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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の確信
129/154

ミミカカ、日本男子と夢を見る

 アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ!


「その通り。今後、この手の犬っころどもに、いちいち吠えられるのも煩わしいですからね」

「二度と目を合わせられない様に、この機会に躾けてやります」

「ヒヒヒヒヒヒヒッ!お座りぃっ!」

「伏せぇっ!」

「伏せっ!伏せっ!伏せっ!伏せっ!伏せっ!」


 ………ヤマトーさん、ちょーおっかないんだけど!

 からんできた獣人を、踏みまくってボロボロにしてたし!

「アヒヒヒヒヒャハハハ!ハーウスッ!」

 ボロボロになって動かなくなった相手を、笑いながらけっとばした!


「よぉくできましたぁ!お利口さぁん!」

「イーッヒッヒッヒッ!ヒヒヒハハハハハハ!」

 おかしくってたまらないみたいに、手をたたきながらわらってたし!

 おりこうさんもなにも………やったのヤマトーさんじゃん!


 わたしたちがしずかになってたら、ヤマトーさんが止まった。

「あァ?何ジロジロ見てんだよ?てめぇも躾けられてぇか?」

 さっきまであんなに笑ってたヤマトーさんが、機嫌わるそうにそう言ったら、まわりにいた人はすぐにいなくなった!


「お利口さぁんだぁ!アッヒッヒッヒッヒッ!ヒーッハッハッハッハッハ!」

 逃げてく人を見て、ヤマトーさんがまた笑いだしたし!


 ときどき思ったことがあった。

 すごい力を持ってて。

 こどもにやさしいヤマトーさん。

 でも、ホントはこわい人なんじゃないかって。


 アタシはヤマトーさんとたたかったことがある。

 ………ぜんぜんたたかいにならなかったけど。


 1回目は村にもどってきて、シャーシャを泣かせたのを見られたとき。

 手を伸ばされただけで、体がすごい力でひっぱられたみたいになって、すごく気持ちわるくなってたおれた。

 なにされたのかわかんなかった。


 2回目はまた村で、村のみんながシャーシャをいじめたとき。

 アタシは村のみんなの前に立って、ナイフを抜いた。

 ヤマトーさんはイライラしたみたいに、剣を遠くで横にふっただけ。

 なのに、アタシのナイフは手からふっとんでった。


 3回目は村を出て、この町にくる前に、アタシがシャーシャをバカにしたとき。

 あのときは殺されるかと思った。

 アタシがなにしても、2人にはなにも効かなかったし。

 2人の攻撃がアタシに当たったら死んだ。


 ヤマトーさんは怒ったら、メチャクチャこわかった!

 さっきも獣人を、すごい一方的にけりまくってたし!

 けられた獣人は、こどもみたいに丸くなって泣いてたし!

 さいごはけっとばされて、まるでゴミみたいに遠くまでころがされてたし!


 それも、あんなに笑いながら!

 ホントはヤマトーさんって………?

 すごい………乱暴な人なんじゃない?




 かつーん。

 かつーん。

 どうくつの中に。

 アタシたちの歩く音がひびいてた。


「僕達はね、どーしよーもなく、なめられるんです」

 ヤマトーさんがひとりでしゃべりだした。


「僕はタッパこそあるものの、顔がどうしても子供に見えるみたいですね」

「そして、シャーシャちゃんもナーナちゃんは、どーしよーもなく子供です」

「グララも、ミミカカも、女の人にしか見えません」


 うん。

 ヤマトーさんって背は高いけど、ヒゲとかが生えてなくてこどもみたいな顔してる。

 それにシャーシャもナーナも強いけど、見た目はこども。

 わたしとグララは大人だけど、女だった。


「僕達は不当に侮られるんです。だから、力を示す必要があります」

「力のない者は、一方的に奪われます。強者の理論の前に、弱者は平伏すしかありません」

「奪われない為には、強者であるしかありません。何者にも奪わせないだけの、力を示すのです」

「ね、シャーシャちゃん?」


 ヤマトーさんは安心させるみたいに、笑ってシャーシャに言ってた。

 たしかにそうだ。

 こどもは大人に逆らえない。

 女は男に勝てない。

 だから、なめられる。


 それはよくわかった。

 アタシも村にいたとき、弓を持って狩りをしてたし。

 そのときにもよく、村の男の人には文句をいわれた。


 女なんだから木のみをひろってたらいいとか。

 こどもの面倒を見ろとか。

 狩りに出ても足手まといだとか。


 でも、文句を言われたのは、最初だけだった。

 アタシが飛ぶ鳥だって落とせるぐらい、弓がうまくなったとき。

 だれにもバカにされなくなった。

 なめられないようにするには、強くなきゃいけない。

 アタシが強いって、わからせなきゃいけない。




 こつーん。

 こつーん。


「コレは、皆を守る為に必要な事なんですよ」

 ヤマトーさんがしゃべる。

「もしも力を示さなければどうなるか、考えてみて下さい」

 アタシたちに言い聞かせるみたいに。


「僕達は蝿にたかられて鬱陶しい」

「蝿共は叩き潰されて命を失う」

「これでは誰も得をしません。そうでしょう?」

 あたりまえのことを、こどもに説明するみたいに。


「これはデモンストレーションです」

「僕達に近寄ると危ないって」

「蝿共のちっぽけな脳みそでもわかる様に」

「わかりやすく僕らは、優れた力を持つ事を示さなければなりません」

 ヤマトーさんは、わかりやすく説明してくれる。


「僕達は邪魔されなくなって幸せ」

「蝿共は潰されなくて幸せ」

「みんなが幸せです。いい事じゃないですか」

 ヤマトーさんは笑ってた。


 そうか。

 ちょっと見ただけだったら、ヤマトーさんって乱暴だなって思った。

 でも違うんだ。

 ヤマトーさんは、アイツらを助けようとしたんだ。


 アイツらはアタシたちのことをなめてる。

 口でいくら言っても、アタシたちの方が強いなんて、ぜったいにわからない。

 あぁいう風にしなかったら、多分ずっと絡まれてたんだ。

 だからそうならないように、わざとひどいことをしたんだ。


 あんなに笑ってたのも、わざとやってたんだ。

 アレはこわがらせたいからやってたんだ。

 イッバッヒャッカっていうのがなんなのか、やっとわかった。

 あのボロボロにした獣人1人で、100人の人にアタシたちの強さを教えたんだ。


 やっぱり、ヤマトーさんは正しいんだ。

 ヤマトーさんのやることって、パっと見ただけだったらわかんないことが多かった。

 頭のいい人だから、アタシにはわからなかった。

 でも、説明してくれるからわかった。


 前にヤマトーさんと戦ったときもそうだった。

 アタシは殺されるかと思った。

 でもアレは、アタシに危なさを教えてくれたからだった。

 自分より強いやつを怒らせちゃダメって。

 アタシが大事だから怒ったんだって。


 ヤマトーさんを怒らせたやつがわるいんだ。

 ヤマトーさんはいつも正しい。

「そんな事より、お宝です」

 ヤマトーさんが話を切り替えた。


 お宝。

 そういえばヤマトーさんは言ってた。

 ここにはぜったいお宝があるって。


 なんでそんなのを知ってるのかはわからなかったけど。

 なんでも知っててわかってるヤマトーさんが言うんだから。

 ここにはお宝があるんだろうな。

 ヤマトーさんはどんなお宝かは教えてくれなかったけど。

 たしかすごいお宝だって言ってた。


 どんなお宝なんだろ?

 いっぱいのお金とか?

 でも、ヤマトーさんはもうお金をいっぱい持ってるし?

 そんなのすごいお宝じゃないな。


 ちょっと考えてみても、ヤマトーさんが「すごい」って思うことはさっぱりわかんなかった。

 アタシならどんなのがすごいって思うだろ?

 すごい弓とか?


 アタシの持ってる弓は、森のなかで使う弓だ。

 森の木の間を進むときとかに、ジャマにならないように小さい。

 小さい代わりにあんまり強くない。

 ヨロイ着てる人とかには、矢が刺さらない。


 でももしかしたら、小さくてもすごい強い弓があるかもしんない。

 だって、アタシのもらったナイフもすごかったし。

 シトーのサッキってナイフで、すごくキレイでなんでも切れるナイフ。


 きっとシトーみたいにすごい弓なんだろうな。

 神さまの力が宿ってて。

 どんなことをしても壊れなくて。

 小さくても、すごい力の矢が放てるんだ。




「………あ」

「シャーシャちゃん、なんか見つけたの?………あ」

 すごい弓を考えてたら、先を歩いてる2人が止まった。


「ナーナアイ!説明しよう!ナーナアイとは、ナーナちゃんの星を浮かべたようなつぶらな瞳で、対象物の正体を探る事なのさ!」

「うん、それは平たく言うと観察って言うんだ」

 よくわからないことをいつもどおり言い出したナーナにつっこむヤマトーさん。


「プロファイリング中、プロファイリング中………ふぅ。プロファイリングの結果、10代~20代、もしくは30代~40代、または50代以上の人物、と鑑定されたよ」

「人物かよ。どう見ても無機物に見えるぞ」

 うん、人には見えない。

 アタシにも木でできた箱に見える。

 外枠んところが、鉄になってる。


「………おたから?」

「そうですね、シャーシャちゃん。僕にも宝箱の様に見えます」

 そう、宝箱!って感じの箱が置いてあったし!


「ナーナアイのプロファイリング結果では、計画的な犯行でなければ突発的な犯行の可能性もあるって出てるけど?」

「俺のプロファイリング結果では、単独犯もしくは複数で犯行を行っているって出てるぞ?」

「これで容疑者はこの世界の人物にまで絞り込めたね」

「検挙も時間の問題だな」

 そう言いながら、ヤマトーさんはナーナのわきの下からだきあげて、横にどけた。


「さて、やっぱり出てきたな、宝箱?」

 腕組みしながら宝箱を見下ろすヤマトーさん。

「………開ける?」

「えぇ、無視するという選択肢はとりたくありませんね」

 宝箱を見ながら、自分のアゴをなでるヤマトーさん。


「ミミカカ?」

 そしたらアタシの名前を呼んできたし!

「え、何ですか?」

「お前、これ開けてみるか?」

 宝箱を指差すヤマトーさん。


「アタシが?」

「うむ。宝箱を開けるのは、ミミカカこそが相応しい。ミミカカ以外には考えられない」

 なんかよくわかんないけど………!

「アタシ、やってみます!」

 ヤマトーさんがあんなにアタシがいいって言ってくれたの、初めてだし!


「テレポーター?」

 ナーナがなんか言った。

 なに、テレポーターって?


「テレポーターは勘弁して欲しいな。スタナーとか?」

 ヤマトーさんもなんか言ってる。

 スタナー?


「毒針?」

「石つぶて?」

「警報?」

 さっきから2人で言ってるけどなんだろ?


「まぁミミカカのクラスなら1番の適任だろ」

「あ、そういうことだったんだ?」

「他になんだと思ったんだ?」

「レベル1戦士『あ』の冒険」

「おぉっと、悪魔の目玉」

 やっぱりわからない。


「なんか知らないけど開けますよー?」

「了解だ。やれ」

 パカっと。

 箱の上側を外す。


「ん、なにこれ?」

 なかにはヘンなのが入ってた。

 アタシの腕ぐらいの長さの、山なりの形をした黒い鉄の棒。

 山なりの、てっぺんのところがへこんでた。


 まんなかのへこんだとこは、丸いのとか、なんか出っぱってんのとか、いろいろついてる。

 片側に、山の上にまっすぐ伸びてる長いのがある。

 棒は1本の棒じゃなくて、色んなものが組み合わさって、1つの棒になってる。

 山のはしとはしには丸いのがついてて、それが何本かの線でつながってる。


「んー?」

 これって?

 ここを持って?


 そんで引いて?

 そしたらここが?

 こう来てこうだからー?


「んー??」

 やっぱり?

 ちょっと変な形してるけど?

 もしかして………?


「弓?」

 これ、鉄でできた弓だ。

 ふつうの弓とちがって、なんかすごい形してるけど。

 これ、アタシでも引けるのかな?

 手にとって持ってみる。


「あれ?軽い?なんかこれ、軽くない?」

 鉄だから、すごい重たそうと思って、力をこめて持ったけど、思ったよりすごい軽かった。

「アタシでも引けんのかな?」

 矢をつがえないで、軽く引いてみた。


「うわ、なにこれ?軽い!」

 重さも軽かったけど、弦を引くのも軽かったし!

 なんでこんなヘンな形してんのかわかんなかった!


 でも引いてみたらわかった!

 すごい引きやすい!

 これ、引きやすくなるように、なんかいっぱい工夫してあるんだ!


「すごい!すごーい!」

 アタシでも使える、すごい弓!

 しかもよく見たら、箱の中には鉄の矢も入ってた!

 早く試してみたい!


「あれ?そういえば?」

 なんでさっきからしずかなの?

 うしろをふりむいてみた。


「すごいすごい言ってるな」

「………うん」

「うむ!何やら黒い棒が入っておったようだな!」

「メイジブラスターはなかったみたいだね」

 なんか、とおくのかべから、顔だけニュって出して、みんなコッチ見てた。


「なにしてるんですか?」

「えーっと」

「………んーと」

「ぜーっと」

 ヤマトーさんとシャーシャとナーナが、なんかよくわかんないこと言ってた。


「何やらよくわからぬが、ミミカカ殿が箱を開けようとした途端に、ヤ「サーのドッコイショー!」」

 グララがしゃべってる途中でヤマトーさんが大声で、足をドシンってやった!

「ハー!ドッコイショ!」

 ナーナもすぐにいっしょにドッコイショーした!

「………ドッコイショ?」

 シャーシャもよくわかってなさそうにいっしょにドッコイショーした!


「「ヤーレンソーランソーラン!」」

 そのままヤマトーさんとナーナが2人で手を大きく動かして踊った!

「………ヤレン?ソーランソーラン?」

 シャーシャもいっしょにマネした!

「「ハイハイ!」」


「ロリはたしなみ男の印!軽く手を出せお気軽にヒョイ!」

「ソーラン節はそんな邪悪な唄じゃねぇよ!」

「これは鰊場作業唄から失われた幻の五部『禁断の果実音頭』だよ!」

「そのまま失われてろ!最早只の猥歌じゃねぇか!」


「歴史ある鰊場作業唄になんという暴言!」

「そんな悪しき歴史、この俺が根絶やしにしてくれる!」

 ヤマトーさんとナーナがケンカしはじめた!

「ぬ!言わぬ方がよいという事か!わかったのだ!」

 それを見てグララが、すごいドヤ顔でうんうんうなずいてた!


 ………なんかいきなり踊りだしたからわかんなかったけど。

「ねぇグララー?なんて言おうとしたの?」

 グララがよけいなこといわないように、みんなでジャマしたな?

「ぬ!な、何でもないのだ!ホントなのだ!」

「アハハハ………グララはウソがヘタだなー」

 そんなん言われたって、ウソだってわかるに決まってるのに。


「まー、隠したら怪しいか」

 グララを詰めようと思ったら、ヤマトーさんもあきらめたみたい。

「その宝箱はミミカカの物だったからな。初めての宝箱だ。ミミカカの喜びに水を刺さない様に気を使って、俺達は離れてたんだ」

「えー?みんなに喜んでもらったほうがうれしいですよ?」


「もちろん俺達も祝うが、俺達が側にいる状態だと、その宝を手に入れた功績が、複数人のものに分割されるかと思ってな。胸を張ってミミカカが1人で手に入れたと言える様に俺達は離れてたんだ」

「ふーん………?」

 みんなで開けたら、このすごい弓が、みんなのものになる?

 そうならないように、みんなははなれてた?

 ………たしかにこのすごい弓が、アタシのものじゃなくなるのはヤかも!


「じゃあこの弓は、アタシのものでいいんですよね?」

「あぁ、間違いなくこの宝はミミカカだけのものだ。好きに使ってくれ」

「やったー!お宝を見つけたのはアタシがさいしょだー!」

 弓をもってりょうてをあげた!


 ヤマトーさんがよくやるバンザーイだ!

 これがバンザイ?………気持ちいい!

 よろこぶときはこうやって手をあげた方が気持ちいい!


「ハッハッハ、俺の粋な計らいに喜んでもらえようだな!」

 ヤマトーさんが腕組みして言った!

 ヤマトーさんは、アタシを喜ばせようと思ってやってくれたんだ!

 やっぱりヤマトーさんってアタシのこと好きなんだな!

 えへへへ。


「ごめんねー、シャーシャとナーナ!こんないいもの、アタシだけヤマトーさんからもらっちゃってー!2人もなんかいいお宝がもらえるよ!多分!」

 2人を思いっきりバカにしてやった!

「………シュテルプリヒ・シャッ「シャーシャちゃん!僕と2人で地面が何個あるか数える遊びをしましょうね!」モガモガ」

 シャーシャの口を防ぎながら、ヤマトーさんがすごい早さでどっか運んでった!


「よし!神鳴りで!」

「ナーナちゃん、こっちに猫缶ありますよー?」

「なんか、ボクの止め方すごい投げやりなんだけどさ?」


 やっぱりアタシが1番なんだ!

17/12/30 投稿・文章の修正

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