08 増えゆく時間
それから数週間し、僕たちは互いのバイトを減らした。
彼女は朝から夕方までやっていたバイトを昼からにし、俺は昼から深夜までやっていたバイトを夕方までにした。
シフトを減らすことでバイト先には迷惑をかけたし、最悪クビになることも覚悟していた。
でも、バイト先でも彼女とのことを相談していたので、むしろ好意的に受け止めてもらえた。
「お前彼女とちゃんと話せよ」
「ここで逃げると後がきついぞ」
「彼女も謝りたいと思ってるんじゃない?」
もらったアドバイスをどれも活かすことができなかったのに、皆笑って背中を叩いてくれた。
「おはよう 起きて」
いつものように彼女を起こして朝食の用意をする。
ここまではいつも通りだ。
しかし、今日からは昼まで二人の時間がある。喜びと緊張で落ち着かない。
「おはよう」
顔を洗った彼女が席に着く。
2人で目を合わして笑った。彼女も緊張していたのかもしれない。
朝食後、普段はそれぞれの食器を流しに持って行ったあと少し話をして、それから彼女が身支度を整えて出かけていくのを見送る。
しかし、今日は2人とも家を出るのは昼だ。あと、4時間近くある。
そっと目を合わせて笑った。
「どこか出かける?」
「いいね。せっかくだから、夜見るDVDでも借りにいかない?」
久しぶりに2人で過ごす時間の話をした。一緒にいる時間の話をした。
結局、午前中は一緒にレンタルショップに行って今夜見るDVDをいくつか借りた。
帰りにカフェに寄って緩やかな時間を過ごした。
互いのバイトの話や最近聞いた話をする。こんな当たり前のことがあまりにも不足していたと気づいた。
カフェで別れて、彼女はそのまま直接バイト先に向かった。
僕は一度家に帰り、DVDを置いて少し準備をしてからバイトに向かう。
また夜に彼女と顔を合わせることができるなんて想像もできない。
僕たちは以前、どんなふうに夕食やその後の時間を過ごしていただろうか。