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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の試練
19/154

シャーシャ、日本男子を慕う

R-15 残酷な表現有り

 わたしの名前はシャーシャ・ホマレー。………お兄ちゃんの妹。


 お兄ちゃんって呼ぶの、まだちょっとはずかしいな………。

 いやじゃないけど、でもなんかはずかしい。

 どれいだったわたしを助けてくれた、新しいご主人様がわたしのことを家族だって言ってくれた。

 言葉もていねいにしなくてもだいじょうぶって!

 まだはずかしいけど、やさしいお兄ちゃんができてうれしい。

 もっとお兄ちゃんとなかよくなりたいな。




 お兄ちゃんといっしょに旅をしました。

 勉強だったり、体のきたえ方だったり、歌だったり、遊び方だったりの色んなことを教えてもらって楽しく旅をしました。

 教えてもらった中でも、1番すごかったのがホマレー流護身術!

 わたしが身を守れるように、お兄ちゃんが教えてくれたすごい技です!


 お兄ちゃんに教えてもらう前に「僕を倒せるぐらい強くなれる」って言われたときは、ぜんぜん信じられませんでした。

 わたしは練習でナナシキをされたときに、すごくいたくて泣きました。

 しかも足でやる本当のナナシキじゃなくて、手で軽くされただけなのに。

 泣いてお兄ちゃんを困らせてしまって、わたしなんかが強くなれるわけないって思いました。


 でも次の日の練習でわたしは、お兄ちゃんをやっつけました!

 とうぞくをかんたんにやっつけられるお兄ちゃんをわたしが!

「ホマレー流護身術があれば、シャーシャちゃんは大人を相手にしても勝てます」

 お兄ちゃんは痛そうにしながら、わたしをほめてくれました!


 早く強くなって、もっとお兄ちゃんによろこんでほしいです。

 まほうのおくすりで治してもらってから、すごく元気になれたしたくさん練習できます。

 わたしはお兄ちゃんといっしょにたたかえるぐらい、強くなるって決めました。

 それから毎日、わたしはお兄ちゃんといっしょにたくさん練習しました。


 練習する技はどれもかんたんなのに、早くやろうとするとすごくむずかしかったです。

 たとえば相手に向けて出してたナイフをもどしてつくサンシキ。

 たったこれだけなのに、早くやるとまっすぐつけなかったり。

 力を入れると曲がったり、まっすぐするとおそくなったり。

 お兄ちゃんは「素振りは基本、うん!」って言ってました。




 お兄ちゃんといっしょに旅して、お昼前に町に着きました。

 町はすごく高い石のかべでかこまれてて、開かれた門が1つあって、そこによろいを着てヤリを持った、見張りの人たちが2人立ってました。

「シャーシャちゃん。なんで門に見張りが立っているか分かりますか?」

 お兄ちゃんはそれを見てわたしに聞いてきました。


 村でも見張りの人が立ってたことがありました。

「………悪いのをとおせんぼするから?」

「そうです。町の出入り口である門を見張って、そこを通る人に悪い人が居ないか確認しているんですね」

 当たってたので頭をなでられました。お兄ちゃんはわたしが何かするといつもほめてくれます。

 えらいですね、がんばりましたねって。

 わたしはお兄ちゃんにほめてもらいたいから色んな事をがんばれます。


「町に入りたい」

 お兄ちゃんが見張りの人に話しかけました。お兄ちゃんじゃない人は恐い………。

 わたしはお兄ちゃんの背中にかくれました。

「あぁ、あそこに行って中にいるやつに、名前と訪問理由、それと滞在日数を言ってくれ」

 見張りの人がそう言って、門のそばにある小屋を指さしました。


 小屋の中には見張りの人が7人居ました。

 3人が小屋の奥に座ってて、3人がつくえの横に立ってて、1人がつくえの前に座ってました。

 つくえの上には紙が乗っていて、たくさんの名前と数字が並んでいます。多分この紙に外から着た人の名前と訪問理由、滞在日数を書くんだって思いました。

 立ってる3人の見張りの1人がわたしたちに聞いてきました。


「お前たちの名前は?」

「ヤマトー・カミュ・ホマレーだ」

「………シャーシャ・ホマレー」

「へぇ、貴族様かよ?」

 見張りの人たちがわたしたちをじろじろ見ました。


 見られるのがいやだしお兄ちゃんの背中に隠れました。お兄ちゃんが頭をなでてくれました。

「あぁ、東の方にある遠い国の貴族でな。見聞を広げる為に妹と旅をしている」

 もしかしたらわたしはどれいだって言われちゃうかと思ってました。お兄ちゃんは本当にわたしを妹だって言ってくれるんだ!


「遠い国の貴族ねぇ?」

 見張りの人たちはわたしたちを見てました。なんだか、ニヤニヤした顔でわたしたちを見てました。すごくいやでした。

「それがどうかしたのか?」

 お兄ちゃんは聞きました。


「いや、貴族様ならなんか貴族である証拠を見せてくれよ」

「ふむ、何が証拠となるのかわからんが………それは俺の国の物を見せればいいのか?」

「あぁそれでいいぞ」

「ならわかった」


 お兄ちゃんは小さい布を取り出しました。

 すごくキレイで、布なのに光ってて、真っ白の中にキレイな赤い丸が描いてありました。

 お兄ちゃんはそれをとても大事そうに両手で持って広げました。

 あれ………この布?わたしもどこかで見たことある?


「我が国の象徴である日章旗だ」

 お兄ちゃんはキミガヨの歌を歌ってるときみたいに笑って言いました。

 お兄ちゃんはいつもやさしく笑いながら、わたしと話してくれるけど、キミガヨの歌を歌うときの顔はもっといっぱい笑ってます。

 多分キミガヨの歌が大好きなんだと思います。


「ぶはははは!この間抜けな赤い丸がお前のぼおぁっ!」

 笑った見張りの人はそこまでしか話せませんでした。

 お兄ちゃんがすごくこわい顔になって、笑った見張りの人のミゾーチをけったからです。

 わたしはお兄ちゃんのこわい顔を見て、この布をどこで見たのか思い出しました。

 この布は、あくまだったときのお兄ちゃんが、人間に戻ったときに抱きしめてた布です。あのときの布はもっと大きかったけど。


「無礼者があああああああっ!!」

 おこったお兄ちゃんが、けられてぐしゃっとなってた人の顔を思いっ切りけっとばしました。

 けられた人はかべまでぶっとびました。

 なにか白い小さい物がいくつか床に転がってきました。後でお兄ちゃんに聞いたら「多分前歯か何かでしょう。だがその他一切のことはわかりません!」って教えてくれました。


 これは後になって考えてみてわかったことです。

 わたしとお兄ちゃんの服は、平民の人が着るような服じゃありませんでした。

 でも貴族の人たちが着るような服でもありませんでした。

 多分、めずらしい服を着たわたしたちを旅芸人だと思ってたんじゃないかな。

 だから見張りの人たちは貴族だって言ったのを、じょうだんだと思ってたんだと思います。

 ふつうは貴族ならめしつかいの人を連れて馬車で旅します。

 

「天に唾する大逆はっ!!」

 さっき旗を笑ってた別の人がお兄ちゃんにふとももをけられました。

 バシン!ってすごい音がしました。


「正義の下に沈めっ!!」

 もう1回バシン!ってなったら、けられた人は足が折れたみたいになってたおれました。

 お兄ちゃんがこの時に使ってたのが、ホマレー流護身術最後の技、キュウシキだって後でわかりました。

「この下賤がっ!!」

 たおれた人は顔をけっとばされて、さいしょにけられた人みたいにかべまでぶっとびました。


 立っていた3人の見張りの人は、全員旗を笑ったのでお兄ちゃんは絶対許しません。

 のこってた1人がなにか言おうとしたみたいでした。

「へっばっ…なっ!!」

 でも何かを言う前にお兄ちゃんがすごく高く足を上げて、その人の頭をけったので何も言えませんでした。

 たおれたその人をけってまたかべまでぶっとばしました。




「な、何をする!」

 つくえに座ってた見張りの人が、立ち上がってそう言いました。

 奥にいた人たちも、立ち上がってヤリを持ってきました。


「それは俺の言う言葉だ」

 お兄ちゃんは剣をぬけるようにしてこわい顔のまま見張りの人をにらみました。

 わたしも自分のナイフをぬけるようにぎっておきました。

「何がだ!」

 奥にいた人たちがこっちに来てヤリをかまえて言いました。


「貴族である俺に、門番風情が無礼を働いて許されると思ったのか?」

 お兄ちゃんはえらい貴族様だったらしいです。

「うっ………」

 見張りの人たちはどうしようという顔をしてました。

「いつまで槍を向けているつもりだ?」

 わたしたちにヤリを向けていた人たちは、あわててヤリのおしりを地面につけました。


「この人たちやっつけちゃうの?」

 どうしたらいいかわからなかったし、お兄ちゃんに聞いてみました。

「誉れも高き日章旗を侮辱したこの屑共は八つ裂きにしても飽き足りませんけど、他の4人は自らの職務に忠実なだけだから殺しませんよ」

 そう言って頭をなでてくれるお兄ちゃん。それを聞いて見張りの人たちは安心したみたいでした。


「同僚が無礼を働いて申し訳ありませんでした!領主にご対応を伺って参りますので少々お待ち下さい」

 ヤリを持ってる1人がそう言って、小屋の外に出ようとしました。

「そちらの不手際で俺を待たせるつもりか?愚弄してるのか?」

 お兄ちゃんはもうこわい顔はしてないけど、いつもみたいに笑ってない。

「い、いえ、あのっ」

 外に出ようとした見張りの人はしかられた子供みたいになって固まりました。


 そこからのお兄ちゃんはすごかったです。

 

「1つずつ確認しようか、お前達は俺になんと言った?」

「えーと、その、貴族様の旗をーですねー、えーと、そ、そのですね、決して、馬鹿にするつもりではですね、なくってですね」

「誰がそんな事言えって言ったんだ?それとも誇りある日章旗をお前達も内心では貶めているのか?」

 お兄ちゃんの顔がすごく怒った顔に戻っていきました。


「いえ!決してそのような事はなく!」

「お前達は俺に何と要求したんだ?さっさと答えろ」

「貴族様のお持ち物を、ご確認させていただきたいと、申し上げました」

「そう言われた俺はどうしたんだ?」

「貴族様のお持ち物を、見せていただきました」

 話をするのが下手なわたしとちがって、お兄ちゃんは話をするのが上手です。


「そうだよな?俺はお前達の職務を妨げない様にちゃんと協力したよな?」

「はい!その通りです!」

「で?そうしたらどうなった?」

「………「どうなったか聞いてるんだ!答えろ!」」

 お兄ちゃんがどなりました!


「わ!…私達の同僚が、えーと、えー「俺の祖国の象徴である日章旗を貶したんだよなぁ!」」

「は、はい、その通りです、はい「なぁ、誰が悪いんだ?」」

「誰が悪いかはその、申し上げ「お前達に協力した俺が悪いのか?」」

「い、いえ!それ「じゃあ誰が悪いんだ?」」

 見張りの人が話し終わらなくても、お兄ちゃんはすぐにしゃべり出しました。


「そ、それ「誰が悪いんだっ!」」

「私達ですっ!「なんでお前達が悪いのに俺が待たされなきゃいけない!」」

「それはー、ですね、あのっ「お前達が悪いのに俺が迷惑しなきゃいけないのか!」」

「いえ、それは「それはなんなんだ!言ってみろ!」」

 お兄ちゃんは見張りの人に次々質問していきました。


 お兄ちゃんはすごく頭が良いです。

 多分、何を言おうとしてるのかがわかってて、最後まで聞くより先に質問してたみたいです。

 でもわたしと話す時はそういう風にしませんでした。

 いつでも笑ってて、ちゃんと話を聞いて、ゆっくり話してくれます。

 お兄ちゃんはわたしをすごく大事にしてくれます。


「それは間違いです!」

「間違い?何が間違いなんだ?」

「貴族様にお待ちいただくのがですねっ、間違いですっ!」

「そうかそうか。間違いなんだな?」

 お兄ちゃんが怒った顔をやめました。


「はい、間違いです!」

「では確認するが、今ここで起こった問題は全てお前達の起こした間違いで、俺には何の関係もない事だな?」

「えっと」

「お前達の家はそんなに強いのか?」

 家が強い?


「はっ?」

「この街に兵士達がやってきてお前らの身柄を引き渡せと言ったら、その要求を断れる程にお前達の家は強いのかと聞いている!」

 お兄ちゃんの顔がまた怒りはじめました。


「い、いえ!申し訳ございませんでした!」

「何が申し訳ないんだ?さっきからお前達が言う事は全て不明瞭だ。全くの誤解が無き様、明瞭快活に答えろ」

「今起こった事は、全て私達の間違いで、貴族様には関係ありません!」

「そうかそうか、今のはわかりやすかったぞ。じゃあこの街に入って問題ないな?俺は何の問題も起こしてないんだ」

 お兄ちゃんは笑いました。


「はい、お通り下さい!」

「うむ、職務に励みたまえよ。諸君らの誠実さに免じて、天に唾したその屑共は不幸な行き違いがあったのだと見逃してやる」




 なぜか町の中に入れるようになってました。

 わたしもずっと横で聞いてたのに意味がよくわかりませんでした。

 お兄ちゃんがおこって見張りの人をやっつけたのに、見張りの人たちが悪かったみたい。

 わたしのお父さんぐらいの年の見張りの人たちが4人もいたのに、お兄ちゃんには何も言えませんでした。


「………さっきのすごかった」

「うん?さっきの事ですか?」

「………うん………わたしじゃできない」

「何から説明しましょう………先に宿屋をとってそこで話しましょうか」

 門を入ってすぐの所にあった、大きなたてものの宿屋さんにお兄ちゃんと入りました。

 中は1階に人がたくさんいてご飯を食べたりお酒を飲んでたり、2階に寝る部屋がたくさんあるみたい。


「部屋は開いてるか?」

 お兄ちゃんがお店の人に聞いた。ヒゲの生えたおじさんだ。

「2人部屋か?それなら1日で銀貨1枚だ」

「銅貨ならいくらになる?」

「料金になんか文句があるのか?なら…」

 お店の人がこわい顔してた。


 でもお兄ちゃんはぜんぜんこわくないみたい。

「いや、今日この町に着いたからな、硬貨の相場を抑えておきたいだけで他意はないさ」

「文句がないならいいんだ………えっとな、大銅貨なら10枚でぇ、銅貨なら………100枚だ」

「ふむ、なるほどな………。あぁ、参考になったよ、すまなかった」

 そう言ってお兄ちゃんはお店の人に銀貨を10枚渡した。


「お、この街にしばらく居るのか?」

「あぁ、そのつもりだから先払いしておく。よろしく頼む」

「おぉ、よろしくな。宿帳に名前を………あんた字は書けるか?」

「シャーシャちゃん」

 いきなり名前を呼ばれてびっくり。お兄ちゃんの顔を見る。


「せっかくなので私とシャーシャちゃんの名前を書いてください」

 お兄ちゃんに言われたからカウンターに置いてある宿帳に名前を書いた。

 カウンターがちょっと高くて書きにくかった。

 ヤマトー・カミュ・ホマレー、シャーシャ・ホマレー、と。


「お嬢ちゃん字なんて書けるのか………ホマレー?貴族様だったのか?」

 店の人が驚いてた。わたしは字なんて書けなかったけど、お兄ちゃんが教えてくれたの。

「あぁ、シャーシャちゃんはフルネームを書いたのか。遥か遠い国の貴族だ」

「どうりで見たことのない綺麗な服を着てるわけだ。さぁ、部屋まで案内しよう」


 おじさんに呼ばれた若い女の人がやってきて、お兄ちゃんの背負う大きな袋を持とうとしました。

「あぁ、荷物には絶対に触らないでくれ。案内だけ頼む」

 若い女の人は荷物を運べなくて悲しそう。なんでだろう?

 お兄ちゃんに聞いたら「貴族はお店で親切にされると、お礼にチップというお金を親切にしてくれた人に渡すからです」と教えてくれた。ふーん。

 2階に並んでる一番手前の部屋に案内してもらった。2つベッドがある部屋だった。


「お食事は1階の食堂が開いてる時間に来ていただければいつでも食べていただけます。お風呂は水なら銅貨2枚、お湯なら銅貨3枚でご用意いたします」

「わかった、ありがとう。頼みがあるんだが、絶対に俺の持ち物には触らない様にしてくれ」

 そう言ってお兄ちゃんは若い女の人に大銅貨を1枚渡した。

「え、こんなに?はい!かしこまりました!」

 若い女の人はとてもよろこんで部屋から出てった。


「さてシャーシャちゃん、聞きたい事はありますか?」

 2人で部屋のベッドに座るとお兄ちゃんがそう聞いてきてくれました。たくさん聞きたい事がありました。

「えっと………見張りの人をけっとばした技は私もできる?」

「アレかぁ………アレは技じゃなく力一杯蹴っ飛ばすだけなので、シャーシャちゃんがもっと大きくならないとできないと思います」

 残念。

16/07/30 投稿・文の微修正

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