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09 お早い帰宅

「お疲れ様でした!!」


バイト終わり、夕暮れの道を走った。


家に帰ることが怖い気持ちもあるけれど、歩いてしまったらそのまま足を止めてしまいそうな気がした。


元々家から近いバイト先だったこともあり、すぐについた。


まだ心の準備は出来ていない。


深く息を吸って、吐く。それを何度か繰り返す。

吸って、吐いて。吸って、吐いて。


息を整えるというよりは、心の準備をする時間がほしかった。



深呼吸をしたあと、ゆっくりと階段を上り、部屋のドアに着いた。


もう一度軽く深呼吸をしてドアを開ける。


「ただいま」


ゆっくりと靴を脱いで部屋に上がる。



リビングのドアを開けると目の前に彼女が立っていた。


「お かえりなさい。早かったね」


彼女は驚いたように軽く目を見開いた。


「うん。今日からバイト6時までだからさ」


今は18:30。そんなにバイト先から早く帰ってきたということは無い。


ただ、走ったのは事実だし、彼女も普段通りに過ごしていたなら時間を忘れていてもおかしくない。


「もうすぐご飯できるけど…お風呂に先に入る?」


いつも彼女は二人分の夕飯を作ってくれて、僕の分は冷蔵庫で冷やしておいてくれた。


久々に彼女の作りたての夕飯が食べられる。

弾む気持ちを抑えながら、とりあえず風呂に入ることにした。


「汗もかいたし、先に風呂に入ってくるよ」


「わかった。お風呂から上がる頃にご飯にするね」


「ありがとう」



風呂場で息を整える。

頭からシャワーを浴びた。


とにかく落ち着け。

気まずい空気になることだけは避けろ。

変に意識するな。


身体を洗って、もう一度深呼吸をした。



「そろそろ上がるね」


脱衣場から彼女に声をかける。


「はーい」


彼女の明るい声が聞こえた。



大丈夫だ。大丈夫。

あくまで普通に。

同棲したての頃を思い出すだけだ。

大丈夫。大丈夫。



何度も心の中で唱えてから脱衣場を出た。

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