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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~  作者: ma-no
第二十ニ章 アメリカ大陸編其の一 アメリカ横断ウルトラ旅行にゃ~
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613 神剣の試し斬りにゃ~


 白メガロドンは焼いただけでも大好評。サメだから変な臭みがあると思っていたが、黒や白なら旨味が勝って少しの臭みがクセとなると寿司屋の大将から教わったので、普通に調理しても問題ない。

 なんなら、今まで食べた肉の中で一番うまい。さすがは千年物のサメだ。もしかしたら、玉藻も……


「なんじゃその目は? 食えと言ったのはそちじゃろうが」

「いや、にゃんでもないにゃ……」


 わしの不穏な考えはギリセーフ。玉藻は九本の尻尾と両手に串焼きを持っていたから、奪われる心配をしたようだ。食い意地が張っていて助かった。

 わしが物理的に食べようとしていたと知られたら、絶対リータ達に怒られる。たぶん比喩的に食べると思って浮気疑惑になるんじゃもん。


 白メガロドンは生でもいけたので、焼き時間を待つ間は刺身醤油でつまんでいたから、すぐにおなかいっぱい。全員食べ過ぎて動けなくなってしまった。

 どうもとんでもなくうまいので、自分の食べられる量を遥かに超えて食ってしまったようだ。白イルカにも好きなだけ食べさせたが、大食い一位はコリス。頬袋に詰められるだけ詰めたので、かつてないほど頬が膨らんでいる。


 それ……いつ食べるの? モゴモゴか~。でも、かわいい!


 何を言っているかさっぱりわからないが、頭を撫でておいた。明日も食べる予定だけど、その時には元に戻っているだろう。

 コリスを撫でていたら、腹を押さえる皆が腹ごなしをしたいと言うので、大振りの白メガロドン肉を取り出して、鱗に攻撃させる。

 わしは後ろで押さえて見えていないが、あまり攻撃は通ってない模様。リータのパンチでさえ、鱗が硬くて痛かったようだ。唯一通じた攻撃は、メイバイ達に作ってあげた白銀の武器。斬り込みが入ったらしい。


「わしもやらしてにゃ~」


 それならばわしも興味があるので、腰の物を抜いて一閃。玉藻の付けた傷より大きく斬れた。


「くっ……負けた……」

「扇と刀じゃ用途が違うにゃろ~」

「たしかにそうじゃが……小刀も作ってくれんか?」

「扇があれば十分にゃ~」


 何を競っているのかわからない玉藻を宥めていたら、刀マニアの家康も話に入って来た。


(わし)にも一振りお頼み申す!!」


 しかも、「男がひょいひょい土下座をするな」とか言っていたくせに、土下座までして来やがった。


「刀が欲しいからって、わざとやってるにゃろ?」

「どう受け取られても構わん! 何卒(なにとぞ)、何卒……」

「わかったから頭を上げろにゃ~。玉藻は土下座しても作らないからにゃ?」

「うっ……」


 玉藻も土下座しようと膝を曲げたところで釘を刺し、秀忠に顔を向ける。


「忘れていたんにゃけど、例の物、持って来てたにゃ。ここで出すにゃ?」

「お、おお。そうだな……桐の箱に入っているのか?」

「注文通りにゃ~」

「ならば出してくれ」


 秀忠からは、馬鹿デカイ桐の箱を送られて来たので、注文の品はその中に入れてある。プレゼント用とは聞いていたけど中身は見えないので、広い場所に次元倉庫から出してやった。


「父上……私からの贈り物です。どうかお納めください」

「なんじゃ畏まって……こ、これは……」


 家康が桐の箱を開けると、そこには白くて巨大な軍配。わしが壊してしまった家康が使っていた黒魔鉱の軍配と同じサイズの、白魔鉱の軍配だ。


「長年使っていた軍配を直そうかと考えていたのですが、猫の国は鉱石が豊富と聞き、シラタマ王に無理を言って作っていただいた品です」

「ふむ。そうか……有り難く頂戴しよう」


 家康は白い軍配を握ると、数度振って使い心地を確認したら顔をほころばせた。


「気に入った!」

「はは~」

「しかし、前の軍配より倍は重くないか?」

「そ、それは……」

「製造方法は秘密にゃ~」


 秀忠が言いにくそうにわしを見るので、答えは代わってあげる。


「まぁ白鉄(しろがね)を見た目の二倍は使っているとだけ答えてやるにゃ」

「そんなに使っておるのか……あいわかった。それだけ聞けたなら、もう儂からは何も言うまい」

「にゃはは。(いさぎよ)いにゃ~」

「儂の刀も、その製法で作ってくれるのであろう?」

「にゃはは。そっちが狙いだったんにゃ」

「頼んだぞ。ポンポコポン」


 プレゼントに喜んでいる家康に、ケチを付ける必要はないだろう。あとで請求書を見て驚けばいい。こんな馬鹿デカイ白魔鉱の軍配が安いわけがないんだからな。

 秀忠もローンにしてくれと泣き付いて来たのに、また馬鹿デカイ刀の二倍圧縮を発注するんだ。お金持ちの玉藻ですら出し渋ったんだからな。

 どっちみち折半した魚から差っ引くだけだと思うけど……


 わしと家康は笑っている意味は違うが、がっしり握手をして友好を深めるのであったとさ。



 メガロドン祭りが終わると玉藻と家康に酒を勧められたが、わしも学習している。この二人と飲むと、いつも飲まされ過ぎてリータ達に嫌われるから断ったのだが、肩を組まれて拉致られた。

 あまり飲み過ぎたくないわしはさっさと用件を聞いたら、訓練方法を聞かれた。


「別にアレはわしの力じゃないにゃ。ツクヨミノミコトから力を授かっただけにゃ。ま、信じられないだろうにゃ。にゃははは」


 当然二人は信じてくれないので、なんとかわしの強さの秘密を聞き出そうと酒を注ぎまくるので、杯はひっくり返した。


「も、もうこの辺で……ヒック」

「まだまだいけるじゃろ」

「まだいつもの半分じゃぞ」

「わかったにゃ! わかったから飲ますにゃ~。ヒック」


 もうここらでやめないと、またわしは寝室から追い出されてしまう。リータ達と寝るには言うしかないのだ。


「わしが思うに、二人は不完全にゃ生き物だと思うんにゃ」

「「不完全??」」

「本来、多尾の白い生き物は、もっと強くて大きいにゃ。それは魔力濃度が関係しているとわしは見ているんにゃけど、日ノ本は魔力濃度が低すぎるから、不完全になったんにゃ」

「「ということは……」」

「てか、白いサンゴ礁巡りしてるんだから、出会った頃より強くなってると思うんにゃけど……自覚はあるかにゃ?」


 玉藻と家康は、手を握ったり肩を回しながら自分の力を確認する。


「そう言えば、元の姿に戻った時、少し大きくなったような気がする……」

「儂もじゃ……足も速くなっている気がしてたんじゃ」

「にゃ~? 日ノ本には白い森は無いけど、白いサンゴ礁はあるにゃ。いや、新津で訓練したほうが手っ取り早いにゃ~。ま、その歳からわしと同じ速度で強くなれるかは知らにゃいけどにゃ」


 訓練方法を聞いた玉藻と家康は顔を見合わせて数秒後、わしを褒め称える。


「さすがシラタマじゃ!」

「外から見ない事には気付けない事じゃな!」

「「ささ、飲め飲め!!」」

「だから飲ますにゃ~! プハーーー!!」


 結局この日も、二人に飲まされまくったわしは寝室に入れてもらえず、一人で眠るのであったとさ。



 翌朝は、また二日酔い。リータ達には白メガロドンを食わして怒りを逸らす。それからエリザベスキャット号は動き出したが、ちょっと寄り道。

 せっかく樺太(からふと)がすぐそばにあるのだ。スリスリしまくって上陸させてもらった。ただ、そのせいで以前わしが言った嘘が事実となってしまった。


「アイヌか……海を越えた先にもアイヌはおるのじゃな」

「日ノ本のアイヌと同じ暮らしをしておるのう」


 さっき空から見付けた集落に寄ってみたが、玉藻と家康がこんな事を言うので、樺太は日ノ本の土地だと思っていたわしは肩を落とす。


「シラタマさんは、どうして落ち込んでいるのですか~?」

「元の世界でも、日ノ本じゃないんじゃなかったニャー?」

「ここは日ノ本の土地にゃ~! 樺太にゃ~!!」


 わしは怒られてもかまわない。断固として歴史認識を曲げないので、玉藻と家康は併合しようかと話し合うのであった。



 樺太アイヌはわし達を見ても、意外と驚かない。理由を聞いたら、獣と子を成す伝承があるので、神様が現れたのだと思っているようだ。

 なので宴の席を用意してくれたが、たいして美味しそうな物も面白そうな物も無いのでさっさと撤収。


 わしは話を聞きたかったんじゃけど……


 興味があったのはわしだけ。ここに時間を掛けるより、皆は巨大魚ハントをしたいらしく、首根っこを掴まれてエリザベスキャット号に乗せられてしまった。



 エリザベスキャット号は南下し、これまで回った白いサンゴ礁に突入すると三周目ともあり、大きくても30メートル程度の主しか居なかったので、わしの出番は無し。リータ達がノリノリで戦っていた。

 秀忠は松前藩(北海道)から帰る予定だったらしいが強制連行。猫又船団に組み込まれて必死に戦っている。どうも強い敵と戦う事に慣れていなかったようだ。


 わしはと言うと、足場を作ったあとは暇潰し。皆が魚に気を取られている内に家康用の刀を作ってみた。5メートルのタヌキ使用だから何度か失敗してしまったが、たぶんボチボチの品が出来ただろう。

 三倍圧縮は金額がバカ高くなるので二倍。玉藻は親友としての順位だと思っているようだけど、こっちの刀のほうが白魔鉱の量が多い。完成した刀は少し研ぎは荒いので、あとの事は研師(とぎし)に頼むように言っておいた。

 柄は土魔法で嵌めておいたが、帰りには取り外す予定にして、試し斬りをさせてみる。


「お、おお……これこそ神剣じゃ……」


 10メートルの白い魚がひと振りで真っ二つ。さずがにわしも驚いたが、家康と秀忠は、なんか刀に向かって土下座している。


 家宝にするらしいが、名前に猫を入れるのはやめようね? あと、ご老公にしか使えないと思うから、ひょっとしたら無駄になるかもしれないよ?


 いくら凄い刀でも、使い手を選ぶなら宝の持ち腐れ。言われた通り作ったが、秀忠が家康ぐらい大きくなるかは不明。家康亡きあと、寺か神社に(まつ)られると思われる。


 巨大刀の名付けは一時保留。どうしても猫の付く名前でしっくり来る物が無いようなので、帰ってから決めるとのこと。柄だけは外して、土で固めた箱に入れてあげた。

 微動だしないようにしたが、衝撃を与えると貫通するかもしれないので運搬には気を付けて欲しい。運搬するだけで人が死んだら、『妖刀猫又』とかになりそうなんじゃもん。



 試し斬りを終えるとまた白いサンゴ礁巡り。わしの出番は少ないのでダラダラお昼寝し、その日の夜には舞鶴に到着した。

 これでわしの任務は終了。そのまま帰ろうと思ったが、ここで一泊。漁村は白イルカ効果で人口が増え、出稼ぎ漁師も多数いるので何軒も旅館が建てられていたけど、エリザベスキャット号に戻った。


 だって、わしそっくりの招き猫がそこかしこに居るんじゃもん。みんな拝み倒して来るんじゃもん!


 どうも元々の村民が、わしと出会ってから好景気に発展したから神のように崇め奉(あがめたてまつ)っていたので、廃れた漁村は居心地の悪い港町に様変わりしたようだ……


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