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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~  作者: ma-no
第二十章 冒険編其の二 さっちゃんの大冒険にゃ~
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553 北極探検にゃ~


 北極に着いたものの、わしが感動の涙を拭いてしまったせいで涙は凍り付き、手が目の近くの毛にくっついてしまった。そのせいで視界が塞がれ、パニくっていたらリータが助けに来てくれた。

 リータはわしを優しく抱き締め、【熱羽織】の膜の中に入れてくれたので、次第に氷は解けて、くっついていた手が簡単に離れた。


「「「「「あはははは」」」」」


 ようやくわしが落ち着いた頃に、心配して囲んでいた皆が爆笑しやがった。


 ぐっ……はずい。まさか一番北極の知識があるわしが、こんな悲惨な目にあうとは……北極、(あなど)りがたし……


 わしも【熱羽織】を(まと)うと、リータの胸から飛び下りて、皆から感想を聞く。


「それでどうにゃ? 初めての北極の感想は??」

「う~ん……普通ですね」

「陸と変わらないニャー」


 どうやらリータとメイバイは、北極へ来る大変さもわからないし、氷が浮いているという現実も信じていないようだ。

 なので、まずはポーリング調査。氷魔法で細長く足元の氷をくり貫いて引っこ抜く。


「わっ! 土がありません」

「本当に全部氷ニャ……」

「でも、さすがに中心は陸があるんじゃないですか?」

「まだ疑うにゃ~? いい加減信じてくれにゃ~」


 あまり信じてくれないので泣き付いてみるが、コリスに邪魔をされる。どうやらランチの時間のようだ。

 いくら【熱羽織】の中に居ようとも、足から底冷えするらしいので、バスを出して楽しくランチ。北極の知識を喋りながら食べていたのだが、楽しそうにしていたのはわしだけであった。

 その席でこれからどうするのかと聞かれたので、北極点に向かうと言ってみたら、渋い顔をされた。こんなに寒い場所には獣も居ないし、珍しい物も無いと思っているようだ。


 しかし、わしの夢を邪魔して欲しくない。「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~」説得して、なんとかついて来てくれる事となった。


「面白い物が無かったら……」

「にゃ!? いま、にゃに言い掛けたんにゃ~~~!!」


 たぶん何かしらの罰があるかもしれないので、リータから聞き出す事はやめた。


 どうせ行っても何も無いしな!!



 それでも北極点制覇は、男のロマン。わしは強行して戦闘機で空を行く。かといって、GPSも無いので北極点をどうやって探していいかもわからない。

 とりあえず戦闘機で高く飛んでみて、北極のど真ん中だと思われる位置に着陸してみる予定だ。


 空高くから見て、おおよそ北極の真ん中辺りだと思われる場所に着いたら、方位磁石を見ながら大きくグルグル回る。

 方位磁石は東南西北と動き、徐々に円を小さくして行けば、ある程度は北極点に近付けたと思う。

 なので、その位置に着陸しようとしたら、イサベレから待ったが掛かった。


「にゃにか居るにゃ?」

「ん。アシュラだっけ? あれぐらい強いのが下に居る」

「にゃんてこった……」


 せっかくここまで来たのに、北極点を拝めないのか……いや、倒せばいいだけじゃ! 【百倍御雷(みかずち)】をぶっぱなして、スーパー猫又になれば楽勝じゃろう。

 わしの北極愛をナメるな!!


 わしがやる気に満ち(あふ)れながら降りる旨を伝えると、珍しくわしが燃えているので、難無く了承してもらえた。強い獣をわしが狩る事は家計の足しになるから、リータ達は反対しないようだ。

 しかし、そんな戦闘現場には皆を連れて行けないので、どこか安全な場所をイサベレに相談する。その時、イサベレは西を指差したからそちらに向かおうとしたら、オニヒメが東のほうが安全と言って意見が割れた。

 割れてしまっても、二人とも危険察知が優れているので、どちらに行っても安全だろう。なのでじゃんけんで決めさせようとしたら、オニヒメがイサベレに耳打ちしたあと、イサベレも東を指差した。



 着陸地点も決まり、ちょっと東に進んだらオニヒメがストップを掛けたので、垂直着陸。ハッチを開けて戦闘機から皆で飛び降りると、そこは何か大きな生き物の群れのど真ん中……


「にゃ!? どこが安全なんにゃ~!!」

「あっれ~? おっかしいな~?? コツン」


 わしが怒鳴ると、オニヒメは自虐的に自分の頭を拳で叩いていたので撫でておいた。しかし、敵陣まっただ中では、遊んでいる場合ではない。

 戦闘機をしまい、全員武器を構え、円形に固まって臨戦態勢。大きな生き物との戦闘を始め……


「……全然こっち見ないですね」

「何してるニャー?」


 いや、戦闘は始まらないので、リータとメイバイは首を傾げる。


 うん? こいつらは……ペンギンか?? なんで北極なんかに居るんじゃ? いや、なんか形が違う。真っ黒じゃからようわからんが、鳥である事は間違いないんじゃが……

 立ち上がって押しくらまんじゅうして寒さに耐えているみたいじゃから、ペンギンにも見えなくもない。2メートル以上あるけど……

 攻撃もして来ないし、とりあえず声を掛けて見るか。


 リータ達には臨戦態勢を取ったまま待機するように言って、わしは点々とある黒いペンギン(仮)の集団に近付いて念話を繋ぐ。


「あ~……ちょっといいかにゃ?」

「ん? なんだ??」


 わしが声を掛けると、ペンギン(仮)は面倒臭そうにこっちを見た。


「わし達を襲わないにゃ?」

「何もしないなら、寒いから襲わない」


 おお~い……寒い土地の生き物じゃろ? 耐えられるように進化したんじゃから、もうちょっとやる気を出せよ。


「ちにゃみにボスはどこにゃ?」

「ボスは……どこかに居る。一番デカイのがそうだ」


 ……いいのか? それでいいのかペンギンよ……ボスの居場所はわからないし、個人情報を漏らして、この群れは生存競争に残れるのか??


「まぁ探してみるにゃ~」


 押しくらまんじゅうをしているペンギン(仮)から離れると、わしはリータ達と合流する。


「にゃんか寒いからやる気ないみたいにゃ」

「「ええぇぇ!?」」


 わしがペンギン(仮)から得た情報を教えてあげると、何故かイサベレとオニヒメが驚いた。


「にゃんで驚くにゃ?」

「ななな、なんでもない……」

「イサベレ……にゃにを隠してるにゃ~!」

「言っちゃダメ~!」


 スパイ活動が苦手なイサベレがどもるので、確実に隠し事があるのだが、オニヒメが止めに入った。

 だが、口の軽いイサベレから難無く情報が手に入るので、かまわず尋問を続ける。


「はっは~ん……戦いたいから、わざとここに降りたんにゃ~」

「そそそ、そんなことない……」

「やっぱり、わざとだったんにゃ~!!」

「ななな、なんでわかったの?」

「だから全部喋ってるにゃ~!!」


 全ての情報を得たわしは、イサベレを叱ろうとするが、涙目のオニヒメが割って入る。


「イサベレさんは悪くないの。私が行こうって言ったから……」

「そうにゃの?」

「ごめんなさい! 次からは、パパの言う事を聞くから、怒らないで……」


 オニヒメが上目使いで見るが、わしは手を上げる。


「よく謝ったにゃ~。オニヒメはエライにゃ~」

「えへへ~」

「甘い……」

「甘々ニャー」


 当然、わしが上げた手はオニヒメの頭を撫でただけ。リータとメイバイが何か言っていたが気にしない。


「チョロ……」

「にゃんか言ったにゃ?」

「えへへ~」

「よしよしにゃ~」


 オニヒメも何か言った気がしたけど、頭を撫で続けるわしであったとさ。



「とりあえずやる気もないみたいにゃし、ボスに会いに行ってみようにゃ~」


 リータ達もやる気のないペンギン(仮)とは戦いづらいらしく、わしの案に乗ってくれたので皆で移動する。

 一番大きいペンギン(仮)を探すぐらい、探知魔法を使えばあっと言う間。点々とある集団の中で、中心に一際大きな白ペンギン(仮)が居る集団に近付いてみた。


「にゃあ? お前がボスにゃろ? わしとお喋りしにゃい??」

「寒い……」


 またか……わし達を見て、襲って来ないと思っているのか? まぁボスはおよそ40メートル。尻尾や羽が普通のペンギンより五本も多いから、間違いなくリータ達が束になっても敵わないじゃろう。


「こんにゃ所でエサはどうしてるにゃ?」

「………」


 返事もせんのか……おそらく、ここはけっこうな魔力が漂っているから、そこまで必要ないのじゃろう。どうしても食べたいなら、海にとりに行くはずじゃ。たぶん……


「エサ、あげようかにゃ?」

「くれ!!」


 エサには反応すんのかい! 仲間のペンギンも凄いギラついた目でこっち見てるな……


 ペンギン(仮)は、押しくらまんじゅうをしながら近付いて来るので、わし達からちょっと離れた位置に黒い巨大魚を一匹出してみる。

 その巨大魚にペンギン(仮)は群がり、バリバリ食べてあっと言う間に食べ終わりそうだったので、反対側にも巨大魚を出す。何やら物欲しそうにわしを見るペンギン(仮)の集団も居たので、その近くにも巨大魚をプレゼント。


 おそらく全羽に巨大魚は行き届いた頃に、ボスペンギン(仮)がわし達の所へ近付いて来た。


「いや~。お前いいヤツだな。警戒して食いそびれるところだった」


 警戒? アレのどこが警戒しておったんじゃ??


「そんにゃに腹が減ってるにゃら、水の近くに居たらいいにゃろ」

「近々行くつもりだったんだ」


 ボスペンギン(仮)が言うには、海には強い魚が多いので、一度の狩りで何匹か命を落とすから、狩りをする回数を減らしているようだ。

 海で脂肪を蓄えたあとは、内陸の魔力濃度の高いここで過ごし、産卵なんかもしているとのこと。それで腹が減ったら移動し、お腹いっぱいになったら帰るを繰り返しているらしい。


 まんまペンギンじゃな。皇帝ペンギンがそんな生態じゃったはず。つまりこいつらは、北極版のペンギンってことか。



 ボスペンギン(仮)と少しお喋りしたら、また押しくらまんじゅうに戻ると言うので、わし達も参加。モフモフの押しくらまんじゅうは、皆にはなかなか好評だったが、内部はめちゃくちゃ熱くてすぐにギブアップとなった。


 そんな遊びをしていたら、もう日暮れ。極夜は時期がずれているようだけど、太陽が落ちる時間は早すぎて、ここで一泊する事となった。

 いちおうボスペンギン(仮)に許可を取ったら、許可すら必要なかった。だが、押しくらまんじゅうにキャットハウスが巻き込まれたら困るので、十分距離を取って次元倉庫から取り出す。


 キャットハウスでは、晩ごはんにはまだまだ早い時間だったので、お風呂に入ってモフモフされてから、料理の開始。寿司屋で教えてもらったレシピで、皆で協力してヤマタノオロチ鍋を作る。

 肝まで入れたから苦手な人が居たら悪いと思ったが、全員美味しく食べていた。


 食事も終わり、食べ過ぎて真ん丸になったお腹をさすっていると、リータ達も撫でて来るので、お腹が圧迫されて上から出そうだ。

 皆、まだ眠たくないらしく、やる事もレコードを聞くか、トランプやリバーシ、モフモフをするかしかない。その中で一番好きなモフモフをして来るので、オーロラを見に行こうと提案したら、あっさりオーケー。


 外に出て、全員で空を見上げた。


「「「「「うわ~~~~」」」」」


 本日は晴天なり。

 空にはカラフルな光のベールが何層も重なって揺らめいている。


「にゃ~~~」


 皆に遅れてわしも感嘆の声を出し、しばし無言でオーロラ観賞を楽しむわし達であった。


捕捉


ペンギン(仮)  正式名称『オオウミガラス』。かつて北極圏に生息していたペンギン。人間の乱獲の末、絶滅した。

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