05 気まずい暮らし
そして、僕は2つ目の大きな失敗をした。
気まずい暮らしが嫌だった僕は、バイトの日数を増やしてしまった。遅い時間まで働くこともあった。
少しでも彼女と家で2人きりになる時間を減らしたかった。少しでもあの気まずい空気から逃げたかった。
良く言えば、一旦距離を置いてそれぞれ落ち着こう、となるけれど、そうじゃないことは2人ともよく分かっていた。
僕がやったことは、その場しのぎで何の解決にもならない策だった。
本当は、すぐにでもしっかり2人で話し合う時間をとって、腹を割って話し合うべきだったのかもしれない。
互いに不満をぶつけ合って激しく喧嘩をした方がまだましだったのかもしれない。
ただ、はじめて喧嘩をした僕たちにはそんな余裕はなくて、
謝ることも許すこともできないまま、ただただ距離を置くことしかできなかった。
距離を置いても何も解決なんかしなくて、もっと気まずくなるだけだと分かっていた。
当然そんな事分かっていた。だけど、僕たちはあまりにも幼稚で臆病だった。
それからも、彼女を朝起こして朝食の準備をするのに手を抜くことは無かったし、彼女も変わらず美味しいご飯を作ってくれた。
他の家事も、今まで互いに気づいた方がやるようにしていたが、むしろ互いに今までよりもしっかりとやるようになった。
家は綺麗で、家事は分担してる。互いの欠点を補い合って、支えあっている。
生活する上では何の問題もなかった。最高の関係性だと思った。
だけど、ただただ気まずさだけが、どうしようもなくそこにいた。
2人で過ごす時間も、話す時間も、笑う時間も…
全部どんどん減っていって、僕たちの同棲生活は以前のように「幸せだ」と言い切れるものではなくなってしまっていた。