表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の休息
59/154

日本男子、加護を施す

 俺は今、様々な施しをしていた。


 いやぁ、何はともあれグララだ。

 とりあえず俺が「煩わしい」というそれだけで、音を奪った等と露呈しては不味い!

 せっかくシャーシャちゃんが周囲を信頼して、幼女モードになってくれたというのに!

 それが傍にいた男が、自分勝手に他者に害を及ぼし、それを放ったらかしにして、挙句忘れる様な奴と知ってしまったら?

 人間不信になってしまうかもしれない!


 豹変したシャーシャちゃんはすこぶる可愛い。

 今まではどこか探り探り、警戒心の様なものが常にあり、緊張感を漂わせていた。

 それが今や俺の袖を引いて「あのねあのね」と言ってくる。

 膝を曲げて目の高さを合わせると、内緒話でもするみたいに耳元でこしょこしょと喋ったりする。

 耳を傾けて一通り話を聞いて、目を合わせるとニッコリ笑う。


 一見すれば心温まる光景だが、俺はこの行動の変化には感動すら覚える。

 シャーシャちゃんが自主的に、なんでもない話をしてくるのは、それまで少なかった。

 したい事、気になる事があっても遠慮して、必要性、緊急性のある要求しかしてこない。

 それが、まだ不自然さがあるとはいえ、なんでもない事でも伝えてくる様になった。


 ちなみに幼児退行したみたいに見えるが人間、そんな簡単に幼児退行したりしないと思う。

 自我に影響を及ぼす様な事態を引き起こすとなれば、相当強力な心理的ショックだろう。

 だがそんなものが町から村に移動しただけの1日にあったとは思えない。


 だからアレは豹変したんじゃなく………試してるだけだろう。

 シャーシャちゃんは大人に甘えられる環境で育ったとは到底思えない。

 なので実際に、子供の様に振る舞う事でどこまで許容されるか、推し量っている最中なのだと思われる。

 小さい子供が悪戯をする理由も、相手がどのレベルまで許すのか、反応を見て調べる為らしい。

 シャーシャちゃんの甘える事で、俺達がどのレベルまで許すのかを試しているのだろう。


 まぁそこまで明確に考えてやっているかはわからないが。

 少なくとも自分を押し殺さなくてもいいとは、どこかで考えたんだろう。

 年相応より幼い自我を剥き出しにできた、という事だと予測している。


 その結果、感情を持て余して暴走したのが、ミミカカちゃんとの喧嘩だろう。

 反抗は自我の芽生えだ。主張する事を覚え、独立した自我を確立する第一歩目だ。

 理不尽に立ち向かえ、シャーシャちゃん!


 尚シャーシャちゃん、言動は幼くなってるが、別に能力は変わってない模様。

 口調に惑わされそうだが、記憶・知識・運動能力・魔法にも陰りは見えない。

 理不尽なんか物理的に粉砕だ、シャーシャちゃん!


 まぁ全て俺が勝手に予想しているだけの事なので、真相は闇の中だ。

 恐らくシャーシャちゃん自身だって把握していまい。

 自分の感情・考えの源泉を知っている人間なんて、そうそういないだろうから。


 まぁシャーシャちゃんは思うままに健やかに成長して欲しい。

 大人としてしっかり見守っていこう。


 俺にまともな性欲がなくてよかった。

 そもそも女性というのは男性に比べて早熟な傾向にあるみたいだし。

 加えてシャーシャちゃんはかなり聡明と言っていい。

 もし接する中に邪念があれば確実にそれを察するだろう。


 よくあるファンタジーハーレムラノベで、手を出さない主人公ってすごいなぁと思う。

 舞台となってる文化レベル次第だが、普通に一発まぐわいそうなもんだ。

 一般的に年頃の男であれば、美少女と旅してればあわよくばとか思いそうなもんだ。

 それもなんら問題なく両想いだというのに。


 なのに手を出さないって事は………精神的な問題に起因して、そういう元気が湧かないとかか?一見そうは見えないが。

 或いは単純に仲間と行動する都合上、人間関係を気にしての事だろうか?案外打算的だなぁ。

 どっちにしろ、一見した印象と違って、実に業が深そうだ。

 閑話休題。




「アメダーム食うか?」

 まぁラノベ主人公はどうでもいい。

 大事なのは俺の悪行が露呈しない事だ。

 先手を打ってグララを気遣っておこう。

 幸いグララは楽しそうに笑ってる。


「交尾してる犬でも見かけたのか?」

 あ、口を滑って軽口が出た。

 俺は頭の中で茶化す様な事を考える事が多い。別に悪意や他意はない。

 普通に悪癖と言えるが、習慣化しているのだ。


 無口な質なのでそれが露呈する事は少ない。

 おそらく内に溜め込む事が多い故の反動だろう、と自分では分析している。

 口に出さない思いは消える訳ではなく、その中でくすぶり続けるのだ。


 ちょっと仲良くなったり、安心するとつい口を滑らせてしまう。

 そして「そんな人だとは思わなかった」みたいな事を言われて幻滅される。

 それが俺の人間関係の終焉の典型的なパターンだ。

 俺自身はいつだってこういう性格で、何も変わってないというのに。

 勝手にこうに違いないと決めつけて、勝手に失望するとは、本当に勝手な話だといつも思う。


「まぁグララが楽しそうだと俺は安心するよ、うん」

 取り繕う様に言っておく。

 実際グララが無音(ローア)に気付かないなら安心だ。




「ヤマトー殿は、我のどんな所が好きなのだ?」

「………」

 思わず「は?」と怪訝な顔で言い返すところだった。

 いきなり何を言い出すんだこのアホは?


 あー、アレか?

 日本人は精神を内に秘める事を美徳とするが、外国人はオープンにする事が常とかそういう違いのせいか?

 或いはグララ自身も能力の低さを自覚して、何故自分が旅の同行を許されているのか気になったとかか?


「あー」

「あー?」

「そのだな………」

「そのなんなのだ?」

 うわ、答えにくい!俺はハゲの人を指差して「ハゲ」と罵れる程勇気はない!


「声が………」

「声が?」

「優しそうな感じだよね」

 とりあえず無難そうな事を言ってみる。

 別に声だけで優しいか怖いかなんてわからないし、適当な事言ってんなぁと自分でも思う。


「ふむ!声とな!そのような事を言われたのは初めてなのだ!」

 だけどグララは嬉しそうだ。

 あぁ………グララってポンコツだけどいい奴だなぁ。


「あー、友達とか多そうだよ、うん」

 ポンコツだけどいい奴だし、友達とか多いかもしれない。ポンコツだけど。

 ………なんか人の評価を気にする奴に「俺(私)の事どう思う?」って聞かれた時の返答みたいだ。


 ………職場のアラサー女がそういう奴だったなぁ。

 俺にモーションかけんなBBAが!

 俺の女性不信の原因の3割程を司るクソBBAめ!


「ほら私ってぇ、けっこう大人しいでしょお?」

 いえいえそんな事はございませんよ。厚かましいとか、鬱陶しいとか評するべきです。

 大人しくしててほしいとは数知れず思いましたが。

 むしろ音沙汰なくなってほしいと思いましたが。


「私は年上だからさぁ」

 えぇ、そのとおりですね。もっと適切に言えば売れ残りとか産業廃棄物だとかです。

 結婚はしないだけとか言ってますけどね。いい人は相手の方がほっとかないんです。

 今まで異性と接点があった上で交際経験ないんなら、それはただ魅力が皆無なだけです。


「私の事どう思う?」

 死んで欲しいと常日頃思っています。目障りだなぁ。邪魔だなぁ。

 いつもヒステリックに、その場に居ない誰かの悪口を言ってるだけで、存在価値が見当たりません。

 貴方と比べれば電信柱か郵便ポストの方が、静かな分よっぽど魅力的に思えます。

 むしろ貴方より魅力を感じない物を見つける方が難しいです。


「本当っキモいわっ!」

 本当にキモいですよ。その年になって形容詞が「キモい」だけとか。神経とか生まれとか育ちとか色々疑います。本当にキモいです。

 あとその年で「かわいい~」とかいうのやめて下さい。無理です。本当無理です。


 ………本当は声に出して言ってやりたいが、流石に俺も社会の中で生きてた人なのでそこまで自由にはできない。

 なんで男って我慢しなきゃいけないんだろう。言ったら確実に俺が悪者扱いになる。

 これ性別が逆だったら、普通に言ってきた方が悪くなるだろ。世の中おかしい。


「俺って結構ワルだろ?ちょっと年上だけどさ、俺の事どう思う?あぁうぜぇ~。すげぇ」

 こんな言動の自分より10程年上の男と、結婚したくて堪らない女だけ俺に反論する事を許す。


 一度太腿擦ってきた時は思わず、キレかけた。

 他人から太腿を撫でられる経験をしてみるといい。

 例え気心が知れた相手でも、鳥肌が立つレベルでゾクゾクする。

 それが好意を寄せた相手ならいいが、生理的に嫌悪感のある相手なら、ゾクゾクの意味は全く変わる。

 俺はその経験から痴漢だけはすまいと心に決めた。まぁ経験した事がなくても痴漢しないのは当たり前の話だが。


 ………まぁそんなこんなで、関わり合いたくない相手をいなす、当たり障りのない褒め方の語録は俺の辞書に登録されている。

「ふむ!友達が多そうとな!そのような事を言われたのは初めてなのだ!」

 俺の対人スキルは異世界でも有効な様でグララも嬉しそうに笑っている。

 ………いや、直ぐに腑に落ちない顔になった。


「………どういう意味なのだ?」

 ですよねー。「好きなところ」が、「友達多そうなところ」じゃまぁ納得すまい。

 あのクソBBA、一応分別があったのか「自分の好きなところ」じゃなく、「いいところ」を聞いてきてたからそのまま流用できなかった。お前にいいところなんざねぇよ!

「あー、そりゃあれだ、あれ、うん、あれ」

 活動しろ、俺の灰色の脳細胞!コカイン中毒者よりは現実的な解決方法を我に授け給え!


 因みに俺が好きな探偵は灰色の脳細胞でも、コカイン中毒者でもない。

 ついでに少年の事件簿でも、未来少年・ザ・グレートでもない。

 占星術が得意な人だ。あのシリーズのカタルシスは他にない圧倒的な魅力と言える。

 しかし好みかどうかに関わらず、どんな推理モノであれ共通する特徴がある。

 事件の方がほっとかないのか、何故かいつも探偵は殺人事件と遭遇するの………だ?


「周りの人がほっとかないとかそんな意味だよ、うん」

 それだ!ほっとかないんだ!

「それだけ魅力的な人間に見えるって意味だ、うん」

 どうよ!この回答!ちゃんと意味の繋がる形で答えたぞ!

 得意げに笑っちゃう神誉さん!


「おぉ!そうかそうか!我は魅力的か!ふふふふふ!」

 この答えにはグララもご満悦の模様!

 百点満点の回答だろう!


「他には!他には何かないのか?」

「………」

 顧客満足度が高すぎてリピートが発生したらしい。

 一斉放出したところだからもう在庫はないのに。


「えっとよ………」

 がんばれ!俺!なんかひねり出せ!

 がんばれがんばれヤマトー!取れないボールがあるものか!構えたミットで受け止めて、ズバーンとイカした返しを!


「なんなのだ!もったいぶらず早く言うのだ」

 えぇい、急かすな!

 座ってろこのポンコツ!

 お前はもっと落ち着け!


 グララはもう少し自分を大切にしてもいいんじゃないだろうか?

 敵になんら有効な対抗策を持っていないのに、危険な旅についてくるとはどういうつもりなんだろう?

 絶対役に立ってみせるとまで豪語してたから、なんか切り札でもあるかと思ったが、別にそんなものないみたいだ。

 見かけは美人なんだし、俺みたいに適当な人生を送らなくてもといいと思うんだが。

 愛想よくしてりゃ、適当な男がなんとかしてくれそうなもんを。


 それが俺と同行すると決めるなり、料理を4皿頼むような図々しい性格をしてる。

 他にも貧民の子達にご飯を食べさせた時には、我先にお代わりする様な阿婆擦れぶりである。

 ちなみに阿婆擦れという言葉は本来、ビッチとかそういう意味じゃない。

 勘違いされやすいが厚かましいという意味の言葉である。風評被害さで言えば絶倫と似ている。


 ふむ、厚かましい?

 言葉は表現の仕方次第で、その捉え方を変える事ができる。

 気違いの謙譲語が奇抜(エキセントリック)で、尊敬語が芸術家(アーティスト)である様に。


 グララのこの向こう見ず且つ無遠慮な性質も、言い換えれば褒める様な言葉にできる筈だ。

 不躾?無恥?傲慢?大柄?………いかんな。直接の言い換えではダメだ。もう少し上方補正。

 傍若無人?単細胞?一本気?猪突猛進?直情径行?………そうだ!


「そのよ、一所懸命な、ところ、とか………?」

 厚かましいの言い換えが一所懸命でいいんだろうか?ちょっと疑問。

「一所懸命とは、どういう事なのだ?」

 そんな内心の動揺を見透かす様に勢い込んだグララが尋ねてくる。

 おべんちゃらでどうにかしよう。面倒くさいなぁ。


「うまくは言えないが………何をするにしてもさ、一所懸命、全力でやるってのは大事な事だと思うんだ………そういうのはいいと思う」

 苦しいながらもそれっぽい言葉を捻り出してみる。

 知り合うなり朝飯4皿たかろうとしたのも、貧民街の子達より先にお代わりしたのも。

 全て生きるのに一所懸命なのだと言えない事もない………と思わなくもなくば虎子を得ず。


「………」

 グララが黙ってしまった………。

 やっぱ押しが弱かったかなぁ?


「ヤマトー殿………」

「うぉ!?」

 いきなりタックルされた!?

 いくら気に食わないからっていきなり物理攻撃ですか!

 全くこれだから女って奴はヒステリックで手に負えない!

 奴等ちょっと気に食わない事があったら、直ぐ叩いてきて物投げてきやがる!


「ヤマトー殿!ヤマトー殿!」

 ムニュ。

 うわ、コイツの胸すげぇ!

 同じ脂肪でも一山いくらなバラ肉では同じ感触にはなるまい!

 その柔らかさも暖かさも全く違う!


 いや………売られてる肉は冷蔵されているからか!?

 もしかしたらスーパーで売られてる一山いくらの駄肉も………?

 ほんのり人肌に温めたらこの魔法の感触になるのか!

 日本に戻れたら試してみよう!


 そんな馬鹿な事を考えるぐらい、おっぱいの感触は凄かった!

 灰色の脳細胞が全てピンク色になりそうだ!

 いやぁ、おっぱいっていいな!

 胸が全てだっていう人の主張が少し理解できた!

 ………いかんいかん!意識が流されそうというか完全に流されたぞ!


「グララ!おいグララ!」

「何なのだヤマトー殿?」

「離れろ!」

 シャーシャちゃんの前で尊敬できる大人でなければ!

 胸に全てを委ねる様な奴に、シャーシャちゃんを任せる訳にはいかない!


「嫌なのだ!離れぬ!」

 だが()()()()()()()グララは聞いてくれない!

 シャーシャちゃんとミミカカちゃんの目線が気になる!

 っていうか2人ともこっち見てるのに表情が全く読めない!

 すげぇ怖いんだけど!


「離れろ!」

「離れぬと言ったら離れぬ!」

 ちょっとパニック気味に繰り返す!


「離れてくれ」

「ぬ?」

 思わず懇願する!

 するとグララも反応してくれた!


 ごめん、グララ。

 日本人として許せない事がある。

 仕方のない事なんだとは思う。

 文化的な違いとか、習慣の違いとか。


 君の体臭は、その………臭い。


「我慢、できなくなる………」

 ずっとお風呂に入ってない様な、獣臭い酸っぱい生臭さは無理だ!

 綺麗な水の貴重さとか、あと体質的な問題とか、色んな理由があるんだっていうのはわかる!

 けどお風呂大好き綺麗好き民族の日本人としてこれは無理!

 危険物を扱う様に緊張しながら、両手で両肩を押して遠ざけて安堵する!餌付かなかった俺は偉い!




 グララさんのワイルドビネガーリアルスメルアタックを辛うじて凌いで一息ついた後。

 俺は町で4人が分散していた時、何があったのかを確認した。


「よく初の実戦で見事に戦い抜きました。正直、あの野蛮極まりない下衆共の毒牙にかかっていないかと、気が気でありませんでした。勝利した実力も見事ですが何より、その胆力も驚嘆すべきものです」

 心配は無用だった様だ。

 ミミカカちゃんに至っては、見様見真似だけで変身の魔法まで使ってみせた。

 だが………。


「特にシャーシャちゃんはよく頑張りましたね。火蜥蜴(サーちゃん)に助けを呼べる位置の見極め。戦力の分析を行った上での計画的な逃走、そして恐怖の克服、そこからの反撃………実に冷静な判断ができました。シャーシャちゃんは世界で一番です」

 本当に凄いのはシャーシャちゃんだ。


 空調管理(エアコ)の効果範囲にいち早く目を付け、範囲外の敵を高火力殲滅。

 冷静に後退しながらも敵を減らし、そのまま待ち伏せで誘引撃滅。

 しかもこの間、戦闘能力のない味方を護送してみせている。

 それも知らない人、特に粗野な人(アメリカ)を怖がる弱点を克服して。


 まぁ一番驚かされたのは方位磁石を使って俺を探した事だが。

 すげぇなぁ魔法。やっぱ魔法だけあってなんでもありだわ………。

 俺、体から磁力でも出してるんだろうか?覆面狩りでも始めるか?


「それに引き換え………」

「ぬ?」

「分かっていた事とはいえなぁ」

 ため息が出る。


 グララさん、流石はポンコツの面目躍如。

 2人の戦闘に何の貢献もしてない。

 一応1人逃げ出した事で結果的に囮となった様だが。


「我が戦わなかったとでも思っておるのか!」

「先に言っておくが、グララが使ったと言い張ってる魔法は、間違いなくシャーシャちゃんの使った魔法だからな?」

「ぐっ!」

 しかもその時の追手を焼いた炎を、自分が出したと勘違いしてたみたいだし。


「いっそ見捨てるか?」

「ぐぐぐぐっ!?」

 余りに魅力的過ぎる自分の発言に一瞬、本気で検討しかかる。


「それはできないよな………グララを投げ出してはならない」

 が、駄目だ!

 それは絶対許されない!


「大切なものを守るのは自分の手と意志だ」

 人としての挟持を守れるかどうかは、自らに懸かっている!

「どんな困難であっても成し遂げなければ」

「ヤマトー………殿?」

 俺の考えている事等、さっぱりわかっていないだろう、グララでもわかるように宣言してやる。


「守るよグララ、お前の事。これは誓いだ」

 何故なら実力主義は(アメリカ)の社会制度だからだ!

 あんな底の浅い国の制度を取り入れたりすれば、その崩壊は必至!

 世界を導く偉大な日本の社会制度は終身雇用だ!

 俺は日本人でありたい!

 グララを見捨てる事は、許されざる(アメリカ)へ身を落とす事に等しい!


「そうだな………これを持っていて欲しい。俺の命より大切なものだ」

 だが………このグララ(ポンコツ)を命を懸けて守ると言うのは困難過ぎる!

 そこで誉れ高い日章旗を渡しておく!

 これでグララは無価値な人から一気に国の誇りにランクアップ!

 俄然守る気が増してくるというものだ!


 グララは誉れある日章旗を手にした事からか、大変嬉しそうだ。うんうん。

「ぬへへへ………」

「「「うわぁ………」」」

 思わず身を引く!なんかよだれ垂らしてんだけど!

 コイツに日の丸を渡したのは間違いだったかなぁ………汚してくれるなよ?




 さて。

 グララさんを見捨てないと言っても問題がある。

 体を動かす事は壊滅的。

 魔法の威力は虚無的。


 いくら見捨てないと言っても、役立たずを養うつもりはない。

 働かざるもの食っちゃ寝る、というやつだ。

 見捨てない代わりに役立ってもらわなければならない。


 魔法少女覚醒計画の副産物を使う。

16/12/03 投稿・ルビの修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ