表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の休息
60/154

<?>ミミカカ、日本男子に翻弄される

■以下の文章とこれまでの文章を読み、各問いに答えなさい。

問1.「カークリニギョ」を適切な日本語に直しなさい。(10点)

問2.「コドーテッゾビ」を適切な哲学用語に直しなさい。(20点)

問3.「テッガテッゾビ」を適切な哲学用語に直しなさい。(30点)

問4.ヤマトーが暫し口に出す「高名な戦士」とは誰か答えなさい。

   またこの人物が残した代表的な著書の名前を答えなさい(各20点)

 アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ。


 村から少し歩いた森の中。

 すごくしずかな森の中。

 だれもいない森の中。

 とにかく森の中。


 森の中に2人の男と女が立ってた。

 1人はヤマトーさん。

 1人はアタシ。

 アタシたちは向き合ってた。


 こんなところでアタシたちは何してるんだろう?

 ふしぎに思うアタシ。

 そしたらちょうどヤマトーさんがしゃべった。


「ミミカカ」

 ヤマトーさんはまっすぐアタシを見てた。

「………?」

 アタシはなにもいわないでヤマトーさんを見た。


「オレはある目的のために旅をしている」

 ヤマトーさんがアタシを見たまましゃべった。

「それがなにかわかるか?」

「………」

 わからないからアタシはだまってヤマトーさんを見てた。


「それはオレの妻にする女をさがすためだ」

「………!」

 そうだったんだ!

 知らなかった!


「………?」

 でも………なんでそれをアタシに言うの?

「オレは世界中のいろんなとこをたびしてきた」

「………」

 アタシはだまってヤマトーさんの話をきいた。


「世界にはいろんな女がいた。すごい美人とか、すごい金持ちとか、すごいムネとか」

 ヤマトーさんが指でかぞえながらいった!

 ムネのときはどのぐらいの大きさか手で大きな丸を作ってた!

 こどものあたまぐらいの大きさがあったし!


「………!」

 やっぱムネか!

 ヤマトーさんもムネがいいのか!


「でもな」

「………?」

 ヤマトーさんがアタシを見た。


「オレの旅はやっとおわった」

 なんでだろ?

「妻にしたい人がやっと見つかったんだ」

「………!」

 それはだれなの!?


「ミミカカ、お前なんだ」

「………!」

 ヤマトーさんはアタシをまっすぐ見てる!


「オレの妻となってほしい」

「………!」

「オレといっしょにニホコクミの修行をしながら、夫婦となろう」

 なるなる!超なるし!


「こどもは男の子と女の子、どっちがいい?」

「………!」

 おぉ!

 どっちがいいかな?


 男ならヤマトーさんみたいに賢くなるんだろうなぁ。

 女ならアタシみたいに戦士にしたいなぁ。

 これ迷うなぁ!

 どっちもいいなぁ………どっちもほしい!

 ヤマトーさんだったらこどもがいっぱいいても育てられるだろうし!

 

 ヤマトーさん教えるのとかじょうずだし!

 たぶん子育てとかじょうずなんだろうなぁ!

 あんまりしゃべらないけど、こどものことよく見てて。

 こどもがなんかにこまったらやさしく教えてくれそう。


 あぁ!なにこれ!すごい幸せ!

 立ってるアタシを前から抱き締めるヤマトーさん!

 いつもみたいに笑ってる!

 何も言えないアタシ!


 それでもヤマトーさんは気にせずアタシに顔を近づけてる!

 え、これ、キスしようとしてる………?

 わー!わー!ちょっとちょっと!

 ………ちょっとなにあれ?


 なんかヤマトーさんの後ろになんかいるし!

 しかもこっち見てる顔がすごいムカつくし!

 人をばかにした顔のグララが、アタシの周りでわちゃわちゃしてる!


 しかもグララを見てたらヤマトーさんいなくなってるし!

 ヤマトーさんを探してたらグララまでいなくなった!

 グララはいいけどヤマトーさんはどこ!


「………ね」

 ヤマトーさんをさがしてたらなんかきこえた。

 ふりむいたらシャーシャがいた。


「………しね」

 シャーシャはいきなり怒ってた!

 ナイフを抜いてきた!


「………ミミカカさんなんか、しんじゃえ!」

 いきなりシャーシャと戦いになった! 

 やっぱりはやい!

 けどよけられる!


 よしつかまえた!

 このまま倒す!

 うでを「シャーシャを離せ」


 振り向いたらヤマトーさんがいた!

 すごくこわいかおだった!

 ヤマトーさんにさわられてアタシは死んだ!


 アタシは死んだけど、そのままヤマトーさんを見てた。

 なぜかヤマトーさんはグララと抱き合ってた。

 グララは何も言わなかったけど、勝ち誇った顔で死んだアタシを見てた。

 すごくくやしかった。




 ガバッ!

「はぁ………」

 さいしょはよかったのに!

 グララが出てきてからさいあくな夢になった!


「む?どうかしたのか?」

 あせかきながら飛び起きたアタシを見たグララが話しかけてきた。

「なんでだいなしにしたグララがおどろいた顔してんの!グララのせいだ!」

って言いそうになるのをがまんする。

 あれは夢。

 すっごいむかついても夢だし。


「はぁ………なんでもない」

 あぁ、ぜんぜんちがう!

 思ってたのとぜんぜんちがう!

 せっかくヤマトーさんと村にもどってきたのにー!


 アタシはヤマトーさんとぜんぜん話してない!

 村にもどってきたヤマトーさんはいつもシャーシャといっしょにいる!

 それはべつにいい!

 いつものことだし!


 でも………グララといっしょにいるのはダメ!

 なんかいきなりヤマトーさんとグララがなかよくなった!

 今までヤマトーさんはグララのこと、つまらないものを見る目で見てたのに!

 最近はわらいながらやさしく話しかけてる!


 そしてもっとダメなことがある!

 アタシ、ヤマトーさんとぜんぜん話してない!

 ヤマトーさん、シャーシャとかグララと話してないときは、なんか考えながらボーっとしてる!


「世界は皆カークリニギョなり。幻の字を用ひるなり、か」

 この前からヤマトーさんがよくひとりごとをいってる。

 なにいってるのか、さっぱりわからない。


「道すがら考ふれば、何とよくカークッタニギョではなきや。糸をつけてもなきに、歩いたり、飛んだり、はねたり、言語迄も云ふは上手のサークなり。来年のボには客にぞなるべき。さてもあだな世界かな。忘れてばかり居るぞと………流石だなぁ」

 やっぱりわからない。


「なんなんですか、それ?」

 わからなかったから聞いてみた。

「ん?あぁ、戦士の道は死ぬ事と見つけた人の他の言葉だ。俺は定期的にこの人の言葉を振り返るようにしてるんだ」

「すごい戦士がいってたほかのことば?」


「そう。所謂テッガテッゾビが提唱され出したのは最近なのに、今を去ること300年程前には、同じ概念をカークリニギョと言い表している。全く素晴らしい知見だ」

 あのー、いわゆるっていわれても………。


「テッガテッゾビ?って………なんですか?」

 ぜんぜん聞いたことないんですけど?

「ふむ、そうだな………ミミカカ、お前は人間だな?」

「え?はい?」

 どういうこと?町とかにいたエルフとかにみえたからたしかめたの?


「うむ。では俺は人間だろうか?」

「ヤマトーさん?………人間です、たぶん」

「おぉ?多分をつけたな?それはなんでだろう?」

「え?そんなの………」

 強すぎたり、若すぎたり、ほんとに同じ人間かまよったから。言ったら怒られるかも?


「そう!ミミカカからすれば、俺が人間なのか判断する方法はないんだ!」

 まよってたら、ヤマトーさんはなんかうなずいてた。ラッキー。

 でもどういうことなのかわからない。


「自分が考えてるって事は自分でわかるけど、他人が考えてる事は自分から知る方法がない………つまり、他人が本当に自分と同じ様に考えているかどうか、保証する方法はないんだ」

 なんかすごいこと言われてる!

 えっと?


 アタシが考えてる事はアタシがわかってる?

 アタシは今考えてるし、ちゃんとわかる、うん。

 ヤマトーさんが考えてる事はアタシはわからない?

 ヤマトーさんが今考えてるかは、アタシにはわからない、うん。

 ………え?


「それって………?」

「そうなんだ………つまり、他人が人間なのかどうかはわからないんだ」

 ………そんなの考えたこともなかった。


「同じ様な概念では、自分が赤い物を見た時と、他人が同じ物を見た時、同じ色に見えているかもわからない。これはクオリアという」

「え、赤色は赤色なんじゃ?………血の色は赤ですよね?ヤマトーさんも血の色が青に見えたりしませんよね?」


「こっちでも貴族はブルーブラッドなのか?………あぁ、いや、それは今はいい。俺も血の色は赤だと思ってるぞ」

 ブルーブラッド?なんなんだろうそれ?

 あとで聞いたら貴族は自分の血は特別だから、領民とは違って青い血が流れてるんだって言ってて、それをブルーブラッドって言うらしい。へぇー。


「やっぱり、血は赤色ですよね?同じ色に見えてますよね?」

「あー………やっぱりクオリアは難しかったか?主観的な観測結果を共有する方法はないっていう事なんだが、そうだな………」

 シュカンテキナカンソクケッカヲキョウユウ?

 すごくむずかしそうなことばが………。


「他人が何を考えてるかなんてわからないよな?」

「えぇ、わかりません」

 うん、それはわからない。


「同じ物を見たって、他人が同じ事を考えるかなんてわからないよな?」

「んー?同じ物を見たんなら同じ事を考えるんじゃ?」

「いや、そんな事はないぞ?例えばミミカカがムムカカさんを見れば、父親だと思うよな?でも俺がムムカカさんを見ても父親とは思わないぞ?」

「あ、そっか」


「そんな訳で、同じ物を見ても同じ事を考えたりしないんだ。それで、ここが本題になるんだが………同じ物を見ても、他人が同じ様に見えるとは限らないんだ」

「えーっと?」

 さっきちょっと失敗したし。ちょっと考えよう。


 同じものが同じように見えるかなんてわからない?うーん?

 さっき、同じものを見たら、同じことを考えるって言った。

 けどわかりやすく同じことを考えないってことを教えてもらった。

 アタシと他の人じゃ、思ってることはちがうんだ。


「………あぁ!そうか!」

 他の人が思ったことはわからないんだ!

「お、わかったか?」

「人が考える事、思う事、あと………感じる事とか?そういうのは、アタシからはわからないんですね!」

 ヤマトーさんが笑顔でうなずいてた!あってた!


「そうそう、そういう事だ。他人が本当に見て、考えて、感じてるかはわからないんだ。俺が赤い物を見て感じる赤色は、ミミカカが見て感じる赤色と、同じかどうかはわからないんだ。それがクオリアだ」

「へぇー………」

 すごいなぁ。そんなの今まで思ったこともなかった。


「だからアタシ以外の人が人間かはわからないんですね」

「あぁ、そうだ………つまり、究極のところ、人間か化け物かを判断する方法はないという事になる」

 ん………?


「化け物は化け物なんじゃ………あ………」

 いってるとちゅうでわかった。

 ヤマトーさんも、アタシがとちゅうでだまった理由がわかったみたいで、うなずいてた。


「もし言葉を喋って、人と同じ姿をした化け物がいれば」

 そんなの、本物の人間となにがちがうのかわからない!

「逆に化け物の姿で、中身は人間だという事もあるかもしれないな」

「そんな化け物とか人間………いるんですか?」

 こわくなってきいてみた!


 人間だと思ってた相手が化け物だったら?

 化け物だと思ってた相手が人間だったら?

 そんなのどうしたらいいの?


「そうなんだよなぁ………コドーテッゾビなら壊せばわかるけど、テッガテッゾビの場合はなぁ………」

 また知らないことばが………。

「コドーテッゾビ?」

「見かけが人間そっくりの化け物だが、傷をつけたら変身が解けて、元の姿に戻るタイプの化け物の事だな」

 そういう化け物が本当にいるんだ………。


「だがテッガテッゾビの場合は、殺しても人間との違いはわからない」

「え?そんなの………」

 殺してもわからないなんて………。

「どうやって見分けたらいいんですか?」


「見分ける方法は」

「方法は?」

「ない」

「ない?」


「人と同じ様に言葉を喋るし、人と同じ様に傷ついて血を流すし、人と同じ様に死体になる」

「………」

「もうこうなれば………化け物を人と見分ける方法なんてないよなぁ………」

 そういってヤマトーさんはなんか考えごとしてた。


 ヤマトーさんはずーっとそんな感じ。

 修行をするときはいっしょだけど、修行が終わったらまた元通り。

 2人と話してるか、なんかむずかしいこと考えてるか。


 村のみんなもヤマトーさんが帰ってきてさいしょはよろこんでたけど、今はがっかり。

 村にもどってきたから、アタシと夫婦になったか、そのつもりがあるってみんなで思ったのに。

 みんなもそうだけどアタシもそうだと思ってたし。

 なのにアタシはほかの2人より、ヤマトーさんと話せてない。


 ん-………。

 やっぱりシャーシャ泣かせたのがやばかったかな?

 ヤマトーさん、シャーシャのことをすごくだいじにしてるから。


 ヤマトーさんはシャーシャが何かしたらぜったい、

「シャーシャちゃんは凄いです。世界で一番の宝物です」

っていう。

 シャーシャもそういってもらうのがうれしいみたい。


 アタシはそんなヤマトーさんの宝物を泣かせちゃったわけで………。

 アタシのこときらいになったかなぁ?

 シャーシャとけんかしてもいいことはなにもない。


 シャーシャが泣いたとき、アタシは目がまっくらになってたおれた。

 ヤマトーさんは手でアタシをさわっただけなのに。

 ………強くなれたと思ったのに。

 なにされたのかぜんぜんわからなかった。

 ヤマトーさんはアタシよりずっとずっと強かった。


 けど………それでわかったこともあった!

「シャーシャちゃんは、信じ難い事に………マホショージョだ」

 こどもなのにすごい強いシャーシャ!

 シャーシャはマホショージョっていうらしい!


「マホショージョは、俺の国に伝わる伝説の戦士の事だ」

 ヤマトーさんの国の伝説の戦士!

「まずマホショージョはニホコクミの中で、最も戦闘力に秀でた者の事だ。そしてそもそもマホショージョに勝てる者は存在しない」

 すっごい強いみたい。

 あとなぜか、マホショージョは美少女しかなれないらしい。なんでだろ?


「じゃあ、マホショージョはヤマトーさんぐらい強いんですか?」

「いや、全然?」

「やっぱりヤマトーさんは強いんですね!」

「あ、違う違う。俺では絶対にマホショージョには勝てない。恐らく戦闘にすらならず、一方的に負ける」

「ヤ、ヤマトーさんが一方的に負ける?」

 

 領主様の兵士たちをいっぱい倒せたアタシを、さわっただけで倒せるヤマトーさんが一方的に負ける?

 マホショージョはそんなに強いの?

 ってことは………そんなマホショージョのシャーシャは、ヤマトーさんよりもっと強くなるの?

 ぜんぜん信じられない。


 けどわかった!

 ヤマトーさんの話を、ちゃんときいたアタシはわかった!

 ヤマトーさんが何者なのか!

 なんでシャーシャより自分が弱いなんていうのかも!


 町でいろんな人をみたけど、ヤマトーさんの剣とかナイフほど、すごい武器をもってた人はいなかった!

 兵士を何人倒してもずっと使えるぐらい、ヤマトーさんのナイフはすごい!


 アタシたちの村で、灰色の狩人(グレイ・ハウンド)を全滅させて!

 町でおなかがすいてるこどもを見つけたら、ごはんを食べさせて!

 シャーシャのことを助けて!


 そして、自分のことはシャーシャより弱いっていう!


「何故なら敵を跳ね除ける戦力も充実しているんです。マホショージョだけでなく、ヒーロという人達も大勢戦ってます。誰も彼も非常識な強さですよ」

「………あのねあのね、ヒーロってね、なに?」

「マホショージョと同じぐらい強い男の人達の事です。凄い武器を使って戦う事と、自らの正体を隠す事と、困ってる人を助けるのが多い事が特徴です。まぁそんなマホショージョ、ヒーロのお陰で、その敵の攻撃が原因で死んだ人は皆無です」

 

 ヤマトーさんそのものだ!

 ヤマトーさんは、ニホコクミの伝説の戦士、マホショージョと同じぐらい強いヒーロだ!

 ヒーロは正体をかくすらしいから、シャーシャが自分より強いって言ってるんだ!


 ヒーロのヤマトーさん!

 マホショージョのシャーシャ!

 アタシもシャーシャみたいなマホショージョにならなきゃ!

16/12/10 投稿・文の修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ