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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の発露
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日本男子、乗り込む

R-15 残酷な表現有り

 俺は今、騒動の決着を着けようとしていた。


 世界の頂点に君臨する偉大な祖国、日本へ帰還する手がかりを探す為に町に来た。

 手がかりが掴めなくとも、この世界に関する知識が手に入れば御の字。

 後は野菜類や、シャーシャのサンダルでも買えれば、それだけでよかった。

 異世界の町の様子を物味遊山しよう、そんな事しか考えていなかった。

 本来なら町では穏やかに過ごすつもりだった。


 それが何の因果か卑劣極まりない兵士達(アメリカ軍)に正義を示して回る嵌めになった。

 何の咎もない女子供を兵士達(アメリカ軍)の理不尽から守る為だ。

 はぐれたシャーシャとミミカカの安否が常に気にかかる殺伐とした時間。

 こんなことになったのは全て、軽挙妄動を起こした2人の人物の所為だ。


 俺を兵士に突き出した張本人である宿屋の主人。

 自分でふっかけておいて勝手に疑心暗鬼に陥って、1人で暴走した救い様のない莫迦。

 完全な冤罪だったので、痛めつけながら殺した。


 そして宿屋の主人の被害妄想じみた暴走に共謀した奴がいる。

 シャーシャとミミカカを、駆けずり回って探す嵌めになっている元凶。

 コイツが余計な真似さえしなければ、俺はこんな苦労をするしなくて済んだ。


 イテシツォの町の領主。

 何を思って俺に兵士を向けたのか。

 町を統治する上で邪魔になる危険分子だと思ったのか。

 或いはその辺の大人如きは歯牙にもかけないシャーシャの強さを聞いて、お抱えにする為に抑えつけようとしたのか。

 真意はわからないが、コイツが兵士達(アメリカ軍)をけしかけた事が全ての原因だ。


 町の門とは正反対の奥まった所にある一際大きな屋敷。

 ここに乗り込んで諸悪の根源である領主を殺す。

 兵士達(アメリカ軍)を操る悪の首魁め!


 無音ローアで音を消し、光学迷彩(ニジャ)で姿を消す。

 予め空調管理(エアコ)を掛けてあるので、例え熱源感知(サーモグラフ)を持っていても俺の存在は感知できないだろう。

 完璧な欺瞞能力を発揮した俺は、誰にも気取られずに目的地に向かった。




 領主の館まで来ると、槍を構えた兵士2人が門前を警護していた。

 英雄降臨(セギノミカタ)で強化された腕力で、胸にマチェットを突き立てて殺す。

 無音(ローア)の影響下にある以上、今際の言葉すら発する事無く死んだ。

 突然血を流して倒れる同僚に気付いた、もう1人の兵士も同様にして殺す。


 完璧な欺瞞能力を活かして、皆殺しにせずスマートに潜入する事も可能だっただろう。

 だが相手は卑劣な兵士達(アメリカ軍)だ、1人残らず根絶しにする必要がある。

 怯え惑う人々を喜んで殺し、女と見れば犯す様な、犯罪集団を生かしておけるものか。


 それに禍根を断つ為にも見逃す訳にはいかない。

 俺は兵士達(アメリカ軍)から攻撃され、安全確保のために反撃している。

 だが兵士達(アメリカ軍)も俺から攻撃されたと主張して、報復しようとするだろう。

 襲ってきておいて被害者面とは、流石は厚顔無恥な兵士達(アメリカ軍)だと思うが、一応俺が攻撃したというのは事実ではある。


 復讐心は、動機を生む。

 動機は、正当性を生む。

 正当性は、原動力を生む。

 仕返し、復讐という行動は相手からされたという根拠があるので、非常に強い原動力となる。


 思うに昨今Web上やらツイッターやらで、直ぐに広がる炎上騒ぎの原動力も正当性だと思う。

 期待を裏切られたから、相手が悪いんだから。

 そんな自分達なりの正当性に基づいた行動が過激な批判なんだろう。

 通信網が発達した今、批判は一瞬で広がり、常軌を逸した様な大バッシングが起こる。


 高度な情報テクノロジー、ユビキタス社会が引き起こした弊害とでもいうのだろうか。

 ちなみにユビキタス社会とは情報端末が手の平に収まるようになった現代社会の事だ。

 この言葉を使う奴はかなりの高い確率で意識高い系だと俺は思っている。


 関係ない話に脱線したがこの異世界では、司法と立法と行政が全て単一の権力に集中している。

 である以上は権力者が一度命令を発せば、その正当性が問われる事すらない。

 領主が俺を反逆者と定めたなら、それは疑う余地もない事実となる。

 復讐心と事実という免罪符を持った相手を野放しにはできない。


 俺の正当性を主張してくれる司法機関がない以上、自分達の身は実力行使で守る必要がある。

 法整備が行き届いた平和な日本からしたら、信じられない様な価値観だが。

 何よりシャーシャとミミカカの為にも、腑抜けた事を抜かしてはいられない。


 無実の俺達に危害を加えようとした事!

 貧民街の人達を人扱いしなかった事!

 挙句殺した事!

 更に辱めた事!

 どれも傲慢不遜な兵士達(アメリカ軍)の蛮行だ!


 俺への復讐心?疑いない事実?

 そんなふざけた主張を許せるものか!

 命を、尊厳を踏み躙った罪を償わせてやる!


 重力追放(ウチューユエ)英雄降臨(セギノミカタ)で門を飛び越えて、館へと進む。

 光剣(サーナギオン)で門をバラバラにする事もできたが、目立つのを避ける為跳躍して飛び越えた。

 門番の殺害をマチェットで済ませたのも人目を避ける為だ。

 日中とはいえ光剣(サーナギオン)の光は強く、特に今日の様な曇り空の下ではかなり目立つだろう。


 貴族は有事の際は館内に備えた脱出路から逃げ出すというのが話の定番だ。

 領主がそういったものを持っているかはわからないが、ないと高を括って間抜けを晒すのは避けたい。

 秘密裏に潜入して気付かれる前に全滅させてやる。


 さて門を飛び越えた今、どこから館に潜入するべきか。

 正面の扉を使うのは、隠密性を高める為にも避けたい。

 とすれば適当な明かり取りの窓からか。


 ガラスの起源は相当古いらしい。

 古代メソポタミア文明にはもうガラスがあったそうだ。

 である以上、文化レベルの低いこの異世界にも窓ガラスは存在していた。

 ただし貴重品なのは間違いなく、金のある建物にしか使われていない。


 貴族である領主の家の窓には無論窓ガラスが存在していた。

 となれば割って押し入る訳にも行かないので、侵入可能な場所を探す。

 2階の端の窓が開いてるな。

 門を飛び越したのと同様に、自らの体重を無視した跳躍で窓に取り付く。


 開け放たれた窓は、誰かの部屋のものだったらしい。

 木のベッドや机、革張りの椅子があるのが見える。

 おそらく領主の家族に類する者が使う部屋なのだろう。


 俺がそう判断したのは、室内の椅子に上等な服を着た人間が座っていたからだ。

 娘か?或いは歳の離れた妾か?

 若く見える女が1人でお茶を飲んでいる。

 まぁ何者であろうと知った事ではない。


 光剣(サーナギオン)で首を刎ねる。

 切断された娘の首から上は、目を見開いて口を開いた驚愕の表情を浮かべていた。

 無音(ローア)の魔法が掛かっている以上、重力に引かれて体が倒れた音も、茶器が落下して割れる音も何もしない。

 自分の身に何が起こったかもわからないまま、若い女は静かに絶命した。


 お前がのんきに茶を飲んでる間に、全く謂れのない事で虐げられた人がいるんだ。

 非業の死を遂げた人達の痛みをその身で味わえ。

 (アメリカ軍)の陣営に所属する以上は死んで当然だ。

 

 俺は心の中で殺人の正当性を主張した。

 そうでなければ無抵抗の若い女の命を奪った事に耐えられそうになかった。

 光剣(サーナギオン)の利点は、威力、精度、操作性、隠密性の高さだけに留まらない。

 人の命を奪った感触を、この手に伝えないという点でも優秀だった。




 現在地は2階建ての館の端の方の部屋。

 ここからどう進むべきか。

 俺は虱潰しに部屋の中を検めて行く事に決めた。

 どうせ誰1人として逃がすつもりがない以上、全ての部屋を確認する必要がある。


 部屋を出て、廊下に出る。

 廊下には敷物がされている他は調度品の類はなかった。

 ありがちな騎士甲冑の飾りといったものでもあるかと思ったが。


 そんなどうでもいい事を考えながら、廊下を見渡したが人は見当たらなかった。

 何十人もの使用人に囲まれて、さぞかしきらびやかな生活を送っている。

 そういうありがちな想像をしたが、実際はそうではないらしい。


 貴族の生活等考えてもわからないが、殺す人数が少ないのはいい事だった。

 俺にだって良心というものはある。

 きっと今回の事が全て終わったら、俺は疲弊するだろう。

 嫌悪感に包まれて、無気力になるに違いない。


 10や20で済まない人間を殺した。

 その中には今さっき殺したばかりの若い娘も含まれる。

 それでも俺が終わらせなければ、心無い兵士達(アメリカ軍)が罪もない人々を不幸にする。

 そんな事は到底許容できない。

 か弱い人々に成り代わり、この俺が邪悪な兵士達(アメリカ軍)に天誅を下さなければならない。


 隣の部屋の扉を開けるとそこには、上等な身なりの婦人がいた。

 扉が開いたのに誰も廊下に立っていない光景に呆然としている。

 無音(ローア)の影響範囲に置いた後、光剣(サーナギオン)で首を刎ねて即死させる。

 体が崩れ落ちるがやはり音はしない。

 深く考えない様にして部屋を出た。


 廊下に出ると執事らしき男が歩いてきた。

 特に何も持っていない。

 すれ違い様に首を刎ねて殺した。


 また別の部屋を開ける。

 年配の男がいた。

 ………。


 さっきの2部屋に居たのは上等そうな身なりの女だった。

 また家具の中にはベッドがあったので、あれらはおそらく寝室を兼ねた私室だ。

 この館の2階は領主の家族の私室が並んでいると思われる。


 つまり領主一族の私室に居るコイツはイテシツォ子爵か?

 そうだとすれば簡単には殺さん。

 考え得る限り惨たらしく殺してやる。


 無音(ローア)光学迷彩(ニジャ)を解除して、欺瞞を解く。

 突然目の前に表れた俺に男は驚いていた。

 光剣(サーナギオン)の媒介となるマグライトをポケットにしまい、腰からマチェットを抜いた。

 マグライトでは異世界の人間を威圧できないからだ。


「お前がイテシツォ子爵か」

 マチェットを向けながら尋ねる。

「誰だお前は!門番は何をやっていた!誰か!こいつをつまみ出せ!」

 男は俺の問いを無視して、命令を出している。


 ムカついたので近付いて拷問しようとした。

「動くな!物盗りか!俺の館に勝手に入って只で済むと思うな!」

 コイツの現状認識能力は大丈夫か?

 目の前に武器を構えた脅威が迫っている事が理解できていないのか?

 今どうにか出来なければお前は死ぬんだぞ?


 だがありがたい。

 コイツが愚鈍である程、救い様がない程、領主殺害に対する俺の罪悪感は薄まるのだ。

 相手に落ち度がないのに、一方的に殺したとあれば流石に気にせずに入られなくなる。

 殺す事に代わりないとはいえ、心の負担は出来る限り軽く済ませたい。


 俺が歩みを止めずに近寄るのを見ると狼狽し出した。

「誰か!誰か!早くコイツをなんとかしろ!」

 俺から顔を背けて大声で叫んでいる。

 視界から外したところで俺という脅威は消えないんだが。


 ダチョウの平和というやつか。

 ダチョウは危機を感じると、地面に顔を埋める事で危機をやり過ごそうとするという例え話で、そんな事をしても危機は去らないという事を暗に揶揄する言葉だ。

 ちなみに現実のダチョウにそんな習性はないらしい。危機を感じればその脚力で一目散に逃げ出すからだ。


「話を聞けよ」

 ダチョウ以下の危機管理能力を持つ男の腹を思いっ切り蹴る。

「ぼおっ!」

 体を曲げて苦悶の声を漏らす男。


「俺はお前がイテシツォ子爵かと聞いたんだ」

 馬鹿な男を冷たく見下ろす。

「お、お前………俺にこんな事をして只で済むと」

 マチェットを二の腕に突き立てる。

「ああああああっ!」

 自分の腕に突き立てられたマチェットを見て声を上げる。

「同じ事何度も言わせんなよ」


「だ、旦那様!?」

 声に振り返ると、別に年若くも老いてもいない女中が廊下から声を掛けてきた。

 さっきの男が人を呼んでいた声を聞いてきたのだろう。

「おぉ!コイツを捕まえろ!」

 男は人が来た事に安心したのか、顔を輝かせて命令した。


 部屋の中にいる異質な存在である俺を見て立ち尽くす女中に、一足飛びで襲い掛かってマチェットを突き立てた。

 英雄降臨(セギノミカタ)真・自由落下(クーチュフーユ)の力を載せた切っ先は、真っ直ぐ女中の胸を貫いた。

 マチェットに突き刺したまま女中の体を持ち上げ、そのままブラブラと弄びながら部屋の中に持ち帰る。

 重力追放(ウチューユエ)の影響下に置いたからできる芸当だ。


 女1人を片手で軽々と持ち上げて、悠然と自分の元まで歩いてくる俺を見て、ようやく脅威を認識したらしい。

 男は口を開いたまま俺を見ていた。

 無造作に女中の体をマチェットから抜いて、男に向かって放り投げる。

「うあっ!」

 重力追放(ウチューユエ)を解いた女中の体とぶつかって、男は受け止めきれずに倒れた。


 創作物だとこういうシチュエーションなら、何人もの人間が現れて行動を阻害してきそうなものだ。

 だが実際に表れたのは女中1人。

 別に屋敷には子飼いの兵士が詰めている訳でもないのか?

 貴族は私兵として、ある程度名の知れた冒険者を囲っているものと聞いたが。

 今のところそういう人間が現れる兆候はない様だ。


 しかし今のやり取りでもわかった事がある。

 この男はしきりに館の人間に命令を出している。

 何より女中は「旦那様」と口にした。


「やはりお前がイテシツォ子爵だな」

 コイツが諸悪の根源で間違いないだろう。

「お、お前は誰だ!?」

 この期に及んでまだ俺の問いかけに答えないか。


 これは貴族という種類の人間に見られる特徴なのか?

 他に比較する事例が思い浮かばないので真相はわからないが。

「いい加減俺の聞いてる事に答えろよ。その女みたいに殺されたいのか」

 直接害意を口にする事でようやく返答が得られた。


「そうだ、俺がメジ・イテシツォだ!し、子爵の俺にこんな」

 女中の体の下敷きになって、地面に這いつくばった姿勢の男───イテシツォ子爵が答える。

「まだ立場がわらないのか」

 這いつくばった手の指を踏みにじる。


「ああああああっ!」

 濁点が付いてそうな発音の悲鳴だった。

「やっと確認が取れたから俺も答えてやる。俺はヤマトー・カミュ・ホマレーだ」


 名乗った事で、漸く俺が何者なのか理解したらしい。

「お前が!冒険者風情が俺にこんな真似を!どうなるかわかって!」

 この期に及んで飛び出す言葉が冒険者()()、ねぇ?

 いかにも白人以外の全てを見下している差別主義者(アメリカ)らしい考えだと呆れ返るばかりだ。


「あ?どうなるんだよ」

 手を磨り潰す様に力を込めて踏みにじる。

 徐々に重力を加えていっているので、このまま続ければ本当に擦り潰せる。


「いいいいいいい!」

 痛みに脂汗を垂らしながら叫ぶイテシツォ子爵。

「どうなるんだよ!」

 一体ここからどうする事ができるんだ。


「待て!待ってくれ!」

 流石に自分の状況を省みたのか、口にする言葉が懇願に変わった。

「待て?待てばどうなる?」

 只の興味本位で聞き返した俺に、光明を見出した様に捲し立てる。


「い、今なら不問にしてや」

 ムカついたので顔をサッカーボールキックで蹴り飛ばす。

 力を抑えるのに酷く苦労をした。

 灰色の猟犬(グレイハウンド)の頭すら砕く俺が、身体強化した状態で全力を出せば人の体如き保つ筈がない。


 イテシツォ子爵は血を撒き散らして体を浮き上がらせた。

 鼻の骨と前歯も何本か折ったらしく、血が出ている。

「まだ立場がわからない程莫迦なのか。お前の生殺与奪権は俺が完全に握っている」

 ハッキリ宣言してやる。

 物分りの悪い人間を見ると心底うんざりする。


「待て!何が望みだ!望みなら叶えてやる!目的はなんだ!」

 最初のやり取りと比べれば、随分建設的な方向性の発言が飛び出したと言っていいのかもしれない。

 俺の怒りを増幅させるような言葉だったが。


「望み?目的はなんだ?全部こっちの台詞だ」

 這い蹲った莫迦を見下ろしながら問いかける。

「何のつもりで俺達に兵士をけしかけた?精一杯考えて答えろよ?返事次第でお前が楽に死ねるか、拷問の果てで死ぬかが決まるんだからな」

 俺がなんでここに来て、子爵をこんな目に遭わせるのか。やっと頭の中で関連付いたらしい。


「ま、町で、宿屋をやっていた男が、お前が反逆を企てていると、言ったんだ!」

「は?だから裏付けも取らずに兵士を差し向けただと?俺を怒らせてそんなに死にたいのかお前?」

 自分の返答が、俺を納得させられるものじゃない事に気付いた様で、慌てて言い足す。


「し、調べた!お前は貧困街の連中や、教会の孤児に心付けして、味方に引きこもうとしていたではないか?」

 俺の知りたかった事柄に近付いた。

「味方?やろうと思えば1人でここまで押し入って、いつでもお前を殺せる俺が味方?それは何の為の味方なんだ」


「………」

 こいつの莫迦の頭でもわかるだろう、俺がコイツを殺すのに誰の手も借りる必要がない事に。

 実際に俺は1人で卑怯にして矮小なる野蛮人(アメリカ軍)を蹴散らして、領主の身柄を抑えている。

 そもそも完璧な欺瞞能力を誇る俺の襲撃を防げる者がいるとはとても思えない。

 唯一俺の襲撃を防ぐ事ができるとすれば、神聖不可侵の存在たる天皇陛下ぐらいだろう。

「おい!何を黙っている!それは死ぬ覚悟ができたという意思表示か?」


「ま、待ってくれ!知らなかったんだ!お前がこれ程強い冒険者だったとは!そう!知らなかったんだ!」

 やはりか。

「知らなかった?それはつまり俺が弱いと思って、力で言いなりにしようとしたという事だな?」

 少し目立った冒険者の話を小耳に挟んで、手勢に加える為に圧力をかけた、と。


「………」

「今度黙ったら殺すぞ!」

「あ、あぁ!違うんだ!違うんだ!」

 黙ると殺すと言うと、意味のない弁明を始めた。


「それで?俺だけでなく、なんで貧困街の連中にまで手を出した?」

「そ、それは」

「言い淀むな!殺されたいか!」


「貧民街の連中如き、どうでもいいではないか!?あんな奴らいくら死んでも」

 流石は人を人とも思わぬ屑の集まり(アメリカ軍)の首魁!何ら勘違いしようがない外道ぶり!

 要するに元々目障りに思っていたらしい。

 そこに貧民街の人間や教会の孤児に接触している、冒険者がいるらしいと聞いた。

 それで反逆に加担した罪をでっち上げて、目障りだった人間を掃除すると。


「つまりお前の言い分は、貧民街の人間が死んだのは俺のせいだと言う事か?」

 この莫迦は、漸く口走った内容に気付いた様だ。

「お前は与するに易しと俺を侮って兵士をけしかけた挙句、罪のない市井の人間を殺した咎まで押し付けようと言うんだな!」


「い、いや!ち、違う!そうでは!」

「もういい!楽に死ねると思うな!」

 死の宣告を行う!

 もはや我慢ならん!


「お前!領主様から離れろ!」

 領主への刑を執行しようとしたところに、新たな声が聞こえた。

 ここで闖入者か。

16/10/01 投稿

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