(舞(精神))「それでどうすんだ? コイツまで動かなくなったぞ」

(フローラ(精神))「あらま……それでは……」


 舞は時が止まった空間から、財前剛介を切り離した。


(財前剛介)

「ん? 何か変な感じだな」

「ところで警備員はいつになったら来るんだ?」

「まさかこの目の前の不審者に誰も気付いていないのか?」


 財前剛介は現在の状況に違和感を感じていた。


(舞(精神))「で? コイツからどうやって本音を聞き出す?」


(フローラ(精神))

「それは簡単ですよ」

「ほら今は丁度私と貴方と合体している状態だし」

「いつもの様にいきましょうか」


(舞(精神))「成程な……」


 そして舞は財前剛介に向けて言い放った。「マインドオペレーション!」

 その言葉と共に舞は光の中に消えていった。



 舞とフローラは財前剛介の精神の中に入り込んだ。

 財前剛介の精神の中は金と欲望と人間の嫌な部分が、交互に覗き見える世界だった。


(フローラ)「この精神は何ですか? 卒倒しそうなくらい気持ち悪いです」


(舞)

「そうか? 俺様はむしろ心地良い感じだが」


(フローラ)

「恐らく人間の悪の感情と貴方方悪魔が所有する悪の感覚は似ているのかもしれませんね」

「でも私は何て言うか……貴方の悪の感覚の方がまだ耐えれます」

「人間のそれは何て言うか……気持ち悪くて倒れそうな感覚に襲われます」


(舞)「……貴様……本当に大丈夫か?」

(フローラ)「……? 何がですか?……」


 そんな舞とフローラの前に、椅子に座った財前剛介の精神が現れた。


(財前剛介)「何だ貴様達は! どうやってこの中に入った!」


(舞)

「おいおい……精神までこんな感じなのか?

「どうやってコイツから本音を聞くんだ?」

「……ヨシ! ブチのめそう!」


(フローラ)

「おやめなさい! 全く貴方という方は……」

「財前剛介さん……貴方に聞きたいことがあります」


 フローラが話し出すと、財前剛介の態度が急に変わった。


(財前剛介)

「この中に入って来たということは……剛のことと財前グループのことじゃな……」


(フローラ)「はい……その通りです……」


 そして財前剛介は重たい口を開いた。


(財前剛介)

「察しの通り財前グループは剛の手によって近い内に倒産する」

「儂は育て方を間違えたのかもしれん……」

「金の使い方……金の育て方……経営のこと……」

「儂の今まで培ったもの全てを剛には伝えて来た」

「だが剛はその内に取り憑かれてしまったのじゃ!」

「金の魔力にな!」


(フローラ)「金の魔力? それはどういうものなのですか?」


(財前剛介)

「…金の魔力とは大金を手にした者を破滅に導く恐ろしい力のことじゃ」

「一度その魔力に取り憑かれてしまった者はまるで大金が湯水の様に湧き出るものだと錯覚をする様になる」

「そして自己制御が効かなくなりその大金の価値を見失う」

「そうなればもうその末路は破綻しかないのじゃ……」


「……大金を手にした者は……その価値を見失っては絶対ダメなんじゃ」

「そしてその考えに達した者のみが金の魔力を真に身に付ける事が出来る様になるのじゃ」


「じゃが大半の人間はそこの考えに辿り着かずにその魔力に取り憑かれて潰される」

「……金の魔力とは言わば人間には扱えない呪われた力そのものなのじゃ」


(フローラ)

「……ここまで長年財前グループを牽引して来た方の言葉……とても重く感じます……」


(財前剛介)

「儂は剛には経営者として早くその考えに達して欲しいという願いからアイツに子会社を持たしたんじゃ」

「もちろんそこの収益は剛の小遣いにしていいという条件でな」

「儂も別に子会社が1つ潰れたぐらいじゃ財前グループ全体に及ぼす影響なんか大した事ないと思っておったのじゃよ」

「そしてそれで剛の勉強にでもなればいいと思ってさえおった」


「じゃが儂は自分でも手に負えないモンスターを育ててしまっていた」

「金の魔力を身に付けずにそれを貪り喰らうモンスター……それが剛じゃった……」


「剛はその会社で何も経営はしなかった」

「ただその会社を元手に金を借りまくっただけじゃった」

「そしてそのお金は全て自分の豪遊に使いまくった」

「その結果剛の会社は多額の負債を抱えることとなった」

「じゃがここまではまだ儂の想定内じゃったんじゃ……」


「じゃが剛はここから儂の想像を超えた……」

「アイツはあろうことかその会社の負債をチャイニーズマフィアに売り渡したのじゃ!」

「そして表向きは剛を経営者としたチャイニーズマフィアの会社が出来上がり……そこで麻薬の売買 詐欺 売春までありとあらゆることがブラックマーケットを通して行われていたのじゃ」

「そして剛はなんとその自社で自分が行った事を知り合いのゴシップ誌に暴露すると言い出したのじゃ!」

「そんなことしたら財前グループは終わりじゃ」

「じゃから儂は剛にそんなことはやめてくれ! と言ったのじゃ」


「すると剛はその交換条件として二つの条件を出して来た」

「その条件が自分の会社に100兆円を振り込むことと総帥の座を自分に譲ることの二択じゃった」

「儂はその瞬間悟ったよ」

「剛は最初から自分の会社を自分が豪遊し続ける為だけの道具にしたんじゃと」

「そんな奴が経営者になっても上手くいくわけがない」

「じゃからもう財前グループは終わりなんじゃ……」


 財前剛介は涙を流しながら、全てを語り終えた。

 だが、舞は何か納得していない表情を見せていた。


(舞)

「……貴様何か隠していないか?」

「そもそもなぜその人間はそんなモンスターになった?」

「貴様は一体ソイツに何を吹き込んだんだ?」


 舞の問い掛けに、財前剛介は少し困った顔を見せた。


(財前剛介)

「……儂の会社も全く悪いことをしていないわけではない」

「どんな会社にも表があれば裏がある」

「そして真の経営者という者は表も裏も制して初めて成り立つ者じゃと儂は思っておる」

「だから剛にもそう教えていた」

「そして更に金というモノは上手に使えない者の手からは離れていき……その使い方がわかっているものには付きまとうモノじゃとも教えた」

「……じゃがまさかここまで大胆な事をしてくるとは想像も出来なんだ……」


(舞)

「言うなればアンタの教えを忠実に守っているが故にソイツはアンタも喰らおうとしているのかもしれんな」


(財前剛介)

「……確かにそうかもしれんの……」

「儂は育て方を間違えたんじゃ」

「全てアイツが言ってたことが正しかったと今は痛感しておるよ」


(舞)「アイツってのは誰のことだ?」


(財前剛介)

「剛が幼い頃に亡くなった剛の父親であり儂の息子じゃった財前正一じゃよ」

「剛は昔はあんな子じゃなかった」

「どこから歯車が狂ったんじゃろうか……」

「もし……今ここに正一がいたなら儂を思いっきり責めるんじゃろうな」

「『だから言ったでしょ! アンタのやり方は間違ってるんだよ!』ってな……」


 財前剛介は遠くを見つめながら、自分の過ちを嘆いた。


(舞)「……それで貴方はどうしたいんですか?」


(財前剛介)

「儂は財前グループを守りたい!」

「じゃが剛も傷つけたくはない!」

「何があってもアイツは儂の孫じゃから」


 フローラはその言葉を聞くと大きく頷いた。


(フローラ)「……わかりました……貴方の願い私が叶えて差し上げます」


 財前剛介はそのフローラの言葉を聞くと安心した表情を見せた。


(財前剛介)「……ありがとう……よろしくお願いします……」


 その財前剛介の言葉の後で、辺り一面は光に包まれた。

 そして次の瞬間、舞は財前剛介の部屋に戻って来ていた。



(財前剛介)

「何じゃ貴様!」

「……あれ? 貴様? どこかで会った様な……」


 舞の目の前には、さっきまでとは少し様子の変わった剛介が座っていた。


(舞(精神))「それでどうすんだ?」


(フローラ(精神))「……とりあえずこの方を誘拐しますか?」 

(舞(精神))「はぁ!?」


 舞は剛介に向かって手を突き出した。

 すると次の瞬間、剛介は気を失った。

 そして舞は、剛介を連れたままその場から消え去った。

 しばらくすると舞が作り出した結界は消えた。


 そしてその直後、財前剛介が押した非常用のベルがビル中に鳴り響いた。

 その音を聞きつけた数人が財前剛介の部屋に入ったが、財前剛介はそこにはいなかった。


「これは一体!?」

「総帥! 総帥! どこですか?」

「おい! 誰かここ来るまでに不審者か総帥見たか?」

「何も見てません!」

「一体どういうことだ!?」


 その部屋は荒らされた形跡が何も無かった。

 ただ忽然と総帥の姿だけがそこには無かった。

 そしてその事実に、警備員達は恐怖を感じていた。



―財前剛の会社―

 財前剛介が行方不明になったことは、剛の耳にもすぐに入ってきた。


(剛)「ジジイがいなくなった!? どういうことだ?」

(側近)「わかりません……ただそういう情報が入って来まして……」

(剛)「誘拐か? いやあのビルの屋上から堂々と誘拐なんか出来る訳が無いよな……」


 剛は突然入って来たその情報に、驚いていた。

 そんな時、剛の携帯が急に鳴り出した。

 相手は非着信からだった。

 剛は恐る恐るその電話に出た。


(剛)「誰だ!」


「……財前剛介さんを誘拐した者と言えばわかりますか?」


(剛)「貴様ふざけるなよ! そんなこと出来るわけがないだろ!」


「それが私には出来るんですよ」

「……そんなことより貴方には聞きたいことがあります」

「貴方にとってこの人は本当に大事な人なんですか?」


(剛)「大事に決まってるだろ! 実の爺ちゃんだぞ!」


「そうですか」

「でも貴方……その実の爺ちゃんから全てを奪おうとしているのではありませんか?」


 その電話の主がそう言った瞬間、剛は急に強張った表情を見せた。


(剛)「貴様……どこでその情報を?」


「そうですね……剛介さんから直接聞いたとだけ言いましょうか」


(剛)「成程……情報を流した相手は教えたくないと。それで爺ちゃんはどこにいるんだ?」


「……貴方のスマホに場所を送りました……そこに来て下さい・・・」


(剛)「わかった……」


 剛は電話を切った。


(側近)「剛さん! どうするんですか?」


 その側近の言葉に対して、剛は怒りにも似た表情を見せながら小声で側近に指示を出した。


(剛)

「……王さんに連絡しろ……」

「どこの誰だか知らないがあの情報を知っている奴は抹殺しないといけない」


 その剛の言葉に頷いた側近は、どこかに電話を始めた。


(剛)⦅誰だか知らないが俺を舐めたことを後悔させてやるよ!⦆



―某所―

 薄暗闇の中で一人の少女と一匹の白い猫が、椅子に縛られた財前剛介と共に立って待っていた。


(財前剛介)「貴様! こんなことしてタダで済むと思ってんのか! 儂は財前剛介じゃぞ!」


(舞)「……やっぱこの人殴っていい? なんかイラつくんだけど……」

(白い猫)「ダメに決まってるでしょ! まったく貴方という方は……」


(財前剛介)「ん? お前誰と喋ってんだ?」


(舞)「……せめて口だけでも抑えない? 煩いのよさっきから」

(白い猫)「我慢して下さい! ほらもうすぐ来ますよ!」

(財前剛介)「ん? ん? ん? ……今この猫喋らなかったか?」


(白い猫)

「財前剛介さん……これから貴方の願いを叶えますので今しばらくそのままでお待ち下さい」


(財前剛介)「ね……猫が喋ったーーー!?」


財前剛介は、白い猫が話し掛けて来たことに異常なまでに驚き、椅子に座ったまま気絶した。


(舞)「……最初からこうしてれば良かったんじゃねぇ?」


(白い猫)

「あらまぁ……気絶しちゃいましたね」

「ウフフ……まーこれで静かにはなりましたね」


 その会話の直後、舞とフローラは大多数の人間の気配を感じ取った


(白い猫)

「……さてお喋りはここまでの様ですね……」

「どうやら大多数の方がお越しになったみたいです」


(舞)

「ええさっきからずっと周りからとんでもない殺気感じてるわ」

「久しぶりねこの感覚! 身体がウズウズしてしょうがないわ!」


(白い猫)「さて今回は貴方に任せますね」

(舞)「えっ!? いいの?」


(白い猫)

「はい」

「今回の人達には肉体的裁きが必要と思いましたので貴方に任せることにします」

「まあいざとなったら私の能力で一気に倒しますが」


(舞)「必要ないよ! 私を誰だと思ってるの?」


(白い猫)

「そうでしたね……では魔王様に任せることにします」


 その会話の直後、舞と白い猫の前に様々な武器を持った数百人の屈強な男達を引き連れて、財前剛が現れた。


(剛)

「貴様か! ん? 貴様なのか?」

「見たところただの女1人じゃねえか!」

「ふざけやがって!」

「俺様を舐めたこと後悔させてやるよ!」


(舞)「せいぜい楽しませてくれよ! 人間共!」


 舞はその大人数の男達を前に、不敵に笑った。


(ナレーション)

 こうして財前剛介を人質(?)に取った財前剛との抗争(?)が始まった……

 フローラはなぜ財前剛介を誘拐したのか? そしてその狙いとは?

 そして財前剛は何故モンスターとなったのか?

 彼の人生に一体何があったのか?


 〜第九章〜 金の魔力 【後編】

 へ続く

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