<?>シャーシャ、日本男子の加護を失う
■以下の文章とこれまでの文章を読み、各問いに答えなさい。
問.グララがわちゃわちゃしている理由を答えなさい。(10点)
わたしはシャーシャ・ホマレー、お兄ちゃんの妹。
ミミカカさんのむらにきた。
しらない人がたくさんいた。
村にいる人はわたしをみてた。
しらない人がわたしをみてた。
お兄ちゃんはねたままだった。
わたしはすごくこわかった。
わたしはミミカカさんにかくれた。
うしろにぴったりくっついた。
ミミカカさんのいえの中にお兄ちゃんをはこんだ。
みんなでそのままねた。
つぎの日。
あさになっておきた。
お兄ちゃんはまだねてた。
へんだった。
お兄ちゃんがおきてなかった。
いつもお兄ちゃんはおきてたのに。
お兄ちゃんがいたらこわくなかった。
お兄ちゃんはすごい人だったから。
でもお兄ちゃんがおきてなかった。
お兄ちゃんがいないとこわかった。
なんでお兄ちゃんはおきないの?
そうだ。
おこしたらいいんだ。
ねてたお兄ちゃんをゆらそうとした。
「ダメだよ、シャーシャ?」
でもミミカカさんがだめっていった。
ミミカカさんはおきてた。
「………なんで?あのね、お兄ちゃんね、ねてるの」
「シャーシャ?」
ミミカカさんがちょっとへんなかおをした。
「ヤマトーさんはつかれてるから。起こしたらダメ」
お兄ちゃん、つかれてるからねてるの?
「………うー。わかった」
つかれてるのにおこしたらかわいそう。
お兄ちゃんはまだねてた。
「………なに?」
ミミカカさんがわたしをみてた。
「ううん、なんでもない」
ミミカカさんがくびをふった。
「そうだ、朝ごはん食べよ?」
ミミカカさんがいった。
そうだ。
おきたらあさごはんをたべるの。
「………うん、あのね、わたしね、あさごはんね、たべるの」
ミミカカさんをみた。
ミミカカさんもわたしをみてた。
「………あのねあのね、あさごはん、どこ?」
ミミカカさんにあさごはんをきいた。
「え?」
ミミカカさんはびっくりしたみたいなかおをしてた。
「………ミミカカさんミミカカさん、びっくりしたの、なんで?」
ミミカカさんがだまってた。
ミミカカさんはわたしをみてた。
「シャーシャ?ヤマトーさんからもらったご飯を持ってるの、シャーシャだよ?」
あ!
そうだった。
ごはんお兄ちゃんにもらった。
わたしのふくにごはんあった。
「………あのねあのね、わたし、これすきなの」
お兄ちゃんがくれたごはん。
すごくおいしかった。
「………ミミカカさんミミカカさん、いっしょにたべよ」
ミミカカさんにもごはんをあげた。
ミミカカさんがごはんをとった。
「う、うん………あ」
ミミカカさんがなんかいった。
「グララのは?あさごはん?」
ミミカカさんがきいてきた。
まほうつかいの人………。
「………ううん、あげない」
わたしはくびをふった。
「なんで?」
ミミカカさんがきいてきた。
「………あのねあのね、ないしょだよ」
ミミカカさんにないしょばなしした。
「………まほうつかいの人、きらいだから」
「きらいって………」
ミミカカさんがこまったみたいなかおをしてた。
「………だってねだってね、わたしにね、いじわるするから」
「え、グララになんかされたの?」
ミミカカさんがびっくりしてた。
「………あのねあのね、わたしのお兄ちゃんなのにね、とらないでってね、おもってたのにね、とっちゃうの」
「………グララがヤマトーさんに話しかけるから、嫌いなの?」
ミミカカさんがきいてきた。
「………うん、きらいなの」
わたしはうなずいた。
「シャーシャ?アタシもヤマトーさんに話しかけるけど………アタシのことも嫌いなの?」
ミミカカさんがすこしおこってるみたいなかおをしてた。
「………ううん、ミミカカさんはすき。やさしかったし」
お兄ちゃんとミミカカさんはすき。
お兄ちゃんもミミカカさんもやさしいから。
「うん、アタシもシャーシャのこと好きだよ」
ミミカカさんもわたしがすき。
うれしかった。
でもかおがへん。
わらってるのに、こまってるみたい。
「でもねシャーシャ。グララにもごはんをあげないと」
「………なんで?」
まほうつかいの人はいじわるするのに。
「なんでって………グララは仲間だよ。仲間にいじわるしちゃだめ」
なかま?
「………なんで?なんでなかまだと、いじわるしちゃだめなの?」
ミミカカさんにきいてみた。
「えっと、それは………なかまだからだよ」
なかまはなかまだからいじわるしちゃだめ?
へんなの。
よくわからなかった。
じゃあ………。
「………あのねあのね、ミミカカさん」
「うん、どうしたの?」
「………あのね、あれはね、なにしてるの?」
わたしはゆびさした。
「あれ?」
ミミカカさんがわたしがゆびさしたのをみた。
「………あれ」
わたしとミミカカさんはあれをみた。
まほうつかいの人はおきてた。
でもずっとしゃべらなかった。
「あれは………なんだろう」
ミミカカさんもあれはわからなかった。
「………あのねあのね、わたしね、おどってたってね、おもったの」
まほうつかいの人はおどってた。
「んー?おどってる………のかなぁ」
まほうつかいの人はこっちをみてた。
手をぐにゃぐにゃしてた。
「グララ?何してんの?朝ごはん食べよ」
まほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。
「グララ?グララってば!」
ミミカカさんのこえがきこえないみたい。
「グララ!」
………大きなこえ!
大きなこえはいやだった。
おこられてるみたいでいやだった。
「………」
でもまほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。
「………あのねあのね、ミミカカさん」
「どうしたの?」
ミミカカさんはおこってなかった。
「………あのねあのね、まほうつかいの人ね、わたしのことね、きらいなの」
ミミカカさんはちょっとこまったかおになった。
「んー、それで?」
「………えっとね、だからね、ごはんはね、わたしのだからね、たべたくないの」
「………」
ミミカカさんがなにかかんがえてた。
「シャーシャ、グララは仲間なの。そりゃヤマトーさんにべったりなのは、うらやましかったりするけどさ………それは別にシャーシャにいじわるしたいからじゃなくて、ヤマトーさんがすごすぎるからだよ」
うん。お兄ちゃんはすごい。
なんでもできるわたしのお兄ちゃん。
「………なんで?なんでね、お兄ちゃんがね、すごいとね、わたしにね、いじわるするの?」
なんでお兄ちゃんがすごかったらわたしがいじめられたの?
「ヤマトーさんはすごいから、グララもなかよくなりたいんだよ」
すごいからなかよくなりたいんだ………。
「わかった?」
ミミカカさんがきいてきた。
「………わかった」
わたしはへんじした。
ミミカカさんはわらった。
「………でもね、でもね」
わたしはミミカカさんにいった。
ミミカカさんはまたこまったかおになった。
「………なんでね、わたしとね、ミミカカさんにね、いじわるするの?」
「だからいじわるしてるんじゃないって。さっきシャーシャ、わかったって言ったじゃない?」
ミミカカさんがすこしおこったかおになった。
わたしはちょっとこわかった。
「………うぅ」
「あ、ごめん………怒ってるんじゃないんだ」
ミミカカさんがわたしのあたまをなでた。
「シャーシャ?なんでいじわるするなんて言うの?」
ミミカカさんがきいてきた。
わたしはミミカカさんのかおをみた。
すこしこまったかおだった。
「………だってね、だってね、ミミカカさんがね、しゃべったらね、きこえなかったね、ふりしたの」
ミミカカさんがごはんをたべよっていったのに。
まほうつかいの人はきこえないふりしてた。
「それは………」
ミミカカさんはこまったかおになった。
「………なんで?なんで?」
ミミカカさんにきいてみた。
「なんでだろ………。グララ、おなかすいてないのかな」
まほうつかいの人をみた。
まほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。
「グララ、朝ごはん食べないの?」
やっぱりまほうつかいの人はきこえなかったふりしてた。
「………やっぱりね、いじわるってね、おもった」
「………うん。もうグララのことはほっとこう」
わたしはミミカカさんとあさごはんをたべた。
てをあらった。
おにいちゃんがおしえてくれた。
てをあらわないとばっちいって。
ごはんをたべるまえにてをあらいましょうっていってた。
「ちゃんと手が洗えましたね。偉いですよ。シャーシャちゃんは世界で一番大事な宝物です。上手に手を洗えたシャーシャちゃんは、ご飯をいっぱい食べていいですからね」
てをあらったらいっぱいほめてくれた。
いっぱいごはんをたべさせてくれた。
でもまだたべちゃだめ。
「ご飯の前は?」
お兄ちゃんがきいてきた。
「イターキャスする」
わたしがこたえたら、お兄ちゃんはわらった。
「ちゃんと覚えてますね。シャーシャちゃんはお利口さんです。はい、イターキャス」
「イターキャス」
ごはんのまえはイターキャス。
てをパチンってあわせた。
ごはんにおじぎした。
「………イターキャスって何?」
イターキャスしたとき、わたしはお兄ちゃんにきいてみた。
「美味しいご飯を食べさせてくれてありがとう、という感謝ですよ。何に対する感謝なのかはわかりますか?」
お兄ちゃんがきいてきた。
「………お兄ちゃん?」
わたしはこたえた。
「僕がシャーシャちゃんのご飯を用意したからそう思ったんですね、なるほど。でもそれじゃ全部じゃありませんね。まだ感謝する相手はいます。わかりますか?」
お兄ちゃんがきいてきた。
お兄ちゃんだけじゃない?
わからなかった。
「答えは食べ物そのものです」
「………食べ物?食べ物にありがとうっていうの?」
ふしぎだった。
「食べ物だとわかりにくいですか?じゃあ食べ物ってなんでしょう?」
お兄ちゃんがきいてきた。
「………食べ物は………食べ物」
「えぇ、食べ物は食べ物。そのとおり、違いありませんね」
お兄ちゃんはわらってた。
「しかしそれではあまりに本質的過ぎて、むしろ抽象的です。………シャーシャちゃん。食べ物はね、生き物です」
「………生き物?」
「そうです。お肉は動物の体でしょう?」
うん、おにくはどうぶつ。
でも。
「………豆は動物じゃない」
まめはいきてない。
「シャーシャちゃん。豆等の野菜類は植物と言いますが、ちゃんと生きてるんですよ」
「………豆は動かないのに?」
いきてるの?
「動かないだけで生きてます。その証拠に植物は子供を残しますし、何より明確に死亡します」
よくわからなかった。
「植物は水をあげないと枯れますね」
「………うん」
「枯れるという事は死ぬという事です。死ぬという事は生きてたという事です。なので植物はちゃんと生きてます」
まめはいきてるんだ。
「………でも………生きてたら、なんでありがとうなの?」
お兄ちゃんにきいてみた。
「それは確かめる為です」
「………たしかめる?」
なにをたしかめるんだろう。
「ある神様が、動物は人間が食べる為に生み出された、と言ったそうです。………シャーシャちゃんはこの言葉を聞いてどう思いますか?」
お兄ちゃんがきいてきた。
「………食べられるために生まれたの?そんなの、かわいそう」
「そんな酷い話があるのかと思いますよね。僕もそう思います。これは動物や植物が言葉を発しないのをいい事に、都合のいい様に解釈した一方的な理屈です」
お兄ちゃんのことばはむずかしかった。
けどいってたことはすこしわかった。
「そして、そういう傲慢な人は食べ物に限らず、一方的な理屈を押し付けます。相手が何も言わないのを、抵抗しないのを、自分より弱いのをいい事に、一方的に嫌な事をしてきます」
!
お父さんたちのことだった!
わたしがちいさかったから!
わたしがなにもいわなかったから!
わたしがよわかったから!
いっぱいいじめられた!
「自分が嫌な事をされてみないと、そういう人達は反省しません。実に質が悪い。………何の話だったかな?あぁ、そうそう。だから感謝するんです。ありがとうの気持ちを忘れてはいけません」
やっぱりお兄ちゃんはむずかしかった。
「………なんでありがとうなの?」
「感謝しても、しなくても、ご飯として食べてしまうのは変わりませんね」
「………うん」
「でも、動物は食べられて当然と思うのと、食べ物になってくれてありがとうと思うのでは、人としての在り方が全く違うと思います」
ちょっとむずかしかった。
「要するに、他の人なんて殴って当然と思うのか、他の人に何かしてもらったらありがとうって言えるかどうか………そういう所に行き着くんです」
「………ありがとうって言えるかどうか?」
「そうです。他人なんてどうなってもいい、自分さえよければそれでいい。………確かに一理ぐらいはありますが、そんな奴は他の人からしたら迷惑なだけなんで、別に生きてなくていいんです。他の人から生きてて欲しいって思われるのは、他の人にやさしい人です」
お兄ちゃんのいったことがわかった。
「イターキャスを言うかどうかは、その人が生きているべきかどうかを確かめているんです」
だからわたしは手をあらった。
だからわたしはイターキャスした。
お兄ちゃんはわたしのことをたくさんほめてくれた。
わたしはいきてていいんだってわかった。
あさごはんをたべた。
ちゃんとてをあらった。
まほうで水をだした。
ミミカカさんもてをあらった。
ミミカカさんもイターキャスした。
ミミカカさんもまほうで水をだした。
ごはんをたべたらかたづけた。
ピカピカを入ってたはこにもどした。
はこをふくの中にもどした。
「………あのね、あのね、あれ、なに?」
「うーん、なんだろうなぁ」
わたしたちはごはんをたべた。
まほうつかいのひとはおどってた。
ごはんをたべてたときずっと。
「………おどるのがすきなの?へんなの」
ミミカカさんにきいてみた。
「そうなのかな?ご飯も食べないぐらいだしなぁ」
へんな人だなっておもった。
へんなまほうつかいの人をみてたら、ミミカカさんがわたしをみてた。
「………ミミカカさんミミカカさん、あのね、なんでね、わたしをね、みてたの?」
ミミカカさんにきいてみた。
「シャーシャ………」
ミミカカさんがいった。
「グララもへんだけどね、シャーシャもへんだよ」
「………なんで?なんでわたしへんなの?」
へん?
あんなおどってるひととおなじぐらい?
「シャーシャ、やっぱりおかしいよ」
ミミカカさんがいった。
「………おかしい?おかしいのなんで?」
ミミカカさんにきいた。
「そんな話し方じゃなかったよね」
「………はなしかた?」
「そうだ。シャーシャはそんな話し方じゃなかった」
ミミカカさんがわたしをみてた。
「………おかしくない」
「おかしいよシャーシャ。どうしたの?」
「………おかしくない」
「ねぇ、どうしたの?」
「………」
「シャーシャ?」
「………い」
「どうしたの、なんて言ってるの?」
「………るさい」
「るさい?」
ミミカカさんがきいてきた。
「………うるさい!わたしはおかしくなんかない!」
「え?」
「………おかしいっていうな!」
「シャーシャ?」
「………おかしいっていうなー!」
わたしはミミカカさんをたたいた!
おもいっきり!
ミミカカさんがふせいだ!
「シャーシャ!?」
ミミカカさんがおどろいてた!
「………うるさい!うるさい!」
わたしはミミカカさんをもっとたたいた!
「シャーシャ!いい加減にしないと!」
またミミカカさんがふせいだ!
「………ばか!ばか!」
もっと!もっと!
わたしはミミカカさんをたたいた!
「シャーシャ!」
ミミカカさんがたたいてきた!
わたしよりよわいくせに!
わたしとミミカカさんはいっしょだった。
お兄ちゃんにいっしょにたたかいかたをならった。
でも。
わたしはいつもミミカカさんをやっつけられた。
わたしのほうがミミカカさんよりつよかった。
「………ね」
「なにを………」
ミミカカさんがこっちをみてた。
「………しね」
「………」
ミミカカさんがこっちをみてた。
おどろいたかおをしてた。
「………ミミカカさんなんか」
「シャーシャッ!」
「………ミミカカさんなんか!しんじゃえ!」
わたしはつよいんだ!
ナイフ!
お兄ちゃんからもらったわたしのナイフ!
わたしをいじめるミミカカさんなんかやっつけてやる!
16/11/12 投稿