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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の躊躇
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ミミカカ、日本男子を追い掛ける

 アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ!


「テメェぶち殺してやるぁゴラァ!」

 町に入ったヤマトーさんは、男達を見つけたら一瞬で殺した!

 ホントに一瞬で!


「お前ら下賤如きがぁあああああっ!呪われろ!」

 まずまんなかにいた男が、血をぶち撒けて死んだ!

 胸がまっくらになったと思ったらもう死んでた!

 なにが起こったのかぜんぜんわかんない!


「引き裂く!喚け!」

 まただ!

 すぐ側にいるヤマトーさんが腕を振ったら、男が血をぶち撒けた!

 おなかがまっくらになったと思ったらまた!

 腸がはみ出てたから、影の中でおなかを裂かれたみたい!


「邪魔だ!弁えろ!」

 そんで蹴っ飛ばされた!

 人1人が、まるでゴミみたいに吹っ飛んでく!


「懺悔しろ!散華しろ!目障りだ!抉り取る!」

 うわぁ!

 男の顔が!

 顔がまっくらになったってことは!


 べちゃって音がしたから見ちゃった!

 ………男の顔が捨てられてた!

 あの影の中の男には、もう顔がないんだ!


「お前達がこの世に有った痕跡すら残さん!消え失せろォ!」

 空を飛んだヤマトーさんが、めちゃくちゃに光った!

 ――――――ッ!


 ほかになにも聞こえなくなった!

 ほかになにも見えなくなった!

 やっと周りのことがわかるようになったら、もう男たちはどこにもいなかった!


「何のつもりか知らんがその喧嘩買ったぞゴミ共!蹂躙戦だ!シャーシャ!ナーナ!ミミカカ!グララ!神の権威を汚す愚か者共を1人残らず根絶やしにしろ!」

 そしてヤマトーさんはすごい速さで飛んでった!


 アタシの目がおかしいの?

 ヤマトーさんが早すぎて、目で追えないから?

 ヤマトーさんの姿がいっぱい見えた?


 な、なにアレ?

 なんだったの?


 これが本気になったヤマトーさん?

 あぁ、やっとわかった。

 アタシを怒ったときでも、ホントにコワイと思ったけど、アレは本気じゃなかった!

 怒ったフリをしてただけだったんだ。




「………」

「………」

「………」

 アタシ達はだまったままだった。


「早く行こう!ボク達も早く行かないと!」

 ナーナはめずらしく怒った顔してるし。

「ヤマトーさんとナーナは、なんでそんなに怒ってんの?」

 よくわかんなかったから聞いてみる。


「さっきの人たち、ヒノマーを持ってたんだよ!」

「ヒノマー?」

「んー、そうだなぁ………ボク達ニホコクミの証というか」


 ニホコクミはすごい神様の、テノーヘカ様に仕える戦士だ。

 それの証。

「成人したときもらえる首飾りみたいなもん?」


 村では1人前って認められたら首飾りがもらえた。

 アタシの首飾りは、キレイな木の実に紐を通したやつだった。

 しばらくしたら、木の実の中から虫が出てきたから捨てちゃったけど。


「それが近いかな?」

「それってどんなやつなの?」

「白い布に赤い丸が書いてあるんだよ」

「………お兄ちゃんの旗?」

「もしかして………これの事か!」


 グララが言ったとおりの布を取り出した。

 あ、前にグララがヤマトーさんからもらってたやつだ。

 渡すときになんかすごい大切って言ってたもんな。

 ………なんでそんな大切なものをグララなんかに渡したんだろ?


「さっきの人たちは、ニホコクミでもない癖に、勝手にヒノマーを作って持ってたんだ!到底許せないよ」

 ナーナはプリプリ怒ってる。

「ちょっと待って?なんでさっきのやつらが、ニホコクミのヒノマー?のこと知ってたの?」

 あんなやつらがニホコクミなわけないし。

 でも、その答えはすぐにわかった。


「ぬ!あやつらは!」

「………また来た」

「今年の町は、黒色が流行色だったりしてね」

「なんなのコイツら?」


 また黒い服着た男がぞろぞろ出てきた。

 汚いヒノマーまで持ってる。

「おい、お前ら!」

 男たちが話し掛けてきた。


「なによ!」

 ちょっと大きな声が出た。

 こっちが女子供だけの4人だからか、さっき殺されたやつらよりもニヤニヤしてたのがムカついたから。


「命が惜しかったら俺たちの言うことを聞け!」

「なんでアンタたちみたいなのの言うこと聞かなきゃいけないの!」

「へ!お前ら俺たちが誰だかわかってねぇみてぇだな!」

「これを見ろ!」

 男たちが汚いヒノマーを見せてきた。


「俺たちはなぁ、この町の兵士ごと領主さまを殺したんだぞ?死にたくなけりゃ」

「………あぁ」

 シャーシャがわかったみたいだ。

 アタシもわかった。


「こやつらさては、ヤマトー殿のふりをしておるのだな!」

「ん?どういうこと?」

 ナーナだけわかってない。

 前に町にいたときはいっしょじゃなかったしな。


「この町の領主、子供とか女の人にひどいことするやつだったから、ヤマトーさんが殺したの」

「そのときヤマトー殿は旗を掲げながら、領主殿を見せしめに街中連れ回しておったからな!それを見たか聞いたかしておったのだろう!」

「それでコイツらがヒノマーを知ってたのか」


「オイ!てめぇら俺たちがこわくねぇのか!」

 無視して話してるアタシたちにキレたみたい。

 男たちが怒鳴ってる。


 コワイ?

 そんなん、ぜんぜん?

 アタシがなんどヤマトーさんに怒られたと思ってんの?

 コワイとしたら、ヤマトーさんのいうこと聞かなかったときの方がコワイ!


 っていうかこんなやつら、アタシの魔法で瞬殺だし!

 アタシの魔法はヤマトーさんの魔法をマネしてんだし!

 シャーシャをバカにしたから怒られたけど、アタシの魔法は強いんだ!


 光の槍でコイツら殺す!

 魔法には名前をつけるのが大事だ!

 魔法はイメージが大事だから!

 名前がついてたらイメージしやすくなるって、ヤマトーさんが言ってたし、たぶんそう!

 くらえ!


「アーパーラリパッパコーセ!」

 光の槍の魔法で男の胸を一突きにする!

 ちなみに魔法の名前はヤマトーさんにつけてもらった。

 光の魔法の名前はコーセっていうみたい。


「周囲の者は疎か、自分の目すら焼く様な威力のコーセだ。この名こそが相応しかろう」

 アーパーラリパッパはなんか、すごいとか、そういう意味の言葉っぽい感じ?

「アーパーラリパッパって………お兄さん………」

 ナーナがなんかおどろいた顔してたけど、あんまりいい言葉じゃないっぽい?

 悪魔とか、地獄とか、呪いとか、破滅とか?

 でもそういう感じでおおげさ?な方がすごいっぽいし! 


「な、アイツ、弓背負ってんのに魔法使いなのかよ!」

 仲間がやられて逆にアタシにビビってる男たち!

「ボクも許さないよ!」

 ナーナも火でできた鳥を飛ばして男を殺した!

 器用なんだな、ナーナ!


「獣人のガキまで魔法を!?」

「………死ね、お兄ちゃんの敵!」

「管制射撃準備ヨシであります!」

「………消えろ!」


 バタ。

 魔法を見ていちいちおどろいてた男たちだけど、今度は誰もしゃべらなかった。

 シャーシャが出したまっくらな影が一瞬で男たちを倒した。


「うわぁ………これがシャーシャちゃんの本気か。死の体現そのもの………正にそのとおりだね」

「ぬ!これが妹殿の魔法か!………末恐ろしいのだ!」

 ヤマトーさんがアタシを怒った理由がわかった。

 シャーシャはアタシがケンカを売っていい相手じゃないわ。

 超強い。




 男たちはアタシたちの敵じゃなかった。

 いっしゅんでやっつけた。

 グララはなにもしなかったけど。


「ヒノマーを持ってるのも許せないけど、単純にこの人たちはほっておいちゃダメだね。お兄さんが怒ったのはそれもあるのか」

「ん?どういうことなの、ナーナ?」

 なんかナーナが1人でうんうんなっとくしてる。


「この人たちが好き勝手したら、困るのは住んでる人だよ。お兄さんはヒーロだから、力の弱い人がいじめられてるのを許せないんだろうね」

「あー………」

 そうだ。


 ヤマトーさんは怒るとすごいコワイ。

 この町の兵士は、ヤマトーさんがバラバラにして殺した。

 さっきもあの血まみれにする影の魔法で殺した。

 あの影の魔法は、精霊が見えるアタシでも、なんなのかぜんぜんわかんなかった。

 遠くにいる相手に影ができたと思ったら、いきなり血まみれにしちゃう、とにかくコワイ魔法だった。


 でも。

 ヤマトーさんはホントはやさしいんだ。

 こどもたちがいじめられたり。

 シャーシャがいじめられたり。

 町に住んでる人がいじめられたり。

 ヤマトーさんが怒るのは、いつもだれかがいじめられたときだ。


「うん!町の人たちを助けるために、ニセモノたちを倒そう!」

 アタシもヤマトーさんみたいなニホコクミになるんだ!

 みんなを助けられる立派な戦士!


 ピカッ!

 ズドーン!

「うわ!」

「な、何なのだ!」


 なんかすごい音がして、地面が揺れたんだけど!

 近くで雷が落ちたみたいな!

 うわ、心臓バクバクいってるし!


「お兄さんだろうね、こんなことできるのは」

「肯定であります、ナーナ殿!」

 お、さっきもしゃべってたけどユ・カッツェだ。

 立派なニホコクミになったら、持ってるシトーがしゃべるようになるらしい。

 がんばってたら、アタシのサッキもしゃべるようになるかな?


「霊探に巨大な反応アリであります!この反応はヤマトー殿のものであります!」

「うん、やっぱりね」

「七色ネリキコーセを使用したと思われるであります!」


 七色ネリキコーセ。

 七生マホショージョのズィーベンレーベンとヤマトーさんが使うコーセの魔法。

 アタシのアーパーラリパッパコーセと同じコーセだけどぜんぜんちがう。

 アタシの光は白いけど、七色ネリキコーセは七色だった。


「ヤマトーさんの七色ネリキコーセって、ズィーベンレーベンのともちがってない?」

 そして、ズィーベンレーベンのと、ヤマトーさんのもちがうコーセだった。

 ズィーベンレーベンのは、ばびゅーって音がして、あとすごい風ふいてた。

 でもヤマトーさんのは、ピカッてなったら、ズドーンってすごい音がして地面がゆれた。


「んー?お兄さんが天才だからじゃないの?」

「ヤマトーさんが天才だから?」

 ナーナがなんでもなく答えてた。


「七生マホショージョのズィーベンレーベンは最強のマホショージョなんだ」

「最強………マホショージョで1番強いの、あの子?」

「うん最強。天下七杖筆頭、オカジュモジを使いこなしてる時点で疑いないよ」

 あのなんかキラキラしてる杖か。

 使うだけでもなんかすごくむずかしいっていってたな。


「そしてね、七色ネリキコーセって、最強のマホショージョが、天下七杖筆頭を持ってて、やっと使える魔法なんだよ」

「ふむふむ」

「シャーシャちゃんも同じ威力の魔法が使えるけど、シャーシャちゃん?」

「………なに?」


「アレってやっぱり、シトーの力を借りてるの?」

「………うん」

「肯定でありますナーナ殿!あの影は自分がシャーシャ殿に協力する事で、初めて実現する魔法であります!」

「まぁ、あんな強力な魔法なんだから、普通は1人じゃできないよね、うん」


 七色ネリキコーセをアタシもマネしようと思ったけど、ぜんぜんできなかったしなぁ。

 光をすごいせまく集めると、その部分を燃やせるようになる。

 アタシのアーパーラリパッパコーセはすごい量の光で、とにかくねらったとこを燃やす魔法だ。


 でも七色ネリキコーセはちがう。

 あたったものをなんでも消す魔法だ。

 光の量はアタシのより少ないのに、当たったらアタシのよりメチャクチャ多い炎の精霊が生まれる。

 どうやったらあぁなるのか、ぜんぜんわかんないし。


 シャーシャの影の魔法もわかんなかった。

 ただ影を作っただけなのに、当たったら死ぬ。

 まっくらになっても死ぬわけなんてないのに、シャーシャの魔法だと死ぬ。

 やっぱりどうやったらあぁなるのか、ぜんぜんわかんない。


 アタシもシトーがしゃべるぐらい頑張ったら、もっとすごい魔法が使えるようになるかな?

 ………。

 え?


「ヤマトーさんって、なにも使ってなくない?」

 ヤマトーさんは光る杖も、しゃべるシトーも持ってないし!

 影で包んだ相手を血まみれにする魔法だって、手にはなにも持ってなかった!


「うん、お兄さんはマホショージョが道具を使ってやっとできることを、なにも使わないでやっちゃうんだよねぇ。さすがはニホコクミ最強の面目躍如ってやつさ」

「ヤマトーさんは、シトーに認められてないのに、あんなすごい魔法が使えんの?」

 ヤマトーさんのシトーは、なんでも切れるけどしゃべったりしない。

 アタシと同じで、まだシトーに認められてないんじゃ?


「ん?ありえないでしょ?」

「え、ちがうの?」

「だって、誰もが認めるニホコクミ最強のヒーロだよ?お兄さんが認められないんだったら、誰も認められないに決まってるよ」

「んー、そっか」


「お兄さんは強いから、シトーなしで戦えちゃうんだろうね」

「じゃあ………まだまだ本気じゃないの?」

「だろうね。シトーを使う前から世界最強なんだけどさ」

 ホントにすごいなぁ、ヤマトーさん。


 ピカッ!

 ズドーン!

「うわっ!」

「うおわっ!」


「おっと、話しすぎたね。せっかくお兄さんに任せてもらったんだから、ボクらも頑張らないと」

 !

 ヤマトーさんの言ったことをちゃんとしないのはマズイし!

「早く殺そう!行こ行こ!」

 アタシは急いで走った!




 まぁ簡単だった。

 黒い服着てたやつは見つけたら殺した。

 強いやつはいなかった。

 っていうかコッチが女ばっかってなめてたから魔法で一瞬だった。

 歩いてたら向こうがコッチに寄ってくるし、すごい簡単だった。


「んー、厄介だな」

「んー、そうね」

「む!全くなのだ!」

「………うーん」


 でもこまった。

 倒すのは簡単だったんだけどなぁ。

「どうしたらいいんだろ?」


 アタシたちが悩んでるのは、黒い服着てても別に悪くないやつがいたからだ。

17/6/3 投稿・文章の微修正

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