描く理由
次の日、学校に着くと、なぜかいきなり職員室に呼び出された。
「さて、なぜ呼び出されたかわかるか?」
俺の担任であり、美術教師である大ちゃん(本名は大悟)が、俺に呼び出された理由を尋ねてくる。
ちなみに、あだ名ばかり呼んでいるせいで、名字は覚えていない。
「まったくわかりません」
「これはなんだ?」
「げっ」
それは、俺が昨日美術室で書いたリンゴの絵だった。
しまった、持って帰るの忘れてた。
「今日の朝、学校に電話がかかってきてな。
『昨日の夜遅くに、校舎の明かりがついていた』ってな。
それで美術室を調べてたら、この絵があったってわけだ」
「いや、それは、その……昨日の放課後に-----」
「昨日俺が最後に戸締りしたときには、こんなものなかったぞ」
ぐう……
「こんな個性的な爆弾の絵を描くのはお前くらいしかいない」
リンゴだよ。
「昨日の深夜、学校に忍び込んだだろ」
だめだ、完全にばれてる。
こうなったら……。
「はい、昨日夜遅くに校舎の中に入りました。
ちなみに、マサルとトモキも一緒でした」
「わかった、あいつらもあとで呼び出しておく」
ウハハハハハ!よくも昨日は俺のこと置いて帰りやがったな。
てめえらも道連れだ!
俺はしばらく大ちゃんの説教を受け、10分ほどしてやっと解放される。
「もう忍び込んだりするなよ」
「はーい」
そういや、絵を描くの大ちゃんに頼んでみるか。
美術教師だし、すぐ終わせてしまうはずだ。
「なあ大ちゃん」
「教師をあだ名で呼ぶなって何度言えばわかる」
「実は描いてほしい絵があるんだけど」
「めずらしい頼みだな。
どんな絵だ?」
「ほとんど完成してるんだけど、仕上げをやってほしくて。
美術室にある、二人の女の子が笑いあってる絵で……」
「……」
「大ちゃん?」
「え!?あ、ああ、ちょっと最近やることが多いから少し無理かもしれん!!」
大ちゃんはかなり慌てた様子で、急に書類などをいじり始める。
そんなに忙しいのか。
じゃあ無理に頼むのも悪いな。
「失礼しました~」
そういって職員室から出ていこうとすると、数学教師の山中先生に声をかけられる。
「ナオくん、昨日出した宿題のプリントはちゃんとやったか?」
「やつは大空へと羽ばたいて行きましたよ」
「やってないな?」
こうして、また10分ほど説教を受けるはめになった。
ーーーーーー
昼休みになり、俺は一人で美術室へと向かう、
本当は絵の得意なマサルを連れて行って、絵を描いてもらおうと思ったが、大ちゃんに呼び出しをくらっていた。
美術室につくが、少女の霊、トモミは見当たらない。
昨日帰るときに聞いた話では、昼間は姿を現すことができないらしい。
確かに、昼間に出る幽霊とか聞いたことないもんな。
俺一人だとできることがないので、しかたなく教室に帰る。
教室に戻ると、マサルとトモキも教室に戻ってきていた。
「おいナオ!お前よくも大ちゃんにチクりやがったな」
「お前らが置いていったのが悪い」
「そういえば昨日すごい大声出してたけど、本当に幽霊でも見たの?」
「あ~実は-----」
マサルからの質問に、俺は昨日あったことをすべて話す。
幽霊にあったなどと言えば、普通は絶対に信じない。
笑われるかバカにされるかだ。
けどこいつらは違う。
「まじか!本当に見たのかよ!!」
「すごいすごい!僕も見てみたい!!」
この通り、何の疑いもなく信じる大バカだ。
「でも気になるな~、なんで絵を描いてほしいんだろ?」
俺も理由は聞かなかったが、確かに気にはなる。
「なんなら今日の夜、死んだこととかには触れないように聞いてみるか。
今日も夜十時、校門前に集合な」
「あ、ごめん。
僕昨日のことが親にばれたから、監視が厳しくなりそうで……」
「俺も」
なんだよ、マサルがこれないんじゃ絵が書けねえじゃんか。
しかたない、今日は理由を聞くだけにしとくか。
この三人は、昨日忍び込んで怒られたことをすっかり忘れています。