ミミカカ、日本男児と遊ぶ
アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ!
ヤマトーさんがなんかするっていうから村のみんなで見てたら、すごいことになった!
「シッショーマホショージョ!ズィーベンレーベン!」
マホショージョだ!
なんでかわからないけど、シャーシャとすごい似てたし!
顔も、声も!
なんでなんだろ?
「主な業務内容は、平和維持活動、治安維持活動、防衛行動、セッキョッテジェケの行使、となります。場合によっては捜索任務、護衛任務等が追加される場合もありますが、基本は平和を守る事が仕事です」
ズィーベンレーベンは、マホショージョの仕事が何か教えてくれてた。
見かけはシャーシャそっくりだけど、話し方はヤマトーさんそっくりで、すごくむずかしい言葉を使う。
「1人の力には限界があるの。だから不死のマホショージョレーベンと私は協力した………。シャーシャちゃん、友達っていいよ?シャーシャちゃんも友達ができたら、マホショージョになれると思う」
そして………マホショージョになるのに大事なのはともだちがいるかどうかだって言ってた。
そう言われてシャーシャは、すぐ表情が変わったのが見えた。
傷ついたようにも見えたし、怒ったようにも見えた。
でも、シャーシャは何も言わなかった。
「というわけでマホショージョらしく、魔法を実演してあげる!来たれ!天下七杖!桜花十文字!」
そしてマホショージョは魔法を使いはじめた。
手が光ったと思ったら、今までなにも持ってなかったのに、長いぼうを持ってた。
使った魔法はめちゃくちゃだった!
ヤマトーさんの魔法だってわけがわからなかったのに!
マホショージョの魔法はもっとめちゃくちゃ!
「唸れ七色ネリキコーセ!照射!」
ばびゅーん。
七色ネリキコーセ!
きれいに色が変わる光をあびせる魔法!
光をあびせる魔法ならヤマトーさんだって使ってたけど………ぜんぜんちがった!
マホショージョの光の魔法は、当たったところが消えてなくなってた!
威力もめちゃくちゃだったけど、光の大きさも家と同じぐらい!
しかも速さまでめちゃくちゃで、魔法ができあがったらもう避けられない!
そして、空の果てまでまっすぐ飛んでく!
「避けるなら高速移動か、クーカチョーヤができないと」
びしゅん。
クーカチョーヤ!ワープ!
一瞬でちがうところに行っちゃう魔法!
みんなで名前を読んだら、いきなりピカって光って、アタシたちの後ろにいた!
マホショージョは目に見えないぐらい遠くから、いきなりきたことになる!
ヤマトーさんはすごく高くとべるし、空だって飛べる!
でも………クーカチョーヤはできない!
「基本的には防げないって言ったけど、十分な出力の障壁を形成すれば防げるよ、こんな風に。そびえ立て、コッボー障壁」
ばちばちばちっ!
コッボー障壁!
攻撃を受け止める光のかべ!
森のおっきな木を、一瞬で消した七色ネリキコーセ!
それを受け止める!
あんなふうに魔法を止められるなんて知らなかった!
あんな魔法はヤマトーさんだって使ってなかった!
「まぁこんな風に、私達マホショージョは、最強の矛と、最強の盾と、最高の運動性と、最高の機動力を兼ね備えた存在なんだよ」
これがヤマトーさんの言ってたマホショージョ!
超強い!
ヤマトーさんが「魔法の規模が違う」って言ってたのがやっとわかった!
攻撃は威力・大きさ・速さ・正確さのどれもめちゃくちゃ!
防御はそんな攻撃を防げるぐらいめちゃくちゃ!
速さは空を飛べるヤマトーさんよりめちゃくちゃ!
とにかくめちゃくちゃ!
………そう、めちゃくちゃだった!
すごい魔法をアタシも使えるように精霊をしっかり見てた!
なのに………なのに!
どういう魔法なのかぜんぜんわからなかった!
ヤマトーさんの魔法もわけがわからなかった!
光の精霊で火を作って!
水の精霊でなんでも切って!
見たことのない精霊で火を消して!
引っ張る見えない精霊で空を飛んで!
でも、マホショージョの魔法はもっとわけがわかなかった!
光の精霊で七色ネリキコーセを作って!
光の精霊でクーカチョーヤを作って!
光の精霊でコッボー障壁を作って!
光の精霊で空を飛んで!
どれも同じ光の精霊!
光で火が出たり、ものを消したりするのは、なんでかはわからないけど、なんとなくわかる!
たぶん………すごい光は火をつけて、もっとすごい光だとものを消しちゃうんだと思う!
でも………なんで光の精霊で空が飛べるの?
光の精霊がどうなったら、クーカチョーヤをできるようになるの?
光がどれだけ強くなっても、ものを動かすようにはならないし!
もーぜんっぜんっ、ほんとにわかんない!
しかも!
それだけでもわからないのに!
もっとわからないことがあった!
剣1つで村をおそった灰色の狩人を1人でたおしたヤマトーさん!
あのヤマトーさんが強い強いっていってたマホショージョ!
そんなマホショージョなのに………なんで?
なんで、精霊の力が弱いの?
なんども見た!
なんども見た!
なんども見たのに!
周りにいる精霊の力は弱い!
アタシよりも!………グララよりは強いけど。
本当にわけがわからなかった!
あんなにすごい魔法が使えるのに!
ヤマトーさんよりすごい魔法が使えるのに、ヤマトーさんより精霊の力は弱い?
どういうことなの!?
それにわたしは見てた!
この前、グララがヤマトーさんといっしょに魔法を使ってた!
魔法ってなんなの?
魔法を作ってるのは精霊じゃないの?
なんで精霊がいなかったり少なかったりで、魔法が使えるの?
アタシがわからなくって、いろいろ考えてる間に、マホショージョはいなくなった。
「さぁ皆おいでー!楽しいお遊戯の始まりだよー!」
次の日。
ヤマトーさんはまたお昼にみんなを集めてた。
「今度は何するんですか?」
思わず聞いてみた。
「やぁミミカカちゃん」
「ミミカカちゃん!?」
そんな呼び方されたのはじめてなんだけど!なんなの!?
「ハハハ!ミミカカちゃんは元気いっぱいだね!」
え、なんかヤマトーさんぶっこわれてない?
「いやー、よく考えたらね………昨日のイベントじゃどうしても、僕達皆が仲良くなれる訳がなかったと思ったんだよ」
アレでみんなと仲良くさせるつもりだったのヤマトーさん!?
マホショージョがいきなり出てきてあばれて帰っただけだよね、昨日のって?
村のみんな、マホショージョは台風みたいなもんって思ってるみたいだけど?
「なんで、今日は皆で普通にお遊戯するよ!」
ヤマトーさんはシャーシャにともだちを作りたいみたい。
「ニューヨークに、行きたいかー!」
声といっしょにいきおいよく、グーを作った右手を突き出すヤマトーさん。
「「「「「………」」」」」
ニューヨークってなに?
シャーシャもわからないみたいでへんなかおしてる。
「そうだよな!犯罪多発都市になんか行きたくないよな!」
なんかヤマトーさん、うれしそうにうんうんうなずいてるし!
「はーい、皆ー!傾注ー!」
今度はやさしい笑顔と、きこえやすい明るい声だった。
いつもつまらなさそうで、冷たい目をしてるヤマトーさん。
でもこどもにだけ、ヤマトーさんはほんとの笑顔を見せる。
そのときだけは、いつもみたいなふきげんそうな口の形じゃなくって、にっこり笑ってる。
村のこどもにもやさしかったし。
シャーシャのこともいつも気にしてるし。
町にいたときもこどもたちにごはんを食べさせてたし。
ヤマトーさんって、こどもが好きなんだなぁ。
いつもこわい顔してて、頭いいからなに考えてるかわからなくて、めちゃくちゃ強い。
そんなヤマトーさんだけど、ほんとに笑ったら子供みたいな顔になる。
やさしくて、教えるのがうまくて、なんでもできる。
あの顔を見るのが好きだ。
「皆ー、集まったかなー?」
「「「「「はーい」」」」」
今日のヤマトーさんは、みんなとあそぶっていってるし、超やさしいモード。
特にこどもたちが期待して、元気に返事してる。
ついでにひまな大人もいっしょに返事してる。
「じゃあ皆ー!ヤマトーお兄さんと一緒に、ソノーカゴで元気に遊ぼうねー!」
「「「「「わー………?」」」」」
元気よく返事した声がどんどん小さくなってく。
「あのー、ヤマトーさん?」
「どうしたのかな、ミミカカちゃん?」
「ソノーカゴってなんですか?」
「うん、いい質問だね、ミミカカちゃん!」
うわ、っていうかこれ………すごい照れるんだけど!
だってアタシ、ヤマトーさんがこどもを見るときの顔が好きだし!
あの顔でアタシを見てくるの、すごい照れる!
あぁいう感じで耳元でささやかれたらやばいかも!
多分こし抜ける!
「皆ー、ソノーカゴの遊び方を説明するよー!傾注ー!」
アタシがヤマトーさんの妄想レパートリーを増やしてたら、ヤマトーさんが説明してた。
………っていうか、さっきからこども向けモードになってるのに、けいちゅうって?
意味はわかるんだけど、こんなむずかしいことば使ってる人見たことない。
「はーい、皆ー!問題だよー!今ここには何人の人がいるかなー?わかった人は元気よく教えてねー!」
ヤマトーさんにいわれて、みんないそいで数えだした。
えーっと、1,2,3,4,5,6,7………あ、動くな!
数えなおさなきゃ、1,2,3,4………。
「10人」
「19人」
「22人」
「23人」
「17人」
「100人」
みんな自分の数えた人数をヤマトーさんに教える。
「一応言っておくけど、この村の世帯数で総勢100人なら、皆のお父さんお母さん、すごく頑張らないといけないよ?」
がんばる?がんばる、がんばる………あぁ、たしかにがんばらないとね。
ヤマトーさんはこどもとか、何人ほしいんだろ?
「まぁそれはさておいて、正解は23人でした!正解したヤマシーちゃんに拍手!偉いぞー!」
パチパチパチ。
「ヤマトーさん?」
「どうしたのかな、ミミカカちゃん?」
にっこり!
うぅ………ヤマトーさんの顔、すごいどきどきするんだけど?
こどもを見るときのヤマトーさん、ほんとにやさしいんだよぉ!
キリってしたヤマトーさんもかっこいいけど、やさしいヤマトーさんもいい!
「ん?………本気でどうしたのかな、ミミカカちゃん?」
あ、まずい!
「あの!あの、これ!人を数えるのがソノーカゴ?」
あせった!
ちょっとへんになったけど、聞きたかったことを聞けた。
「人数を数えたのはソノーカゴの準備だよ!じゃあ皆!光ってるところが席だから、好きなところに座ってね!」
パン!
ヤマトーさんが手をたたいたら、地面に白いまるができた。
まるはいっぱいあって、グルって円になってならんでる。
とりあえず座ってみる。よいしょっと。
「皆、座れたね?ソノーカゴの遊び方を説明するよー!」
ところでヤマトーさん?
なんで今日はそんなオーバーアクションなの?
「じゃあ最初は………自分の名前が書ける人!はい、自分の名前がちゃんと書ける人は立ってね!」
「はいはーい!なまえ書ける!」
「おれもおれも」
「わたしも書けるし」
今の村のみんなは、自分の名前ぐらい書けるから全員立った。
「はい!立ったら皆、さっき座ってたところと、別のところに座るんだよ」
そう言いながらヤマトーさんはテクテク歩いて、アタシが座ってたところに座った。
みんなも座る。
「あれ?ヤマトーさん?」
「どうしたんだいミミカカちゃん?」
「ヤマトーさんが座ったら、もうアタシが座るところないんじゃ………?」
さっきヤマトーさんが立ってたとき、地面の白いまるはあまってなかったし。
「そうだよ!ソノーカゴはうまく座って、なるべく真ん中に立たない様にする遊びなんだ」
「え!?そんなの聞いてないし!」
ずるい!
「今回は説明だからね!次からは立ったら、すぐに座れるところを見つけないといけないよ!座れなかった人は次に自分が座れるように、多くの人を立たせるのがコツだよ!」
ふむふむ。
おーし!次はぜったい座るし!
「あと、立たなきゃいけない時に座ったままとか、ズルは駄目だよ!それと立ってる人がソノージョイか、ベエーゲッメか、ヤキーゴーホーって言ったら全員立たないといけないよ!それじゃあ皆ー!わかったかなー?」
「「「「「はーい」」」」」」
みんなで元気よく返事した。
………ソノージョイ?ベエーゲッメ?ヤキーゴーホー?
「男の人!」
わー!
みんな楽しそうに座るとこ、とりあってる。
「髪が肩より短い人!」
えっ?
アタシどっち?
「村に住んでる人!」
これもアタシどっちだし!
ヤマトーさん連れて帰ってきたけど、ヤマトーさんはアタシの夫になったわけじゃないし!
ヤマトーさんが座ってるし、アタシも座ってればいっか………ん?
気のせいかな?
ヤマトーさん………なんか怒ってない?
遊び始めてさいしょの方は、あんなにニコニコしてたのに?
「大人の人!」
あぁ、アタシ大人だ!
座るところどこ!
「背が私より高い人!」
また立たなきゃ!
ん?
今、ヤマトーさんとすれ違ったけど………やっぱりなんか怒ってない?
「白い服を着てない人!」
あ、またか!
近くの座るところがあいたからすぐ座れた!ラクチン!
早めに座れたからわかった!
ヤマトーさんがおかしい!
みんなと同じタイミングで立ったのに、座るところを探してもない!
みんなのまんなかで、うで組んで目を閉じたまま動かない!
表情はかんぺき無表情だった!
アタシ以外の人も、ヤマトーさんがへんなのに気づいたみたい。
ちょっとずつざわざわしてくる。
「何があってもシャーシャの味方だという奴だけ立て」
ヤマトーさんがこどもたちをにらみながらいった。
うん?
シャーシャの味方?
なんのこと?
よくわからない。
「そうか」
アタシたちが動かないのを見て、ヤマトーさんがいった。
「ならお前達は何があってもシャーシャの敵だな」
あ、やばい!
「シャーシャの敵なら俺が相手だ!」
ヤマトーさんが剣を抜いた!
「まってまってまって!」
まずい!
ぜったい止めないとだめだ!
「なんだミミカカ?お前も俺たちの敵か?」
「ちがいます!」
アタシはシャーシャの敵じゃないし!
っていうかヤマトーさんと戦ったらぜったい負けるし!
「なんで!なんで村のみんなを攻撃するんですか!」
「コイツらがシャーシャを苛めたからだ!」
「いじめた?いっしょにあそんでました!ヤマトーさんもちゃんと見てたはずじゃ!」
さっきまでいっしょにいて、ぜんぶ見てたはずなのに!
「ちゃんと見てたぞ?シャーシャちゃんも一緒に遊んでたな」
「ならなんで!」
「シャーシャちゃんが遊んでたのが最初だけだからだ!」
「え?」
「気付かなかったか?男の人、髪が肩より短い人、村に住んでる人、大人の人、背が高い人………覚えてるだけでもこれだ!途中からシャーシャちゃんはずっと座ってたぞ?除け者だ!」
え、そんなの!
「でも、わざとじゃ!」
わざとじゃないはずだし!
「まぁ最後のがなかったら、俺もそう思えなくもなかったがなぁ?」
え、最後?
あ!
「………白い服を着てない人って!」
「これでわざとじゃないとは到底言えまい?」
まずい!
そんなことしたらシャーシャをだいじにしてる、ヤマトーさんがキレるに決まってるし!
なんてばかなことしたの!?
「白い服を着てるのはシャーシャちゃん1人だからな」
そうだ!
これじゃ、頭のいいヤマトーさんならぜったいわかる!
「………」
………なんかアタシをジーって見てるのがいる。
グララ、なんでアタシをまっすぐ見てんの?
なんか自分の服をアピールしてるし。
まぁシャーシャほどじゃないけど、たしかに白いといえば白い?
でもヤマトーさんがこわいからって、アタシを見られても困るんだけど?
「何より、そいつらの顔を見てみろよ?」
ヤマトーさんはグララに気付いてなかったみたいで続けてた。
顔がどうしたの?
「あ………」
子どもたちの顔、自分のやったことがわかってる顔だ。
わるいことして、怒られてるときの顔。
ヤマトーさんがいったとおり、わざとやったんだな………。
「さぁザジョは読み上げた!モッヒケを認めてやるぞ?最期に何か言いたい事はあるか?」
………ふぅ。
どうなるかと思ったけど、やっぱりヤマトーさんはこどもにやさしいんだなぁ。
ちゃんとこどものいうことを聞いてあげるんだ。よかった。
ザジョとかモッヒケとかはわからないけど。
17/01/07 投稿・文の微修正