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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~  作者: ma-no
第十九章 冒険編其の一 北極圏探検にゃ~
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520 猫、ハンター辞めるってよ


 猫の国に視察でやって来たフーゴ達がハンター協会総本山に辿り着く少し前、わし直々に各地に出向き、数々の嫌がらせの手紙を配ったあとは、グータラしていた。しかし、双子王女から仕事を仰せつかったので、暇潰しに働く。

 今日の仕事は、三ツ鳥居の移転。猫の街魔道具研究所に設置した三ツ鳥居は、このままでは他国の者が突然現れて、税関を素通りされてしまうと双子王女に言われ、いまごろ気付いたのだ。

 たしかに入国税を取れないのは痛いし、玉藻クラスの化け物は置いておいて、服部クラスの暗殺者がやって来られては、双子王女の安否に関わる。


 なので、暇潰しに三ツ鳥居集約所を作る事にした。


 場所は、双子王女と相談の結果、あまり使用されていない内壁の北門に決定。そこに、内壁とくっついた建物を建てる。

 三ツ鳥居は現在、三大国と京と江戸、エルフの里にしか繋がっていないので、数は少ない。かといって、増える度に増築するのも面倒なので、三十個は置ける長細い建物を建てた。

 鰻の寝床のように長いので奥に行くほど出口から遠退くが、猫の街の安全を考えたら致し方ない。出口はひとつしか無いから、検閲は楽になるだろう。

 ただし、いまは日ノ本とエルフの里としか商品の行き来をしていないので、常駐の者を置くのは人件費がもったいない。配達の時間以外は、設置してある通信魔道具で呼び出してもらってから、(かんぬき)を外すようにしておいた。


 建物が完成したら魔道具研究所に走って、巨大なリヤカーに三ツ鳥居を全て積み込む。次元倉庫に入れて運べれば楽なんだろうが、もしも誰かが三ツ鳥居を使った場合どうなるかわからないので、手作業で運ぶ事にしたのだ。

 そうして工業地区を巨大リヤカーを引いて歩いていたら、少なからず歩いている職人見習いの子供に変な目で見られた。どう見ても、王様のやる仕事じゃなかったようだ。


 いいからいいから、仕事に戻りなさい。だから君じゃ無理だからね。ほら? 重いじゃろ? 人を呼んで来なくていいから! みんなも集まらないで!!


 さすがに馬車馬のように働いている王様を見た子供は、憐れんで手伝おうとして来た。なので、感謝の言葉とお菓子をあげたら、ようやく離れて行った。

 若干、お菓子が目当てだったように見えたが、気のせいだろう。



 巨大リヤカーを引いて北門の三ツ鳥居集約所に戻ったわしは、出口から近い壁から、京とエルフの里、三大国と江戸を順番に並べる。ついでに、時間外に誰かが出て来てもいいように、休憩所のテーブルと椅子も作っておいた。

 これでわしの仕事はおしまい。ここは誰も来ないので、サボッていてもバレないだろうと一息ついていたら、東の国用の三ツ鳥居が急に開いた。


「あ~! シラタマちゃん!!」

「猫! あの手紙はなんだ!!」


 三ツ鳥居から出て来たのは、スティナと王のオッサン。わしを見るなり怒鳴るので、耳がキーンとなってしまった。


「ちょ……急になんにゃ~」

「だから、あの手紙の件よ!!」

「どこもかしこも、大わらわだぞ!!」

「もう少し声を小さくしてくれにゃ~」


 密閉空間でぐわぐわん揺らされて大声を出されると、わしの耳が痛い。ひとまず外に連れ出し、テーブルに着かせて二人の質問の答えの前に、前置きをする。


「あんまり言いたくにゃいんだけど、二人を信用してるから、これから喋る内容は秘密にしてくれにゃ?」

「ええ……」

「ああ……」


 二人が頷くと、わしはぶっちゃける。


「向こうの態度が気に食わなかったから、ちょっと嫌がらせしただけにゃ。ハンターギルド設立は、向こうしだいで考えるけど、ハンターは辞めないから心配するにゃ」

「本当!? よかった~……まだ誕生祭の獲物を受け取ってなかったから、気が気でなかったのよ~」


 スティナは自分の心配だけして、解決したからホッとしたようだ。だが、オッサンには他の心配もあるらしい。


「キャットトレインや、バスの販売は……」

「手紙に書いてあったにゃろ? ハンター協会に横流しさえしなければ、今まで通りにゃ。てか、誰も協会に回そうとしてなかったから、関係ないにゃろ」

「うっ……もう少し、余裕が出来てからと思ってな」

「キャットトレインを経由させていれば便利だっただろうに……。かわいそうにゃ事をしたから、わしのポケットマネーでバスを寄付したんだからにゃ。でも、あんにゃ所にあるにゃら先に言っておいてにゃ~」

「たしかに……。皆、往来が楽になるから、すっかり忘れていたんだろうな」

「他所の国に早く卸せと言われたくなかったから匿名にしたのは失敗だったけど、ハンター協会の事を考えていたのはわしだけなのに、あんにゃ事をするにゃんて、ムカつくに決まってるにゃ~」

「手紙で読んだけど、視察の人……酷かったみたいね」

「酷いにゃんてもんじゃないにゃ~。これ、見てくれにゃ~」


 スティナの質問に、わしは誰かに聞かれたら見せようと思っていたフーゴ達の写真を並べる。その写真を見せながら、「にゃ~にゃ~」愚痴り続けてやった。


「うわ~……こんなのがBランクなんて信じられない……」

「にゃ~? 最初、Aランクって言ってたんにゃ~」

「見たところ、白や黒の蟻がいなければ楽勝みたいだな。今度、うちの兵にも経験させてくれないか?」

「軍事演習にゃ~……それは面白そうだにゃ。次回開催の時には、声を掛けてあげるにゃ。てか、オッサンでもそんにゃ事を言い出すんにゃから、ハンターにゃら仕事に飛び付かないのかにゃ?」

「そうね……。私なら、街の危機なら全員参加。危機じゃないなら、白黒以外の相手だけなら行かせるかな?」

「それが妥当だな。軍だけでやってしまうと、ハンターの仕事を奪ってしまう。なんなら、ハンターのほうからもっと食い込ませろと言って来るだろう……な?」

「あはは。あの時は冬で、ハンターの収入が少なかったから無理を言ったんですよ~」


 なんか二人で盛り上がっておるな。ま、確執というほどではなさそうか。聞く限り軍とハンターは、少なからず、持ちつ持たれつの関係みたいじゃ。


「ま、そんにゃわけにゃから、しばらく様子見にゃ。二人もたいして被害はないし、適当に演技でもしておいてくれにゃ」

「ええ……最近ハンター協会でいい噂も聞かないし、その嫌がらせ、乗ってあげるわ」

「そうだな。ペトロニーヌ陛下にも、そのように伝える」

「あ! そうそう。ついでだから、今回の獲物、見させてもらってもいい?」

「それはいいな。巨象の時のような事は真っ平だ。確かめさせてもらおう」


 ハンター協会問題が解決したら、現金な二人はわしに獲物を要求する。なので、目の前にちょうど広い空間が開いていたから、獲物を取り出してやった。


「「アホか!!」」


 白い巨象より倍も大きい白タイを見た二人は、あわあわする事もなく、仲良く同時ツッコミ。


「にゃんで怒鳴るんにゃ~」

「前より大きな物なんて出したら、みんな驚くでしょ!」

「ただでさえ、巨象も安く買って申し訳なく思っているんだぞ! こんなもん買えるか!!」

「ま、売る気はないけどにゃ」

「「だったら見せるな!!」」


 ちょっとした冗談なのに、二人はうるさいのう。会った時から怒鳴っておるけど、今日だけで喉が潰れるんじゃなかろうか?


 食いさしを誕生祭に出すつもりの無いわしは、白タイをしまって、代わりに20メートルはある白クワガタを取り出す。


「ちょっとダメージは酷いけど、これでどうかにゃ?」

「クワガタ……前に言ってたヤツね。これを見せられると思っていたのに、ホント、シラタマちゃんは驚かせてくれるわ」

「少し大きいが、用意した予算なでなんとかなりそうだ。これを貰おう」

「まいどありにゃ~」


 白クワガタは、例の如く誕生祭までわしが保管し、その場で出されることとなった。



 心配事が解決し、商談が上手くいくと二人は帰るのかと思ったが、足がないんだとか……。それも、わしを頼りに、無理矢理三ツ鳥居からやって来たようだ……


 仕事が立て込んでいるから飛行機で送ってくれと言われてもしらんがな。てか、王様を足に使うって、ハンター協会のフーゴより酷くね?

 わしの苦情は「いや~」とか言いながら、頭を掻くだけで受け流そうとしやがる。ずうずうしく、タダ飯まで食らうし……


 双子王女も二人の味方をするので……てか、わしが暇そうにしているから、送って行けと言う始末。

 しかし、飛行で行って来いするには今日中に帰れなくなりそうと言ったら、わしの襟元を掴んで「壁ドーン!」。壁に押し付けられた。


「「どうせ、三ツ鳥居みたいな魔法を持っているんでしょ? 黙っていてあげるから、送ってあげなさい」」


 からの、耳元でシンクロ攻撃で脅して来る始末。わしの転移魔法は、双子王女にはバレバレだったようだ。

 なんでも、わしが新婚旅行で進んでは戻りを繰り返していたから怪しんでいて、さっちゃん達の黒い森ツアーで怪しんでいて、三ツ鳥居を見て確信したらしい……やはり、東の国のスパイで間違いなさそうだ。


 双子王女の「壁ドーン!」が怖かった事もあるが、わしも東の国に顔を出す用事があった事を思い出したので、今回は大目に見て送ってやる。少しだけやる事があったので、オッサン達を三十分ほど待たせたら東の国に飛び立った。



 飛行機をぶっ飛ばせば、二時間も掛からずに東の国王都だ。貴族専用門、目の前に降りて、門兵にオッサンの顔を見せたら偽物と疑われていた。

 外出の予定を聞いていなかったらしいが、顔パスで入れてもいいと思うんじゃけど……。わしは猫パスで入れてもらえるのに……

 オッサンはやや納得のいかない顔をしていたが、新兵だったからと強がっていた。スティナでも顔を覚えられていたから、新兵じゃないと思うんじゃけど……


 とりあえず、無事、王都に入ったら、オッサンの権力で門兵の交代用に用意された馬車に乗せてもらった。たぶん、顔を覚えてくれていなかった腹いせだと思う。走って帰れとか言ってたし……

 そうして馬車は進み、スティナはハンターギルドで降り、わしは商業ギルドで降りる。オッサンを乗せた馬車が走り出した中、商業ギルドに入ったのだが、問題勃発。


「「「「「ハンター辞めないで~~~!!」」」」」


 どうやら商人達の間では「猫、ハンター辞めるってよ」と、噂が広がっていたようだ。ここの王都では口には出さないが、白い生き物を狩って来るなら、白猫しかいないと商人達は思っていたらしい。


「にゃ!? どこ触ってるにゃ! どさくさ紛れて服に手を入れるにゃ! いにゃ~~~ん!!」


 どうやら猫を撫でたい変態さんもいたらしく、商人達に押し潰されたこのチャンスに、わしを撫でまくっていたっぽい。


 こうしてわしは、着の身着のまま匍匐(ほふく)前進で抜け出し、エンマに撫でられながらレコードの商談をして、猫の国に帰るのであったとさ。


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