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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の苦悩
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記憶

 俺はどこにでもいる普通の人間だ。


 若者の深刻な車離れという、一大トレンドに乗っかって、俺も当然車は持ってない。

 今日も電車に乗って通勤する為、駅へ向かう。

 駅に近づくと、何やら声が聞こえてくる。

 これは………。


「―――政権の生んだ、格差社会を」

「―――是正する為、我々狂賛党は」

「―――平等な社会を実現する為」


 赤い、見るだけで吐き気を催す様な、醜悪でセンスのない旗を持った連中。

 そいつらが支離滅裂かつ、意味不明かつ、無知蒙昧な事をほざいている。

「くたばれ、汚らしいアカ共が!」

 連中に確実に聞こえる様に独り言を呟いて、その場を足早に通り過ぎる。


 うわぁ。

 朝から嫌なもの見た。


 差別はいけない事だ、とはよく聞く。

 だがそういわれても………実際に狂人と相対して、平気な顔をしていられる人間がどれ程いるものか?

 そう、平等を声高に叫ぶ彼等は狂人と分類されるべき人間だ。




 平等。

 言葉にすれば美しく尊い。

 だが、いかんせん、美辞麗句に踊らされすぎているとしか言えない。


 改めて言うまでもなく、人は生まれついて不平等だ。

 金持ちの家に生まれるか、貧乏人の家に生まれるかで、その人生は大きく変わるだろう。

 いわゆる貧富の差だ。

 他にも遺伝的・先天的な差もあるが、よく槍玉に上がるのは貧富の差だろう。


 さて。

 アカの連中はこの貧富の差を、是正する事を目標と掲げる連中だ。

 格差のない、平等な社会。

 俺が何かを言うまでもなく、昔の人はいい事を言っている。


「若くして共産主義に傾倒しない者は情熱が足りない」

 一見尊い目標に見えるそれ。

 現実を度外視した理想。

 これに心踊らせない奴には心がない、という言葉だ。

 だがこの言葉、直後にこう続いている。


「年を取って共産主義に傾倒している者は知能が足りない」

 こんな陳腐な事をほざく様では脳みそがない、という言葉だ。

 あまりに現実を度外視し過ぎている理想。

 それは実際、醜悪極まりない地獄そのものだ。

 貧富の差がない平等とはどういう状態か?


 真面目太郎君は1日狩りをして、獲物を10匹も手に入れました。

 やったね真面目太郎君。

 食っちゃ寝太郎君は1日怠惰に過ごして、食料の備蓄が尽きました。

 くたばれ食っちゃ寝太郎君。

 俺個人の感想はともかく、努力・苦労・過程が作る、因果関係には文句がない筈だ。


 いっぱい働けば報われる。

 働かなければ報われない。

 当然の帰結だ。


 しかし、共産主義というのは、その当然を認めない主義だ。

 いっぱい働いても。

 働かなくても。

 還元される結果は同じ。


 頑張りが。

 苦労が。

 努力が。

 一切報われない社会。


 財産の個人所有が認められておらず、一旦国に召し上げられて再分配される。

 それが共産主義の目指す明日というやつだ。

 貧富の差を失くすという事を、現実にすればこうなる。

 言葉は悪いかもしれないが敢えて言おう。

 共産主義は、大勢で乞食を養う社会だ。


 尊い労働は、働かない乞食に分配される。

 俺は個人主義・現実主義・資本主義の人間だ。

 自分の働きが人の物になると言われて、奮い立つ気はしない。


 頑張っても報われないのに、それでも頑張る奴はいるだろうか?

 そう。

 破綻する事が必定となる。

 しかし、無から富が生まれる訳ではない以上、労働は必須。

 共産主義では一体どの様にして、労働を喚起するのか?


 その答えは単純。

 強制だ。

 罰する事で、労働を強要する。

 それが共産主義の提唱する社会の姿だ。


 働いても働いても豊かになれず。

 国に一方的に搾取され。

 国に管理される。

 逆らえば死。


 言葉というのは適切に選択されなければならないと、俺は常日頃思っている。

 そんな俺の見解から言わせてもらおう。

 普通、そういうのは奴隷と表現されるべきものだと思う。

 共産主義がもたらすのは、生き地獄の管理社会だ。


 しかも地獄はこれで終わらない。

 働かない者。

 共産主義に反意を示す者。


 それらを徹底的に罰するのが前提である。

 その為にもいち早く、恭順を示さない者を察知する必要がある。

 つまりは、徹底した管理・監視により成り立つ社会。


 そんな社会を成立させるのに必要な制度は何か?

 共産主義にとっての悪を、積極的に報告する制度だ。

 悪名高い密告制度の登場である。


「働いても働いても報われない」

「頑張りに応じた報酬が欲しい」

「資本主義が羨ましい」


 こんな事を呟いた瞬間、それを聞き咎めた誰かに密告される。

 そして秘密警察に連行されていく羽目になる。

 行く末は、より厳しい強制労働か。

 はたまた死か。

 愚痴を言う自由すらない。


 日本に生まれて、どれほど恵まれているのか実感する瞬間だ。

 現政権をあんなに批判しても、死刑にされる事がないという現実。

 たかが愚痴の一つで、と思うのは平和な日本に生まれた者の感想だ。

 現実に不平不満を零せば即、死に繋がる国は存在するのだ。


 これが不平等のない社会。

 格差のない社会の正体だ。

 奴隷として、自由を奪われ、強制的に労働させられる。




「我々狂賛党は、日本の恵まれた国民から自由を奪い、奴隷として強制労働させ、搾取し続ける社会の実現を目指しております」

 聞き入れる余地のない、狂った妄言。

「黙れ、汚らしいアカ共が!」

 朝から狂人の狂言を聞かされるなんて気が滅入る。


 こいつらに外患誘致罪が適用されない理由がわからない。

 警察権力は何をしている。

 これはれっきとした侵略行為だぞ?

 美しい国、日本を守らないか。


 スパイというのは、フィクションだけの存在ではない。

 もちろん現実に存在する。

 そしてその魔の手は、偉大な国家、日本にまで伸びている。

 この意見を映画の見過ぎだとか、陰謀論だとか言って煙に巻こうとする奴がいる。

 そういう奴は、危機意識が足りないか、敵性国家のスパイであるかのどちらかだ。


 二次大戦時に敵国家に潜入したスパイが、いかにして敵国の生産性を落としたか。

 その方法についてまとめた、CIAのマニュアルというのが、割りと近年に公開された。

 要約すると、手続きを増やし、迅速な対応を妨げ、意思決定を可能な限り遅らせる事が目的らしい。

 言葉尻を捕まえる。「懸命な判断を」と決断を遅らせる。


 どこかで見た事がないだろうか?

 毎日のテレビやニュースで。

 たかが1つの言い間違いを槍玉に上げて、延々と批判し続ける。

 代案も用意せずに、与党の提案を只否定の為に否定する。


 マスコミ。

 野党。

 あの日本に属するものとして、何一つ利をなさない行いの数々。

 あれらが敵性国家による、日本への破壊工作でなければ、何が破壊工作なのか。


 こいつらだけではない。

 平和の尊さ。

 人権の平等。

 財産の平等。

 原子炉の廃絶。


 町中で声高に叫んでいる連中は、全て日本を害する敵だ。

 稀に脳が膿んだ、心底見下げ果てたド低能が、下らない正義感に踊らされて、一緒に叫んでいる様だが。

 全ては日本の国力を削ぐ為に、敵性国家が主導して行っている事だ。


 特に平和・反戦・人権を掲げているのは、確実に敵性国家だ。

 人は期待する結果がある場合、その結果をもたらす為に行動を起こす。

 そう考えれば逆説的に、起こしている行動から、もたらさんとしている結果もわかる。

 平和・反戦・人権平等という意識が根付いた結果、()をする立場は1つしかありえない。

 即ち、日本に属さない立場だ。


 ………良薬口に苦し。

 身につまされる言葉は、一見聞き入れがたいが、その分為になる。

 では逆に、口当たりのいい平等や平和は一体何なのか?

 それは只ひたすら、身を蝕もうとするだけの毒に違いない。


 こいつら耳心地のいい事だけをほざく連中に身を任せた結果、我等日本国民はどうなったのか?

 答えは十年程前の、日本ブーメラン党とかいう連中をトップとした、日本暗黒時代の幕開けだ。

 どこの国籍の人間かも知れない連中が、日本国のトップとなったのだ。


 実に短期間の間に総理大臣はコロコロと代わり、その内の1人はルーピーという称号を冠した。

 国会模様はBGMにバラエティ番組のものを流せば、それ以外に編集が不要なお笑い動画となるお粗末な代物。

 今でも悪い冗談だったと思いたいが、残念ながら真実。

 決して消せない、日本最大の汚点となった。


 漢字を読み間違えたからなんなのか。

 カップラーメンの値段がわからないからなんなのか。

 饒舌なスピーチが聞きたいなら、声優にでも頼め。

 カップラーメンの値段が知りたかったら、最寄りのスーパーの店員にでも聞け。

 政治家がいい飯を食ってたからなんだ。

 少なくとも狂賛党や日本ブーメラン党とかいう、自国の者ですらない連中がトップになるより、遥かに受け入れられる事だ。

 日本の政治家に必要な能力は、只1つ、日本をよりよくする事だけだ。


 あの汚らしい狂人共と、狂人を正しいと信じる狂信者達。

 なんとかして日本からあいつらを駆逐できないものか。

17/3/11 投稿・誤字の修正

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