<?>グララ、日本男子の加護を得る
■以下の文章とこれまでの文章を読み、各問いに答えなさい。
問1.ヤマトーのグララに対する心情を答えなさい。(10点)
問2.ヤマトーがグララと行動を共にする理由を答えなさい。(20点)
問3.グララが魔法を行使できる様になる方法を答えなさい。(30点)
我こそはグララ・グラーバだ!
ふふふ!
ふふふふふ!
ふふふふふふふ!
ふふふふふふふふふ!
「どうしたんだ、グララ?」
笑いがこみ上げるのを我慢しておる我を見てヤマトー殿が尋ねる!
その顔は何時になく優しげで目が細められておった!
あぁ!
いつもの感情の起伏を感じさせない目付きと違ってなんと柔らかい表情なのだ!
まるで気遣う様に穏やかな表情で我の事を見つめておる!
「アメダーム食うか?」
そう言ってゴソゴソと荷物から、いつぞや見た色とりどりの光沢を持った袋を取り出して我に示す!
先程からヤマトー殿は我に甲斐甲斐しく世話を焼いておるのだ!
「ふふふ!後でいただくのだ!今は食事をしておるからな!」
全くヤマトー殿はおっちょこちょいらしい!
今も2人で食事をしておる矢先に、もう別の食べ物を取り出すとは!
ふふふ!
余程我の気を引きたいと見えるのだ!
「あぁそうだな。美味しいか?お代わりはいるか?」
「ふふふ!ではいただくとするのだ!」
一見すると冷たく見えた最近の───特に昨日の様子からは想像も付かない程に甲斐甲斐しい!
なんとも不器用だが、その懸命さは悪くないどころか実に心地良いのだ!
「………」
「………」
「ふはははは!」
思わず声を上げて笑ってしまったのだ!
「どうしたんだグララ?そんなに笑って?」
我が何故笑いだしたのかわからない様で尋ねるヤマトー殿!
しかしそれでも笑みを浮かべて、愛しげに我を見つめておる!
ふふふふふふふ!
全く気分が良いのだ!
「交尾してる犬でも見かけたのか?」
………なんで犬が交尾しておるのを見かけて我が喜ぶと思ったのかは分からぬが!
まぁそんな些細な事もこの圧倒的な優越感からすればどうでもよいのだ!
先程から妹殿とミミカカ殿が黙って我を見ておる!
あの呆気に取られた様な表情!
いつも自分に優しくしておるヤマトー殿を見て勘違いしておったか?
ヤマトー殿の想い人はこの我、グララ・グラーバなのだ!
「グララは楽しそうだな。そんなにたくさんの犬が交尾してたのか?」
ニコニコ笑顔のまま問い掛けてくるヤマトー殿!
………だからなんで我が犬の交尾を見て喜ぶと思っておるのだ!
「まぁグララが楽しそうだと俺は安心するよ、うん」
そういって満足気に息を吐き目を閉じるヤマトー殿!
そうか!さては………照れておるのだな!
町におった間、やたらと我に冷たかったのは、きっと気が張っておったからなのだ!
街の連中を「野蛮」だと言っておったし、ヤマトー殿としても美しい我の安否が常に気にかかっておった事だろう!
しかし、いざ町から離れてみると、我とどう接すればよいかわからぬ様になったと!
いくら凄まじい実力を持っておるとはいえ、やはり年下!
どうしたらよいかわからなくなって、照れ隠しに軽口を叩くとは可愛げがあってよい!
ふふふふふふふふふ!
「ははは、グララは本当に犬の交尾が好きなんだな」
眩しいばかりの笑顔で言い放つヤマトー殿!
………照れ隠しにしてもその犬の交尾は何処から出てきたのだ!
そういえば走らされた時も盛りのついた犬の様だと言われた覚えがある!
照れ隠しと言うか、からかっておるのか!
えぇーい!
せっかく気を張る必要はないのだ!
あの時の様にうっとりするような甘い言葉を囁いてくれても良いではないか!
「なぁ、ヤマトー殿?」
「ん、どうした、グララ?腹でも痛いのか?」
別に腹は痛くないのだ!
「ヤマトー殿は、我のどんな所が好きなのだ?」
どうもヤマトー殿は自ら言う気がない様なので我から水を向けたのだ!
「………」
するとヤマトー殿が笑顔で固まりおった!
ふふふ!照れておる!照れておる!
「あー」
「あー?」
「そのだな………」
「そのなんなのだ?」
逸らかす様に意味のない言葉を言うヤマトー殿を、少し意地悪な気持ちで問い返す!
ふふふ!これが恋仲にある者の甘いやりとりというやつだな!
………何か、答える時間が長くないか?
沈黙が気になり始めたところ、ようやくヤマトー殿が答えたのだ!
全くヤマトー殿は意地悪なのだ!
「声が………」
「声が?」
「優しそうな感じだよね」
「ふむ!声とな!そのような事を言われたのは初めてなのだ!」
そうか!ヤマトー殿は我の声が好きなのか!
ふふふ!ふふふふふふ!
「あー、友達とか多そうだよ、うん」
「ふむ!友達が多そうとな!そのような事を言われたのは初めてなのだ!」
そうか!ヤマトー殿は友達が多そうな我が好きなのか!
ふふふ!ふふふ………ふ?
ちょっと待つのだ?
「………どういう意味なのだ?」
友達が多そうな我が好きとは?
一体どういう事なのだ?
まるで意味がわからぬのだ!
しかしヤマトー殿はすぐさま答えおった!
「あー、そりゃあれだ、あれ、うん、あれ」
まるで答えになってないのだ!
「周りの人がほっとかないとかそんな意味だよ、うん」
我が訝しんでおるのを見て焦ったか、ヤマトー殿が矢継ぎ早に答えたのだ!
「それだけ魅力的な人間に見えるって意味だ、うん」
ヤマトー殿が邪気の感じられない笑顔で言ったのだ!
「おぉ!そうかそうか!我は魅力的か!ふふふふふ!」
ちょっと聞いただけではわからなかったが、そうか!
ヤマトー殿にとって我は魅力的である故、その他の人間からも当然魅力的に見えておると思った訳なのか!
ふふふ!
魅力的か!
その様に真っ直ぐ言われれば嬉しくなってしまうのだ!
全くヤマトー殿は実に可愛いのだ!
………まぁ我には友達と呼べる人間は別におらんのだがな!
何せ周りの同年代の人間といえば、全く話しにならぬような阿呆ばかりであったからな!
我の友と呼ぶには全く不足した奴等だった!
まぁあんな無知蒙昧の輩共等どうでもよいのだ!
「他には!他には何かないのか?」
もっと聞きたくなったのだ!
続きをせがんでヤマトー殿の顔を見る!
ヤマトー殿の顔からは笑顔が最早消え失せて真剣に考える素振りを見せておる!
きっとまた我を絶頂へと導く様な、あの比べるものもない言葉の数々を紡ぎ出そうと考えておるのだろう!
「………」
ヤマトー殿は黙ったまま考え込んでおる!
その視線は我の顔から外れ、我とヤマトー殿のちょうど中間である地面をじっと見ておる!
かと思えば丸まる様に顎に手を当てて考え込み出したのだ!
結構長い沈黙なのだ!
………ちょっと待つのだ!
これではまるで………我の好きな所が思い浮かばないみたいではないか!
「えっとよ………」
少し自信喪失しておったところで声が掛かったのだ!
「なんなのだ!もったいぶらず早く言うのだ」
期待してヤマトー殿に聞き返す!
「そのよ、一所懸命な、ところ、とか………?」
何故疑問形なのだ!
「一所懸命とは、どういう事なのだ?」
疑問を晴らすべく勢い込んで尋ねる!
「うまくは言えないが………何をするにしてもさ、一所懸命、全力でやるってのは大事な事だと思うんだ………そういうのはいいと思う」
訥々と語り聞かせる様に言うヤマトー殿!
普段の淀みなく言葉を紡ぐ様子と打って変わったその語りは、不思議と我の胸にすとんと落ちたのだ!
「………」
思わず呆然としてしまう程に我の心に響いた!
そうなのだ!
我はいつも努力しておった!
思えば幼き日はいつも勉学に励んでおった!
他の同年代の者が馬鹿に見える程に!
常に自己研鑽、向上する事に励んだ!
我は天才と呼ばれる才能に、甘んじる事を良しとはしなかったのだ!
しかし、我には一番必要な魔法の才能がなかった!
故に、15で成人したあの日!
我は旅支度を持たされて、グラーバの家を放逐されたのだ!
それからは必死だった!
ヘトヘトになりながら、我を知るものが居らぬ田舎のイテシツォの町まで歩いた!
そして才覚一つで3年間の間、ずっと日銭を稼ぎ続け、糊口を凌いで来たのだ!
我は常に努力してきた!
それもこれも魔法使いとして名を馳せる為!
魔術の名門グラーバ家に生まれた者の挟持の為!
例え今はその才能が目覚めておらんでも!
それでも魔法の知識の復習を欠かす事はない!
「ヤマトー殿………」
まさか!
その努力を認めてくれるとは!
我はたまらず、目の前であぐらをかいて座っておるヤマトー殿に抱きついたのだ!
「うぉ!?」
驚いたのかヤマトー殿が声を上げた!
「ヤマトー殿!ヤマトー殿!」
構わず我は抱き締める!
「グララ!おいグララ!」
「何なのだヤマトー殿?」
抱きついた姿勢から上目遣いでヤマトー殿を見やる!
近くにあるヤマトー殿の顔は、やはり少年らしく瑞々しい肌だったのだ!
「離れろ!」
「嫌なのだ!離れぬ!」
妹殿とミミカカ殿の目が気になるのか、しきりに2人の方を見ておる!
ふふん!
我も見てみればあの呆然とした顔!
勝った!
見せつけてやればよいのだ!
「離れろ!」
「離れぬと言ったら離れぬ!」
それでも頑なに離れる様促すヤマトー殿!
我も意地になってより強くしがみつく!
「離れてくれ」
「ぬ?」
優しく説き聞かせる様な声色に反応して顔を見上げる我!
ヤマトー殿は我と目が合うと、ゆっくりこう言ったのだ!
「我慢、できなくなる………」
まるで大事な物を扱うかの様に我の肩を押し、ゆっくり遠ざけるヤマトー殿!
その表情は緊張で固く強張っており、体を離すと安堵する様に息を吐き柔らかい笑みを浮かべたのだ!
我の心臓は早鐘の様に鼓動した!
我慢できなくなる?
我に抱き着かれると、理性が保てなくなると?
なるほど!
だから2人の目が気になったのだな!
そういう事なら我も同意なのだ!
初めては勿論2人きりが良い!
ふふふふふ!
ふふふふふふふ!
ふふふふふふふふふ!
離れた我等は4人で話し合って確認しておるところなのだ!
昨日町で何があったか、を!
ヤマトー殿は我らが兵士に町中を追い回されておった時、宿の部屋にやってきた兵士を蹴散らしておったらしい!
「へぇ、これを使ってか?」
ヤマトー殿は小さくて平べったい、綺麗な小さい細工を興味深そうに見ておった!
「これで、探しておる相手の場所がわかるというのか!」
そのような道具は聞いた事がないのだ!
今話しておるのは、ヤマトー殿の手にある細工の事なのだ!
なんとこの細工、中の細工が独りでに、探したい相手のおる方向を指し示すらしい!
自在に!確実に!探したい相手の場所を把握できる!
そうなのだとしたら、その恩恵は余りに大きい!
敵対する勢力の重要人物の居場所の特定!戦場での敵部隊の展開の把握!
実に簡単にその両方が思いつく!全く素晴らしい道具なのだ!
「多分、ヤマトーさんとシャーシャのことしか探せないと思うけどね」
「ヤマトー殿と妹殿しか探せない?何故なのだ?」
しかしミミカカ殿が薄く笑いながら補足しおった!
「探したい人が強い精霊を持ってないと探せないから」
「強い精霊?何なのだそれは?」
「精霊って好き嫌いがあるみたいで、何もしなくても集まったり離れたりするの」
なんと!精霊にそんな特性があったのか?
「ヤマトー殿と妹殿は精霊に好かれておると?」
「そう!2人の周りはなんかすごく精霊が集まってんの!」
なるほど!だから2人の魔法はあの様に凄まじかったのか!
「我は?」
「え?」
「だから我はどうなのだ?」
だとすれば我の周りにも精霊はおるのか!
「グララが近寄ったら、精霊が逃げてくけど?」
「ぬ!そうか!」
我は何故魔法が使えぬのかと思ったが、精霊の方が我から離れていっておったからか!
………だとしたら我はどうすれば魔法を使える様になるのだ?
「俺とシャーシャちゃんの周りって、そんなに精霊が集まってるのか?」
我が知らされた真実に絶望しておる間に、ヤマトー殿が精霊について確認しておった!
「そうです!今まですっごく集中したら、ちょっと見えるだけだったのに!なんか2人の周りの精霊はすっごいハッキリしてて!それで精霊がどういうのかわかったから、今までよりもハッキリ見えるようになって!」
「ふむ?一度把握した事で漠然としたものを、くっきり認識できる様になったという事か?」
「はい、そんな感じです!多分!」
微妙によくわかってなさそうな返事を勢い良くするミミカカ殿!
「そうか」
ヤマトー殿はあまり気にしておらぬ様なのだ!
やはりミミカカ殿ではなくこの我に想いが向いておるからに違いない!
「魔法の発現は外的な要因にも影響されてたのか………」
ヤマトー殿はそのまま下を向いて黙ってしまいおった!
何やら考えこんでしまったのだ!
「しかし………」
しばし沈思黙考しておったヤマトー殿が再び顔を上げた!
我等はヤマトー殿が何を言い出すのかと思いその顔を見たのだ!
「よく初の実戦で見事に戦い抜きました。正直、あの野蛮極まりない下衆共の毒牙にかかっていやしないかと、気が気でありませんでした。勝利した実力も見事ですが何より、その胆力も驚嘆すべきものです」
100人を越える町の兵士に命を狙われていたというのに、我等はそれを無傷でやり過ごしたのだ!
ヤマトー殿が我等を見て表情を崩すのも当然と言えよう!
「特にシャーシャちゃんはよく頑張りましたね。火蜥蜴に助けを呼べる位置の見極め。戦力の分析を行った上での計画的な逃走、そしてそこからの反撃、恐怖の克服………実に冷静な判断ができました。貴方は世界で一番の宝物です」
妹殿の頭を撫で、そのまま抱き締めるヤマトー殿!
その顔は優しげで慈愛に満ちておったのだ!
「それに引き換え………」
「ぬ?」
「分かっていた事とはいえなぁ」
ヤマトー殿が我を見てため息をついたのだ!
なんと失礼な!
「我が戦わなかったとでも思っておるのか!」
思わず我は反論したのだ。
「先に言っておくが、グララが使ったと言い張ってる魔法は、間違いなくシャーシャちゃんの使った魔法だからな?」
「ぐっ!」
言いたい事に先回りされてしまったのだ!
「まぁ当然の結果だな。体力も魔法も何もない、グララが戦いに役立つ事なんてないだろうし」
「ぐぐっ!」
「というか、戦いに限らず何になら役立つんだろうな………」
「ぐぐぐっ!?」
今ボソっと我の存在価値を否定する様な言葉が飛び出したのだ!?
「いっそ見捨てるか?」
「ぐぐぐぐっ!?」
さり気なくとんでもない事を抜かしおった!
じょ、冗談なのだな?
真面目くさった顔をしておるが、冗談なのだな?
すると急にヤマトー殿が破顔して息を吐いたのだ!
ど、どうしたのだ?
我も、妹殿も、ミミカカ殿も、まるで反応できず見守るだけなのだ!
「それはできないよな………グララを投げ出してはならない。大切なものを守るのは自分の手と意志だ。どんな困難であっても成し遂げなければ」
「ヤマトー………殿?」
「守るよグララ、お前の事。これは誓いだ」
!
我の目を見て優しく、されど力強く断言するヤマトー殿!
………これだ!これなのだ!
心無い言葉に傷付きそうになったがこれなのだ!
命を守ると!
臆面もなく宣言されたのだ!
「そうだな………これを持っていて欲しい。俺の命より大切なものだ」
心を打ち震わせる我に、今まで見た事もないような滑らかな布が手渡された。
輝かしい純白に鮮烈な赤が綺麗な円を描く旗!
これはヤマトー殿の家の旗か!
家の象徴である旗が、命より大切とは!
やはりヤマトー殿はどこかの由緒ある貴族の生まれらしい!
しかしその旗を託し、我の事を守るだと?
そ、それは………求婚か!
自分の家の旗を渡したという事は我を嫁に欲しいという事か!?
ヤ、ヤマトー殿の嫁になるのが嫌な訳ではないのだ!
し、しかしヤマトー殿はグラーバ家に婿に入ってほしいのだ!
だが、こうして直接求められるのは………実に良いものだ!
「ぬへへへ………」
情けない声が漏れる我を見て妹殿とミミカカ殿も、顔を歪めて慄いておった!
2人はともかくヤマトー殿までも全く同じ表情と仕草で我から距離をとったのだ!
いかんいかん!嬉しさのあまり顔が………!
ぬへへへへへ。
どうしても顔がだらしなく緩んでしまうのだー!
この様な幸せな悩みは生まれて初めてなのだ!
ぬっへっへっへっへ。
「「「うわぁ………」」」
3人の我を見る目が、直視しがたいものを見る目になっておった!
16/12/03 投稿・誤字の修正