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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の確信
125/154

シャーシャ、日本男子を見つめる

 わたしの名前はシャーシャ・ホマレー。お兄ちゃんの妹。


 ミミカカさんの村を出て。

 お兄ちゃんのニセモノがいた町を出て。

 着替えをして。

 次の町が見えてきた。


 お兄ちゃんが最初に選んでくれた服は白。

 だからお兄ちゃんの好きなセーフクも白いのにした。

 白と青の、すごくきれいな服。


 そしてくつも、お兄ちゃんに作ってもらったサンダルから変わった。

 お兄ちゃんとおそろいのくつ。

 くつはすごく固くて、石を踏んでも痛くなかった。

 なのにすごく歩きやすかった。


「ここがダンジョンのある町だよ、おっかさん」

 ナーナちゃんも町を見つけた。

「どこにいんだよ、お前のおっかさん?」

「やだなー、おっかさんって言ったら、シャーシャちゃんのことに決まってるじゃないか!ママー!」

 お兄ちゃんが聞いたら、ナーナちゃんが抱き付いてきた。


「俺の有する倫理観に、著しく反する親子関係だな………おとっつぁんは?」

「ダディ!」

 ナーナちゃんがお兄さんに抱き付いた。

 お兄ちゃんもナーナちゃんを抱きしめた。


「俺かよ………まぁ男役俺しかいねぇけど」

 お兄ちゃんはナーナちゃんのわきに、手を入れて抱き上げた。

「ほらナーナ、お父さんだぞー」

「あっ、ノってくれるんだ?パパー」

 2人はそのままクルクル回ってた。


「パパー」

「なんだい、ナーナ?」

「ナーナね、欲しいものがあるの~」

「何が欲しいんだい?」


「ナーナ、弟が欲しいな~」

「シャーシャ、今夜辺りどうだろう?」

 なんか、お兄ちゃんがすっごい笑顔でわたしを見てた。


「………今夜?あのね、夜にね、なにするの?」

「天井のシミの数を数えてたら終わるさ」

「………天井のシミ?」

 なんで天井のシミを数えたんだろ?


「って!なに敵に塩送ってんのさ!」

「敵?自分からネタ振っておいて何の話だ?」

「テイク2!パパ~!」

「えらく身勝手な娘だな………。ゴホンゴホン………なんだい、ナーナ?」


「ナーナね、欲しいものがあるの~」

「何が欲しいんだい?」

「ナーナ、パパのこどもが欲しいな~」

「そんな娘ドン引きするわ」

 お兄ちゃんが嫌そうな顔してた。


「う~、なんでママとリアクションがちがうのさ~!」

「娘が親父の子を身篭ろうとするとか、おままごととして流せる設定じゃねぇよ!」

「ボクはぜんぜんオッケーさ!さぁバッチコイ!」

 なんかナーナちゃんがお兄さんにおしりを向けて、ピシャピシャたたきだしてた。


「3人娘!サカッコーを用意しろ!」

「「「はい」」」

 白い服を着たお姉さんたちがいきなり出てきた。


 そしてお兄ちゃんに赤い三角のやつを渡してた。

 三角錐ってかたちをしてて、おしりが四角に広がってた。

 お兄ちゃんの体ぐらい大きかった。


「お兄さん、サカッコーなんか出して何するつもりさ!」

「ん?突き刺す?」

「肛門裂傷の予感!?」

「大丈夫大丈夫。絶対大丈夫じゃないから安心しろ」

 あたりまえのことをしてるのに、なんで聞かれたのかわからなかった顔でお兄ちゃんが答えた。


「何1つ安心できる要素がないよ!」

「峰打ちじゃ、安心いたせ」

「サカッコーのどこに峰なんてついてんのさ!」

「実はこの所が峰なんだ。ここから勢いをつけて押し込むから安心しろ」

 サカッコーの先っちょのところをポンポンたたいてた。


「死ぬ!死んじゃう!ボクそんな死に方やだ!」

「ちゃんと碑文には『サカッコーに尻を引き裂かれた変態の士、ここに眠りやがる』って書いておいてやる」

「そんなの書かれたくないよ!せめて『全てを慈しみ受け入れる聖母の如き美少女、ここにお眠りになる』って書いてよ!」

「受け入れるつもりかよ!」

 あんなのからだに入れられた死んじゃうなぁって思った。


「かくなる上は………パパ!ナーナね、とりひきしたいの~」

「なんだい、ナーナ?」

「ナーナね、サカッコーを差し込まれたら、パパにテトラポット差し込み返してやるの~」

「俺の身体に、テトラポット接続端子なんて付いてねぇよ!」

 テトラポットってなに?


「プークスクス!パパったら今時テトラポット対応じゃないの~?ダッサ~イ!」

「いくら人類が進化しても、テトラポットをマウントできる部位なんて今後出現しねぇよ!」

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり、さ!」

「そもそもなんで、テトラポットなんてもんを接続しようと思った!」

 あとで教えてもらったけど、テトラポットはふしぎな形の、おっきな石だった。


「ボクたちは、今この瞬間にも進化してるのさ!対応規格が増えないなんて時代に取り残されてるよ!」

「よしわかった!お前の接続端子にUSBケーブル差し込んで、データ取り出せたら話聞いてやる!」

「にゃああああっ!?そんなリアルに入るもの出されても困るよ!今すっごくゾクゾクッてした!」

「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり、だろ?」

 お兄ちゃんが黒いツルツルのヒモみたいなのを持ってた。


「説明書よく読んでよ!これ入力端子じゃなくて、出力端子だからさ!」

「乙女にあるまじきこと口走ってやがる!ヒヒャハハハハハッ!ナーナ………お下品な子!」

 すごくうれしそうなお兄ちゃん。

 お兄ちゃんはおしりが好きみたいだった。おぼえとこう。

 わたしがお兄ちゃんの好きなものをおぼえてたあいだに、ナーナちゃんがなにか思いついたみたいで、すごくわらってた。


「ナーナ、パパの出力端子を、ナーナの入力端子に接続して、イデシをテソーして欲しいなぁ~?」

「うわ、ドン引き!」

「ボクみたいな美少女に誘惑されてドン引きとはどういうことさ!」

「イデシをテソーはねぇわ!鳥肌立ったわ!寒気するわ!」

 イデシをテソーってなんだろ?

 お兄ちゃんはなんか寒そうにしてた。


「ぬー!毎度の事なのだが、我にはヤマトー殿とナーナ殿の話がわからぬのだ!」

「んー、アタシもいまいちわかんないんだよねぇ」

 わたしもわからないのが多かった。




「という訳で、ダンジョンのある町に到着しましたね」

「はーい、お兄さん」

「はい、ナーナちゃん」

「なんで化物が棲んでるダンジョンなんかの側に町があるの?」

 そういえばそうだ。なんでだろ?


「鉱山の近くに町ができるようなもんだよ?鉱山があるから人が訪れる。人がいるから宿泊施設が必要になる。宿泊施設があれば食べ物も必要になる。一定以上の規模の経済活動が行われれば、他の商業も集ってくる。そして人が集まる事で、更に多くの宿泊施設が必要となる………とこんな感じだな」

 人が集まると、ケーザイ活動ができるみたいだった。


 ケーザイ活動は、お金を使うことってお兄ちゃんがいってた。

 お金をいっぱい使ったら、つまり、ケーザイ活動がかっぱつだと、みんなお金がたくさんもらえるみたいだった。

 お金を集めたかったら、使わなかった方がいいんじゃないかなって思ったけど、それはダメなんだって?


「鉱山の代わりに、ダンジョンへ置き換えても成り立つんだね。金鉱山とかは儲かるのわかるけど、ダンジョンってなにがそんなに儲かるの?」

「ダンジョンには化物が住み着いてるらしいし、その素材が売れる訳だ。毛皮だとか肉だとか、あと………化生石っつったっけ?ナントカ石とかいうのも、価値があるらしいしな。あとなにより直接的に金銀財宝の類が発見される例もあるし」

 ダンジョンで見つかった、色んなものを売れるみたいだった。


「冒険者連中がダンジョンで見つけた物を売る。その金で食事や宿泊、武器防具を求める。あるいは傷病を癒やす為に、薬や拝み屋の連中に頼る事になる。常に一定の需要がある以上、販売する側も予め物品を用意する事になる。いちいち必要となってから用意してたんじゃ、追っつかないからな。つまり、必需品はまず売れるという保証がある。こういうのを特需………バブルというんだな」

「だからダンジョンには町が併設されるんだね」


「町がある理由に納得したところで………早速町に入ってみますか」

 お兄ちゃんがテクテク歩いてった。テクテク。

 町は石の壁でかこわれてて、入るには門番の人と話をしなきゃいけなかった。


「止まれ。通行証を出せ」

「通行証?ないな」

「ならここで人数分買え。このタセの町に入れるのは、通行証を持っている奴だけだ」

 門番の人がこわい顔でお兄ちゃんを見てた。


 わたしはこわくなってお兄ちゃんを見た。

 こわかったのは門番の人じゃなかった。

 お兄ちゃんが怒ったんじゃないかって思ったのがこわかった。


「いくらだ?」

 でもお兄ちゃんはぜんぜん気にしてなかった。

 よかった。

 ………そう思ったのに、門番の人がニヤっていやなわらいかたをした。


「大銀貨10枚だ」

「大銀貨10枚だと!」

 まほうつかいの人がおっきな声を出してた。

「あ、なんだお嬢さん?なんか文句でも?」

 門番の人はすごくやな顔でニヤニヤしてた。


 前の町だったら、銅貨2枚でごはんが食べられた。

 銀貨1枚で部屋に泊まれた。

 この町に入るのにかかるお金だけで、前の町だったら10日泊まれた。

 まほうつかいの人は、お金がすごく高いから驚いてしゃべったんだと思った。


「で、その通行証とやらがあれば、ダンジョンにも入れるのか?」

 なのにお兄ちゃんはぜんぜん気にしてなかった。

「あァ?チッ………どうせ金が用意できないんだろ?」

 お兄ちゃんが聞いたら、門番の人はめんどくさそうな顔をしてた。


「特別に、その赤い服を着た女を1晩置いていけば、大銀貨1枚で通行証を用意してやるぞ?」

 そしてまたニヤニヤした顔になった。

「にゃーっ!乙女のピンチ!」

 赤い服って言われてナーナちゃんが自分を抱きしめてた。

「獣臭い獣人が!誰がてめぇみたいなゲテモノなんかいるか!あっちのドレスの女だ!」

 ………門番の人が見てたのはまほうつかいの人だったけど。

 

「にゃああああっ!許せない!よりにもよって、ボクが獣臭いだって!?鼻がひんまがる様な体臭してるくせによく言うよ!鼻腐ってんじゃないのかな!」

「あァ?てめぇ獣人の分際で人間様に逆らっていいとでも………」

 門番の人が槍をナーナちゃんに向けて………。


「で、グララはどうする?この人達がグララの事、グチャグチャになるまで強姦したいって言ってるけど?受けるのか?」

「受ける訳がないのだ!おぞましいにも程がある!」

 まほうつかいの人がいやそうにいった。

「ん、そうか。生理的に無理か。確かにこんな三下連中の相手は御免被るわな」

 お兄ちゃんがどうでもよさそうにうんうんうなずいてた。


「チッ!てめぇなめてやがんのか!」

 怒った門番の人が槍をお兄ちゃんに向けようとして。

「ハッ!」

 そのまま槍の先を切り落とした………手だけで。


「そのまま素っ首、叩き落としてやろうか?」

 ピンッて伸ばした手を、門番の人に向けてた。

「お前何をしっ………」

 でもお兄ちゃんに槍を壊された門番の人は、お兄ちゃんをなぐろうとした。

 あーぁ。


「殺すのも問題があるか」

 めんどくさそうにパンチをよけたお兄ちゃん。

「秘技、波紋徹し!」

 足を地面にバンッてやりながら、手を門番の人のおなかに当てた。


 ズドンッ!

 門番の人、見えなくなるぐらい、遠くまでぶっとんでった。

 お兄ちゃんの手は、ただまっすぐ前に出しただけで、パンチするときみたいにふりかぶってなかったのに。


「何アレ、お兄さん?」

「俺は衝撃を操る波紋という魔法が使える。この魔法を格闘に応用して、拳法に於けるいわゆる徹しができんだよ」

「ってか、お兄さん?あんなふっとばされたら、あの人死んでんじゃないの?」

「まぁ軽く街の端から端までふっ飛ばしたから、今頃向こうの外壁にぶつかって死んでるだろうな。相手の力量もわからず調子に乗るからこういう事になる」


「「「………」」」

 ぶっとばされた門番の人と、別の門番の人たちがそれを見て固まってた。

「あの間抜けの仲間入りしたい奴は槍構えろ。望みは叶えてやる」

 お兄ちゃんはどうでもよさそうにいった。

 多分、人をあんなにぶっとばすことも、おなかをポリポリかくのと同じぐらいかんたんにできた。


「で、通行証があったらダンジョンには入れんのか?」

「「「………」」」

 門番の人たちの顔は、青くなって、白くなって、今は黒くなってた。


「おい、諸君?仕事しろよ?聞かれた事に答えらんねぇなら、別にここにいる必要はねぇだろ?邪魔にならねぇ様に、壁まで吹っ飛ばしてやろうか?さっきのゴミみてぇに?」

「いっ、いえっ!」

「あの、あのっ!」

「えっと、えっと、えーっと!」

「その、そのっ、そのっ!」


「あァ?んだてめぇら?人の言葉がしゃべれねぇのか?やっぱ用はねぇな?吹っ飛んどくか?」

「はい!はいっ!入れまっす!入れます入れますっ!」

 お兄ちゃんににらまれた門番の人が、あせりながら答えてた。


「入れんのか?そうか?で、通行証がいくらつったんだ?」

 その人をじっと見ながら、お兄ちゃんが聞いた。

 他の答えてなかった門番の人は、お兄ちゃんが自分を見てなくて、ホッとしてた。


「だ、大銀貨、10枚で、す」

「へぇー、大銀貨10枚………ねぇ?」

 お兄ちゃんが顔を近づけて、門番の人をジロジロ見てた。

 まゆの間がグッてよった、こわいわらいかたで。


「う………」

「う?」

「うわあああああっ!」

「おっと」

 お兄ちゃんに見られてたのが辛くなって、門番の人がお兄ちゃんをドンって突き飛ばそうとしてた。

 だけどお兄ちゃんは動いてなくって、門番の人がたおれてた。


「はい、ここに居る意味のないアホが1人」

 楽しそうにわらいながら、ゆっくり門番の人のところまで歩いてった。

「わっ、クソ、クソ、クソ!」

 門番の人はお兄ちゃんから逃げようと、カサカサしてたけど、こしが抜けてて動けないみたいだった。


「波紋徹しにはこういう使い方もある」

 バンッ!

 またお兄ちゃんが足をバンってやりながら手を当てた。

「ベェッバッ!」

 そしたら門番の人は、目とか、鼻とか口から血を出して動かなくなった。


「ふむ。流石に訓練で使う訳にはいかなかったが、中々具合がいい」

 お兄ちゃんは自分の右手をクルクル回して見てた。

 今さっき殺した門番の人なんて忘れたみたいに。

「それで………」

 お兄ちゃんはまた門番の人たちを見た。


「俺達はさっさと、通行証を受け取りたいんだ………お前等はここに居る意味のある人間か?それとも邪魔なだけのゴミか?」




 大銀貨10枚の通行証を、()()でもらった。

 最初にいくらって言われても、そのままのお金を払ったら、損するんだってお兄ちゃんは言ってた。


「あの手の連中は、料金なんて相手次第でいくらでも変えてきますからね。もし一律の料金を提示されてたら、僕だって快く払っていましたとも。しかし自分の力を背景に金額を変動させてきました。こちらが同じ様に力を背景に金額を変動させても、非難される謂れなんてありませんとも」


 お兄ちゃんは強かった。

 そんなお兄ちゃんが、わたしを大事にしてくれるのは?

 わたしがマホショージョだから。

 旧人類をやっつけて、全部を作り変えるマホショージョ。

 お兄ちゃんのたからもの。


 それがわかってわたしは………()()()()()()


 なんで大事にしてくれるのかがわからなかったのは、すごくこわかった。

 わたしが強くなっても、お兄ちゃんはもっと強かった。

 魔法戦技の模擬戦をやっても、わたしは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 わたしにできたことは、お兄ちゃんがなんでもできた。

 だって、わたしができたことは、ぜんぶお兄ちゃんから教えてもらった。

 お兄ちゃんといっしょにいても、わたしは役に立てなかった。

 お兄ちゃんに捨てられたらって思ったら、すごくこわかった。

 でも今はちがった。


 わたしはお兄ちゃんのたからもの。

 お兄ちゃんのために、旧人類をやっつける。

 お兄ちゃんのために、世界を作り変える。

 だから、お兄ちゃん。

 わたしのこと、捨てないで。

17/12/2 投稿・文の微修正

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