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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の疲弊
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日本男子、微笑む

R-15 残酷な表現有り

 俺は今、同業者と初めての戦闘に入ろうとしていた。


 自分が冒険者であるという自覚がいまいちないが。

 なにせ同業者組合(ギルド)といったものがない為、冒険者を冒険者たらしめるものがない。

 要するに家事手伝いや自宅警備員の様なものだろうか。


 何より俺が冒険者を名乗り始めてやった活動と言えば貧困層への施しと、兵士達(アメリカ軍)を血祭りにしただけだ。

 ダンジョンに潜った訳でも、モンスターを退治した訳でもないし、報酬も宝物も何も手に入ってない。

 こんな冒険者、少なくとも俺が日本にいた頃のメディアでは見た事がない。


 まぁそれはともかく目の前の冒険者だ。

 いかにも冒険者らしい格好をしている。

 何を持ってして冒険者らしいのかと言われたら難しいが。

 薄汚れて傷のついた衣服や、それぞれが構えている武器あたりから受ける印象だろうか。


 兵士達(アメリカ軍)と違って身に着けているものに、統一性が見られないのが最大の特徴だろう。

 まぁ兵士も頭から靴まで揃えた装備をしている訳ではなく、統一されていたのは赤茶色の革鎧ぐらいで、得物にいたっては多種多様、千差万別だったが。

 武器を統一せずに部隊単位の行動ができるのかと思ったが、この異世界の文化レベルの軍隊というのはそんなものかもしれない。


 斧を構えた革鎧の男。

 槍を構えた軽装の男。

 弓を構えた軽装の男。

 杖を構えた軽装の男。


 4人の男が俺に武器を向ける。

「おぉ!お前達!早くこの者を殺すのだ!」

 領主がやっと来た援軍を見て高らかに命令する。


「1人で俺たち4人に勝てると思ってんのか!」

 数的優位を確保した闖入者達が余裕の表情で宣言する。

 貴族子飼いという事は腕が立つと見るべきか。


「あれがお前の切り札か?」

 足元に転がってる領主を見下ろして問いかける。

「ふん!お前如き、あの4人にか」

 ムカついたので言葉を遮って、顔を蹴っ飛ばす。


「別にお前を殺してから相手をしてもいいが、あいつらを殺してからの方が絶望が大きくなるか?」

 領主を放置して4人の男───冒険者達に向き直る。


「たった1人で俺たちに勝つつもりか?」

「随分と余裕そうじゃねぇか兄ちゃん!」

 全く度し難い。


 別に俺には構えを見ただけで、相手の実力を推し量れる能力はない。

 見るからに斧を持った男は固太りしている。

 後の3人は斧を持った男程筋肉質ではないが、どの程度の実力を持っているというのか。


 しかし今までの戦闘の経験から言って、正直脅威になるとは思えない。

 この世界の戦闘は、よくあるファンタジー世界の物語の様に華やかではない。

 躊躇なく人を斬る事ができる事。それだけが戦士の適正だ。

 別に凄腕の剣士でなくとも、人を斬る事はできる。


 基本的に冒険者や盗賊、兵士達と、一般人の差は躊躇いだけだ。

 命のやり取りに慣れた人間は躊躇いなく武器を振るえる。

 逆に命を危険に晒した事のない人間は刃を向けられる事に怯え戸惑い隙を晒す。

 どれ程の技術があろうと躊躇すればその実力は発揮できない。


 その差を利用して大きく振り被った武器で殺す。

 慣れる事で余計な力が抜けるとかそういう最適化は行われるが、そこに洗練されたという程の技術はない。

 だからどいつもこいつも出会い頭に武器を大振りにして、一撃で敵を倒す事に特化している。


 格闘漫画風に言うとテレフォンパンチというやつだ。

 格闘漫画だと馬鹿にされがちな大ぶりの攻撃だが、現実的には有効だ。


 薪を割る様に斧を振り被る人間と対面したらどうなるか。

 大振りなだけの攻撃に当たる訳がない?

 そんな減らず口を叩けるのは、斧を振り被る男が目の前にいない時だけだろう。

 どう考えても恐ろしさに身が竦むのが正常な反応だろう。


 無論戦闘は基本的にどちらかが死ぬ事で決着が着く。つまり戦い慣れた戦士とは今までの戦いで尽く相手を殺してきた人間だ。

 殺すことに躊躇がない人間。

 そんな人間と対峙して冷静に回避しつつ反撃ができるなら、きっとそれは相手以上に躊躇がないという事だ。


 さて、そんな異世界の連中に比べて俺はどうだろう?

 荒事が日常的に発生する異世界の住人と、平和な日本に生まれた自分の戦闘技術の差を当初は警戒していた。

 だが盗賊や酒場の冒険者を見る限り、戦闘技術はむしろ俺の方が上なぐらいだった。


 技術自体が精錬されておらず、更に蓄積した知識を引き継ぐ様な土壌がない為だと思われる。この辺りにも一撃が大振りな理由があると俺は睨んでいる。

 それに対して聞き齧りとはいえ、蓄積された戦闘技術を持っている俺は優位性を保っている。

 後は命を躊躇いなく奪えるかだ。


 そもそも俺に限らず人は常に何かを殺して生きている。

 生きる以上はどんな人間でも自然の糧を得ているし、俺も例外ではない。

 豚や牛は元々生きているというのは言うに及ばない。

 菜食主義者だって生き物を殺している。

 植物は生きてるし、きちんと世代を交代する。


 それに食い物の話をするまでもなく、人間は生き物を殺し続ける。

 誰だって手を洗うだろう?風呂に入るだろう?

 体に付着する何万何億という細菌を殺している。

 体を洗わなくたって肉体の活動の作用で細菌を殺し続ける。


 俺はどうあっても生きてる限り殺し続けている。

 結局どこに違いがあると定めるかで、自覚の差が生まれる。


 細菌は殺していいのか?

 虫は殺していいのか?

 植物は殺していいのか?

 小動物は殺していいのか?

 鳥獣は殺していいのか?

 家畜は殺していいのか?

 人間は殺していいのか?


 全て生物であるにも関わらず、一体何が違うというのか?

 俺に言わせればそれらには全て差はない。

 感覚的に言えば、対象が物理的に大きくなればなるほど罪悪感は募るが、所詮センチメンタリズムだ。

 虫を殺せて人を殺せない道理があるのか?


 そもそも殺していいか殺していけないかの違いは、俺なりに自問してみたところ非常に簡単な結論に至った。

 まず法律で咎められているかどうか。

 そして殺す必要があるかどうか。

 つまり殺していいかどうかは、置かれた環境に基づくのだ。


 異世界には化物がいて、碌な警察機構もない。

 自分の身を守るのは常に自分の力だけ。

 郷に入っては郷に従え、だ。


 咎める法もなく、被保護対象の生命保全という必然性まである。

 逆に断言しよう。屑共(アメリカ軍)を殺す事に戸惑いを覚える必要は、ない。

 実際既に盗賊を殺しているのだ。今更戸惑いを覚える必要がどこにある。


 戦闘技術は俺が上。

 命を奪う躊躇いに関しての覚悟は同等。

 身体能力はまぁ五分程度か。


 肉体労働が多い異世界の人間は皆引き締まった体をしている。

 俺は習慣的に筋トレとジョギングはしていたが、重労働に従事してはいない。

 しかし食事の質や衛生概念の差から、栄養・健康面でいえば圧倒的に俺に分がある。

 

 だが世界に冠たる先進国日本で育った俺は、様々な知識を持っている。

 科学知識もそうだし、様々なメディアで目にしたSF・ファンタジーの虚構世界の出来事も魔法の糧となっている。

 魔法といえば火をつけるだけの連中とは違った、卓越した魔法を使える。


 何よりこの身を包む装備品。

 偉大なる日本の輝かしい珠玉の工業製品がある。

 未開の異世界人共如きに負ける気はしない。




「燃えろ!」

 杖を持った男が俺に向かって、手元に発現させた火を飛ばしてきた。

 俺はそれを見る事ぐらいしかしない。


 空調管理(エアコ)がある以上、火如きは脅威足り得ない。

 分子の運動レベルから温度を絶対的に制御している以上、効果範囲内で物体が発火点に至る事はない。

 当然飛んできた火は効果範囲に至ると同時に掻き消えた。


「何かしたのか?」

 馬鹿にした様に煽る。

「な!」

 激昂した魔法使いは何度も火を飛ばす。


 直径1メートルといった大きさの火が断続的に飛んでくるが結果は変わらない。

「無駄な足掻きだな」

 俺の余裕を見て冒険者達に動揺が走る。


 この大きさの火となれば、さぞかし頼りになる攻撃なんだろう。

 他の仲間達は武器こそ構えていたものの、こちらに向かってくる様子はなかった。

 それはこの火で先制して火達磨になった相手を介錯する、そんな算段だったからだろう。


「もういい消えろ」

 俺がお返しに魔法使いに火の魔法を使った。

「あ!」

 短い悲鳴を残して、魔法使いは炭化したオブジェクトになった。

 悲鳴が短かったのは一瞬で発声器官が炭化した為だろう。


 本来直接対象物に火を発現させるのは難しい。

 目の前に実際に在るものはイメージに絶対的な影響を与える為、それを否定する様なイメージはしにくいからだ。

 生きている相手が、突然火に包まれる様なイメージは普通ならできない。


 だが俺は事情が違う。

 日本にいた頃、様々な映像メディアで、人が燃えるシーンというのを見ている。

 別にそう言ったものを好んで見る趣味を持っている訳ではないが、アクションモノを見ていれば誰だって大なり小なり、人が燃えるシーンを見た事ぐらいはあるだろう?


 そして何より英雄降臨(セギノミカタ)で思考能力も強化されいてる以上、魔法を発現させるイメージもスムーズにできる。

 俺は普通なら困難な魔法でも、簡単に発現できる。


 発現した魔法は人を完全に炭化させる威力を持つ完璧な炎。

 完璧な炎とは揺らがず、静かに青く燃える。

 火がメラメラと揺れるのは、不安定だからに他ならない。

 十分な酸素が供給されておらず、安定した形を取る事ができないから揺らぐ。


 風の魔法で制御する事で、炎の維持に必要な酸素を供給する。

 その結果炎は安定した状態を保ち、高温に辿り着き青く燃える。

 そんな凶暴な温度の火で対象を焼き尽くすのが魔法、完全燃焼(アオカラークロエ)

 由来は青く暗い炎に包まれたと思ったら対象は真っ黒に炭化するからだ。


 炎が暗いのは光を制御して炎の周りを薄暗くしているからだ。

 昨日始めて試した時は、明るい陽の下で発現させたために青い炎は確認し辛かった。

 なので、炎の周囲を薄暗くして視認性を高めた───その名残だ。

 若干色弱気味である俺の為に薄暗くしたが、得られた効果は思いの外大きい。


 まず視認性が高まった事で、よりイメージがしやすくなった事。

 魔法はイメージに拠って発現するので、イメージが強固になる事は威力・精度の上昇を意味する。


 更に本質と違う効果を発現させる事で、魔法の秘匿性が上昇した事。

 そして青く暗い炎を見せる事で、異世界の人間に未知の恐怖を生んだ事。

 広く知られている赤い炎と違って、青く静かに燃える上に仄暗くさえある。

 未知の体験、超常現象と呼んでもいいだろう。

 得体のしれないもの、理解できないものは人の心に恐怖を生む。


 おそらく仲間の身を包んだ青い光が、炎だったとは認識できてはいないだろう。

 だが科学的知識がなくても、起こった結果はわかる。

 仲間の魔法使いは青く光った後に一瞬で炭化して死んだのだ。


「ち!」

 いち早く成すべき事を思い出した弓使いが俺に向けて矢を絞る。

 元々魔法使いの後詰めのつもりで、狙いは定めてあったのだろう。

 スムーズに矢が飛んで来る。


 ゲーム等では弓矢と言えば、近接攻撃より威力が低いものとされる事が多い。

 しかしどう考えても矢は危険だ。


 凄まじい速度で飛来する以上、一定距離内において見てからの回避はほぼ不可能。

 そしてその速度がそのまま威力を生み出す。

 十分に引き絞った弓から放たれた矢は高い貫通力を持つ。

 弓や鏃の種類によっては分厚い木や板金ですら貫くだろう。


 俺の能力は英雄降臨(セギノミカタ)で強化されている。

 注視すれば矢が飛んでくるのがやけにゆっくり見える。

 だがそれだけだ。

 主観的な時間がゆっくり流れるだけでしかない。


 体を動かそうとしても、視界と同じ様にゆっくりとしか動かない。

 このまま矢が飛来すれば、身を捩る事も出来ずに胴体を直撃する事になる。

 このまま飛来すればだが。


 俺は空調管理(エアコ)の他、考え得る限りの保険を掛けておいた。

 空調管理(エアコ)が火を打ち消す距離に矢が差し掛かった瞬間!

 中空に板状の岩が突然生成されて、矢を阻んだ。

 阻んだ矢と共に重力に従って地面に落ちた衝撃で、岩の一部が砕けた。


 何が起こったのか理解できていない冒険者達が呆然としている。

 飛来物に反応して、中空に板状の岩を生み出す防壁(タタッガーシ)の魔法だ。

 由来は時代劇からだ。


 プログラマーなら誰でも目にした事がある簡単な条件文。

 IF 条件 THEN 処理

 主にIF文と呼ばれ、構文は言語毎に異なるが概ねこういう形で記される。

 条件を満たした場合、特定の処理を行うという命令文だ。

 プログラマーは値を制御する為に、常にこの手の条件文を書く。


 例えば生年月日の日付をユーザに入力させるとする。

 ここで全てのユーザが正しく日付を入れてくれるとは限らない。

 0日だとか。ー1日だとか。9月31日だとか。ありえない日付が入力がされるかもしれない。

 だが世の中の殆どのプログラムは、そういう不正な入力をチェックしてエラーメッセージを出す。

 IF 不正な入力 THEN エラーメッセージを出力して処理を中断する

 といった具合だ。


 空調管理(エアコ)の魔法の元となった発想もこれが元だ。

 IF 周辺の気温が一定より高くなったら THEN 温度を一定まで下げる


 人間だってそうだが、指示は具体的な方がわかりやすい。

 わかりにくい指示は迷いを生み、力を発揮する事を妨げる。

 わかりやすい指示は必然を生み、力を発揮する事を助ける。

 こうした指示で氷の精霊は機械の様に狂いなく温度を一定に保ってくれる。


 そしてそれができたなら他の事でも応用ができるのではないか。

 IF 飛来物が迫ってきたら THEN 岩を空中に生成して防ぐ

といった具合に。


 生成されるのは硬い岩であり、さらに板状である事にも工夫がある。

 板状の岩は飛来物に対して傾斜した状態で生成される。

 飛来物を正面から受け止めないので簡単に弾く事ができる。

 戦車の傾斜装甲から着想を得た防御方法だ。

 これで最低限の岩の生成で飛来物を防御できる。


 俺とシャーシャとミミカカの身は常に魔法で守られている。

 一定以上・以下の温度から体を保護する空調管理(エアコ)

 一定以上の光から目を保護する光量調節(ガーサ)

 一定以上の音から耳を保護する音量調節(リモコ)

 飛来物からの安全を保護する防壁(タタッガーシ)

 落下物からの安全を保護する真・自由落下(クーチュフーユ)


 想定される限りの脅威を防ぐ一連の魔法、無害化(サニタイジング)

 悪意ある操作からコンピュータを守るプログラム処理の名前が由来だ。


 無害化(サニタイジング)で守られた俺に矢は効かない。

 防壁(タタッガーシ)の実地テストも済んだ事なので、用なしとなった男を完全燃焼(アオカラークロエ)で燃やす。

「お………」

 何を言いたかったのかは知らないが消し炭にする。


 そこで漸く槍を持った男が襲い掛かって刺し貫こうとして来る。

 槍というのは相当厄介な武器だ。

 剣に倍するリーチを持ち、突きから素早く払う動作を連続されると、距離を詰める事もできない。


 だが魔法が使える俺に取って、槍を無効化する方法はいくつか考えられる。

 例えば近接攻撃は使い手ごと重力追放(ウチューユエ)を掛ける事で、その脅威の大半を取り除ける。

 地面に踏ん張る事で物理攻撃の威力が生まれる以上、無重力状態ではまともな近接攻撃はできない。

 しかし文字通りの手傷は負わされてしまうかもしれない。


 男の持ってる槍は鉄製の穂先を備えた木製の槍で、滑り止めに何か巻き付けられている。

 木製ならば燃やす事ができる。

 完全燃焼(アオカラークロエ)で槍を焼き尽くす。

 突然手元の槍が無くなって狼狽する男を、改めて懐から取り出したマグライトを用いた光剣(サーナギオン)で滅多斬りにする。


 完全燃焼(アオカラークロエ)で男ごと焼き尽くしても良かったが、近接攻撃をしてこようとしたので思わず近接攻撃で対応しようとしてしまった。

 まぁ手順が少し変わるだけで、男達が死ぬ事には何の差もない。

 1人残った斧を持った男を見据える。


 男は彼我の戦力差を理解できたのか、動いていない。

 逃げれば良かったのに。

 逃がすつもりもないが。

 動かない目標をまた光剣(サーナギオン)でバラバラにした。

 初めての同業者との戦いは、実に呆気無く終わった。




「さて」

 振り返ってみる。

 イテシツォ子爵が床に座り込んでいた。

 頼みの綱の冒険者が手も足も出せずにやられていくのを見ていた為だろう、茫然自失としていた。


「今のがお前の頼みの綱か?」

「………」

 何も答えられない子爵。


「じゃあ拷問して殺してやるよ」

 そこまで言うと漸く顔をこちらに向けようとした。

「お前は罪もない人を巻き込み過ぎた。せいぜい苦しみ抜いて死ねよ」


 貧困街を汚した屑共(アメリカ軍)の時は、急いでいたので異常な世界に放り込んで放置してきた。

 だがコイツは絶対に直接殺す。

重力追放(ウチューユエ)


 自分に身に起こった事が理解できず、宙でジタバタする子爵。

 抵抗力を奪ってから拷問だ。

 前に聞いた話では、罪人は領主に引き渡される。

 という事は刑罰用の鞭がどこかその辺にあるだろう。


 鞭打ち刑は洋の東西を問わず広く、そして古くから存在する代表的な刑罰だ。

 振るう鞭次第では50回も打てば絶命させる事すらできる。

 逆に鞭を選べば痛みを長引かせ続ける事もできる。

 加えて俺は回復の魔法も使える。

 痛みで発狂するまで鞭打ちにしてやる。


 館内を偵察して目当ての鞭を探し出そう。

 空間把握(ミアリーメアリー)の魔法で、すぐ目の前の光景を映し出す事から始める。

 建物の構造がわからない以上、離れた地点の光景を想像できない為だ。

 なのでまず近場を映し出し、そこから見える光景を頼りに視界を得る地点を動かしていき、どんどん遠方へと遷移させていく。

 今回の場合は目の前を映し出してから廊下へと視界を移し、そして扉を見つける度に部屋を覗く。


 2階の部屋を順番に物色していく。

 やはり2階の部屋は私室だったんだろう。

 目当ての鞭は見当たらない。

 ついでに殺すべき領主の家族と見られる人間も見当たらなかった。


 2階の部屋は全て外れだったので、視界を廊下に戻して階段から1階へ下る。

 しかし1階の廊下で全く予想していなかったものを見た。

 なんでこんな所にまで?

16/10/01 投稿

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