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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~  作者: ma-no
第五章 ハンター編其の三 旅に出るにゃ~
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125 サービスってなんにゃ?


 ふぅ。ローザ親子に撫で回されて、また毛並みが乱れてしまったわい。家に転移したものの、まだリータ達は帰って来ておらんのか。しかし、この家……こんなに広かったか?


 ローザの街から帰ったわしは、静まり返る家に、一人で暮らした森の我が家を思い出し、寂しさを思い出す。


 いつもリータといたから寂しさを感じなかったのか……。助けたつもりが、わしが助けられていたのかもしれないな。今日は人型で寝てやるか?

 いや、朝のように、あんなことやそんなことをされたら堪らん。もう少し様子をみよう。二人がいつでも入れるように、お風呂の準備だけしておくか。



 わしはお風呂の準備をし、次元倉庫にあるエミリの作った料理を確認してリータとメイバイの帰りを待つ。しばらくして、玄関に人の気配を感じ、走って迎えに行く。


「ただいま戻りました~」

「ただいまニャー」

「おかえりにゃ~」

「え? どうしたのですか?」

「にゃ?」

「なんだか嬉しそうです」

「き、気のせいにゃ」


 わしは嬉しそうな顔をしていたのか? さっきの行動も思い返してみると、飼い猫みたいじゃな。いや、飼い犬? どっちにしてもペットじゃ……


「シラタマ殿は、私達がいなくて寂しかったニャ!」

「そ、そんにゃことないにゃ!」

「焦っているニャー」

「ホントにゃ~」

「フフフ。わかりました」


 リータは意味深な笑い方じゃな。寂しかったのはバレバレっぽい。恥ずかしいし話題を変えよう。


「お風呂の準備が出来てるから入るといいにゃ」

「はい」

「ありがとニャー」

「わしは夕食の準備を……にゃ!?」

「今日は一緒に入りましょう」

「シラタマ殿成分の補給ニャー」


 だからその成分は何? みんな使ってるけど、そんな成分、存在するの?



 わしはがっしり抱き抱えられ、二人に優しく揉み洗いされた。朝の恥ずかしい出来事もあり、断固猫型だ。綺麗に洗われると湯船に浸かり、二人の体を洗う姿を眺める。


 うん。二人とも怪我は無いみたいじゃな。リータに聞いてはいたが、心配な事にかわりない。これは二人の体調管理で、そういう視線じゃない。ホンマホンマ。


 ほどなくして二人も湯船に浸かり、わしを交代で抱き抱える。その時、メイバイがわしを脚で挟んで受け取り、ニヤニヤと高く上げた。


「さっき見てたニャー?」

「なにをにゃ?」

「私達の体ニャ。やっと目覚めたニャー!」

「変なこと言うにゃ~。あと、脚で持つにゃ~」

「私は胸が無いから、脚でサービスしてみたニャ」

「どんにゃサービスにゃ!」

「シラタマ殿はエンマさんの脚を見ていたと聞いたから、好きだと思ったニャー」


 朝のあれは、サービスじゃったのか? 踏まれているだけかと思っていた。そっちの趣味は……無いはずじゃ! ホンマホンマ。


「メイバイさん。はしたないですよ。シラタマさんはこうやって抱き抱えられるのが好きなんですよ」


 嫌いじゃないんじゃけど、恥ずかしい。朝みたいに、顔に胸を押し付けないだけマシか。いまやられたらナマじゃから、わしの息子さんが反応してしまうかもしれない。


「それじゃあ、サービスになってないニャ。貸すニャ-」

「にゃ!? 噛むにゃ~。ゴロゴロ~」

「気持ち良さそうニャー」


 朝、いたるところを噛まれていたのもサービスじゃったんか!? 踏んだり、噛んだり、メイバイはSなのか? しかし、さっきから言ってるサービスとはいったい……


「つぎ、私です! こうやって揉むように撫で回すのが好きなんですよ」

「にゃ!? そこは……にゃ……ゴロゴロ~」

「気持ち良いですか~?」


 テ、テクニシャン……。至福のマッサージじゃが、下のほうはやめて欲しい。息子よ。いまは我慢するんじゃ! 平常心、平常心。わしは猫、わしは猫……


「あ、また固く……」

「にゃ! 明日は二人ともにゃにするにゃ? 明後日は仕事をするから、出来ればゆっくり休んで欲しいにゃ~」


 うぅ。少女二人に弄ばれた。息子もわしの言うことを聞かないし……話を逸らさないと猫じゃなく、狼になってしまいそうじゃ。


「そうですね。体調管理もしないといけませんね」

「明日は、一日中サービスするニャー」

「さっきから言ってる、そのサービスってなんにゃ?」

「私達はシラタマさんに返せる物が無いので、どうしたらいいかわからなくて……メイバイさんがいい方法があると、実践しています」

「私の主様が好きだったサービスをしているニャ! 主様は踏まれたり噛まれるのが好きだったニャー」


 ドMか!! メイバイの前の主人はいい人だと思っておったが、その為に奴隷を買っていたんじゃなかろうか? 数も多かったし、猫耳も趣味じゃろう……じゃが、二人の気持ちは嬉しい。


「そんにゃ事しなくても、二人にはいっぱいもらってるにゃ。いつも一緒にいてくれてありがとうにゃ」

「シラタマさん……」

「シラタマ殿……」

「「大好き(ニャ)!」」

「にゃ! にゃ!! ゴロゴロ~」


 二人は嬉しそうに抱きつく……だけでなく、押し付けるは踏むは噛むはの大騒ぎ。そこに突如、風呂場の扉が、ガラガラと開いた。


「あら、お楽しみ中だった?」

「やっぱり脚が好みだったのですね」

「インスピレーションが湧いて来た~!」

「猫と人が……どういうこと!?」


 スティナ、エンマ、フレヤのアダルトスリーに加え、戸惑うガウリカが現れた。


「私達もまぜなさ~い!」

「にゃ!? やめるにゃ~!! ゴロゴロ~」

「何この状況? 誰か説明して~!」


 その後、アダルトスリーにも、めちゃくちゃにされた。それはもうめちゃくちゃに……。めちゃくちゃにされたわしだったが、リータとメイバイに救出されて、風呂場をあとにするのであった。

 わしの息子さんはどうなったかと言うと……聞かないでくれ。


 うぅぅ……アダルトスリーにまでサービスされてしまった。ありがとうございました! って、冗談ですがな~。



 お風呂から上がったわし達は、居間で卓を囲む。その中で一人、わしの存在に納得のいっていない人物がいる。そう。ガウリカだ。


「猫が猫になった!」

「まだ言ってるにゃ? 元の姿から変身しただけにゃ」


 なかなか納得しないガウリカに、エンマから順にアダルトスリーが声を掛ける。


「ガウリカさんは、シラタマさんが猫になるのを見るのは初めてでしたか」

「みんなは何も思わないのですか?」

「かわいいから、いいんじゃない?」

「そうですね。このフォルム、素晴らしいです」

「もう諦めているわ」


 フレヤとエンマはいいとして、スティナは何を諦めておるんじゃ?


「シラタマ殿は、ご先祖様の再来ニャー」

「シラタマさんは、シラタマさんです」


 メイバイは意味が伝わないと思うぞ? リータはありがとう! ガウリカはこの中で誰の意見を聞くのかな?


「はぁ。わかりました」

「ゴク……」

「諦めます」


 だから何をじゃ~! スティナの意見に賛同するとは……


「それより、ガウリカはわしの家に、にゃんの用だったにゃ?」

「そちらのエンマさんに連れて来られた」

「エンマと知り合いだったにゃ?」

「明後日、私の故郷に仕入に行くだろ? それで商業ギルドで仕入れの相談をしに行ったんだ」

「聞けば女王陛下の案件で、シラタマさんが関係しているとの事でしたので、相談したい事もありますし、お連れしました」


 エンマの相談か……。商業ギルドのサブマスの相談事ってのは聞くのが怖いな。前に馬車を作った時も、職人をこき使っていたしなぁ。


「何か変な事を考えていませんか?」

「にゃにも考えてないにゃ~」


 心を読むスキルも持っているのか。さすがサブマスじゃ。


「相談ってなんにゃ?」

「女王陛下の誕生祭に贈る品を、王陛下から頼まれていまして、遠い南の小国なら珍しい物が手に入るのではと、頼みに来ました」


 エンマの頼み事を聞いていたスティナは、血相を変えて割り込む。


「エンマ、ずる~い! シラタマちゃん。ハンターギルドでも頼まれているの。私にもお願い!」

「えっと~。お断りしたいにゃ」

「お願いします。なんなら踏んで差し上げます」

「いくらでも挟んであげるから~」


 それでわしの心が揺らぐと思っているのか? 微動だにしないぞ。ホンマホンマ。


「冗談ですよ」

「冗談に決まっているでしょ」


 いや、本気の目じゃった! リータとメイバイも本気で怒っている目じゃ。わしが求めて言ったんじゃないから、エンマとスティナを睨んでくれんかのう。


「正式な依頼として受けてくれませんか?」

「ハンターギルドもよ」

「そうは言っても珍しい物にゃんて、わしにはわからないにゃ~」

「そこはガウリカさんに目利きしてもらえれば、なんとかなるかと……」

「あたしですか?」


 急にエンマに話を振られたガウリカは、自分の顔を指差す。


「ガウリカさんは、元々行商をしていたでしょう? コーヒー豆でもこちらでは珍しい物なので、そちらの国で高価な物を、シラタマさんと協同依頼として探してください」

「この猫と、仕入に行くついでですからかまいませんが……依頼料は?」

「もちろん払わせていただきます」

「やるよ! 猫!!」


 現金なガウリカはノータイムで仕事を受けて、わしの両肩を掴んで揺する。


「わしの意見も聞くにゃ~!」

「ハンターギルドは白の獲物でお願いね! 指定依頼で出しておくわ」

「そんにゃのすぐに見付からないにゃ~!」

「いいな~。私にも珍しい生地や服、持って帰って来てね」


 わしの意見は聞く耳持たず。スティナに続いて、フレヤまでお土産を催促して来やがった。


「これで懸案事項も解決だわ」

「そうですね」

「勝手に決めるにゃ~!」

「よかったよかった。飲みましょう!」

「「「「かんぱ~い!」」」」

「聞くにゃ~~~!!」


 こうしてわしは、新たな仕事を押し付けられて、朝を迎えるのであった。



「またこいつらは……」

「遅くまで飲んでいたみたいですね」

「酒臭いニャー」


 わし達が寝室から降りて来ると、ガウリカを加えたアダルトフォーは居間で屍と化していた。


「こいつらは放っておいて朝食にするにゃ」

「わかりました」

「美味しい料理を作るニャー」


 ダイニングで朝食を済ませると、二人には家の掃除を頼んで、わしは庭の隅に移動する。コーヒーの薫りは皆に不評だったのを思い出し、庭の隅に離れを建ててみた。


 こんなもんかな? 小さいからさしずめ茶室じゃな。四畳半のこじんまりした茶室でコーヒーってのもおかしなもんじゃ。茶道なんてした事もないから、まぁいいか。せっかくだし、新築祝いに一杯、()てるかのう。



「猫君……うわ! 何この匂い?」


 部屋の中をコーヒーの薫りが立ち込め、至福の時間を過ごしていると、フレヤが引き戸を開けて薫りに驚き、続いてアダルトフォーの残りのメンバーも新築の茶室に入って来た。


「これがコーヒーの薫りですか」

「意外といい匂いかも?」

「にゃ!? スティナはいけるにゃ? コーヒー、飲んでみるかにゃ?」

「ええ。いただくわ」


 わしは人数分のコーヒーを()れて、目の前に差し出す。皆が飲む姿を見ながら感想を聞くと、フレヤはミルクと砂糖、エンマが砂糖のみ、スティナとガウリカはブラックとなった。


「初めての味だけどいけるわね」

「にゃ~? 露店ではみんにゃ匂いを敬遠して飲もうとしないにゃ。その上、単価が高くなるから金持ちしか買えないにゃ」


 スティナの美味しそうな感想を聞きながら愚痴を言っていたら、エンマが解決策を模索してくれる。


「販売するには、店舗で出すしかないですね」

「まぁわしはコーヒー豆が安く手に入れば、それでいいんにゃけどにゃ~」

「これなら売れると思うのですが、商品がこれだけだと店舗販売も難しいですね」

「それにゃら、アンテナショップにするってのもあるんにゃけど……」

「アンテナショップとはなんですか?」

「地方の産出品を置く店にゃ。そこで売れた物が徐々に民衆に広まって、輸出や観光の役に立ち、外貨獲得の布石になるにゃ。国の広告をするお店と言ったほうがわかりやすいかにゃ?」

「なるほど……面白い発想ですね」


 わしとエンマが商売の話に花を咲かせていると、ガウリカが難しい顔をしてわしを指差す。


「みんな普通に難しい話しているけど、この猫はいったい何者なんですか?」

「「「猫だにゃ~」」」


 いや、それ……わしのセリフ……やっぱり、馬鹿にされておるのか?


 もちろんそんな答えでガウリカは納得せず、わしもセリフを取られて納得できるわけがなかったとさ。


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