日本男子、試練に遭う
R-15 残酷な表現有り
俺は今、日本国憲法第25条1項を思い出していた。
俺はムムカカ村から一路、地方領主の治める町へと歩みを進めていた。
情報は人が多いところに集まるだろうと思ったので、居心地の良い村を抜けてきたのだ。
1人で何もない草原を歩いてると色々思う事がある。能動的に思ったというよりは、次々止めどなく色んな考えが浮かんできたというべきか。
例えばラーメンが食いたいなぁ、とか。
細かい味の機微とかわからないからこってりしたのが好きだ。
ちなみにラーメンは日本食だという他無い。中国料理の拉麺とは似ても似つかない、完全に日本にローカライズされた料理なんだそうだ。
っていうか背嚢の復元機能を知ってればもっと色んな食料を持ってきたのに!
和菓子が食べたい!最中とかお饅頭とか大福とか団子とか羊羹とか!
もっと俗っぽくジュース類とかアイス類とかも、食べられないと思うと無性に恋しい!コーラ?あぁ、あの浅ましい飲み物か。あんなの日常的に飲んでる国民がいる国は、笑いながら無辜の民を空襲して殺す様な人間のクズがいっぱいに違いない。
ちなみにこちらの気温は、日本の秋ぐらいの過ごしやすい気温なのでアイスにそこまで渇望はしてない。そもそも俺は何かに執着するという事があまりない性質な人だ。
例えばモンスターとか出ないなぁ、とか。
ロールプレイングゲームだとちょっと歩いたら敵が出てくるけど、そういう気配はない。まぁ生物を襲うようなのは普通、何もない草原にはいないか。でもゲームだと凶暴なモンスターがその辺にいたりするよなぁ。どういう生態系なんだろう?
ちなみに俺が1番不思議に思っているのはポイズンドラゴンとかそういう毒を持った大型生物の存在だ。
毒って普通は常に外敵に襲われるような弱い生き物が持つ特性だと思う。例えばライオンが毒を持ってたとしても、そもそもライオンを襲う様な生き物がいないと思うし、毒を持つ意味が無い。
どこの誰が好き好んで馬鹿でかいドラゴンなんか襲うんだろう?ドラゴンもそんな図体をしてるなら毒なんか使わなくても戦える筈だ。
例えばミミカカちゃんどうしてるかなぁ、とか。
あんな真面目な子が、あんな良い子が、あんな可愛い子が、首を縦に振ればお嫁さんに貰える一世一代の大チャンスだった。それに見た目はギャルっぽいのに中身は天使っていうの、あっしの大好物でげす、げへへへ。
だけど誇りある日本国民である為の努力を放棄して女にうつつを抜かす様だったら、俺自身が俺を許せない。
ミミカカちゃんの事はちょっと勿体無いなぁぐらいで済ませられるけど、日本国民である事を手放すのは俺の存在意義全てを消失させる自殺にも等しい行為だ。
例えばこの世界はどうなってるのかなぁ、とか。
何の事かと言えばこの世界も地動説で球体をした惑星なんだろうかという事だ。
俺は残念ながらそれらの事実を観測する方法なんて知らない。なんせそれを知ってたところで何かの役に立つと思えなかったし。
日本では学校の授業内容が実証できるぐらいで、異世界に至っては異端審問で火炙りにされるのが関の山だろう。
ミミカカちゃんにそれとなくこの世界はどうなってるのか聞いてみたらよかったか?でも村の人達はみんな俺の事を尊敬した感じだったから体面上非常に聞きにくかった。見栄っ張り!
まぁ地動説なのかわからなくてもなんら困らないからいいんだが。
ちなみに一応言っておこう。
旅の途中で雉を撃ちに行く事もした。まぁ要するにお手洗いだ。
俺がトイレになんて行かないと思ってる人がいれば悪いが催すものは仕方がない。だってオラは人間だから。
シャベルを突き立て穴を掘ってそこに用を足して埋める、そんな事を最初は考えた。
しかし俺には背嚢の復元機能があるのを思い出す。
空のビニール袋を登録して、その中にいたした後復元すれば、ポッケナイナイされるのではないかと思ったのだ。初日に食べた携帯食料のゴミで試してみた結果、始末に困ったゴミは見事に消えた。
本番でも見事成功して、今では草原のど真ん中で開放的に雉を撃ちに行ってる。
なんで物陰に隠れてやらないのかと指摘されるかもしれないが、それは野生動物との遭遇が恐いからだ。
木陰とかでお尻を丸出しにすると、物陰に隠れていた毒蛇にガブリとやられる可能性もある。
羞恥心と安全性はトレードオフなのだ。割り切りが大事。
俺の雉撃ちの思い出はどうでもいいとして、町へ歩く道すがらトラブルに出くわした。
見晴らしのいい町道で馬車が立ち往生しているのが見えたのだ。周りに人が立っているのが見える。
進行方向にあるので近づいていったが馬車の周りでは戦闘が発生してるらしい。
やがて風に乗って怒声が聞こえるようになってきたが、この距離ではどういう状況なのかわからない。
馬車が野盗に襲われてるのかもしれないし、犯罪を犯した貴族が逃げようとして捕まってるのかもしれない。
どちらに助太刀するかというより、そもそも介入すべきかわからない。
ムムカカ村が襲われた時は走っていった癖にと思われるかもしれないが言い訳をさせて欲しい。
あの時は鐘の音のしていたのだ。
それがどうしたと思うかもしれないが断続的に鳴り響く「カーンカーンカーンカーン」という音は聞いてるとかなり焦燥感を煽る。
あと異世界の地に立った直後という事もあって緊張してて、冷静に考える余裕がなかったのも大きい。なんか「自分がやらなきゃ!」という感じがすごくしたのだ。
それと人対犬の構図だったのも介入しようとした理由として大きい。
でも今はどうだろう。赤の他人の争い事。
例えばお隣さんが夫婦喧嘩してて止めに入る勇気とかあるだろうか?
喧嘩してる中に入りたくないし、他人の事情に首を突っ込むのも嫌だ。
というわけで今回、積極的介入の意思はない。のんびり歩いてる。
だが、現場に近づいていく俺に気付いた奴が2人程こっちにまで走ってきた。
状況に巻き込まれた!面倒くさい!
向こうは明らかにこっちを認識してるが声をかけてくる事もない。ただ武器を構えて近寄ってきた。
その行為、宣戦布告とみなす!
だって言い分があるならまず言うだろ?言い分がないやつには正義がない。敵だと認定。
ところで俺は人を殺せるんだろうか?今回戦う相手は人だ。
よく物語で「不殺」を謳う人物が出てくるけど、相当な実力差がないと無理だよね。
特に相手に外傷を負わせないってすごい戦い方だと思う。
よくある首をビスッてやって気絶させるチョップ、実際にやろうと思うととんでもない技術だとわかる。
実はあの技の原理は後ろから首を締めて落とす、所謂スリーパーホールドと同じなのだ。
両方共、頸動脈をせき止めて意識を奪う技で、違いは腕でギューっとやるか、チョップ1発でやるかだけ。
チョップ1発で動脈の血流を止めるには相当正確で、尚且つ超強力な1発を打ち込む必要がある。
創作物だと片手間で簡単にやるけど、あんなの気軽にやれるか!
しかも脳に流れる血液止めるから後遺症の心配がある。更には単純に首に凄まじい打撃を叩き込む訳だから頚椎のダメージが深刻。
カッコつけてビスってやったけど、そのまま帰らぬ人となりましたとかもあり得る。
剣の刃じゃなく背や腹で叩く、所謂峰打ちの要領で剣を鈍器として使っても、鉄パイプで相手の頭をかち割るのと変わらないだろうし。
まぁ不殺を「攻撃を直接の死因としない」と定義するならできることは極端に増えるけど。
例えば相手の手足を全部切り落とすとかすりゃいい訳だ。まぁそんなことしたらショック死か失血死で結局死ぬとは思うけど。
というわけで状況を落ち着いて整理しよう。
・目の前から害意を持った人が凶器を手に迫っている
・俺に相手を無力化できるような力量はない
・俺は何も悪い事をしておらずこいつらに害される義理はない
やっぱりどう考えても相手が死んでも構わないから迎撃するしかない。
まぁ思ったほど躊躇はなかったりする。
殺す事を主眼には置いてないが、結果として相手が死ぬのは仕方ないと割り切れる。神誉さんは極端に現実主義者なのだ。
俺は両脇に下げたマチェットを抜いて両手に1本ずつ持った。二刀流である。
右手の切先を向かってくる人間に向け、そのままいつもの「神誉セレクション(略)」から口上を述べる。
「天に代わりて不義を討つ!!」
1,出来る限り一息に言い切りましょう。1回ぐらいなら区切っても大丈夫ですが、長過ぎる言葉は勢いがなくなるので避けましょう。
2.出来れば主張の中に自分の正当性を混ぜましょう。尚、自分の正当性自体に正当性がなくても大丈夫。あくまで自分が正しいと主張するのが大事です。精神攻撃は基本です。
3.疑いを持たず自信を持って宣言しましょう。
4.恥ずかしがらずに大声で言いましょう。
誰でも得体の知れないものは怖がるし、警戒するのが普通だ。
少なくとも俺なら夜道を歩いてて、刃物を持った人物が突然さっきの台詞を言ってきたら最高レベルの警戒をする。
男達も訳の分からない俺に警戒を見せる。
その戸惑いが欲しかった!
剣技に優れるわけでも荒事が得意な訳でもない俺は、五分の状況から争いがスタートするとそれが既に不利なのだ。
まぁ大和魂満ち充ちる日本の勇ましい工業製品の数々が俺にはあるので実際には超有利な訳だが。
相手は薄汚れた服に鈍い輝きを放つナイフを持っただけの男が2人。その程度の戦力では光輝溢れる日本の工業製品は揺るがない!
防がれてもいいのでとりあえず挟み込むように両手のマチェットを同時に振るう!
よく創作物だと二刀流の剣士が出てくるけど、こういう攻撃は普通できない。
普通の二刀流は片方を攻撃に、もう片方を防御を主として補助的に使うものだ。
両手で攻撃しようとなると、殆ど腕の力だけで攻撃する必要がある。
斬り下ろしや突きならまだ踏み込みを加えられるが、水平方向の斬撃だと本当に手打ちの攻撃になる。我等人の子が最初に覚える必殺技「ぐるぐるパンチ」みたいなもんだ。
まぁ鉄の塊を打ち付けるので痛みはあると思うが、鎧などの防御があればほぼ無効化できる程度の衝撃を生む効果しかないだろう。
普通なら。
「うあああああああああっ!!」
攻撃を受けた男が悲鳴を上げる。
なんせ俺のマチェットは普通じゃない。石の塊を粉砕し、あまつさえ切断してみせる、国産のマチェットなのだ。
生身の人間相手なら片手で振るおうと十分威力を発揮できる。
斬られた男は哀れ、両方の上腕を深く斬り込み骨を折って手にした剣を落とした。ただ挟み込むように打ち込んだのでその程度で済んだが、斬るつもりで振るったのなら抵抗なく切り飛ばせていたに違いない。
技術大国日本が誇る高品質の工業製品にはここまでの威力があるのだ。
悲鳴を上げてる男の腹目掛けて思いっ切り蹴りを叩き込む!なんせ両腕は上腕から叩き折ったので、まともに防御する手段はあるまい。
「ごっ!」
くぐもった声を喉から絞り出して倒れる。成人男性の全力の蹴りを防御もできずに腹に受けたら、余程腹筋に自信がない限り耐えられないよねぇ。
一瞬で仲間を無力化されて狼狽するもう1人も全く同じ目に合わせる。
蹴りを受けて崩れ落ちるようにして倒れていた彼らの足の腱目掛けて、手にしたマチェットを思いっ切り振り下ろす。
「がっ………」
骨まで食い込む程深く斬った。首を跳ねたり心臓を刺したりまではしない。でも戦闘力は容赦なく奪う。彼らが取り落としたナイフは遠くに適当に蹴り飛ば………そうとして思い止まる。
ここまでやったけど這ってでもナイフの元に行って、口に咥えてやぶれかぶれで倒れこんだりしてきたら困る。
ナイフ自体をどうにかしたい。
そう思った俺は地面にマチェットを振り下ろして、そのままナイフを折り砕いた。
金属製というだけの柔なナイフ如き、侍の国である日本の大和魂が宿るマチェットには木片も同然だ。
無力化した男達をその場に残して足早に馬車の方に向かう。
武器を収めて近寄って来て、声を掛けて来たならこんな対応しなかったのに。この距離まで声も掛けずに武器を構えたまま近寄って来たら倒すしかない。
俺は後手に回った劣勢を覆せるような達人じゃないのだ。
もし彼らに事情があったんだとしても、それを俺に伝える努力をしなかった時点で、彼らの落ち度であり怠慢でしかないんだ。
なんで俺が自責の念になんか駆られなきゃいけないんだと思う。心の中で誰に言ってるのかわからない言い訳みたいな事を言い出す自分にイライラする。
2人の人間を殺さないまでも傷つけて、心がささくれだって荒ぶっているのが自分でもわかる。
なのに。
なのに、なんで機嫌の悪い俺に近寄ってくるんだ、このバカは!
さっきの2人と違って革製の胸を覆う鎧を着てたので、様子見をしていたのが仇となった。
コイツも剣を両手で振り被って斬り下ろそうとしてきた。
「でやああ「悪鬼羅刹と成りて討ち滅してくれるっ!!」」
相手の怒号を打ち破る様に宣言して、俺は無造作に手のマチェットを腹に向けて突き出す!
「振り被って」「斬り下ろす」のと、その場から「突き出す」では動作の数と長さが違う。
石の塊をも砕く衝撃力を持つ鋭い切先は、相手の腹の中に吸い込まれる様に深く突き刺さった。
呻く相手の腹からマチェットを抜いて、そのまま逆のマチェットで薙ぎ払って倒す。肘の上辺りの骨をへし折ったようだ。
黒く濁った血が吹き出すのを見る。手元のマチェットも同じ色の血がべったりと付いている。
相手の腹を破った切先が背骨にまで届いたズンッという感覚が右手に残っている。
相手が倒れても抵抗しようとしたので、蹴りやすい高さにあった相手の顔面を思いっ切り蹴っ飛ばす。
痛みに呻く相手の無事な方の腕を叩き折る。
足の腱を切ろうとするとまだ暴れようとしたので、徹底的に踏み付ける。
両腕が折れて抵抗もできない相手を何度も踏み付ける。
動かなくなる様に何度も何度も踏みつける。
夢中になって何度も何度も何度も踏み付ける。
何度も!何度も何度も!何度も何度も何度も!
全てを忘れたくて何度だって踏み付けた。
腹を突き刺した感触を。
噴き出る黒い血を。
まだ抵抗しようとする相手を。
八つ当たりをする様に何度も。
気付いたら頬を熱いものが流れていた。
過呼吸気味に浅く何度も息をしていた。
相手の革鎧は弾け飛び、全身がズタボロになっていた。
何度も踏み付けたせいで顔からも血を吹き出していた。
もうとっくに死んでいた。
それでも忘れられなかった。
こうして降って湧いた初めての対人戦闘は終わった。
疲れた頭で血塗れのマチェットを背嚢で復元しなければと思った!
安全靴も着ていた服も全部復元した!
手に残った感触を洗い流すように何度も手を洗った!
手袋をしていてよかったと思った!
長袖の服を着ていてよかったと思った!
もし自分の体にあの黒い血が直接付いていたら、とても洗い流せる気がしなかった!
必死に自分の体から殺人の痕跡を消そうと努力した!
殺す前よりも殺した後の方が相手を怖いと思った!
怖くてたまらなくて、何かに縋り付きたくなった!
「そうだっ!」
なんで俺は気付かなかった!
急いで背嚢から綺麗に折り畳んだ国旗と音楽プレイヤーと写真がプリントされた紙を取り出す!
輝かしい日の丸の旗が震える俺の肩を抱いてくれていた!
誇らしい君が代の旋律が怯える俺を励ましてくれていた!
天皇陛下のご尊顔が震える矮小な俺をお見守りあそばれていた!
さっきまで怖くてたまらなかった心はもう愛する日本に満たされていた!
俺は一体何に怯えていたんだろう。
こんなに頼りになる日本が傍に居てくれるというのに。
状況把握に努めてみると、どうやら今回のトラブルは野盗団が奴隷商の馬車を襲ったのに巻き込まれたらしい。
野党団がほぼ全滅の様相である事から、場当たり的に道を行く馬車を襲っておいてほぼ刺し違える形になったのを俺が止めを刺したという感じらしい。
弓矢で馬を止めようとするも中々その脚を止める事が出来ず、しかし馬車も野盗を引き離す事が出来ず。
馬車の動きが鈍る頃には弓矢も撃ち尽くして乱戦にもつれ込んだが、野党団は当初の襲撃計画が瓦解した事で足並みが乱れ、装備の質に勝る護衛に各個撃破された、と。
ただし護衛も次々襲いかかる野盗に疲弊して撃破され、最終的には俺が倒した3人の野盗しか残らなかった………と言った感じだろう。
なんで野盗は襲撃失敗の時点で撤退しなかったんだろう?
討伐隊を送られたりしては面倒だから、襲った相手は必ず殺すとか?
まぁどういう考えがあったのかは今となってはわからないが。
死体の中には馬車を引いてたであろう馬と、奴隷商や主人らしき身分の人間が見当たらなかったので、逃げ出したんだと思われる。
多くの奴隷は殺されてたので目的は金目の物と生き残った奴隷だろう。
そう。生き残りがいたのである。たった1人だが。
粗末な服を着せられて、細い首と手足に枷を嵌められて怯えた表情で俺を見上げる少女が1人。
ところで日本国憲法第25条1項をご存知だろうか?
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」
と記されている。
麗しの祖国こと日本は社会福祉・社会保障・衛生の向上を推進する義務を持つのである。
この義務を果たし、華々しい日本は世界を牽引する先進国となったのだ。
さて、国の実態とはなんだろう?
実際の領土・領海・領空の事だろうか?
では土地なり海なり空が義務を持っているのだろうか?土地が社会福祉に努めてくれるのだろうか?
勿論そんな馬鹿な事は無い。
国の実態とは我等日本国民1人1人の事だ。
もし日本という国から日本国民が消え、違う国の人間達が治める様になったとしたら、そこはもう日本ではないだろう。国を形作るのは人なのだ。
また、日本国民の義務の1つに教育がある。
末席を汚す者であろうと俺は誇り高く歴史ある日本の国民だ。
つまり俺にはこの少女の身柄を保護して教育を施す義務がある!
目指すのはかつての、トルコ共和国のエルトゥールル号の遭難者と和歌山県の串本町の人達の様な。
或いは、パラオ共和国の国民と日本の統治者の様な。
今日に至るまで彼らが友誼を忘れずにいてくれている様な。
そんな徹底した保護だ。
この少女にも少しでも日本という、史上類を見ない偉大な国家の良さを知ってほしい。
もし彼女が危険な目に遭うなら、ペリリュー島で戦った帝国軍人のように身を呈して彼女の安全を保護するのだ。
そしてイラクに派遣された世界に誇る自衛隊の様に支援をしつつも自主独立を助けるのだ。
ところで有事に備えいつでも鍛錬を怠らない精鋭無比なる自衛隊の方々のご活躍が、報道で全然知らされる事がないのはなんでだろう?こんなに俺と報道で意識の差があるとは思わなかった…!これじゃ、俺…報道を見たくなくなっちまうよ…。
こうして心の霧を濃くしつつ、神誉さんは奴隷の少女を「自国民」として保護する事に決めたのだ。
16/07/09 投稿
16/08/01 文章を微修正
16/09/18 文章を微修正