ミミカカ、日本男子を勝ち取る
アタシはニホコクミを目指す戦士、ミミカカ!
「うわ、お兄さんどうしたのそれ?バークにでも乗るの?」
「うるせぇ………戦闘能力とファッション性を重視したら、ここに落ち着いたんだよ」
ヤマトーさんは黒いテカテカした服を着て、濃い青のゴワゴワしたのを履いてた。
なんかいつもより体が大きくみえて、超強そうだった。
「だいたいそっちこそなんだよその服?」
「ふふん、ボクの女子力に恐れおののくがいいさ!」
せなかをグッてうしろにそらして、両手をあたまのうしろで組むナーナ。
「指先しか出ない程袖の長い、赤のタテセタに?黒のオーバーニーに?ボトムは隠れててわからんが………」
「ふふーん!リーチ状態だよ!」
「は?………お前痴女なのか?」
「失礼な!見せてもいいってやつだよ」
ナーナがペラッて服をまくって見せた。
そんなことしたら、見え………?
めくったとこには、黒いなにかをはいてた。
「スパッツか?………いや、やけに見覚えが?」
「ボクサーブリーフだよ?」
「お前には心底ガッカリしたよ」
ヤマトーさんが疲れたみたいな顔になった。
「ちなみにセクシーっぽいのはボクが持つとエロとロリが両方そなわり最強に見える!破壊力ばつ牛ン!」
「どちかというと大反対。あまり調子に乗ってると裏世界でひっそり幕を閉じる」
「ボクの怒りが有頂天になった!見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない」
「おい、やめろ馬鹿。火を見るより確定的に明らか。」
なんかよくわかんないこといいながら、いつもみたいにケンカしはじめたし。
「にゃーっ!」
ナーナがジャンプしながらハイキックした!
「甘い!」
ヤマトーさんが軽く左うででふせいだ!
「っ!?いったーっい!」
そしたらナーナがスネを抑えてゴロゴロころがった。
なみだ目になっててマジで痛いみたい。
「お兄さんいつもなに食べてんの?鉄?」
「お前、俺が鉄食ってんの見た事あんのかよ?コレだよコレ」
するとヤマトーさんが上にきてたテカテカした服をぬいだ。
………なんかいつもより、すごいムキムキなんだけど?
「お、お兄さんがパンプアップしてる!なんで?」
パンプアップはキトレしたあとに、キン肉がふくらむことらしい。
ヤマトーさんキトレしてたの?
「パンプアップな訳ねぇだろ。ボディーアーマーだボディアーマー。戦闘能力を重視したって言っただろ?」
「あのー、ヤマトーさん?ボディアーマーって?」
「あぁ?あぁ………まぁ鎧の事だな」
「ヨロイ?その黒いの、ヨロイなんですか?」
いつもよりムキムキしてると思ったら、ヨロイをきてたらしい!
でも、騎士とかがつけてる、鉄のヨロイには見えないし?
冒険者とかがつけてる、革のヨロイにも見えないし?
「試験的に軽量合金製金属板を、関節の稼働を妨げない範囲で各所に配置してある」
「ゴーキ製?」
「複数の金属を混ぜ込んだものの事だが………まぁ軽いのにすげぇ硬い金属だって思ってりゃ外れねぇよ」
「そんなすごいのがあるんですか?」
ヨロイって重そうって思ってたけど、ヤマトーさんのは軽いらしい!
「まだ概念実証段階だがな。まぁ早速、有効性を発揮したが………」
ころがったままのナーナを見るヤマトーさん。
いつもヤマトーさんとジャレあってるナーナだけど………いつもとちがってすごい痛がってる?
「うぅ~………すんっ!ひっ!ずずっ………」
ナーナが泣いてる!?
「あー、悪かった?………いや、いきなり蹴飛ばされそうになった、俺が謝る筋合いはねぇよな?」
「えぇ~ん!いたいよぉ!」
えっ!?
ちょっと?
ナーナの足、折れてない?
「ってかお前、そんな力入れて蹴ろうとしたのかよ!」
「いたい!いたいぃいいいいいっ!」
「ほら、治してやるから動くな」
ヤマトーさんがナーナの足に手を伸ばして、折れた足を真っ直ぐにした。
「うぅっ………うぅ?」
すごく痛そうに見えたけど、ナーナはふしぎそうな顔してた。
折れた足さわられてるのに痛くないの?
「………」
ヤマトーさんが足をつかんだまま目を閉じた。
するとナーナの足の折れたとこに、白い光ができた。
「ふぅ………どうだ?痛みはあるか?」
「………ない」
なみだ目のナーナが小声で答えた。
「ゆっくり動かしてみろ」
「………動く」
なんかしずかなナーナってめずらしいかも?
まるでシャーシャみたいな?
「………あのね、お兄ちゃん?」
「ん?どうしたんですかシャーシャちゃん?」
って思ってたらシャーシャがホントにしゃべりだした。
「………なんでね、ナーナちゃんのね、足がね、折れたの?」
そうだ!
ナーナはキックしただけで攻撃されてない!
ヤマトーさんは左うででふせいだだけだった!
「あー、このボディアーマーは単純な硬さもさる事ながら、それ以上に特性の方が強力なんですよ」
「………特性?」
「この素材は外からの刺激、外力に対して、同等の衝撃を発生させ、衝突前に衝撃をゼロにする特性があるんですよ」
ヤマトーさんが説明してた。
「え、ゼロ?なんですかそれ?」
「あー、ミミカカには分かんねぇか。ふん………要は殴られたら、殴られた力と同じ力で、鎧が勝手に殴り返すんだ。ナーナは蹴った力そのままで蹴り返されて、足の骨が折れた訳だ」
「ヨロイが勝手に!?そんなのあるんですか?」
「俺の魔法を応用した技術だ。衝撃以外にも、冷熱の類も自動的に打ち消し、常に一定の温度を保てる」
そんなすごいヨロイなんだ………。
「うぅ………ひどいよお兄さん………。ボク、すっごく痛かったんだからね?」
いつもとちがって元気のないナーナ。
「足が折れるような勢いで蹴ってきた方もどうかと思うぞ」
「お兄さんなら、あんなの大丈夫だって思ってやったのに」
「俺だって蹴られれば痛いし嫌だわ。っていうか俺がボディアーマーの特性を説明する間もなく、襲い掛かってきた事そのものにも問題がある」
「常在戦場でしょ」
「だからこそ、相手の力量を確かめもせずに、襲いかかる方が迂闊なんだよ」
「にゃー………」
しっぽがたらーんってしてた。
「これが俺の魔法式反応装甲の概念実証装備だ」
アレも魔法なんだ?
「反応装甲って………」
ナーナがその魔法を知ってたのか、聞き返してた。
「たしか、随伴歩兵に被害が出るんじゃ?」
「ズィーハホヘー?」
「いっしょにいる人のことだよ」
「いっしょにいる人って………アタシたちのこと!?なんで!?」
「ボクの知ってる反応装甲って、使うとすごい勢いで、鉄の欠片が周りに散らばるんだ。それに当たって怪我をするって問題があったんだよ、お姉さん」
「え、そんなのあぶないじゃん!」
ケガしたくないし!
「そりゃ炸薬を使ってるからだ。俺が防御した時に爆発したか?ナーナちゃんは鉄片で怪我したか?」
「………してないね」
「まぁそういう問題は対応してある。便宜的に反応装甲と呼んだが、アレは本来斜めに弾く技術だしな。打ち消すというイメージ的には、騒音打ち消しの方が近いか?」
ヤマトーさんはいろんな魔法が使えるみたいだった。
「ねぇ、シャーシャ?」
「………?」
夜。
アタシはシャーシャに話しかけた。
「シャーシャはどう思ってるの?」
「………なにを?」
わたしは、これから言うことにキンチョーしてつばをのんだ。
「ヤマトーさんの、こと………」
「………お兄ちゃん?」
シャーシャがふしぎそうなかおをしてこっちを見た。
ナーナもこっちを見てる。
今、ヤマトーさんは体を洗いに行ってていない。
グララはねてた。
「お兄さんがどうしたのさ、お姉さん?」
ナーナがおもしろそうにわらって聞いてきた。
「ナーナも………ヤマトーさんのこと、どう思ってるの?」
「どうって………」
「ヤマトーさんは………」
「お兄さんは?」
「………お兄ちゃんは?」
「きっと………」
「きっと………?」
「………きっと?」
「アタシのことが好きだと思うんだ」
「………」
「………」
そう。
ヤマトーさんはアタシのことが好きなんだ。
ヤマトーさんになついてる2人にはわるいけど。
「………」
「………」
シャーシャとナーナがかおをあわせてた。
ナーナがあたまの横んとこ、ひとさしゆびでトントンした。
シャーシャはソレ見てうなずいてた。
2人はよくないしょ話をしたり、声を出さないで話をしたりする。
アレ、なんなんだろ?
そう思ってたら、2人の話がおわったみたい。
「オネエサンハ、カワイイデスヨ」
「………ミミカカサンハ、カワイイデスヨ」
「なんなの2人とも………なんかしゃべりかたヘンなんだけど?」
「オネエサンハ、カワイイデスヨ」
「………ミミカカサンハ、カワイイデスヨ」
「それさっき聞いたし!なんなのもー!」
「オネエサンハ、カワイイデスヨ」
「………ミミカカサンハ、カワイイデスヨ」
「だから!ちゃんとしてよ!」
「あぁメンゴメンゴ」
「………ついつい」
「次バカにしたら怒るから!」
まったく!
「まぁ、ヤマトーさんがアタシのこと好きなのがショックだったのはわかるけどねー」
でも許したげる。
だって、アタシ、2人に勝ったんだから!
「お兄さんが、お姉さんのこと、好き?」
「………?」
2人そろって、口んとこに人さしゆびつけて「んー?」ってやってた。
「ふふん!うらやましい?ごめんねぇ!でもヤマトーさんがアタシのこと好きなんだからしょーがないからさ!あきらめてよね!」
「うわ、うぜぇ」
「………チッ」
さっきまでかわいかった2人がアタシのことにらんできた。
「シャーシャちゃん、ボクが水龍でトドメを刺すから弱らせて」
「………ナーナちゃん、わたしがね、シュテルプルヒ・シャッテンをね、使うから、弱らせて」
「シュテルプルヒ・シャッテン?それってどんな魔法なの?」
「………影にね、当たった人がね、死んじゃうの」
「あの魔法かーっ!シャーシャちゃんの最大火力じゃないか!ちゃんと弱らせてよ!」
「………じゃあね、ナーナちゃんのね、水龍ってね、どんなの?」
「えっ?水で作った龍で、相手を包み込んで、溺れ死にさせる魔法だけど?」
「………ナーナちゃんのもね、死ぬ魔法だよね?」
「どっちもトドメをゆずるつもりはないってことか………」
「………2回殺しちゃう?」
「おぉ、さすがシャーシャちゃん天才!」
「ちょっと!?なんか殺すとか聞こえてきたんだけど!」
いくらなんでもだまって聞いてらんないし!
「えっ?いたの、お姉さん?」
「さいしょっからいたし!なんでアタシを殺そうとしたし!」
「うわ、しゃべった!」
「………しゃべった!」
2人でわざとらしくおどろいてるし!
「しゃべるわ!」
「どうしよう、シャーシャちゃん?」
「………どうしよう、ナーナちゃん?」
「殺す?」
「………殺すしかない?」
「殺すしかない」
うんうんうなずく2人。
「殺すしかない、じゃなーい!」
いきなり人殺そうとすんなし!
「だってお姉さんウザかったし」
「………うん」
「だいたい、お兄さんがお姉さんのこと好きって、どういうことなのさ?」
「………うん」
2人ともこまったみたいな、なっとくできないみたいな顔してた。
わっかんないかー。
まぁ2人はこどもだからしかたないかー。
「ふっふーん!アタシはさ!」
「お姉さんは?」
「………?」
「2人と比べたら、1つだけ負けてたとこがあったんだよ!」
「………「1つだけ?」」
「うん、1つだけね」
「………「1つだけ?」」
………なんで1つだけってなんども聞くし!
胸も、2人よりは大きいし、負けてたのは1つだけだし!
「負けてたのは服!」
「………「服?」」
そう!
わたしが2人に負けてたのは服だ!
「だって、2人だけキレイな服着ててずるかったし!」
「………ずるい」
「ねぇ?」
2人は「ふぅー」っていきをはきながら、手の平を上に向けて、首をふってた。
………なんかムカつくな、あのリアクション!
2人の着てた服はキレイだった。
ヤマトーさんの着てた服とおんなじやつで、ちがう色。
まるで光ってるみたいに明るい色だった。
ヤマトーさんは言ってた。
セイケツなのが大事って。
なのにアタシの服のは、3人みたいに光ってなかったし、ちょっとよごれてた。
「でも、もうちがうし!」
シャーシャの服みたいにキレイな白色の服!
お金持ちの人が着るみたいな、ヒラヒラしたやつ!
今まで見たことがないような、ピッカピカの首かざりとかうでわとか!
アタシはもう2人に負けてないし!
「あー、なるほどねぇ」
「………でも?」
「だからって、お兄さんがお姉さんのこと好きってのは………わかんないねぇ?」
2人はわからなかったみたいだ。
「まぁ、あのヤマトーさんを見たことがないんだししかたないか!」
「お兄さん?」
「………お兄ちゃんがね、どうかしたの?」
ヤマトーさんの名前が出ると、こっちを見る2人!
「ヤマトーさんってさ?」
「………「うん」」
「いつもつまんなそうな顔してんじゃん?」
「あー………話してるとそうでもないけど?」
「………うん」
………2人と話してるときだけはよくわらうんだよなぁ、ヤマトーさんって。
でも、ちがう!
「アタシと話すときもなの!」
「………「んー?」」
「ヤマトーさん!アタシを見て!2人みたいに!アタシに笑ってくれるようになったの!」
この服を着てから、ヤマトーさんのリアクションが変わったし!
シャーシャとナーナは信じられないって顔してた!
ふっふーん!でも、ホントだし!
「ヤマトーさんったら、この服になってから、恥ずかしそうに目をそらしたりして、話すときにはやさしく笑ってくれるようになったし!」
あんなヤマトーさんはじめて見たし!
いつもだったら、腕組みして、つまらない顔して話す!
なのにこの服になってからぜんぜんちがうし!
アタシを見たら、顔を赤くして目をそらすし!
なんかもじもじして、いつもとちがってハッキリしないし!
やっとこっちを見ると、目を細くして、こどもの相手をしてるときみたいににっこり笑うし!
最初はなんなのかわからなかったけどわかった!
アレ照れてるんだ!
アタシがセーケツな服を着たから!
「だからヤマトーさんはアタシが好きなの!2人にはわるいけど!」
服がいっしょになったら、アタシはこどもの2人なんかに負けないんだ!
「「………」」
シャーシャとナーナがかおをあわせてた。
ナーナがあたまの横んとこ、ひとさしゆびでトントンした。
シャーシャはソレ見てうなずいてた。
「オネエサンハ、カワイイデスヨ」
「………ミミカカサンハ、カワイイデスヨ」
「だからそれやめてって言ってるし!」
17/11/25 投稿