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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の発露
35/154

ミミカカ、日本男子と引き裂かれる

 アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ。


 ヤマトーさんと再会して10日、色んなことがあった。


 まずはヤマトーさんの妹、シャーシャとの出会い。

 無口で色白で細くて小さい子だった。外を歩くときはいつもキョロキョロしてて、何かを怖がってるみたい。

 でもアタシに乱暴しようとした大の男を、武器も使わずに倒しちゃうぐらい強かった!

 ヤマトーさんの妹だけある!


 いっしょに修行をして、もっとシャーシャのすごさがわかった!

 ヤマトーさんと鞘に入れたままのナイフを使った戦いの訓練!

 バババババババって、すごい早さでナイフを振る2人!

 村一番の弓の使い手って言われたアタシでも、目で追うのが精一杯な早さ!

 頑張ってアタシもナイフをあの早さで振れるようになるし!


 そんなすごいシャーシャだけど修行の途中、いきなりむくれちゃった。

 天井からぶら下がって体を引き上げる、ケシィのキトレのときだ。

 いつも大人しいから珍しい。


 なんで機嫌が悪くなったかっていったら、やり方が変わったからみたい。

 2人だけの旅の間にもキトレはしてたみたいけど、もちろん外に掴める天井なんてない。

 多分ヤマトーさんが代わりになって、シャーシャがぶら下がってケシィしてたんだ。


 シャーシャはヤマトーさんと一緒にできる、ケシィが好きだったんだろう。

 アタシだってそっちの方がいいしわかる。

 シャーシャもヤマトーさんが好きなんだろうな。

 いつもヤマトーさんの近くから離れないし。


 でもヤマトーさんはシャーシャがなんでむくれてるのかわかってないみたい。

「シャーシャちゃんも直ぐに大きくなりますよ」

って言ってたし、背が足りなくて天井に掴まれなくてむくれてるんだと思ってるっぽい。

 ヤマトーさんでもわからない事があるんだなって思った。




 ヤマトーさんといえば、歯磨きはすごい恥ずかしかった!

 歯磨きって言ったら布で歯を拭くものだったのに、ヤマトーさんはハバーシって不思議な道具を持ってた。

 白いツンとするのをちょっと付けてそれで歯を磨く。

 初めてハバーシを使う時はヤマトーさんが歯磨きしてくれた。


「力を入れ過ぎてはいけない」

「時間をかけ過ぎてはいけない」

「歯の裏側は磨きにくいから気をつけるんだ」

 すごい丁寧に磨いてくれた。

 ………でも!


 ヤマトーさんの顔がすごい近い!

 ヤマトーさん睫毛長い!

 ヤマトーさん肌きれい!

 けど何よりも!


 ハバーシを持ってない方の手が、アタシの鎖骨に軽く載せてあって気になる!

 すごいくすぐったい!

 触られてるところから体が溶けそう!


 アタシ汗かいてない?

 多分顔真っ赤!

 すごいドキドキしてる!


 今まで村の人と手が触れたりしてもなんとも思わなかったけど、ヤマトーさんは全然別!

 身動きもできないし辛いのに幸せな時間だった!

 でももうやってもらえないんだろうなぁ。残念。

 ハバーシで歯を磨くと、布で磨くよりスッキリした。




 朝、2人と一緒にご飯を食べる。

 お父さんからもらったお金もあるし、朝食代を払おうとしたらヤマトーさんが払ってくれた。

「ニホコクミになると言ってくれたからには助力は惜しまん。金銭面でも勿論の事だ」

 ニホコクミになる修行もさせてもらえて、ご飯も宿代も払ってもらえる!

 ヤマトーさんは相変わらず優しかった!


 昼まではヤマトーさんに勉強を教えてもらう。

 白いペラペラの紙と、シャーペって珍しい道具を使わせてもらった。

 持ちやすくてすごくきれいに字が書ける!

 白い四角いのでこすったら簡単に消せるし!


 道具もすごいけど、やっぱり教えてもらう事もすごい!

 ヤマトーさんは、きれいな色のついた本をいっぱい持ってた!

 本にはびっしり難しくて、読めない字が書かれてた!


 ヤマトーさんは難しい字をスラスラ読んで、アタシ達に内容を教えてくれた!

 アタシ達がわからない事は、絵を描いたり例え話にしたりして、わかりやすく教えてくれる!

 やっぱりヤマトーさんってすごい!




 勉強が終わったらお昼。

 そこでグララが増える。

 最初は誰だろうこの人って思った。

 ヤマトーさんの知り合いかなって思ったら違うみたいだし。


 グララは魔法使いで、これからの旅にいっしょについてくるらしい。

 話し方が偉そうで、運動が下手。

 後でわかったけど、魔法まで下手。

 なんでこんな足手まといが?


「グララ!君は素晴らしい女性だ!きっとさぞや研鑽を積んできたのだろう!君の知識は全て身となり君に根付き息づいている!美しく思慮深いばかりでなく才気に満ち溢れている!きっと近い将来に大成するに違いない!その溢れる程の叡智と美貌はこの世界の財産そのものだ!君の可憐さには例えどんな花も敵わない!」


 ヤマトーさんは急に話しかけてきたグララを、すごい勢いでほめてた!

 色んな事を教えてくれるけど、ヤマトーさんはいつも無口!

 なのにヤマトーさんは、グララを褒めるときはいっぱい喋った!


 やっぱり………胸が大きいから?

 グララの胸は………かなり大きかった。アタシの胸は………シャーシャよりは大きい。

 あとシャーシャとグララを見て思ったけど、みんな色白だ。ヤマトーさんも色白な方だし………。

 ヤマトーさんはやっぱりグララみたいに、髪が長くて色白で胸が大きい人が好きなのかな?


「へ?俺が?あれを?なんで?」

 あの後、直接聞いてみたけど………うん、完全にグララは脈なしだ!

 アタシ達と話す時は、いつも優しく笑ってるヤマトーさんが素の顔だったし!


 気になってシャーシャの顔を見てみたら、嬉しそうだった。

 アタシが見てるのに気付いて驚いたけど、アタシも笑ってるのに気付いて可愛く笑ってくれた。

 2人で仲良くにっこり笑顔!

 シャーシャと初めて心の底からいっしょの気持ちになれた!




 お昼ご飯を食べたら4人で散歩。

 色んな食べ物が集まってておいしそう!


 ついつい果物を見てたら、

「これで良かったか?たしかに美味そうだな」

って何も言ってないのに、ヤマトーさんが買ってくれた!

 嬉しい!


 シャーシャにも

「欲しいものがあれば買いますからね」

って優しく言ってるヤマトーさん!

 優しい!


 グララが「我はアレがいいのだ!」ってヤマトーさんに言ったら、

「そうか。好きに買えばいいじゃないか、自分で」

って返してた!

 すごい嬉しい!


 ヤマトーさんにとっては、美人のグララよりアタシ達の方が扱いが上!

 なんていうか………勝ったって思える!


 そんな事を思ってたらどんどん人が少ない場所にまで進んでて、周りに女の子が集まってきた。

 みんな服がちょっと汚い感じだけど全員、自分はすごいとか言ってなんか自慢してた。

 何を自慢してるんだろうって思ってたら、次々にヤマトーさんを連れて行こうとする!


 ヤマトーさんはそんなに美形ってわけじゃないんだけど、子供みたいな顔をしてて可愛い!

 でも真面目な顔をしてるときは、口元を引き締めてて視線が鋭くてカッコイイ!

 もしかしてヤマトーさんってモテる!?


 ヤマトーさんは集まってきた子を全員連れて、宿に戻ってきた!

 何をするのかと思ったら、全員分の食事を注文した!

 お腹が空いてる子達を集めて、わざわざご飯を食べさせるなんて!

 お代わりもさせた!

 なんて優しいんだろって思ってたら!


「ヤマトーさん、これは………」

 いつもヤマトーさんが背負ってる袋から………アタシの料理が出てきた!?

「あぁあの時のものだ。いつもありがとう、ミミカカ」

 なんでかわからないけど、アタシの作った料理が出てきた!


 村にいたときにヤマトーさんが食べたいって言ってたやつだ!

 また作ってあげたいなって思ってたのに………しかもなんでいっぱいあるの?

 いつもありがとうって言ってたし、アタシの料理をいつも食べてた?

 知らない間にヤマトーさんを助けられてたんなら嬉しいかも!


 ビックリしながらアタシの料理が食べられるのを見てたら、ヤマトーさんが何かくれた。

「これはアメダームという甘いお菓子だ。礼というには足りないが、ありがとうミミカカ。受け取ってくれ」

 甘いお菓子!村では絶対食べられないご馳走だ!

 丸くて半透明な玉で見た目もきれい!


 !

「ヤマトーさん、これすごくおいしいです!」

 なにこれ!すごい甘い!幸せ!ずっと舐めてたい!

「そうか、気に入ってもらえたならよかった」

 はい、気に入りました!


 連れてきた子たちには、きれいな布と、おいしいアメダームをたくさんと、大銅貨2枚をおみやげにしてた!

 布はアタシが村でもらったのと同じ様な、すごく明るい色ときれいな模様をしてるやつ!

 さらにヤマトーさんは、別の日に孤児のいる教会に行って、たくさんの金貨を寄付してた!

 アタシ、金貨なんて初めて見た!それもあんなにたくさん!


 弱い人を守り、お腹が空いてる人にはご飯を食べさせ、貧しい人には施しを!

 これがニホコクミ!

 アタシも強くなるだけじゃなく優しくならなきゃ!

 まずはグララに優しくしたげよう!




 町でヤマトーさんと合流して10日目!つまり昨日!

 なんと魔法が使えるようになった!

 ヤマトーさんが魔法の訓練をしてくれて、アタシもシャーシャも魔法を覚えた!


 アタシはすごく集中すれば精霊がちょっとだけ見られる。

 世界にはどこにでも精霊がいて、ぼんやり光ってた。

 でもシャーシャが力を借りる精霊はそんなんじゃなかった!光り輝いてもっとハッキリしてた!

 シャーシャが魔法を使おうとすると、光の塊みたいなのが周りに集まってくるのがわかった!

 こうしてハッキリした精霊の姿を見たおかげで、普通の精霊ももっと見られるようになった!


 そしてヤマトーさんはすごいとか、もうそういうレベルじゃなかった!

 力を借りる精霊も、アタシとは違ってシャーシャみたいにハッキリしてた!

 でもそれよりもっとすごいのは、光の精霊を集めたのに、火を起こしたり、姿を消したりする!

 ヤマトーさんの魔法は、力を借りる精霊と、できあがる魔法が全然違ってた!

 水の精霊で、なんで剣を切れるの?

 

 たくさんの魔法を使ったヤマトーさんは、いきなり踊るみたいに動き出した。

「お見せしよう!」

 そう言いながら服をはだけさせるヤマトーさん!


 いつも手袋と、長い袖と、長い裾に隠されてる、ヤマトーさんの体!

 それが子供みたいに毛が全然生えてなくて、すごくきれいなのをアタシは知ってる!

 修行のあとで体を拭くときに毎日見てるし!

 細いんだけど、筋肉はしっかりある!なんかムダが全然ない感じ!


「ヤ、ヤマトーさん、脱ぐんですか?」

 まさか全部脱ぐの?思わず見ちゃうアタシ!

「今から使う魔法に必要な前準備なんだ。気にしないでくれ………とおっ!」


 裸にはならなかったけど、結局見てしまった!

 ヤマトーさんは飛んだ!村の見張り台を飛び越せるぐらいの高さを!

 今のが魔法?


 驚いてるアタシの前で、ヤマトーさんは次々すごい動きをした!

 後ろに回るバッテ!横に回るソッテ!

 ソッテして、バッテするロッダーツ!

 人ってこんなに動けるんだって驚いた!

 アタシはヤマトーさんの姿を目に焼き付けて、自分も立派な戦士になると改めて誓った!


 そしてヤマトーさんの魔法で、アタシたちは空を飛んだ。

 今まで見たことがない精霊を使った魔法だった。

 少し怖かったけど、ヤマトーさんに抱きつけて嬉しかった。

 グララはよっぽど怖かったのか、すごくうるさかった。

 でもシャーシャは泣き言一つ言わなかった。さすがニホコクミ。


 アタシ達はすごい早さで空を飛んで、直ぐに町に戻れた。




 次の日。その日は朝からいつもと違ってた。

「実は頼みがあるのだ」

 グララが朝から話しかけてきた。珍しい。

「女子同士にしか頼めぬものなのだ!」

 しかも用があるのはヤマトーさんじゃなくて、アタシ達にらしい。すごく珍しい。


「………」「………」

 シャーシャといっしょにヤマトーさんを見る。

「女同士の話だと言われれば、俺から言う事は何もない。2人で決めてくれ」

 ヤマトーさんは口出ししないらしい。


「アタシは聞いてみてもいいと思うけど、シャーシャはどうする?」

「………うん」

 シャーシャはグララの事が苦手そうだけど、話を聞くぐらいなら大丈夫らしい。

 こうしてアタシ達、巨人(ジャイアント)殺し(スレイヤー)の女は、宿とヤマトーさんから離れる事になった。




「………」

「………」

「………」

 すごく気まずい。


 宿を出る前から誰も何もしゃべらない。

 シャーシャがしゃべらないのはいつも通り。

 そしてアタシも別にグララと仲良くない。

 だから誰もしゃべらない。


 っていうか相談があるって言ったのグララじゃないの?

 アタシはグララをにらんだけど、グララはどこ吹く風で歩いてる。


「お、姉ちゃん達どこ行くんだ?俺達と遊ぼうぜ」

 冒険者っぽい男2人が声を掛けてきた。

 ヤマトーさんはこういう時は、絶対に警戒して、いつでも攻撃できる様にしなさいって言ってた。

 2人の美しさはトラブルを呼び込むかもしれないって。美しさ………てれてれ。


 わたしは魔法を使おうとした。

 昨日修行したばっかりだし、はやく使ってみたい。

 なのに、魔法は使えなかった。


「………え?」

 シャーシャも同じみたいで魔法がうまく使えない。

 魔法は成功してるはずなのに、火が出てこない。

 集中して周りを見たら、火の精霊をじゃまする精霊がいた。

 なんでこんな精霊が周りに?


「シャーシャ、ナイフを抜いて!」

 アタシが叫ぶと、シャーシャは直ぐにナイフを抜いて構えた。

 逆手持ちのナイフを相手に突き出す、ホマレー流護身術の構え。

 今のアタシならナイフがあれば、1対1の戦いで簡単に負ける気はしない。

 しかもニホコクミのシャーシャまでいる。


「あ?ずいぶん生意気な女だな。後悔させてやる」

 男たちも剣を抜いてきた。

 得物の長さで負けてる時は、手数で補う。

 細かく相手の剣を弾いて、好きに振らせない。


「待て、お主達!」

 武器を構えてにらみ合ってたアタシ達に、グララから声が掛けられた。

「我等が巨人(ジャイアント)殺し(スレイヤー)と知っての狼藉か?」


「あ、誰だそ」

 隣のシャーシャの体が沈んだのが見えた。

 アタシも直ぐに敵に向かって飛び込む。


 よそ見した相手の剣目掛けて、ナイフを振る!

 男たちはアタシ達の不意打ちに体を固くして、剣を強く握った!


 カーン!


 シャーシャのナイフは、受け止めようとした剣を弾き飛ばした!

 大人が両手で握った剣を弾き飛ばすって、見かけと違って本当に強い!

 そしてアタシのナイフは………相手の剣を真っ二つにした!

 自分でやった事に驚きながら、踏み込んでナイフを振る!

 男たちは得物を失って、両手をこっちに突き出したへっぴり腰で後ずさった!


「我等が何者か知らずとも、もう実力はわかったであろう!殺されたくなければ失せるのだ!」

 グララがそう言うと、男たちは慌てて逃げていった。………何もしてないのにえらそう。

「声を掛けられただけで、ナイフを抜くとは!お主達はおっかないのだ!」

 あきれたみたいに言ってた。武器を抜かれても何もしようとしてないグララはヘンだ。


「そういうけど、あの人達が何を考えてるかわからないんだし。後から慌てるより、先に追い払っておいたほうがいい」

 シャーシャもうんうんうなずいてる。

 ちなみに全部ヤマトーさんの受け売り。


 知らない人に声をかけられたら、まず自分の安全を確保してから様子を見なさい。

 なぜなら、こっちに覚えがないのに用事があるって人は、相手の都合だけで声を掛けてきているから。

 それでも本当に困っている人なら、武器を向けられていてもちゃんと話すはず。

 もし武器を向けられて、逆上する人なら正当性はないから、必要があれば倒しなさい。


 常に戦いに備えてるなんてさすがヤマトーさん!

 アタシなんてそれを聞いた時声をかけられただけで、武器を向けるなんてって思ってた!

 今みたいに出会う人全てと、戦える様に備えるのが戦士なんだ!

 襲われて準備してなかったからやられたじゃ、立派な戦士じゃない!


 それに、ナイフを抜いたのは別の理由がある

「魔法が使えなかったし」

「………うん」

 シャーシャもうなずいた。


「なんと!昨日はあれ程に魔法が使えておったではないか!もしや使い方を忘れたのか?」

「ううん。そうじゃなくて、魔法を邪魔する精霊がついてんの」

「魔法を邪魔する精霊だと?」

 シャーシャもなんで魔法を使えないのか、わかってなかったみたいでアタシを見てる。


「なんか火の精霊の周りに精霊が集まってきた。その精霊が出来上がった魔法を消してるみたい」

「ミミカカ殿は精霊が見えるのだったな!魔法を消す精霊等というものがおるのか?」

「うーん。アタシも昨日魔法が使えるようになったばっかりだし………よくわからない」


 あの精霊はその辺で見かけたりしないんだけど。

 アタシが見たのは1回だけだ。ヤマトーさんがシャーシャの火を消したときだけ。

 ヤマトーさんはなんでアタシたちの魔法を使えなくしたんだろ。


「そんな!それでは我の計画が丸潰れなのだ!」

「計画?」

 そういえばアタシ達は、グララの頼みで宿から出たんだった。


「うむ!実は2人に魔法を教わりたいのだ!」

「アタシ達に?」

 シャーシャと2人で、不思議そうな顔をする。

「なんでアタシ達に?」


 ヤマトーさんの方が使える魔法がすごい。

 っていうかアタシ達が魔法を教えてもらったのヤマトーさんだし。

「ヤマトー殿は確かに凄い!一度も失敗せずいきなり魔法が使えた!」

 うんうん、ヤマトーさんは戦士としてだけでなく、魔法もすごかった。


「だがそんなヤマトー殿には、魔法がうまく使えぬ原因がわからぬに違いないのだ!」

 なるほど。天才だから、失敗する理由なんてわかりそうにないと。


 ………完全にグララの勘違いだと思うけど。

 ヤマトーさんはどんな事でも、わかりやすく教えてくれるし。

 なぜか人が何に困ってるのか、すぐにわかっちゃう。


「そこで2人なのだ!最初は魔法が使えなかったのに、今はもう立派に魔法が使える!」

 魔法が使えなかったアタシ達なら、グララの魔法がうまくいかない理由がわかるだろうと。

「だが魔法が使えぬのではな………」

 珍しくグララの声に元気がない。こんな弱気なのは初めて見た。


「………えい」

 大人しくしてたシャーシャが炎を出した。

「ぬ!普通に使えておるではないか!」

 あ、そうか!たしかに今やった方法なら魔法は使える。


 って言っても別に特別な事はしてない。

 ただ遠くに火を作っただけ。

 火を邪魔する精霊は近くにしかいないから、遠くになら作り出せる。

 けど、近くの相手に火を使えない状態には変わりがない。


 ん?

 手から水を出してみたら普通に出た。

 精霊が邪魔するのは火だけなのかな?


「特に問題はないようであるな!お主等の魔法は強力過ぎて町中では使えん!早速外に出るぞ!」

 そう言ってアタシ達はグララに門まで連れて来られた。

 外に出るなら門までまっすぐいけばよかったのに。おかげで変なのに絡まれ損!




 だけど、変なのに絡まれたおかげで分かったこともある。


 きれいな銀色で、アタシの顔が映るぐらいピカピカ。

 グリップはすごく握りやすくて、手に吸い付くみたい。

 すごく頑丈で、何にぶつけても傷つかない。

 どんなものでもスパスパ切れる。

 ヤマトーさんからもらった、すごいナイフ。


 そう、どんなものでも!

 片手で振ったのに、相手の剣を真っ二つにできた!

 他に見たこともない、すごい精霊が宿ってるからだ!

 何の精霊なのかわからないけど、元からすごいナイフを、もっとすごいナイフに変えてる!


 昨日ヤマトーさんが使ってた魔法も、見たことのない精霊の力を借りることがあった!

 この見たことのない精霊こそ、ニホコクミの力の秘密だ!

 立派なニホコクミになる為に、ヤマトーさんの魔法を使えるようにならなきゃ。


 そう思って宿の前を通りすぎて、門の前まで行くとたくさんの兵士がアタシ達を見ていた。

16/09/10 投稿

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