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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の始動
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ミミカカ、日本男子を振り返る

 アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ!


 アタシが変わったのはちょっと前!

 村にヤマトーさんがやってきたあの日!

 たった7日でぜんぶがかわっちゃった!


 ヤマトーさんはホントすごい人だった!

 剣1つ持って、たった1人で石でできた化物を倒した!

 村が全滅してもおかしくなかったのに!

 ヤマトーさんはめちゃくちゃ強かった!


 それにヤマトーさんはめちゃくちゃやさしかった!

 村のみんなの傷を治してくれたし!

 いろんなことをおしえてくれたし!


 何よりアタシを認めてくれた!

 立派な戦士だって言ってくれたヤマトーさん!

 お母さんにアタシのいいところをいっぱい言ってくれた!

 ヤマトーさんのおかげで、アタシはいろんなものがやっと見えるようになった気がする!


 テノーヘカ様に仕える神の使徒!

 だれよりも強い戦士!

 だれよりもかしこい人!

 そして………アタシがはじめて好きになった男の人!


 村を出てったヤマトーさんに追いつこうと旅に出た!

 町に行くとちゅうで水がなくなったり!

 町にいってもヤマトーさんがやさしかったり!

 シャーシャとなかよくなったり!


 領主さまの兵士と戦ったり!

 シャーシャとケンカしたり!

 ヤマトーさんとケンカしたり!

 いろんなことがあった!

 ………いろんなことが………!


「うぅ………ひっ!………ぐずっ、ひっ!………えぇん………すんっ!………はぁっ、ひっ!」

 ダメだ………!

 ………泣いちゃダメだ!


「うぅ、うううう!………あぁっ!………ひっ!………うぅ、ひっ!」

 ダメだ………!

 なみだが………ぜんぜん止まんない!


 今は夜。

 みんなねてる。

 明日はみんなで旅に出る………。




 ヤマトーさんは旅に出る理由をおしえてくれた。

「まず目先の目標である療養は十分にできた。お陰で体調も回復した。なので村を発って、ショークマユーの旅に出ようと思います」

 いろんなとこに行くのがショークマユーの旅らしい。

 ヤマトーさんは聞いたことない言葉もいろいろ知ってた。


 ところでさ?

 いろんなとこ見たいから旅するっていうのはわかった、うん。

 でも、なんでいろんなとこを見たいのかはわかってないような?


 前に夢で見たし「もしかして」って思ったから、

「妻にする人を探すためですか?」

って聞いたら、すごい冷たい(グララを見るみたいな)目で見られた!

 超ショックなんだけど!

 そんな呆れた(グララを見るみたいな)目で見なくてもいいじゃん!


 ヤマトーさんってさー………ときどき目が超冷たいの!

 キリっとしててかっこいい!………とかそんなレベルじゃないし!

 ホントにゴミ(グララ)でも見るみたいな、つまらないもの(グララ)でも見るみたいな目!

 目がつり上がってて細めだし、おまけに背が高いから、いっつも見下ろしてるみたいになってんの!


 それに、怒るときは怒る!

 それもめちゃくちゃ怒る!超こわい!

 なんかー………ようしゃがないっていうの?

 領主さまの兵士はみんな、バラバラにされて殺されてたし!


 アタシは最近、そんなヤマトーさんと2回ケンカした!

 1回目はなんか頭がスーってなって倒れてた!なんだったの、アレ?

 2回目はいきなりナイフをふっとばされたし!ぜんぜん反応できなかった!

 2回とも、ぜんぜん相手にならなかったし!


 冷たい目で!

 すごく強くて!

 怒ったらすごくこわい!


 そんなヤマトーさんだけど、やっぱりすごいやさしい人だ。

 領主さまの兵士をなんで殺したのか?

 村にもどってヤマトーさんが戦った理由を聞いた。


 ヤマトーさんは自分が襲われた後、急いでこどもたちのところにいったらしい。

 ヤマトーさんがごはんをあげてたこどもたちだ。

 わたしもいっしょにごはんを食べた。

 元気な子たちだった。


「あの汚らしいアメリカ野郎は、何の罪もない女子供を殺した………何の罪もない女子供をな」

「殺された………んですか?」

 やっぱり顔を知ってる人が死ぬのはショックだった。

 けど………。


「ただ殺されただけじゃない」

「ただ殺されただけじゃない?」

 殺すのにちがいとかあるの?


「男は迂闊な通行人の路銀や荷物を盗む為に、日中は表の通りにいる」

「?」

 なんの話?


「あそこに日中からいる子供は女だけだ」

「あの………それが?」

 やっぱり話がわからない。


「兵士は男で、あそこにいたのは女だ。その意味がわかるか?説明はさせないでくれ」

「えっと………」

「尊厳を奪われたんだ」

 ヤマトーさんはそれだけ言って目を伏せた。


 考えてみた。

 尊厳ってなんだろ。

 男じゃなく女?

 女の尊厳?

 ………それって。


「俺はアメリカ共を許す訳には行かなかったんだ………」

 なにもない床をにらむみたいにしてヤマトーさんがいってた。

 兵士たちがあんな殺され方をしたのは、兵士たちが最低だったからだ。


 他にヤマトーさんが怒ったのは、シャーシャのためだった。

 シャーシャを泣かせたアタシは、すぐにやられた。

 シャーシャを泣かせた村のみんなは、もうちょっとで殺されるところだった。


 ヤマトーさんが怒るのは、いつもだれかのためだった。

 そんなやさしいヤマトーさん。

 アタシはやっぱりヤマトーさんが好きだった。

 ケンカもしたけど、あれは全部アタシがわるかったと思う。


 いっしょにいたいって思った。

 ケンカしてても、アタシがケガをしたことはなかったり。

 おどろいたときの顔が、こどもみたいでかわいかったり。

 ヤマトーさんのいろんなところを見られたら幸せだった。


 あれはいつのときだったかな?

 いつも長そでの服をきてるけど、服の上からでも体が細いのがわかるヤマトーさん。

 でもヤマトーさんはちゃんときたえてて、筋肉がしっかりついてる。


「ヤマトーさんって、たくましいですよね」

 意外だったし、なにも考えてなくてそのまま言ってみた。

「ん、そうか?」

 ヤマトーさんもなんでもないみたいに答えてた。


 ………と思ったけどよく見たらちがった。

 ヤマトーさん、ちょっと照れてる。

 めずらしい。

 ちょっと顔が赤くて、目をそらすみたいにして自分のうでを見てた。


 そうそう、これはご飯を食べる前の最後のキトレが終わった後のときだった。

 汗をふくから服を脱いでたときだ。

 ………このときのヤマトーさんのカッコが、なんていうの?

 なんかすごいセクシー?


 いつもしてるてぶくろを外して、長そでの服を脱いで。

 上がシャツっていううすい服だけになったとき。

 女のアタシよりきれいなんじゃないかってきれいな首。

 やっぱり男なんだなってわかる、すじばった、筋肉のしっかりついた腕。


 あと汗!何より汗!

 ヤマトーさんの汗って、他の男の汗とちがってくさくないの!

 あの匂いかぐとすごく安心するし、こうふんする!


「ヤマトーさん?」

「ん、どうした?」

「うで、さわってみていいですか?」

「え?いいけど………?」

 やったー。


 ぺたぺた。

 ぺたぺたぺたぺた。

 ぺたぺたぺたぺたぺた?

 ………あれ?やわらかい?


「力入れてみてください」

「ん」

 おぉ!

 細いとおもってたけど、こんなふくらむんだ!


 ぺたぺた。

 ぺたぺたぺたぺた!

 ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!

 やばい!すごいカチカチ!


「むね、さわっていいですか?」

「………別にいいけどさ」

 わーい!

 もみもみ。

 ヤマトーさんがビクってした!


「ミミカカ」

「はい?」

「なんで揉んだ?」

「さわりたかったから?」

 ヤマトーさんってば、顔超赤ーい。


「男の胸揉んで楽しいか?」

 え?

「けっこう楽しいですよ?」

 もみもみもみ。


「揉むの辞めなさい」

「いやです」

 もみもみもみ。

 あぁ、このちょっと固いかんじ!

 これがヤマトーさんのむね!


「俺が乳揉まれてる絵面って、どこの誰に需要があるんだ?」

「じゅよう?」

 ぎゅっ!

「乳首つねるの辞めなさい!」

 あ!手払われた!


 はずかしかったのか、むねかくして上目づかいでにらんでる!

 すごいレアな表情!

 あのときさわりまくった体の感じと、あのはずかしそうな顔はよかった!うん!


 楽しかったなぁ、ふざけてむねさわるの。

 これからもずっと続けてられるんだと思ってた。

 だって。


「1つは住みよい土地を探す事だ」

「ん?そりゃ住むからだろ?」

「皆で住めばいいじゃないか」


 ヤマトーさんは妻をさがしてなんかない!

 みんなでいっしょに住むっていってた!

 もうアタシたちを妻にするって決めてたんだ!

 みんなで住むってのがびみょうだったけど、貴族の人なんだからしかたないか?

 アタシたちみたいに、1人の相手だけを妻にするわけじゃないみたいだし!


 アタシとシャーシャとグララの3人なら、アタシが1番だと思ってた!

 シャーシャは12歳だ!年の差がありすぎるし!

 ヤマトーさんのグララを見る目はやっぱりつまらなさそうだったし!

 むね大きいほうがいいとか言ってたときはどうしようって思ったけど、グララはやっぱりダメなんだって!

 1番の妻はアタシなんだって思ってた!


「あのね、ミミカカさんはね、ムムカカ村に住んでるんだからね」

「住んでるんだから?」

「別に無理に旅に付いてこなっ!」

「くてもいいっていうつもりですか!」


 だからアタシはショックだった!

 それ以上は聞きたくなかった!

 さいごまで聞いてたら自分がどうなるかわからなかった!


 いっしょにいられるんだって思ってた!

 アタシが旅についていくっていったとき!

 ヤマトーさんはめずらしく、うれしそうにわらってくれてたのに!

 なのに!

 ついてこなくていいなんて!


 しばらくはショックだった!

 よくおぼえてないけど、大声でシャーシャとグララに八つ当たりしてた気がする。

 それで何を話したのか、ぜんぜんおぼえてない


 話し合いが終わって。

 ふつうにごはんをたべて。

 みんながねた今、アタシは泣いてる。


「うぅ、………ひっ!………ぐずっ、………ひっ!」

 泣くのをおさえようとしても、なみだが止まらない。

「ずっ、………ひっ!………えぇっ、………ひっ!」

 せめて声をおさえたかったけど、ぜんぜん止まらない。


 ずっと。

 ずっといっしょにいられるんだと思ってた。

 ちょっとふざけながら。

 やさしいヤマトーさんとずっといっしょに。


 いつもつまらなさそうな顔をしてて。

 ふとしたときに、すごいやさしい顔する。

 ヤマトーさんのことをずっとそばで見てられるんだと思ってた。


 なのに。

 あんなかんたんに。

 ついてこなくていいって言われるなんて!


 アタシはずっと安心してた。

 ヤマトーさんがやさしいから。

 ちょっとふざけてても、少しこまった顔をするだけで許してくれて。

 ヤマトーさんも………アタシのこと好きなのかなって思ってた。


 ヤマトーさんはアタシとグララを同じにしなかったし。

 アタシには魔法を教えてくれるし。

 アタシにはキトレとか、戦い方とか教えてくれるし。

 アタシには勉強とか、いろんなことを教えてくれたし。


 グララを見る目は冷たかった!

 グララには何も教えてなかった!

 アタシは特別なんだって思ってた!

 アタシだけが特別なんだって思ってた!


 ………まちがってた。

 アタシが特別なんじゃなかった。

 とくべつだったのは………グララの方だ。

 ヤマトーさんは、グララにだけ冷たかったんだ。

 アタシにだけ、やさしかったんじゃなかったんだ。


 とくべつだったのはグララだけじゃない。

 シャーシャだ。

 シャーシャだけがヤマトーさんの特別なんだ。

 1回そう考えたらいろいろわかった。

 

 ヤマトーさんがだいじにするのはシャーシャ。

 ヤマトーさんがしんぱいするのはシャーシャ。

 ヤマトーさんがおこりだすのはシャーシャのため。

 ヤマトーさんがとくべつなのはシャーシャだけ。


 あぁ………。

 そうなんだ………。

 アタシがいろんなことを教えてもらえたのも………。

 シャーシャがいたからなんだ………。


「うぅ!ひぐっ!………ひっ!ぐずっ!うううう、ずっ!」

 アタシ………バカみたいだ!

 1人でもりあがって!

 かってにとくべつなのかもって思ってて!

 グララとくらべて勝ってるとか思ってて!


 グララになんか勝っても意味なかった!

 だれよりも!

 シャーシャよりも!

 ヤマトーさんの1番じゃなかったら!

 意味なんてぜんぜんなかったのに!


「はぁ、………ずっ!………はぁ、………ずっ!」

 ………あきらめない。

 ………ぜったいあきらめない!


 今まではまちがってた。

 アタシはとくべつなんかじゃなかった。

 ヤマトーさんもアタシのことが好きってかってに思ってた。


 ちゃんとしよう。

 ちゃんとヤマトーさんに好きになってもらおう。

 ちゃんとヤマトーさんのいちばんに、とくべつになろう。


「うぅ、………ぐずっ!ひっ!うう!えええ、ぐずっ、えっ、ひっ!えええ、ううえええええ!」

 でも!

 つらいよ!


 ヤマトーさんがアタシのこと好きじゃないって!

 こんなにつらいことなんだ!

 今まで人を好きになったことなんてなかったから知らなかった!


「うええええ!ひっ!うああああ!」

 アタシはのどがガラガラになるまで1人で泣いてた。




 泣きつかれたアタシは、とちゅうでねてたみたい。

 気がついたら朝になってた。

 なんかのどがいたいし、めもむくんでた。

 魔法で水をだしてかおを洗った。

 冷たい水が気持ちよかった。


 ぜったい、1番になろう!

 それがアタシの旅の目的だ!

 ヤマトーさんが言ってた1人になるのはアタシだ!

 グララはもちろん、シャーシャにだって負けない!


 これからの旅がアタシの勝負だ!

17/1/21 投稿

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