魔法少女、日本男子を振り返る
18/4/28 投稿・イラスト有り
わたしの名前はズィーベンレーベン。この世界最高の宝物。
「『凶』で戦闘する以上、元の肉体は弱点となる!始末した!魔法少女!お前を葬り去る為に!」
黒くて!
大きなからだ!
さっき斬り落としたそれが!
ふわって浮かんできて!
もとの場所にもどった!
「………そん、な」
どうすればいいの?
わたしは?
魔法少女のわたしなら!
どんなやつだって!
やっつけられた!
………なのに!
勝てない!
お兄ちゃんに!
勝てない!
1番やっつけたいのに!
勝てない!
だって?
からだがないのに?
どうやってやっつけるの?
バラバラにならできた!
でも!
バラバラにしても!
もとどおりにうごいてた!
………それに!
「体がないだって?ならどうやって!お兄さんは存在してるのさ!」
ナーナちゃんが聞いたこと!
そう!
わたしもそれがふしぎだった!
今のわたしには!
魔法少女としての!
日本国民としての!
知識があった!
わたしが今かんがえてるのは!
あたまがあるから!
のうみそがあるから!
だけど?
からだがないなら?
あたまがないなら?
のうみそがないなら?
どうやって?
どこから?
なにが?
『凶』を動かしてるの?
「ハハハハハハハ!オカルトに理屈を求めんな!」
でもお兄ちゃんはわらってた!
「興醒めだろ?説明のつくオカルトなんて?そんなものはなぁ?」
お兄ちゃんはそこにいた!
「全てを否定していっても、今考えている自分を、否定する事はできないってやつだ!」
「コギト・エルゴ・スム、だね」
我思う故に我あり?
哲学の話?
「肉体がどんな状態であれ、俺は思考している!その事実1つあれば、『凶』は動かせる!」
そんな思考実験で?
『凶』を作り出した?
………お兄ちゃんは、ほんものの魔法使いだ!
「さぁ!」
「………!」
わたしはワープした!
あぶないと思ったから!
「決着を付けてやる!魔法少女!」
さっきまでわたしがいた場所に!
『凶』のうでが伸びてた!
「さっきは再生されたからなァ!」
「………!」
わたしがワープした先に!
またうでが伸びてきた!
「ちょこまかと!」
なんどもワープして逃げた!
お兄ちゃんはなんどもうでを伸ばしてきた!
「だが!当たり、だなぁ!」
「………!」
必死に逃げたわたしを見て!
お兄ちゃんがわらった!
さっきの『貫手』は指だったから!
当たったのがお腹だったから!
死ななかった!
回復できた!
でも?
あれがうでだったら?
当たったのがかおだったら?
心臓だったら?
「やっぱ死なねぇって訳じゃねぇみてぇだなぁ!」
魔法少女のわたしでも!
回復できなかったら!
1回で殺されたら!
死・ん・じ・ゃ・う!
「………どうしたら!」
なんどもワープで逃げた!
けど!
「掴めてきたぞ!『凶』は魔法!」
うでを伸ばしてきた数が!
うでを伸ばしてきた近さが!
「つまりはイメージ!」
多くなってきた!
近くなってきた!
「動かした結果!」
どんどんどんどん!
うまくなってきた!
「それがイメージできりゃあ!」
ブォオン!
そんな音が!
「『凶』は追従する!」
連続で!
「見えたぞ!」
わたしの近くを通りすぎてった!
「魔法少女!お前を!」
ヤバイ!
「ブッ潰すビジョン!イメージ!」
こっちはなにもできなかったのに!
「………どうしたら!!」
あっちはやれることが増えてきた!
「くたばれ!『綺羅星』!」
「………!?痛あっ!?」
よけたはずの『凶』のうでから!
たくさんのキラキラしたものが!
すごい速さでとんできた!
「………なに、今のは………?」
からだじゅう!
いっぱい切り裂かれた!
わたしの白いドレスが!
まっ赤になった!
「これは………釘?」
ナーナちゃんが飛び散ったものを見て言った!
「言った筈だろぉが!『凶』は全身呪殺兵器だとな!」
「兵器っていうのは、モノの例えとかじゃなく………そのまんま釘打機なのか」
「釘打機等と!そんなレベルの低い物に例えられては萎える!爆発的勢いで!無数の釘を!弾き飛ばし当たり一面薙ぎ払う!」
「釘打機じゃない?むしろ手榴弾?………いや、釘爆弾そのものか!」
釘爆弾?
爆発で?
とがったかたいものをとばして?
めちゃくちゃに壊して?
人をぐちゃぐちゃにする武器?
『凶』は?
からだぜんぶから?
釘爆弾をとばせる?
「名付けて『綺羅星』………洒落てるだろ?」
「飛び散った釘が『星』ってこと………えげつない!」
「『呪力』を載せたこれならァ!逃げられまい!防げまい!」
「………永遠の宝石」
まずは回復!
………マズイ!
わたしはワープができた!
でも!
ずっと消えてられなかった!
すぐに出てこなきゃいけなかった!
小さな星が!
たくさん!
すごい速さで!
びっしり!
どこに逃げても!
とんでくる!
『綺羅星』は防げない!
さっきのは!
運がよかっただけ!
もし当たったのが?
あたまだったら?
のうみそだったら?
しんぞうだったら?
………アレは強すぎる!
こっちの攻撃は効かないのに!
あっちの攻撃は効く!
『凶』は強すぎる!
「………どうしたら!どうしたらっ!!」
わたしはぜったい!
世界で1番じゃなきゃいけないのに!
「シャーシャちゃん!」
そしたら!
「………ナーナちゃん?」
わたしのともだちが!
しゃべってきて!
「落ち着いて!」
そんなことをいってきた!
「………おちついたからって!なに!」
そんなどうでもいいことを!
お兄ちゃんを!
『凶』を!
やっつけないといけないのに!
やくにたたない!
「だから落ち着いて!」
「『綺羅星』!………仲間割れ、いや余所見かぁ?余裕じゃねぇか?」
「………ひっ!ぐぅ!」
痛い!
ナーナちゃんのせいで!
「ボクにはどっちかの味方はできないんだよ!」
「………ならだまってて!永遠の宝石!」
「チッ!また回復か!………だが!追い回すのは俺!追い詰めるのは俺!」
『綺羅星』!
いくつも!
いくつも!
星が!
光が!
とんできた!
「……っ!?あぁあああああ!?」
かおをふって避けようとしたけど!
目が!
目が切り裂かれた!
「………永遠の宝石!」
マズイ!
どんどん!
近くなってた!
「もう少し!もう少し!勝つのは俺だ!攻め切る!」
わたしにはもう!
「押し切る!」
からだを小さくして!
「寄り切り抜く!」
とおくに逃げながら!
永遠の宝石で回復するのしかできない!
逃げるのにしっぱいしたら!
回復するのが間に合わなかったら!
急所に当たったら!
死んじゃう!
わたしは1番じゃないといけないのに!
「そう!落ち着くんだシャーシャちゃん!」
まだ言う!
さっきだってナーナちゃんのせいで!
『綺羅星』が当たったのに!
役に立たないならだまってて!
役に立つから生きてていいの、人は!
「それであっ「ちょっと五月蝿ぇよ、お前」痛っつ!?」
………?
ナーナちゃんが?
痛そうにうでをおさえてた?
お兄ちゃんもうるさいって思った?
『綺羅星』が?
1つだけだけど?
ナーナちゃんにとんでった?
「くっ、言ってくれれば、わかったのに、さ」
「覚えとけ、おしゃべりな奴は嫌われるってよ」
「タフガイなセリフだね、お兄さん?」
「余裕があるな?食らい足りないか?」
「やめてよ、穴なんていらないよ?元からお兄さんよりも、1つ多いんだからさ?」
「下品な奴だなぁ、オイ」
………?
なんで?
おかしい?
………『凶』が暴れてたのは?
うまく動かせなかったから?
お兄ちゃんが死んだみたいになったのは?
『凶』になりたかったから?
わたしを抱きしめたのは?
『波紋』を使いたかったから?
意味は、ある?
理由が、ある?
これにも、ある?
お兄ちゃんが?
ナーナちゃんを?
攻撃した?
なんで?
今までは?
わたしだけを攻撃してたのに?
ふつうにしゃべってたのに?
うれしそうに『凶』のすごさを説明してたのに?
………それに?
………なにより?
怒ってたのに?
お兄ちゃんは?
ゆるさない人だったのに?
兵士の人はどうなった?
バラバラにされた!
町の人はどうなった?
ぜんいん殺された!
門番の人はどうなった?
ぶっとばされて死んだ!
ミミカカさんはどうなった?
ゴミみたいに捨てられた!
お兄ちゃんはゆるさない人だった!
1度怒った人はゆるさなかった!
………なのに?
攻撃して?
すぐ?
ナーナちゃんと?
ふつうにしゃべった?
………なんで?
ナーナちゃんがしゃべったせいで?
わたしはワープできなかった?
だったらお兄ちゃんは?
得してたのに?
………なのに?
………得してなかった?
損した?
ナーナちゃんのしゃべったことで?
お兄ちゃんは損した?
だから?
攻撃した?
それを?
………ごまかした?
怒ってないよ?
どうでもいいよ?
だから?
………気にしなくていいよ?
………大事なことじゃないよ?
………ダメだよ、お兄ちゃん?
大人の人はね?
こどもをだますけどね?
こどもだってね?
わたしだってね?
だまされたことはわかるんだからねぇ?
………なんていってた?
『落ち着いて』?
それが、なに?
落ち着いたら、どうなるの?
そんな意味がないこと?
………ちがう?
意味が、ある?
理由が、ある?
ナーナちゃんは?
何?
………そうだ!
ナーナちゃんに意味があった!
ナーナちゃんは友達で!
ライバルで!
マスコット!
魔法少女を助けて!
導く!
よくわからないもの!
それがナーナちゃんなら!
ナーナちゃんは味方できないって!
そういってたけど!
それでもわたしを助けようとしてたんだ!
だから!
なんでなのか!
『落ち着いて』の意味を考えたらよかったんだ!
きっとお兄ちゃんはこまるんだ!
わたしが落ち着いたら!
わたしが『綺羅星』から逃げようとしたら!
ナーナちゃんがしゃべろうとした!
『それであっ』って!
『落ち着いて』!
『逃げる』!
………『それであってる』!
………戦わなくて、いい?
そういえば?
お兄ちゃんは?
わたしをやっつけようとしてた?
『凶』は無敵なのに?
無敵なら?
なにもこわくないはずなのに?
わたしは魔法少女になったとき?
どう思った?
無敵だってわかったとき?
なにもこわくなかった?
わたしがこわくなったのは?
無敵じゃないとわかったから?
………お兄ちゃんは?
………無敵じゃない?
「………ひっ」
「ん?」
「ナーナちゃん?」
どうしよう!
「………ひひひひひひひ!」
「ちっ!気が触れたか!」
「笑って、る?」
たのしい!
『魔法少女は希望や可能性がある限り戦い続ける事ができる』
だって?
『そして魔法少女は存在そのものが希望であり可能性だ』
いってたでしょ?
『魔法少女は自分が存在する限り、無限の戦闘力を発揮して戦う事ができる』
お兄ちゃん?
『まず、魔法少女は絶対に敗北する事が有り得ないんだ』
元気が出てきた!
『どんな巨大な敵、世界を滅ぼす様な存在を相手にしても絶対に勝つ』
ちからが出てきた!
『俺の故郷の子供達が毎日笑ってられるのも概ね魔法少女のお陰だ』
「………ひひひひひひひ!ひひひひひひひひひひひひひひ!」
うん!
魔法少女の力のおかげで!
わたしはわらってられるよ!
お兄ちゃん!
見せてあげるね!
魔法少女のちから!
「………昏い愉悦の宝物!!」
世界で1番のたからものだから!