表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の試練
13/154

日本男子、触れ合う

 俺は今、人生で初めてタンブルウィードを目撃してテンションが上がっていた。


 タンブルウィードが何かって?多分名前を知らないだけで説明されれば何かわかると思う。

 西部劇でガンマンが夕日をバックに街から荒野に去っていく時に、画面手前をコロコロコロコロって転がってく草の塊の事だ。

 ちなみにオカヒジキ属ヒユ科の植物。

 日本にも自生してるらしいんだけど俺は見た事がない。


 そんな人生初のタンブルウィードがコロコロコロコロっと目の前を横切っていった。

 思わず視界から消えるまで「おぉ………」とか言いながら立ち尽くして見送ってしまった。

 たしかタンブルウィードって乾燥地帯とかに自生してるんじゃなかったかな?なんで大森林が近くにあるこんな草原を転がってったんだろう?異世界の不思議。

 ………って!知るかバカ!そんなことより女の子だ!




 女の子はかなりみすぼらしい布切れ1枚を身に纏い、手足と首に枷が付けられている。

 栄養状態が良くないらしく、目が落ち窪み、頬はこけて、手足は針金のように細い。

 何歳ぐらいなんだろう?かなり細っこいから身長以上に小さく見える。

 髪は水色のかなり長い髪だけど、今は汚れてくすんでいてボサボサになってる。この髪を見て受ける印象は綺麗じゃなく、汚い、不潔だろう。

 肌は土気色。多く語る事を避けてぶっちゃけて言おう。ほぼ半死人と言った体だ。

 目が虚ろなのが良くない。まぁ、奴隷になった事情とかはわからないが、奴隷になった現状と待ち受ける未来に絶望するのも仕方ない、か………。


 しかし、よく考えずに助けたけど罪を犯して奴隷になったとかだったら助けたのは不味かったか?

 まぁそれについては俺が考えても仕方ない。事情を聞けるのはこの子しかいないから本当も嘘も語り放題なんだ。別に俺に一目見て嘘を見抜くスキルとかない。むしろ俺はそういう機微には疎い人間だ。

 いっそ開き直って彼女の細かい事情は詮索しない様にしようと思う。




 とりあえず枷がついたままだと可哀想なので外してしまおう。

 枷を見てみると鍵穴があるので対応する鍵があるはずだ。

 まさか奴隷を枷ごと置いて行って鍵だけ持ってったりしないだろうと思いたい。

 物色物色、と。

 馬車の中には水や食料ぐらいしかなかった。鍵束も金目の物とかも見当たらない。

 まぁ普通に考えたら鍵束をわざわざ手元から離しておく必要が無いか。

 鍵束は肌身離さず持ってて、金目の物を持ち出して逃げた時にもそのまま持って行ったんだろう。


 女の子と話して確かめてみよう。

 膝を曲げてこっちをじっと見てる女の子と視線の高さを合わせる。

「初めまして。僕はヤマトーといいます。君のお名前を教えて下さい」

 にっこり笑って自己紹介する。怖がらせちゃダメだから明るくゆっくり声を出すよう努める。

「………シャーシャっていいます」

 ポツリと答える女の子。


 レスポンスが遅いな………。

 反応が鈍いというのはつまり、反応するのになんらかの負荷がかかってるという事だ。

 その負荷が別の考え事をしてたからとか、或いはすんなり答えられない様な質問だったからとかの場合はいい。

 だが今みたいに注意を向けてた相手からの簡単な質問に時間がかかる場合は、単純に警戒してるからと思いたいが………思考能力に問題が出てる可能性がある。

 なにせ状態が状態だ。栄養失調か、精神の失調か、或いは両方か………。


 しかし良かった事もある。

 彼女は表情を出してる。決してポジティブではないけどちゃんと表情を出せてる。

 表情が出てこない人間というのは、感情の起伏が正常でなくなった可能性がある。それは精神の著しい摩耗を意味する。絶望が大きすぎると、心が死ぬのだ。

 ネガティブな表情でも感情が正しく動いてるのは喜ぶべき事だ。


 シャーシャちゃんと仲良くなりたいのでちょっとボディタッチ。

 ほら、体が何かに触れるということは安心感のある事らしいし?これは円滑なコミュニケーションの一環だよ?へっへっへ。

「シャーシャちゃんと言うんですね。教えてくれてありがとうございます」

 好き放題ボディタッチする俺。抵抗せずにされるがままになるシャーシャちゃん。


 ボディタッチって言っても軽く頭撫でただけだよ?

 この子に手出すぐらいならミミカカちゃんに血迷ってる。むしろ現在進行形で血迷ってる。ミミカカちゃん可愛い。

 シャーシャちゃんは頭上に手を伸ばそうとすると体を固くしたので、なるべくゆーっくり手を伸ばしていって頭を撫でる。


 ゆっくり迫る手をじっと見つめて、そのまま頭を撫でられてなすがままになってる。

「シャーシャちゃんに付いている、その枷を外したいんですが、鍵はどこにあるかわかりますか?」

「………持ってた人が、馬にのってにげました」

 ほんの少し和らいでた気がする表情が曇った。鍵はやっぱ持って行かれたか。


 しかし………鍵がここに無いと俺に答えるだけでこんな顔になるのか。

 枷を外せなくて悲しんでるんならいいけど、さっき俺が手を動かしただけで怯えたし………人の機嫌を損ねたら殴られる様な環境で育ったな、この子は。

「教えてくれてありがとうございます。では、これから枷を外します」

 とりあえず怖がらせないようにゆっくり動くように努めよう。

 そしてたくさん褒めて、その時には軽く頭を撫でよう。


 シャーシャちゃんは少し不思議そうな顔で俺を見てる。

 まぁ鍵がないって言ったのに枷を外すって返ってきたら話繋がってないもんなぁ。

 しかし鍵がなければ枷を外せないという事はない。

 例えば素敵な日本製のマチェットで真っ二つにできる。

 まぁそんなの危ないし、シャーシャちゃんが痛い思いするからやらないけど。


 背嚢の荷物から使える物を探そう。

 どうせ魔法の錠とか胡乱な代物じゃない限り、単純な構造の枷だろう。

 ところでこの世界、石の化物は見たけどやっぱり魔法とかあるんだろうか?

 あれでもないこれでもない………あったー!

「魔法の鍵―」

 パンパカパッパーパーン、と1人寂しく小芝居しつつ、シャーシャちゃんに見える様にそれを突き出す。


 今日昼頃、ムムカカ村付近の道に1人で居た10歳ぐらいの女の子に、住所不定無職の男性が目の前で魔法の鍵を取り出す事案が発生しました。ボロン!

 まぁ何という事は無い。取り出したのは只の十徳ナイフだ。

 適当なツールでガチャガチャやったらその内開けられるだろう。何のツールがいいだろう?缶切り辺りだろうか?まぁいじり回しながらツールを変えていこう。


「今すぐ鍵を外すので待っていて下さい」

 手の枷にある錠前をいじりつつ、その仕組みを説明しよう。

 錠前というのは簡単に言えばガコッ!

 カチャカチャやり始めて直ぐに金属が跳ね上がるような音がした。

 試しに枷を外してみるとすんなり取れた。………俺って金庫破りの才能でもあるんだろうか?

「他の枷も直ぐに外します」

 脚の枷も首の枷もカチャカチャカチャ………ッターンと得意気に外してしまう。これで俺もモテモテ間違いなし。


 枷がしてあったところを見ると擦れて、皮がずるむけになって血が滲んでる。

 そりゃ枷は外れないように嵌めるんだからギチギチになってるわなぁ。

 そんなんずっと付けてたら血ぐらい滲むか。

 でも俺には血塗れのミミカカちゃん達の怪我を治した安心の日本製救急箱がある。


「どんな傷でも治せる魔法のお薬で綺麗に治しましょう」

 背嚢から水筒と救急箱とタオルを取り出して、ムムカカ村でやったのと同じように治療する。

 シャーシャちゃんはされるがままにしてるけど、俺の治療を黙って不安そうに見ていた。

 まぁついさっきまで野盗をボコボコにしてた奴に生殺与奪権握られてたら不安でたまらないわなぁ。

 早く仲良くなって安心させてあげないと。




 傷が治るまで、まずはお話をしよう。

 ムムカカ村でも絵を見せながら説明するのは、非常に有効だったのでまたそうしようと思う。

 またも虫歯菌のイメージみたいのを描いてバイキンの恐ろしさを説明していく。

 虫歯菌もどきを綺麗な水で洗い流してお薬を塗って、悪いものが入ってこない様にガーゼで蓋しておいたら傷はすぐ治る。


 シャーシャちゃんは真剣に話を聞いてくれた。というか俺を常に注視し、言葉を一切聞き逃さないようにしてる。

 まぁ有り体に言えば緊張してる。

 仲良くなるにはどうすればいいのか。

 そうだ、ご飯食べよう。美味しいご飯を一緒に食べよう。

 たしか一緒にご飯を食べると交渉事が上手く行きやすいとか聞いた事がある。仕事の話をするのが酒の席というのは心理学的にも理に適ってるのだ。


「シャーシャちゃん、お腹は空いてませんか?」

「………いえ、だいじょうぶです」

 今日昼頃、ムムカカ村付近の道に1人で居た10歳ぐらい女の子に、住所不定無職の男性が一緒にご飯を食べようと誘いかける事案が発生しましたが未然に防がれました。残念。

 お腹が空いてないならしょうがない。

 いや、シャーシャちゃんどう見ても栄養失調気味。碌に食べてないのなんてすぐわかる。


「いつもは何を食べてましたか?」

「………塩の入ったスープ。あとパンです」

 どうせほとんど具の入ってない水みたいなうっすい塩スープと、一片のパンだけ与えられてたんだろう。一片のパンとナイフとランプだけを鞄に詰め込んで出かけても飢え死にが関の山だ。熱い思いと眼差しじゃ地球は回るのが精一杯、と天空に思いを馳せる神誉さん。っていうか茶化さないと気が沈みそう。

 おじさんが美味しいご飯いっぱい食べさせたげるからね。世界に類を見ないほど親切な事で有名な日本人の力を発揮する時は今!


「シャーシャちゃん、1つ約束して欲しい事があります。お腹が空いたり、困った事があったら、絶対に僕に教えて下さい」

「………わかりました」

 シャーシャちゃんは嘘をついた事を咎められたと思ったのか、とても不安そうな顔をしてしまった。

 しかし見た感じから危惧はしてたけど、この調子だと固形物モリモリ食べさせたらゲロゲロ吐いちゃうだろうな。

 胃袋が相当弱くなってると見た。よって可愛いミミカカちゃんの美味しい鳥の香草焼きはお留守番だ。


 日本は豊かな国だと改めて思った。今までこんな風に痩せ枯れた子どもを見た事がなかった。闘病生活をしてる人ならともかく、純粋な飢えというのを見たショックは大きかった。

 よく弱ってる人の腕を例えて「枯れ枝の様な」と言うけど、まさしくその通りと形容する他ない腕をした少女が俺の前にいる。

 絶対にこの子を保護して元気にするんだって決心したら、俺は思わずシャーシャちゃんを抱きしめていた。


「もう1度聞きます。シャーシャちゃんは、お腹が空いていませんか?」

「………空いてます」

 観念したのか今度は正直に答えてくれた。

「答えてくれたシャーシャちゃんに、元気になれる魔法のご飯をあげます」

 取り出すのはフルーツ味の携帯食料だ。

 ミミカカちゃんからは大変好評だったけど、シャーシャちゃんはどうだろう?俺は好きなんだけど。

 食器セットから皿を出して2人分の携帯食料を並べて、コップにほんのり温かい紅茶を注ぐ。温かい物を口にすると安心するらしいし。


 そう、温かい紅茶だ!

 背嚢には収納物を復元する機能があるので、ムムカカ村にいる間にいくつか「消耗品が入ったビニール袋の登録」を増やしてある。

 温かい紅茶もその一種で、水筒の紅茶は常温で保存されてるから、温めなおしてビニール袋に移したのを別に登録してあるのだ。猫舌なのでほんのり温かいぐらいの時点で登録しておいた。

 胃が弱ってるシャーシャちゃんでも安心の温度だろう。


 ちなみに登録済みビニール袋は普段、中身を出してぺしゃんこにして服のポケットに入れてある。

 必要な時に該当のビニール袋を背嚢に入れて復元させる。登録時にマジックで中身を書いておいて判別もバッチリ。

 実に便利なのだが些細な欠点もある。食材を取り出した後のビニール袋が若干ばっちいのだ。

 肉汁したたるステーキとか入れると、ビニール袋が油まみれになるので携行性に若干の難ありと言える。

 まぁタオルでしっかりビニール袋を拭えばいいし、そのタオルも背嚢に入れればまた綺麗なタオルに復元されるので本当に些細な問題だが。

 だから食器の油汚れとか超余裕。汚れる前にまで復元できるし。


 目の前に並べられた食事をぼーっと眺めるシャーシャちゃん。

 よく考えたら携帯食料の4本と紅茶なんて、今まで食べさせられてた塩水のスープとパンと見た目的にそう変わらないよね。これが魔法のご飯だ、と言われたらそりゃ何言ってんだこのタコって思うか。

 紙を取り出してまた絵を描く。

「今シャーシャちゃんは弱ってて、物をいっぱい食べられないんです。そのご飯の見た目はスープとパンと一緒に見えるかもしれませんが、食べると元気になれる魔法のご飯です。元気になったらお腹いっぱいお肉を食べましょう」

と言って、デフォルメした悲しそうな顔のシャーシャちゃんの体の中に小さくなった胃袋を描いて、胃袋より大きなお肉は入らない事を示す。

 その横に元気になって笑うシャーシャちゃんを並べて、身体の中にさっきのお肉より大きな胃袋を描く。

 シャーシャちゃんは胡散臭いものを見る様な、なにか言いたげな顔で説明を聞いてる。


 ここでちょっと日本の凄いところを見せるか。

「もう傷は治したので包帯を外しましょう」

 俺にそう言われて思わず手に巻かれた包帯を見るシャーシャちゃん。

 食事の前に包帯を巻いたばっかりなのに、もう治っている訳があるかと怪訝な顔………だと思われる無表情な顔で俺を見る。

 まぁかなり深い切り傷を作ってたミミカカちゃんもごく短い間に治ってたし、シャーシャちゃんの傷の具合なら大丈夫だろうという楽観的な判断だ。

 果たして包帯を取り除いたその先に待っていたのは………皮がずるむけになっていたとはとても思えない様な肌だった。


 流石のシャーシャちゃんもこれにはびっくりした様で、歳相応にあどけない顔で自分の手を見つめてる。

 脚と首の包帯もその間に外したが同じく傷跡は消えいていた。首の方は自分の目で見る事はできないだろうから鏡を出してあげよう。

「ほら見て下さい。首も綺麗に治りました」

 するとシャーシャちゃん、若干驚いた顔で鏡の中の自分を見つめてる。

 鏡そのものが珍しいらしい。しばらく驚いた後、鏡像が自分と同じ服を着て自分と同じ様に動いてる事で、鏡が自分を映し出す物だと理解できたらしい。

「では傷も治しましたし、ご飯を食べましょう」

 鏡を見て一人百面相をしてたシャーシャちゃんを見るのも面白いけど、早く元気にしてあげよう。

 鏡をしまって食事を促す。

 シャーシャちゃんはすっかり治った傷と不思議な鏡を見て、魔法のご飯にも興味を示した様だし。


 シャーシャちゃんに携帯食料の乗った皿を差し出す。

 ………が、何故か俺の顔を見るばかりで食べようとしない。

 思わず見つめ合ってしまう。目と目で通じ合うと信じてしまいそうな程無言で。意気地なしな俺は耐えられなくなって聞いてみた。言えないなんて事はないのだ。


「食べないんですか?」

「………私は奴隷なので」

 だからなんなんだと思って確認してみると、奴隷は主人と一緒にご飯を食べる事は出来ないと教育されたらしい。

 奴隷商が食事をした後、冷めた粗末な食事を味わうのだとか。

 一緒にご飯を食べるからなんなんだと俺は思ってしまうが、それは平和な日本に身分制度がないから思える事なんだろうか。


「シャーシャちゃんは奴隷などではありません!」

 それまで出来るだけゆっくり穏やかに喋る様に努めてたけど、思わず声を荒げてしまった。

 シャーシャちゃんは日本国民の扱いに準拠する生活を俺が保護する!

 日本国憲法第14条1項!

 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない、だ!


 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずってやつかって?

 俺その言葉大嫌い。それを言った文豪は好きだけど、文豪が元にした国が悪逆非道の鬼畜だし。

 平等を掲げてる癖に差別主義だし、先の大戦では軍人ですらない人間を大量虐殺してるし。何が平等だアメリカの糞ったれめ。


 空襲から小さな我が子を守ろうとした、母親の話を思い出すと今でも涙が流れる。

 母親は素手で地面を掘って穴を作った。虐殺の魔の手から赤ん坊を守る為に指の爪が剥がれても懸命に。

 そしてできた穴の中に赤ん坊を入れ、その身一つで母親は穴に覆い被さり、自ら子を守る蓋となった、


 卑劣なアメリカは無辜の民を効率良く殺せるよう焼夷爆弾を使っていた為、子を愛した立派な母親は醜く焼け爛れた躯となった。

 そして、命をかけて守ろうとした子供は煙を吸いながら蒸し焼きとなり、その小さな両手で必死に母の乳房を掴みながら死んだそうだ。


 空襲後の町を片付ける学徒兵達はその任務の都合上死体を見慣れているが、この母子の姿を見た時は全員涙を禁じる事ができなかったという。

 母子の遺骸は丁重に埋葬されたが小さな花すら捧げられる事はなかった。野に咲く花ですらアメリカに焼き払われて辺りには瓦礫しか無かったからだ。


 史上最悪の兵器である原爆を軍事的価値の乏しい只の都市に2回も落とした事と言い、どうやらアメリカ軍というのは民間人を殺す為に結成された人類史上最低の国軍らしい。


 悪名高き原爆を投下したエノラ・ゲイの搭乗員は近年「必要なら、広島にまた原爆を落としてやる」と語っている。

 お前らアメリカ軍にとって軍需工場すらない都市と、内地で怯えて暮らす只の民間人を焼く事が必要な事なのか!

 アメリカ軍こそは、世界で最も民間人を惨たらしく殺す事に特化した近代の軍隊である、として表彰されるべきだろう。


 ………シャーシャちゃんは俺の豹変にびっくりしてしまってる。ごめんね、シャーシャちゃん。鬼畜アメリカの所業を思い出してたから俺の顔は物凄く怖かった筈だ。

「驚かせてしまってごめんなさい。でもシャーシャちゃんは僕と一緒の人間です」

 あの偉大にして尊い現人神の天皇陛下ですら、今では人間であるとしてご自分のその気高いご出自をお偽りあそばれてまで、我々日本国民と同じ目線にまで下りて日々をお過ごしあそばれていらっしゃる。

 光と永久に頂く天皇陛下が建前上だけの話とはいえ俺の様な者と同じ立場と仰られているのに、只の人間であるシャーシャちゃんに差があってたまるか。


 シャーシャちゃんは未だにびっくりしたままだ。けどシャーシャちゃんに仰ぎ見るべき天皇陛下の有り難みを、今語っても混乱させるだけだろうしご飯を食べよう。

16/07/09 投稿

16/07/12 意味の通らない文を加筆修正・一部の文を微修正

16/08/01 文の微修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ