4、最低な人間は自分だったんだ
心がお婆ちゃんのおかげで、ほくほく温まったのにそれを壊すような青年がやって来た。
年は、三十代ぐらいだろうか。髪は、ぼさぼさでニートですって言わんばかりの風貌だった。
その青年は、何やら俺(自販機)の下を見て手を入れだした。
うわっ、こいつ……。
何してんだよ! 金なんかねぇよ! と、言ってやりたいのだが自販機になる前の自分を思い出し口を慎んだ。
うっ……。自販機から見るとなんか滑稽な光景だな。
なんか、嫌な気分になる。でも、人のこと言えないしな。
すると、おつりが出てくる場に手をあて、彼の瞳がキラキラと輝きだした。
「うわっ! 三四〇円あんじゃん! 今日の晩御飯、これで凌げる~。」
おい! それは、さっきの婆ちゃんが忘れていったお釣りじゃないのか?
もしかしたら、戻ってくるかもしれない。
置いとけよ!
そんな言葉が聞こえるはずもなく、彼は、ルンルン気分で歩き出していった。
くそ……。
あの婆ちゃんの金なのに……。
『……お前も一緒だ。』
え? なんだこれ? 底から震えるように低い声が響き渡る。
でも、どこか聞き覚えのある声だった。
「誰だ!?」
『お前も所詮、あの男と同類なんだよ。あのお婆さんのことを知ってしまっていたから、そんな気持ちになっているだけだ。いつものお前なら喜んで金を取っていたんじゃないか?』
違う……。いや、違わない………。
きっと、俺ならあの金を取って自分に使っている。
人間なんてと思っているのだから……。
くそ……。
「お前は、誰なんだよ!」
だが、その言葉が聞こえなかったのか二度と聞こえることはなかった。
俺は……………最低な人間なのか…………………………?