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自動販売機の俺  作者: 黒猫
3/8

3、ありがとうって最高の言葉だな

あれから三十分後、一人のお婆ちゃんがやって来た。

腰もかなり曲がっており歩くのも大変そうなくらいだ。

そんなお婆ちゃんが俺(自販機)の前に来て、何やら上の方に手を向けだした。

「……わたしゃ、お茶が飲みたいんだけどね……腰が痛くてかなわんよ……。」

いや、婆ちゃん店の中で買ってよ!

そこにお店あるから。

そう叫んでも婆ちゃんの耳に届くはずがなく……。

ついには、疲れ果てたのか俺(自販機)の前に座り込んでしまった。

「……はぁ……老人ってことを認めたくないから買うのを諦められないのよねぇ……でも、諦めるしかないかねぇ……。上のボタンが押せないのは、しょうがないこと……。小さいお茶を買ってもいいけどなんだかねぇ。」

なんか、だんだん婆ちゃんが可哀想に思えてきた。

下の小さいお茶じゃダメなのね。

しょんぼりしているお婆さん。でも、彼女の力では上のボタンは押せないだろう。

だから、誰かに押してもらうのが一番なんだけど……。

プライド高そうだからな……。

さて、どうするか……。

「………お店に入るのはめんどくさいね。飲み物を買うためだけに入りたくないよわたしゃ。」

なるほど。なら、誰かが押してくれたら解決しそうだな。

よし、考えろ。ない頭で考えろ。今、何をすれば人がやって来てくれるか……。

そう言えば、これって喋る自販機だよな?

金を入れたら確か喋るんだよ。

でも、俺が自販機だから自分の体を……重いけど………揺らせば……壊れて……。

『いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。お飲み物はどうなさいますか? ありがとうございました。ありがとうございました。』

来た! よし、誰かこの狂った自販機を直すために現れろ!

ドンドンドンドンドン!

この声が永遠と流れる中、お婆ちゃんはびっくりして立ち上がりずっと俺(自販機)のことを見ていた。

すると、店の方から一人の若い従業員らしき人が出て来た。

そして、この声に気付いたのか走ってやって来る。

「どうしました?」

「何か、自販機が壊れちゃったみたいなのよ。」

どれどれと、青年が覗き込んだ隙に揺れるのを止めた。

なんとか収まった。

「あれ? 僕が来たら収まっちゃったな。お婆ちゃん、何か欲しい物でもあったんじゃないのかい?」

「あ、あぁ、わたしゃ、上のお茶が欲しいんだよ。」

その言葉を聞いて、青年はもう一度お金を入れて買ってくれた。

それを、お婆ちゃんに渡す。

すごく嬉しそうだ。

良かった。婆ちゃん喜んでる。

兄ちゃんサンキュー! と、心の中で思いながら彼を見送った。

すると、婆ちゃんがまだ俺(自販機)のことを見ていた。

あれ? 何かやばいことやっちゃった?

次の瞬間、自販機なのに婆ちゃんに撫でられた。

「あんたが呼んでくれたのかい? 私の言葉聞いてたんだね。ありがとう。」

そう言って、曲がる腰を手で擦りながら歩いていってしまった。

……褒められた? 撫でられた? 自販機なのに?

人間なんて嫌いだったのに……お礼を言われただけで何でこんなに心が高鳴るんだろう。

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