忠犬
僕は目も開けられないほど眩しい光の中にいた、そして頭の中に声が響いてくる。
声が聞いてくる、覚えていますか?
僕は聞く、何を?
ここに来る前のことを?覚えてなければ、思い出して、あなたなら思い出せるはず。
言われた通りに思い出す。すると微かに記憶が浮かんでくる。
ある暑い夏の日、僕は女の子と用事を済ませての帰り道であった。
彼女が初めて、母親に用事を頼まれ行くとの事で僕はお供で付いて行くことになった。
彼女の母親は心配そうに言う、大丈夫?やっぱりやめようかと。
彼女は言う、大丈夫よ私お姉ちゃんになるんだから、弟が生まれる前に私がお姉ちゃんらしいことをしないとね。
彼女の母は妊娠していて、医者からは今回は安定していないので安静にしててくださいと言われていた。彼女の祖母や夫が買い物などの手伝いをしていたのだが、今日は誰もいなかったので彼女が代わりに用事を済ませると勝手出たのである。
その用事と言うのが近くの曽祖母に昼食を届けると言うものであった。
曽祖母は足が弱っている為、祖母が世話をしていたのだが祖母が今日は仕事の為行けないと話していたのを聞き彼女が志願したのである。彼女の母と祖母は反対したのだが彼女の弟が生まれてから自慢したいのと譲らなかった為、二人とも折れ彼女に頼むことにしたのである。
彼女が出かける時、彼女の母が僕に何かあったら彼女を守ってくれと言われたので僕は勢いよく返事をしたら彼女の母親は安心して笑っていた。
彼女の用事は順調に進み、曽祖母に偉いねと言われお菓子をもらた帰り道に大きな交差点がある。彼女の用事の最大の難関であったが彼女は人の言うことを良く聞く子だったので青になってから念入りに左右を確認し、横断歩道を渡っていたがそこにお酒を飲んだトラックが猛スピードで突入してきた、僕はいち早く気づき彼女を突き飛ばし彼女を助けたが僕は轢かれた。薄れゆく意識の中で通行人が彼女は大丈夫と言っていた。僕は彼女の母との約束を守れて満足だった。こっちの犬はダメだと神父が言う。飼い主を助ける忠犬に神の慈悲をと言った所で僕の意識は途絶えた。