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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の休息
52/154

<?>シャーシャ、日本男子の加護を失う

■以下の文章とこれまでの文章を読み、各問いに答えなさい。

問.グララがわちゃわちゃしている理由を答えなさい。(10点)


 わたしはシャーシャ・ホマレー、お兄ちゃんの妹。


 ミミカカさんのむらにきた。

 しらない人がたくさんいた。

 村にいる人はわたしをみてた。


 しらない人がわたしをみてた。

 お兄ちゃんはねたままだった。

 わたしはすごくこわかった。


 わたしはミミカカさんにかくれた。

 うしろにぴったりくっついた。

 ミミカカさんのいえの中にお兄ちゃんをはこんだ。

 みんなでそのままねた。




 つぎの日。

 あさになっておきた。

 お兄ちゃんはまだねてた。


 へんだった。

 お兄ちゃんがおきてなかった。

 いつもお兄ちゃんはおきてたのに。


 お兄ちゃんがいたらこわくなかった。

 お兄ちゃんはすごい人だったから。

 でもお兄ちゃんがおきてなかった。

 お兄ちゃんがいないとこわかった。


 なんでお兄ちゃんはおきないの?

 そうだ。

 おこしたらいいんだ。


 ねてたお兄ちゃんをゆらそうとした。

「ダメだよ、シャーシャ?」

 でもミミカカさんがだめっていった。

 ミミカカさんはおきてた。


「………なんで?あのね、お兄ちゃんね、ねてるの」

「シャーシャ?」

 ミミカカさんがちょっとへんなかおをした。


「ヤマトーさんはつかれてるから。起こしたらダメ」

 お兄ちゃん、つかれてるからねてるの?

「………うー。わかった」

 つかれてるのにおこしたらかわいそう。

 お兄ちゃんはまだねてた。


「………なに?」

 ミミカカさんがわたしをみてた。

「ううん、なんでもない」

 ミミカカさんがくびをふった。


「そうだ、朝ごはん食べよ?」

 ミミカカさんがいった。

 そうだ。

 おきたらあさごはんをたべるの。


「………うん、あのね、わたしね、あさごはんね、たべるの」

 ミミカカさんをみた。

 ミミカカさんもわたしをみてた。


「………あのねあのね、あさごはん、どこ?」

 ミミカカさんにあさごはんをきいた。

「え?」

 ミミカカさんはびっくりしたみたいなかおをしてた。


「………ミミカカさんミミカカさん、びっくりしたの、なんで?」

 ミミカカさんがだまってた。

 ミミカカさんはわたしをみてた。


「シャーシャ?ヤマトーさんからもらったご飯を持ってるの、シャーシャだよ?」

 あ!

 そうだった。

 ごはんお兄ちゃんにもらった。

 わたしのふくにごはんあった。


「………あのねあのね、わたし、これすきなの」

 お兄ちゃんがくれたごはん。

 すごくおいしかった。


「………ミミカカさんミミカカさん、いっしょにたべよ」

 ミミカカさんにもごはんをあげた。

 ミミカカさんがごはんをとった。

「う、うん………あ」

 ミミカカさんがなんかいった。


「グララのは?あさごはん?」

 ミミカカさんがきいてきた。

 まほうつかいの人………。

「………ううん、あげない」

 わたしはくびをふった。


「なんで?」

 ミミカカさんがきいてきた。

「………あのねあのね、ないしょだよ」

 ミミカカさんにないしょばなしした。


「………まほうつかいの人、きらいだから」

「きらいって………」

 ミミカカさんがこまったみたいなかおをしてた。


「………だってねだってね、わたしにね、いじわるするから」

「え、グララになんかされたの?」

 ミミカカさんがびっくりしてた。


「………あのねあのね、わたしのお兄ちゃんなのにね、とらないでってね、おもってたのにね、とっちゃうの」

「………グララがヤマトーさんに話しかけるから、嫌いなの?」

 ミミカカさんがきいてきた。


「………うん、きらいなの」

 わたしはうなずいた。

「シャーシャ?アタシもヤマトーさんに話しかけるけど………アタシのことも嫌いなの?」

 ミミカカさんがすこしおこってるみたいなかおをしてた。


「………ううん、ミミカカさんはすき。やさしかったし」

 お兄ちゃんとミミカカさんはすき。

 お兄ちゃんもミミカカさんもやさしいから。


「うん、アタシもシャーシャのこと好きだよ」

 ミミカカさんもわたしがすき。

 うれしかった。

 でもかおがへん。

 わらってるのに、こまってるみたい。


「でもねシャーシャ。グララにもごはんをあげないと」

「………なんで?」

 まほうつかいの人はいじわるするのに。


「なんでって………グララは仲間だよ。仲間にいじわるしちゃだめ」

 なかま?

「………なんで?なんでなかまだと、いじわるしちゃだめなの?」

 ミミカカさんにきいてみた。


「えっと、それは………なかまだからだよ」

 なかまはなかまだからいじわるしちゃだめ?

 へんなの。

 よくわからなかった。

 じゃあ………。


「………あのねあのね、ミミカカさん」

「うん、どうしたの?」

「………あのね、あれはね、なにしてるの?」

 わたしはゆびさした。


「あれ?」

 ミミカカさんがわたしがゆびさしたのをみた。

「………あれ」

 わたしとミミカカさんはあれをみた。


 まほうつかいの人はおきてた。

 でもずっとしゃべらなかった。

「あれは………なんだろう」

 ミミカカさんもあれはわからなかった。


「………あのねあのね、わたしね、おどってたってね、おもったの」

 まほうつかいの人はおどってた。

「んー?おどってる………のかなぁ」

 まほうつかいの人はこっちをみてた。

 手をぐにゃぐにゃしてた。


「グララ?何してんの?朝ごはん食べよ」

 まほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。

「グララ?グララってば!」

 ミミカカさんのこえがきこえないみたい。


「グララ!」

 ………大きなこえ!

 大きなこえはいやだった。

 おこられてるみたいでいやだった。


「………」

 でもまほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。

「………あのねあのね、ミミカカさん」

「どうしたの?」

 ミミカカさんはおこってなかった。


「………あのねあのね、まほうつかいの人ね、わたしのことね、きらいなの」

 ミミカカさんはちょっとこまったかおになった。

「んー、それで?」


「………えっとね、だからね、ごはんはね、わたしのだからね、たべたくないの」

「………」

 ミミカカさんがなにかかんがえてた。


「シャーシャ、グララは仲間なの。そりゃヤマトーさんにべったりなのは、うらやましかったりするけどさ………それは別にシャーシャにいじわるしたいからじゃなくて、ヤマトーさんがすごすぎるからだよ」

 うん。お兄ちゃんはすごい。

 なんでもできるわたしのお兄ちゃん。


「………なんで?なんでね、お兄ちゃんがね、すごいとね、わたしにね、いじわるするの?」

 なんでお兄ちゃんがすごかったらわたしがいじめられたの?

「ヤマトーさんはすごいから、グララもなかよくなりたいんだよ」

 すごいからなかよくなりたいんだ………。


「わかった?」

 ミミカカさんがきいてきた。

「………わかった」

 わたしはへんじした。

 ミミカカさんはわらった。


「………でもね、でもね」

 わたしはミミカカさんにいった。

 ミミカカさんはまたこまったかおになった。


「………なんでね、わたしとね、ミミカカさんにね、いじわるするの?」 

「だからいじわるしてるんじゃないって。さっきシャーシャ、わかったって言ったじゃない?」

 ミミカカさんがすこしおこったかおになった。

 わたしはちょっとこわかった。


「………うぅ」

「あ、ごめん………怒ってるんじゃないんだ」

 ミミカカさんがわたしのあたまをなでた。


「シャーシャ?なんでいじわるするなんて言うの?」

 ミミカカさんがきいてきた。

 わたしはミミカカさんのかおをみた。

 すこしこまったかおだった。


「………だってね、だってね、ミミカカさんがね、しゃべったらね、きこえなかったね、ふりしたの」

 ミミカカさんがごはんをたべよっていったのに。

 まほうつかいの人はきこえないふりしてた。

「それは………」

 ミミカカさんはこまったかおになった。


「………なんで?なんで?」

 ミミカカさんにきいてみた。

「なんでだろ………。グララ、おなかすいてないのかな」

 まほうつかいの人をみた。

 まほうつかいの人はぐにゃぐにゃしてた。


「グララ、朝ごはん食べないの?」

 やっぱりまほうつかいの人はきこえなかったふりしてた。

「………やっぱりね、いじわるってね、おもった」

「………うん。もうグララのことはほっとこう」




 わたしはミミカカさんとあさごはんをたべた。

 てをあらった。

 おにいちゃんがおしえてくれた。

 てをあらわないとばっちいって。

 ごはんをたべるまえにてをあらいましょうっていってた。


「ちゃんと手が洗えましたね。偉いですよ。シャーシャちゃんは世界で一番大事な宝物です。上手に手を洗えたシャーシャちゃんは、ご飯をいっぱい食べていいですからね」

 てをあらったらいっぱいほめてくれた。

 いっぱいごはんをたべさせてくれた。

 でもまだたべちゃだめ。


「ご飯の前は?」

 お兄ちゃんがきいてきた。

「イターキャスする」

 わたしがこたえたら、お兄ちゃんはわらった。


「ちゃんと覚えてますね。シャーシャちゃんはお利口さんです。はい、イターキャス」

「イターキャス」

 ごはんのまえはイターキャス。

 てをパチンってあわせた。

 ごはんにおじぎした。


「………イターキャスって何?」

 イターキャスしたとき、わたしはお兄ちゃんにきいてみた。

「美味しいご飯を食べさせてくれてありがとう、という感謝ですよ。何に対する感謝なのかはわかりますか?」

 お兄ちゃんがきいてきた。


「………お兄ちゃん?」

 わたしはこたえた。

「僕がシャーシャちゃんのご飯を用意したからそう思ったんですね、なるほど。でもそれじゃ全部じゃありませんね。まだ感謝する相手はいます。わかりますか?」

 お兄ちゃんがきいてきた。


 お兄ちゃんだけじゃない?

 わからなかった。

「答えは食べ物そのものです」

「………食べ物?食べ物にありがとうっていうの?」

 ふしぎだった。


「食べ物だとわかりにくいですか?じゃあ食べ物ってなんでしょう?」

 お兄ちゃんがきいてきた。

「………食べ物は………食べ物」

「えぇ、食べ物は食べ物。そのとおり、違いありませんね」

 お兄ちゃんはわらってた。


「しかしそれではあまりに本質的過ぎて、むしろ抽象的です。………シャーシャちゃん。食べ物はね、生き物です」

「………生き物?」

「そうです。お肉は動物の体でしょう?」

 うん、おにくはどうぶつ。

 でも。


「………豆は動物じゃない」

 まめはいきてない。

「シャーシャちゃん。豆等の野菜類は植物と言いますが、ちゃんと生きてるんですよ」

「………豆は動かないのに?」

 いきてるの?


「動かないだけで生きてます。その証拠に植物は子供を残しますし、何より明確に死亡します」

 よくわからなかった。

「植物は水をあげないと枯れますね」

「………うん」


「枯れるという事は死ぬという事です。死ぬという事は生きてたという事です。なので植物はちゃんと生きてます」

 まめはいきてるんだ。

「………でも………生きてたら、なんでありがとうなの?」

 お兄ちゃんにきいてみた。


「それは確かめる為です」

「………たしかめる?」

 なにをたしかめるんだろう。

 

「ある神様が、動物は人間が食べる為に生み出された、と言ったそうです。………シャーシャちゃんはこの言葉を聞いてどう思いますか?」

 お兄ちゃんがきいてきた。

「………食べられるために生まれたの?そんなの、かわいそう」


「そんな酷い話があるのかと思いますよね。僕もそう思います。これは動物や植物が言葉を発しないのをいい事に、都合のいい様に解釈した一方的な理屈です」

 お兄ちゃんのことばはむずかしかった。

 けどいってたことはすこしわかった。


「そして、そういう傲慢な人は食べ物に限らず、一方的な理屈を押し付けます。相手が何も言わないのを、抵抗しないのを、自分より弱いのをいい事に、一方的に嫌な事をしてきます」

 !

 お父さんたちのことだった!


 わたしがちいさかったから!

 わたしがなにもいわなかったから!

 わたしがよわかったから!

 いっぱいいじめられた!


「自分が嫌な事をされてみないと、そういう人達は反省しません。実に質が悪い。………何の話だったかな?あぁ、そうそう。だから感謝するんです。ありがとうの気持ちを忘れてはいけません」

 やっぱりお兄ちゃんはむずかしかった。

「………なんでありがとうなの?」


「感謝しても、しなくても、ご飯として食べてしまうのは変わりませんね」

「………うん」

「でも、動物は食べられて当然と思うのと、食べ物になってくれてありがとうと思うのでは、人としての在り方が全く違うと思います」

 ちょっとむずかしかった。


「要するに、他の人なんて殴って当然と思うのか、他の人に何かしてもらったらありがとうって言えるかどうか………そういう所に行き着くんです」

「………ありがとうって言えるかどうか?」


「そうです。他人なんてどうなってもいい、自分さえよければそれでいい。………確かに一理ぐらいはありますが、そんな奴は他の人からしたら迷惑なだけなんで、別に生きてなくていいんです。他の人から生きてて欲しいって思われるのは、他の人にやさしい人です」

 お兄ちゃんのいったことがわかった。


「イターキャスを言うかどうかは、その人が生きているべきかどうかを確かめているんです」

 だからわたしは手をあらった。

 だからわたしはイターキャスした。

 お兄ちゃんはわたしのことをたくさんほめてくれた。

 わたしはいきてていいんだってわかった。




 あさごはんをたべた。

 ちゃんとてをあらった。

 まほうで水をだした。


 ミミカカさんもてをあらった。

 ミミカカさんもイターキャスした。

 ミミカカさんもまほうで水をだした。


 ごはんをたべたらかたづけた。

 ピカピカを入ってたはこにもどした。

 はこをふくの中にもどした。


「………あのね、あのね、あれ、なに?」

「うーん、なんだろうなぁ」

 わたしたちはごはんをたべた。

 まほうつかいのひとはおどってた。

 ごはんをたべてたときずっと。


「………おどるのがすきなの?へんなの」

 ミミカカさんにきいてみた。

「そうなのかな?ご飯も食べないぐらいだしなぁ」

 へんな人だなっておもった。

 へんなまほうつかいの人をみてたら、ミミカカさんがわたしをみてた。


「………ミミカカさんミミカカさん、あのね、なんでね、わたしをね、みてたの?」

 ミミカカさんにきいてみた。

「シャーシャ………」

 ミミカカさんがいった。


「グララもへんだけどね、シャーシャもへんだよ」

「………なんで?なんでわたしへんなの?」

 へん?

 あんなおどってるひととおなじぐらい?


「シャーシャ、やっぱりおかしいよ」

 ミミカカさんがいった。

「………おかしい?おかしいのなんで?」

 ミミカカさんにきいた。


「そんな話し方じゃなかったよね」

「………はなしかた?」

「そうだ。シャーシャはそんな話し方じゃなかった」

 ミミカカさんがわたしをみてた。


「………おかしくない」

「おかしいよシャーシャ。どうしたの?」

「………おかしくない」

「ねぇ、どうしたの?」


「………」

「シャーシャ?」

「………い」

「どうしたの、なんて言ってるの?」


「………るさい」

「るさい?」

 ミミカカさんがきいてきた。


「………うるさい!わたしはおかしくなんかない!」

「え?」

「………おかしいっていうな!」

「シャーシャ?」


「………おかしいっていうなー!」

 わたしはミミカカさんをたたいた!

 おもいっきり!

 ミミカカさんがふせいだ!


「シャーシャ!?」

 ミミカカさんがおどろいてた!

「………うるさい!うるさい!」

 わたしはミミカカさんをもっとたたいた!


「シャーシャ!いい加減にしないと!」

 またミミカカさんがふせいだ!

「………ばか!ばか!」

 もっと!もっと!

 わたしはミミカカさんをたたいた!


「シャーシャ!」

 ミミカカさんがたたいてきた!

 わたしよりよわいくせに!


 わたしとミミカカさんはいっしょだった。

 お兄ちゃんにいっしょにたたかいかたをならった。

 でも。

 わたしはいつもミミカカさんをやっつけられた。

 わたしのほうがミミカカさんよりつよかった。


「………ね」

「なにを………」

 ミミカカさんがこっちをみてた。


「………しね」

「………」

 ミミカカさんがこっちをみてた。

 おどろいたかおをしてた。


「………ミミカカさんなんか」

「シャーシャッ!」

「………ミミカカさんなんか!しんじゃえ!」

 わたしはつよいんだ!


 ナイフ!

 お兄ちゃんからもらったわたしのナイフ!

 わたしをいじめるミミカカさんなんかやっつけてやる!

16/11/12 投稿

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