<?>ミミカカ、日本男子に翻弄される
■以下の文章とこれまでの文章を読み、各問いに答えなさい。
問1.「カークリニギョ」を適切な日本語に直しなさい。(10点)
問2.「コドーテッゾビ」を適切な哲学用語に直しなさい。(20点)
問3.「テッガテッゾビ」を適切な哲学用語に直しなさい。(30点)
問4.ヤマトーが暫し口に出す「高名な戦士」とは誰か答えなさい。
またこの人物が残した代表的な著書の名前を答えなさい(各20点)
アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ。
村から少し歩いた森の中。
すごくしずかな森の中。
だれもいない森の中。
とにかく森の中。
森の中に2人の男と女が立ってた。
1人はヤマトーさん。
1人はアタシ。
アタシたちは向き合ってた。
こんなところでアタシたちは何してるんだろう?
ふしぎに思うアタシ。
そしたらちょうどヤマトーさんがしゃべった。
「ミミカカ」
ヤマトーさんはまっすぐアタシを見てた。
「………?」
アタシはなにもいわないでヤマトーさんを見た。
「オレはある目的のために旅をしている」
ヤマトーさんがアタシを見たまましゃべった。
「それがなにかわかるか?」
「………」
わからないからアタシはだまってヤマトーさんを見てた。
「それはオレの妻にする女をさがすためだ」
「………!」
そうだったんだ!
知らなかった!
「………?」
でも………なんでそれをアタシに言うの?
「オレは世界中のいろんなとこをたびしてきた」
「………」
アタシはだまってヤマトーさんの話をきいた。
「世界にはいろんな女がいた。すごい美人とか、すごい金持ちとか、すごいムネとか」
ヤマトーさんが指でかぞえながらいった!
ムネのときはどのぐらいの大きさか手で大きな丸を作ってた!
こどものあたまぐらいの大きさがあったし!
「………!」
やっぱムネか!
ヤマトーさんもムネがいいのか!
「でもな」
「………?」
ヤマトーさんがアタシを見た。
「オレの旅はやっとおわった」
なんでだろ?
「妻にしたい人がやっと見つかったんだ」
「………!」
それはだれなの!?
「ミミカカ、お前なんだ」
「………!」
ヤマトーさんはアタシをまっすぐ見てる!
「オレの妻となってほしい」
「………!」
「オレといっしょにニホコクミの修行をしながら、夫婦となろう」
なるなる!超なるし!
「こどもは男の子と女の子、どっちがいい?」
「………!」
おぉ!
どっちがいいかな?
男ならヤマトーさんみたいに賢くなるんだろうなぁ。
女ならアタシみたいに戦士にしたいなぁ。
これ迷うなぁ!
どっちもいいなぁ………どっちもほしい!
ヤマトーさんだったらこどもがいっぱいいても育てられるだろうし!
ヤマトーさん教えるのとかじょうずだし!
たぶん子育てとかじょうずなんだろうなぁ!
あんまりしゃべらないけど、こどものことよく見てて。
こどもがなんかにこまったらやさしく教えてくれそう。
あぁ!なにこれ!すごい幸せ!
立ってるアタシを前から抱き締めるヤマトーさん!
いつもみたいに笑ってる!
何も言えないアタシ!
それでもヤマトーさんは気にせずアタシに顔を近づけてる!
え、これ、キスしようとしてる………?
わー!わー!ちょっとちょっと!
………ちょっとなにあれ?
なんかヤマトーさんの後ろになんかいるし!
しかもこっち見てる顔がすごいムカつくし!
人をばかにした顔のグララが、アタシの周りでわちゃわちゃしてる!
しかもグララを見てたらヤマトーさんいなくなってるし!
ヤマトーさんを探してたらグララまでいなくなった!
グララはいいけどヤマトーさんはどこ!
「………ね」
ヤマトーさんをさがしてたらなんかきこえた。
ふりむいたらシャーシャがいた。
「………しね」
シャーシャはいきなり怒ってた!
ナイフを抜いてきた!
「………ミミカカさんなんか、しんじゃえ!」
いきなりシャーシャと戦いになった!
やっぱりはやい!
けどよけられる!
よしつかまえた!
このまま倒す!
うでを「シャーシャを離せ」
振り向いたらヤマトーさんがいた!
すごくこわいかおだった!
ヤマトーさんにさわられてアタシは死んだ!
アタシは死んだけど、そのままヤマトーさんを見てた。
なぜかヤマトーさんはグララと抱き合ってた。
グララは何も言わなかったけど、勝ち誇った顔で死んだアタシを見てた。
すごくくやしかった。
ガバッ!
「はぁ………」
さいしょはよかったのに!
グララが出てきてからさいあくな夢になった!
「む?どうかしたのか?」
あせかきながら飛び起きたアタシを見たグララが話しかけてきた。
「なんでだいなしにしたグララがおどろいた顔してんの!グララのせいだ!」
って言いそうになるのをがまんする。
あれは夢。
すっごいむかついても夢だし。
「はぁ………なんでもない」
あぁ、ぜんぜんちがう!
思ってたのとぜんぜんちがう!
せっかくヤマトーさんと村にもどってきたのにー!
アタシはヤマトーさんとぜんぜん話してない!
村にもどってきたヤマトーさんはいつもシャーシャといっしょにいる!
それはべつにいい!
いつものことだし!
でも………グララといっしょにいるのはダメ!
なんかいきなりヤマトーさんとグララがなかよくなった!
今までヤマトーさんはグララのこと、つまらないものを見る目で見てたのに!
最近はわらいながらやさしく話しかけてる!
そしてもっとダメなことがある!
アタシ、ヤマトーさんとぜんぜん話してない!
ヤマトーさん、シャーシャとかグララと話してないときは、なんか考えながらボーっとしてる!
「世界は皆カークリニギョなり。幻の字を用ひるなり、か」
この前からヤマトーさんがよくひとりごとをいってる。
なにいってるのか、さっぱりわからない。
「道すがら考ふれば、何とよくカークッタニギョではなきや。糸をつけてもなきに、歩いたり、飛んだり、はねたり、言語迄も云ふは上手のサークなり。来年のボには客にぞなるべき。さてもあだな世界かな。忘れてばかり居るぞと………流石だなぁ」
やっぱりわからない。
「なんなんですか、それ?」
わからなかったから聞いてみた。
「ん?あぁ、戦士の道は死ぬ事と見つけた人の他の言葉だ。俺は定期的にこの人の言葉を振り返るようにしてるんだ」
「すごい戦士がいってたほかのことば?」
「そう。所謂テッガテッゾビが提唱され出したのは最近なのに、今を去ること300年程前には、同じ概念をカークリニギョと言い表している。全く素晴らしい知見だ」
あのー、いわゆるっていわれても………。
「テッガテッゾビ?って………なんですか?」
ぜんぜん聞いたことないんですけど?
「ふむ、そうだな………ミミカカ、お前は人間だな?」
「え?はい?」
どういうこと?町とかにいたエルフとかにみえたからたしかめたの?
「うむ。では俺は人間だろうか?」
「ヤマトーさん?………人間です、たぶん」
「おぉ?多分をつけたな?それはなんでだろう?」
「え?そんなの………」
強すぎたり、若すぎたり、ほんとに同じ人間かまよったから。言ったら怒られるかも?
「そう!ミミカカからすれば、俺が人間なのか判断する方法はないんだ!」
まよってたら、ヤマトーさんはなんかうなずいてた。ラッキー。
でもどういうことなのかわからない。
「自分が考えてるって事は自分でわかるけど、他人が考えてる事は自分から知る方法がない………つまり、他人が本当に自分と同じ様に考えているかどうか、保証する方法はないんだ」
なんかすごいこと言われてる!
えっと?
アタシが考えてる事はアタシがわかってる?
アタシは今考えてるし、ちゃんとわかる、うん。
ヤマトーさんが考えてる事はアタシはわからない?
ヤマトーさんが今考えてるかは、アタシにはわからない、うん。
………え?
「それって………?」
「そうなんだ………つまり、他人が人間なのかどうかはわからないんだ」
………そんなの考えたこともなかった。
「同じ様な概念では、自分が赤い物を見た時と、他人が同じ物を見た時、同じ色に見えているかもわからない。これはクオリアという」
「え、赤色は赤色なんじゃ?………血の色は赤ですよね?ヤマトーさんも血の色が青に見えたりしませんよね?」
「こっちでも貴族はブルーブラッドなのか?………あぁ、いや、それは今はいい。俺も血の色は赤だと思ってるぞ」
ブルーブラッド?なんなんだろうそれ?
あとで聞いたら貴族は自分の血は特別だから、領民とは違って青い血が流れてるんだって言ってて、それをブルーブラッドって言うらしい。へぇー。
「やっぱり、血は赤色ですよね?同じ色に見えてますよね?」
「あー………やっぱりクオリアは難しかったか?主観的な観測結果を共有する方法はないっていう事なんだが、そうだな………」
シュカンテキナカンソクケッカヲキョウユウ?
すごくむずかしそうなことばが………。
「他人が何を考えてるかなんてわからないよな?」
「えぇ、わかりません」
うん、それはわからない。
「同じ物を見たって、他人が同じ事を考えるかなんてわからないよな?」
「んー?同じ物を見たんなら同じ事を考えるんじゃ?」
「いや、そんな事はないぞ?例えばミミカカがムムカカさんを見れば、父親だと思うよな?でも俺がムムカカさんを見ても父親とは思わないぞ?」
「あ、そっか」
「そんな訳で、同じ物を見ても同じ事を考えたりしないんだ。それで、ここが本題になるんだが………同じ物を見ても、他人が同じ様に見えるとは限らないんだ」
「えーっと?」
さっきちょっと失敗したし。ちょっと考えよう。
同じものが同じように見えるかなんてわからない?うーん?
さっき、同じものを見たら、同じことを考えるって言った。
けどわかりやすく同じことを考えないってことを教えてもらった。
アタシと他の人じゃ、思ってることはちがうんだ。
「………あぁ!そうか!」
他の人が思ったことはわからないんだ!
「お、わかったか?」
「人が考える事、思う事、あと………感じる事とか?そういうのは、アタシからはわからないんですね!」
ヤマトーさんが笑顔でうなずいてた!あってた!
「そうそう、そういう事だ。他人が本当に見て、考えて、感じてるかはわからないんだ。俺が赤い物を見て感じる赤色は、ミミカカが見て感じる赤色と、同じかどうかはわからないんだ。それがクオリアだ」
「へぇー………」
すごいなぁ。そんなの今まで思ったこともなかった。
「だからアタシ以外の人が人間かはわからないんですね」
「あぁ、そうだ………つまり、究極のところ、人間か化け物かを判断する方法はないという事になる」
ん………?
「化け物は化け物なんじゃ………あ………」
いってるとちゅうでわかった。
ヤマトーさんも、アタシがとちゅうでだまった理由がわかったみたいで、うなずいてた。
「もし言葉を喋って、人と同じ姿をした化け物がいれば」
そんなの、本物の人間となにがちがうのかわからない!
「逆に化け物の姿で、中身は人間だという事もあるかもしれないな」
「そんな化け物とか人間………いるんですか?」
こわくなってきいてみた!
人間だと思ってた相手が化け物だったら?
化け物だと思ってた相手が人間だったら?
そんなのどうしたらいいの?
「そうなんだよなぁ………コドーテッゾビなら壊せばわかるけど、テッガテッゾビの場合はなぁ………」
また知らないことばが………。
「コドーテッゾビ?」
「見かけが人間そっくりの化け物だが、傷をつけたら変身が解けて、元の姿に戻るタイプの化け物の事だな」
そういう化け物が本当にいるんだ………。
「だがテッガテッゾビの場合は、殺しても人間との違いはわからない」
「え?そんなの………」
殺してもわからないなんて………。
「どうやって見分けたらいいんですか?」
「見分ける方法は」
「方法は?」
「ない」
「ない?」
「人と同じ様に言葉を喋るし、人と同じ様に傷ついて血を流すし、人と同じ様に死体になる」
「………」
「もうこうなれば………化け物を人と見分ける方法なんてないよなぁ………」
そういってヤマトーさんはなんか考えごとしてた。
ヤマトーさんはずーっとそんな感じ。
修行をするときはいっしょだけど、修行が終わったらまた元通り。
2人と話してるか、なんかむずかしいこと考えてるか。
村のみんなもヤマトーさんが帰ってきてさいしょはよろこんでたけど、今はがっかり。
村にもどってきたから、アタシと夫婦になったか、そのつもりがあるってみんなで思ったのに。
みんなもそうだけどアタシもそうだと思ってたし。
なのにアタシはほかの2人より、ヤマトーさんと話せてない。
ん-………。
やっぱりシャーシャ泣かせたのがやばかったかな?
ヤマトーさん、シャーシャのことをすごくだいじにしてるから。
ヤマトーさんはシャーシャが何かしたらぜったい、
「シャーシャちゃんは凄いです。世界で一番の宝物です」
っていう。
シャーシャもそういってもらうのがうれしいみたい。
アタシはそんなヤマトーさんの宝物を泣かせちゃったわけで………。
アタシのこときらいになったかなぁ?
シャーシャとけんかしてもいいことはなにもない。
シャーシャが泣いたとき、アタシは目がまっくらになってたおれた。
ヤマトーさんは手でアタシをさわっただけなのに。
………強くなれたと思ったのに。
なにされたのかぜんぜんわからなかった。
ヤマトーさんはアタシよりずっとずっと強かった。
けど………それでわかったこともあった!
「シャーシャちゃんは、信じ難い事に………マホショージョだ」
こどもなのにすごい強いシャーシャ!
シャーシャはマホショージョっていうらしい!
「マホショージョは、俺の国に伝わる伝説の戦士の事だ」
ヤマトーさんの国の伝説の戦士!
「まずマホショージョはニホコクミの中で、最も戦闘力に秀でた者の事だ。そしてそもそもマホショージョに勝てる者は存在しない」
すっごい強いみたい。
あとなぜか、マホショージョは美少女しかなれないらしい。なんでだろ?
「じゃあ、マホショージョはヤマトーさんぐらい強いんですか?」
「いや、全然?」
「やっぱりヤマトーさんは強いんですね!」
「あ、違う違う。俺では絶対にマホショージョには勝てない。恐らく戦闘にすらならず、一方的に負ける」
「ヤ、ヤマトーさんが一方的に負ける?」
領主様の兵士たちをいっぱい倒せたアタシを、さわっただけで倒せるヤマトーさんが一方的に負ける?
マホショージョはそんなに強いの?
ってことは………そんなマホショージョのシャーシャは、ヤマトーさんよりもっと強くなるの?
ぜんぜん信じられない。
けどわかった!
ヤマトーさんの話を、ちゃんときいたアタシはわかった!
ヤマトーさんが何者なのか!
なんでシャーシャより自分が弱いなんていうのかも!
町でいろんな人をみたけど、ヤマトーさんの剣とかナイフほど、すごい武器をもってた人はいなかった!
兵士を何人倒してもずっと使えるぐらい、ヤマトーさんのナイフはすごい!
アタシたちの村で、灰色の狩人を全滅させて!
町でおなかがすいてるこどもを見つけたら、ごはんを食べさせて!
シャーシャのことを助けて!
そして、自分のことはシャーシャより弱いっていう!
「何故なら敵を跳ね除ける戦力も充実しているんです。マホショージョだけでなく、ヒーロという人達も大勢戦ってます。誰も彼も非常識な強さですよ」
「………あのねあのね、ヒーロってね、なに?」
「マホショージョと同じぐらい強い男の人達の事です。凄い武器を使って戦う事と、自らの正体を隠す事と、困ってる人を助けるのが多い事が特徴です。まぁそんなマホショージョ、ヒーロのお陰で、その敵の攻撃が原因で死んだ人は皆無です」
ヤマトーさんそのものだ!
ヤマトーさんは、ニホコクミの伝説の戦士、マホショージョと同じぐらい強いヒーロだ!
ヒーロは正体をかくすらしいから、シャーシャが自分より強いって言ってるんだ!
ヒーロのヤマトーさん!
マホショージョのシャーシャ!
アタシもシャーシャみたいなマホショージョにならなきゃ!
16/12/10 投稿・文の修正