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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~  作者: ma-no
第二十一章 王様編其の四 ウサギ族の大移動にゃ~
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590 京の名所ツアーにゃ~


「なんじゃ。こんな所におったのか」

「探したぞ」

「にゃ?」


 大きなしだれ桜の前でわしは酒を飲み、夜桜を楽しんでいると後ろから声を掛けられたので振り返ったら、そこには玉藻アダルトバージョンと家康タヌキ耳バージョンが立っていた。


「にゃんか用かにゃ?」

「家康がそちと話をしたいと訪ねて来てのう」

「昼間は多くの王が居た手前、全然話せなかったからな」


 こんな夜遅くにとは思ったが、まだ目は覚めていたので畳を出して、三人で酒を酌み交わす。


「それで話ってにゃに?」

「台湾のことじゃ」


 台湾じゃと? なんでご老公は、その名を知っておる??


「あの島のことかにゃ??」

「おっと。そこから話さなくてはならんかったか。その島で間違いない。じゃが、一から話をしたほうがよかろう」


 どうやら家康は、台湾攻略が終わった報告を早くしようと、こんな夜遅くにわしと玉藻に会いに来たらしい。


 徳川軍はタイヤル族と共に集落の近くの部族から攻め、次々に落として行った。その方法は、最初は(から)め手。交渉が(こじ)れると力業(ちからわざ)

 力業と言っても、家康が威嚇しただけで部族は白旗を上げ、誰ひとり傷付けずに落としたとのこと。その証拠に、同伴していた公家が撮った写真を見せてもらい、本人からも聞き取りをするようにと言っていたので嘘はなさそうだ。


 全ての部族を落とした家康は、中央政権を作ろうと全ての部族から人を集め、王都を作ろうとしているらしい。

 そこで島に名前が無かったので、全員で話し合うように指示を出し、決まった名前が「ダイオワン」。現地の言葉に漢字を当て嵌めて、「台湾」と呼ぶようになったそうだ。


「へ~。あれから二ヶ月ってところかにゃ? もう終わってたんにゃ~」

「戦国時代にこの力があれば、一滴も血を流さずに終わっていたじゃろう。過去を悔やむのは性に合わんが、あの時代は血を流し過ぎた……」


 やはりこの世界の家康も、泰平を望む家康だったんじゃな。じゃなきゃ、こんな言葉は出て来ないじゃろう。


「てことは、もうご老公の手は離れたのかにゃ?」

「いや、まだまだじゃ。いざこざはすぐには収まらん。これから強い幕府を立ち上げんことには、(まと)まるものも纏まらんじゃろう。(わし)の暗殺を(たくら)んだ輩も居たんじゃぞ」

「にゃはは。命知らずも居たもんだにゃ~」

「まったくじゃ。首刈りなんて風習も残っておる部族も居るから困ったもんじゃ」


 あ~。そう言えば、わしが部族の風習を(ないがし)ろにするなとか言ったっけ。さすがに首刈り族は野蛮すぎるな。


「過激派には、留学でもさせてやったらどうにゃ?」

「どういうことじゃ??」

「わし達の暮らしを見せるんにゃ。さすれば、価値観は変わるはずにゃ。そこに、いがみ合っていても発展はしないと説いてやれば、ご老公の言葉もすんなり入るんじゃないかにゃ?」

「ふむ……」


 わしの案に家康が考え込んでいると、玉藻が口を開く。


「価値観か……確かに世界は広いと見せてやれば、一発かもな。(わらわ)でも、心を動かされる光景を何度も見たぞ」

「お主がか……」

「まぁ妾は頭が固いからのう。全ては無理じゃ。コンコンコン」


 玉藻が笑うと家康も笑う。


「ポンポコポン。やはり一人で考えるより、戦友と共に考えると面白い案が出て来る。少し知恵を貸してくれ」

「そうだにゃ~……こんにゃのはどうかにゃ~?」

「こういうのもあるぞ」


 こうしてわし達は台湾国家計画を話し合い、酒を飲みながら夜が更けて行くのであった。



 翌日は、わしはお寝坊。リータに叩き起こされたが眠たい理由を説明して、誰かの腕の中に収まって移動している。玉藻と家康は多少眠そうにしていたが、ちびっこ天皇の隣にしゃんと立っていた。


 今日の観光は桜スポット巡り。何台ものバスで移動し、桜並木が綺麗な場所で降りる。そこでは出店とテーブル席が多くあり、全て食べ放題。ただし、花より団子のコリスには、手加減してくれと泣きが入っていた。


 だって、コリスが頬袋に詰めまくるから、王族が食べる物が一瞬にして消えたんじゃもん。わしもタイ焼き食べたかったのに……


 まぁ作り置きが無くなっただけなので、桜を見て時間を潰せば作り立てが食べられる。コリスには「メッ」と叱ってから高級串焼きを支給。まだ頬袋が膨らんでおるけど、どうやって食べるんじゃろう?


 コリスを見ていても楽しいだろうが、いつでも見れるので桜観賞に戻る。焼き立てホヤホヤのタイ焼きをモグモグしながら桜の回廊を抜け、その先に用意されていたバスで移動。

 哲学の道に入ると桜吹雪が見られたので、わしとメイバイは首からぶら下げたカメラでパシャリ。その下に流れる水路も桜が浮いてピンクに染まっていたので、メイバイはパシャパシャ撮っている。

 他の王族もカメラで撮りまくっていたから、すぐにフィルムが無くなっていた。


「こんなこともあろうかと、フィルムは多く用意しておいたにゃ~!」


 猫の国で作らせていたフィルムは逆輸入。キツネ店主に露店を頼んでおいたので、飛ぶように売れていた。


 天皇家はこの辺の配慮が欠けていたので、わしは商売のチャンスと見てアドバイスしてなかったのだ。ぶっちゃけ情報漏洩(ろうえい)だが、日ノ本にも猫の国にも、そんな法律が無いから合法なのだ。合法なのだ~!!


 大事な事を心の中で二度呟き「にゃっしゃっしゃっしゃっ」と笑っていたら、ちびっこ天皇からめっちゃ苦情が来た。日ノ本でお金を持つと言った手前、財布を出させるのはマズかったようだ。

 だが、フィルムには知的財産権があるのだから、売れれば売れるほど日ノ本が潤うと説明したら、悪い顔で「にゃっしゃっしゃっしゃっ」と一緒に笑っていた。


 わしは女王、ちびっこ天皇は玉藻に叱られたけど……



 清水寺や様々な桜スポットを見た翌日は、京の観光。各国の王族は、公家やキツネやタヌキに連れられ、名所や人々の暮らしを見るようだ。

 わし達は何度も来ているので、ちびっこ天皇と会談。コリスとオニヒメは面白くないと思うので、お弁当と小判の入った収納袋を渡してリータ達に任せた。コリスがすぐに食べないといいんじゃが……


「では、どこから説明しようか……」

「完成してる発電所からお願いにゃ~」


 ちびっこ天皇との会談とは、第二回エネルギー会議だ。苦労話を聞きたくないわしは、結果を急がせる。

 現在完成している発電所は、まずは風力発電所。源斉の父親が試行錯誤して作ってくれたらしい。ただ、京の外れに作ったので、風力が安定していないから、現在は風が強い地を探しているようだ。


 次に完成しているとしたら火力発電所かと思っていたが、意外や意外。もうすでに、太陽光発電が完成していた。


「マジにゃ!? にゃんですぐに教えてくれないんにゃ~!!」

「完成したと知ったのは、桜を見る会の前日だからだ。てか、一週間前に出来ていたのに、ボクもそれまで聞かされていなかったんだ」

「源斉のヤツ~! 太陽光発電が完成していたんにゃら、全部奪ったのに~~~!!」

「奪うな! これのおかげで夜桜が楽しめておるのだ!!」


 ちょっと熱くなってちびっこ天皇と「にゃ~にゃ~」喧嘩していたら、玉藻がわし達の顔を両手で押し退けて間に入る。


「日ノ本発電計画書で読んだが、その太陽光発電ってのは、そんなに凄い代物(しろもの)なのか?」

「「凄いにゃんてものじゃないにゃ~」」


 わしとちびっこ天皇は声が重なったので、お互い牽制して交互に喋る。


「太陽が出ていれば、理論上、常に電気が生み出されるんにゃ」

「源斉の作った新型電池に貯めておけば、いつでも引き出せるんだ」

「なんと……夢のような技術じゃな」

「そうなんにゃ~。完成しているのを知っていたら、エレベーターもタダ同然で使えたのににゃ~」

「えれべーたー? なにそれ??」


 ちびっこ天皇が知らない単語に反応すると、さっきまで驚いていた玉藻が答える。


「こやつ、天を突くような建物を建てておったんじゃ」

「そんな出雲大社みたいな建物、歩いて上りたくない」

「そこでエレベーターじゃ。上下する車のような乗り物が建物の中を走っておるんじゃ」

「本当に!? 出雲大社にも作ってくれ!!」

「ちょ、ちょっと考えさせてくれにゃ!!」


 ちびっこ天皇が詰め寄るが、二人の話が気になったわしは、一旦気持ちを落ち着かせる。


 出雲大社って、アレのことを言っておるのか? 地上50メートルだとか100メートルはあるだとかの神話級の建物……見てみたい!

 超長い階段があるとかどうとか聞いたけど、実物はどうなっているんじゃろう? これこそ、歴史発見じゃ~。


「現地調査をしてから考えさせてもらいますにゃ~」

「え~! あんな……」

「にゃ~~~!! 皆まで言うにゃ。見るまで楽しみにさせてにゃ~~~!!」


 ちびっこ天皇が全容を言おうとしたので遮って、この目で見るまでわくわくして待つわしであった。



 とりあえず出雲大社は後日見に行く事にして、ちびっこ天皇は勝手に猫の街に来てキャットタワーを見たらいいと言っておく。

 それから風力発電所や太陽光発電を見せてもらい、その辺にいた平賀家の男からどれぐらいの電気が作られているかを聞いてメモ。数値がいまいち分かりづらいが、そこそこの電気が作られているとは理解できた。


 そのあとは、面倒な源斉の相手。源斉の働く蔵に出向いた。


「師匠! 見てください!!」


 何やらわしを見付けた源斉が手招きするので近付くが、無視されたちびっこ天皇と玉藻はおでこに怒りマークを作っていた。


「これは……太陽光パネルかにゃ?」

「はい! 改良型です!!」


 何を見せられるのかと思ったけど、普通じゃな。どこを改良したんじゃ? ああ、なるほど……


「角度を調整できるようにしたんにゃ」

「さすが師匠! 真っ直ぐ当てたほうが電気を多く作れますからね」

「でも、動力はどうするんにゃ?」

「えっと……いまは手作業で……」

「どんだけ人手を使うんにゃ~。電動機を使って、一人で動かせるようにしろにゃ」

「あ! それです!! では、俺は作業に……」


 源斉がわしまで無視して作業を始めようとするので、服を掴んで止める。


「それが終わってからでいいから、継電器を組み合わせた制御装置を作って欲しいんにゃ」

「継電器? 制御装置??」

「予め決められた動きをしてくれる機械にゃ。これがあれば、電動機をスイッチひとつで自動で動かしたり止めたり出来るんにゃ」

「お……おお! 何かと使えそうな機械!? 作りたいです!!」

「これ、わしの失敗作と設計図にゃ。にゃんとか作ってくれにゃ~」

「はい!!」


 源斉に失敗作を渡して発注を掛けたわしは手をヒラヒラとして、蔵から立ち去るのであっ……


「「勝手に話を終えるな!!」」


 もちろん蚊帳の外に置かれたちびっこ天皇と玉藻から、わしの元へ苦情が来るのであったとさ。


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