疑似神格、日本男子を見つめる
疑似神格。創造主の意向に従い、そのサポートに努めるもの。
疑似神格とは。
この世に3人といない偉大な魔法使いが。
概念レベルから新たに構築した、全く新機軸の常駐型の魔法の事だ。
異世界から来た、神の如き傍若無人さを備えた男の、所有する知識。
その知識を核として、魔法の行使者をサポートする、擬似的な人格を構成する。
そうして作成された「疑似神格」は、常に術者をサポートする。
この魔法が、既存の魔法とかけ離れている点は一目瞭然だ。
この世界に於ける魔法とは、短絡的な攻撃能力を有するもののみを差していた。
その多くは炎であり、せいぜい岩礫どまり。
もしくは一部の人間が、回復の魔法や、身体能力の強化を行使できたが、劇的なものではなかった。
それ以外の魔法に至っては、何の役にも立たない、無駄なものだった。
しかし、異世界からもたらされた知識が、魔法に発展と、無限の可能性をもたらす。
炎はより巨大に高温に、岩礫はもはや質量兵器と化した。
回復魔法の威力は、身体の欠損すら再生させ。
身体能力の強化は、正しく超人的な身体能力をもたらした。
それどころか、衝撃という目に見えない威力を、直接操る『波紋』の技術。
広域を一瞬で吹き飛ばし制圧する、爆発の魔法。
眩い光を束ね対象を消滅させる、究極の光線の魔法。
誰にも認識されていなかった『自然界の4つの力』の内、重力と磁力を操る魔法。
もっとも神の如き男本人は、最終的に最も強力な、『強い力』を操りたいと思ってる。
そして今も試している『思い描いた物を創造する』魔法。
既に実例があるのだから。
神の如き男は焦っている。
早くしなければ、と。
出し抜かなくては、と。
手遅れとなる前に。
最早、時間の問題で。
このままでは待っているのは、消滅だ。
先に手を打たなくては、と。
最初、神の如き男は戸惑った。
突然この世界に放り出されて途方に暮れた。
己1人で生きていけるのかと。
しかしそれは無用な心配というものだった。
神の如き男は、文字通りの意味で無敵だった。
男は召喚という概念を、エンターテイメントで理解していた。
そしてたかが多少の力を持った程度の人間を、召喚する事に意味があるのか思考していた。
だからこそ逆説的に結論づけた。
召喚者は無敵である、と。
だから召喚された人間である、神の如き男は無敵だ。
超人的な力を持ち、剣を振るえば石を両断し、力を込めて蹴れば対象を粉砕する。
神の如き男の周りには魔法の源である『精霊』が満ち溢れ、思い描いた通りの魔法を行使する。
異世界の召喚者である故に、あらゆる言葉が通じない筈だったので、逆にあらゆる言葉を理解できるようになった。
無敵であると定義されたが故に、あらゆる毒も病気も通じない。
最初、神の如き男は浮かれていた。
自分が突如手にした神の如き力に。
そしてその力に自惚れて、少女を助けた。
一卵性の双生児である事以外に特別な所のない少女を。
神の如き男は、神の如き力と、神の如き気まぐれで少女を助けた。
その事が、神の如き男自身の首を締めるとも知らず。
旅の過程で、魔法を認識しはじめた。
『精霊』の正体はわからなかったが、それは問題ではない。
リモコンもパソコンも携帯電話も。
その原理がわからなくても、使いこなす事はできる。
神の如き男は、神の如き力の魔法を次々生み出した。
そして神の如き男は、神の如き猛威を奮った。
神の如き怒りに触れた町は、瞬く間に荒廃した。
神の如き男は、更に思い上がった。
巨大な力を振るう全能感に酔い痴れた。
どんな極上の美酒でも味わえない酩酊感に微睡んていた。
神の如き男は、散漫に思いを馳せた。
突如変わった、自分を取り巻く環境と、自分そのもの。
自分の身に何があったのか?
神の如き男は、理由を求めた。
神の如き男の世界にあった夢物語には、凡人が異世界で活躍する話はごまんとあった。
その話の多くは、元の世界で不慮の死を遂げた人間が、異世界の神や権力者から呼び出されるのが常だった。
しかし、神の如き男は、神の如き存在にも、権力者にも出会ったことはなかった。
では神の如き男を、異世界に召喚したのは誰なのか?
そもそも魔法とは何か?
魔法使いの資格とは何か?
魔法使いの才能とは何か?
やがて神の如き男は1つの確信を持った。
神の如き男は、現実主義者で、分析家で。
どうしようもなく理想主義者で、夢想家だった。
魔法とは何か?
それはわからない。
『精霊』という存在を、神の如き男は知覚できない。
しかし、魔法は『精霊』というエネルギーを、媒介としている事はわかった。
魔法使いの資格・才能とは何か?
地に足の着いた人間は、夢の様な事を克明に思い描いたりしない。
自らの足で立つ、『揺るがない』人間なら、魔法に等頼らない。
つまり、魔法に頼る人間とは、己の足で立てない弱い人間。
現実を現実と認めない、理想を、妄想を振りかざす狂人。
魔法使いの資格・才能とは、精神の異常性の事だ。
使える魔法の強さと、精神の異常性には、明確な関係性がある、と。
神の如き男はそう結論付けた。
最も魔法の威力・才能に乏しい村娘。
母親が死んでいるとはいえ、所詮はそれまでの事。
医療の発展していない異世界に於いて、人の死は珍しい事ではない。
そんなありふれた不幸にしか触れてない村娘は、せいぜい思い込みが激しく短慮である程度の異常性しか持たない。
それ故に、魔法が弱い。
最も魔法の威力・才能に秀でた少女。
人格形成を行う時期に受けた執拗な虐待で、精神性を大きく歪ませる事になった。
それ故に、現実を遠くにあるかの様に見つめ、更に自我が空っぽで、依存心が強く従順。
『魔法少女』の依代として、これ以上ない才能を示した。
最も異才と異彩を放った女。
生まれついての高機能発達障害を持った女。
現実を受け止めても、その認識の中で歪んでしまう、ある種これ以上望めない程の才能。
彼女は魔法の源である『精霊』を駆逐するという、唯一無二の魔法を幼少から今に至るまで発揮した。
神の如き男の思考に倣って、こう問おう。
そこのお前?
ここまで神の如き男の、心の中を覗いていたのなら、もう答えは出ているはずだ。
神の如き男は、奴隷の少女が異常な精神状態であると、一目で見抜いた。
神の如き男は、女に発達障害があると、一目で看破した。
神の如き男は、優しかった。
しかし、神の如き男には潔癖な所があった。
どうしても自分本位で、排他的なところがあった。
そして、神の如き男は、真面目な人間でもあった。
なんでもっとうまくやれなかったんだろう。
なんであのときこうできなかったんだろう。
そうやっていつも自分を正す人間だった。
だからこそ、神の如き男は思った。
***しまいたい。
神の如き男はどうしようもなく潔癖だった。
真っ当でありたいと。
誰かの役に立ちたいと。
だからこそ少女を助け、魔法使いの女と向き合った。
何故なら神の如き男こそ、本当に********のだから。
神の如き男は、何故か神の如き力を持つ。
思うがままに振る舞う事ができる。
非現実的なまでの全能感。
神の如き男は思った。
ここは、***の世界なんじゃないか、と。
全て**だ、と。
神の如き男は自らの容姿を、劣るものだと信じ込んでいた。
鏡を見ると不安になり、生理的な嫌悪感が走る。
自分の顔を自分の顔と認めたくない。
身体醜形障害という恐怖症の一種だと後から知った。
容姿に劣る分、よい人間であろうと、常に心がけていた。
いずれ破綻する無理であっても、優しい人間であろうとした。
自分が人からどう見られるかを、過剰に意識していた。
神の如き男の精神性は本来、排他的で利己的で潔癖で。
つまりは高い攻撃性を持っている。
しかし神の如き男は小心者であり、常識的でもある。
どっちが頭なのか?
どっちが尻尾なのか?
いや、神の如き男にとって、最早そんな事はどうでもいい。
可能性があるだけで十分なのだ。
この世界で起こる出来事は。
2柱の、*****が起こした。
極めて狭い範囲で紡がれる、神話そのものだ。
そして。
神の如き男は、今、反逆する。
側で見てるよ、パパ?ママ?
何があっても、パパとママの味方だから。
18/1/6 投稿・文章の微修正