グララ、日本男子に施される
我こそはグララ・グラーバだ!
我等は今、ダンジョンに向かっておる!
どうもヤマトー殿の旅の目的は、ダンジョン制覇にある様なのだ!
武名を高めるつもりなのだろうか?
確かにヤマトー殿の強さなら、それも思いのままに違いないのだ!
しかし旅というものは堪えるのだ!
貴族ならば旅に馬車は必須!
だというのに貴族である筈のヤマトー殿は馬車を持っておらぬ!
「ん?空を飛べて、望んだままの物品を召喚できる俺が、何で馬車なんぞ必要とすると思ったんだ?」
と、言っておった!なるほどな!不要な物を持っておらんのは道理なのだ!
尤もそのせいで我は毎日毎日、息も絶え絶えとなって、泥の様に眠る毎日なのだ!
最近は朦朧とした意識で見上げた黄色い太陽しか記憶に残っておらんのだ!
ここのところ我は走る以外に何かしておったのだろうか?
「んー………?」
ヤマトー殿が顎に手を当て、何やら唸っておった!
何やら我の足元を見ておる様なのだ!
急に占いを始める等、ヤマトー殿の行動に予想は付かぬ!
あの時のカードも、薄くツルツルした見た事もない物だったのだ!
「どうしたのさ、お兄さん?」
それを見たナーナ殿が声を掛けおった!
ヤマトー殿に話し掛けるのは、専らナーナ殿の仕事なのだ!
「もしかしてお兄さん、足フェチなの?女性のあんよに並々ならぬ興味を抱いてるの?」
「あー、それほどその属性はねぇなぁ………でも、足の裏は好きかもしれん」
あ、足の裏だと?
そんなもの、何がいいのだ?
「足の裏って………太ももとか足のラインとか言われるより、よっぽど業が深そうなんだけどさ?その………まさか、舐めたいとか?」
「そういうのは全然ねぇなぁ。別に堪らなく好きだ、足先だけ切り取ってコレクションしたいって訳じゃねぇぞ?」
「当たり前だよ!発想が猟奇的過ぎるよ!………で、なんで魔法使いのお姉さんの足を見て唸ってたの?お姉さんの足は特別汚いとか?」
失礼な!
「むしろ時代的に考えたら、普通より綺麗な方なんじゃないかねぇ?」
今度はミミカカ殿の足を見ておった!
「サンダルを履いて、長く歩いてると、足の皮が捲れて、どんどん分厚くなるだろうし。その点言って、出不精だったグララの足は、状態がいいんじゃなかろうか?」
「そうかもしれないねぇ………何事も例外はあるけど」
そういうと2人して妹殿の足を見おった!
この前、ナーナ殿が巫山戯て、妹殿の足の裏をくすぐっておった!
どうもナーナ殿が言うには、妹殿の足の裏は柔らかいらしい!
「いや、足の裏はどうでもいいんだよ。問題はサンダルの方だ」
「サンダル?お兄さん、使用済みのサンダルを収集する趣味があるの?」
「なんでもかんでもブルセラ方向に持っていくな腐れロリビッチ」
ブルセラとはなんぞ?
「よく考えなくとも、わざわざサンダルなんて作らなくても、既製品の靴を召喚すればよかったなぁと思ってな」
「うん、道理だね」
「だよなぁ」
靴と言えば動物の革を用いたものだ!
上流階級の者であれば、オーダーメイドでその者に合った一品物を作る!
しかし中流階級以下であれば、そうは行かぬ!
自分に合った物なぞわざわざ作れぬ以上、中古品を無理矢理に履く事になる!
ちなみに革を何枚も重ねて作るものであり、履き心地はすこぶる悪いのだ!
「また皮が捲れたりしても嫌だしな。靴を用意してみようか。というか何よりシャーシャちゃんの靴の事もあるしな」
また妹殿の足を見る!
麻紐のサンダルとは違って、不思議な光沢のある板を結び付けた物なのだ!
おかしな模様が描かれておる、よくわからぬ物だ!
「どうも、魔法で素材が強化されたらしくて、1度も壊れなかったんだけど、まともな靴が用意できるならそっちの方がいいだろう」
「それならさ、服も変えない?」
「あー、そうだな………着替えは有った方がいいだろうし」
という訳で我等の新たな服が用意される事となったのだ!
「はい、今週もこの時間がやって参りました!張り切って行って参りましょう!」
「せーの!」
「「飛び出せ!オシャンティー大作戦ー!!」」
何やらよくわからぬ事を言っておる2人!
「………うぇーい」
パチパチパチ!
それを見て妹殿が拍手をしておるのだ!
「うぇーい?」
「うぇーい、なのだ!」
とりあえず真似をする我等!
「町行く貴方の輝くオシャレさ!それがオシャンティー!」
「今日こそ久々に出るか?目指せ、オシャンゴッド大賞の座!」
オシャンゴッドとはなんぞ?
聞いた事のない神なのだ!
「はたまたオシャンマゴットになってしまうのか?」
「オシャンマゴットって………それ、平たく言うと『お洒落蛆虫』だな?」
「横文字にすると印象が緩和されるっていう叙述トリックだね」
「違う、叙述トリック違う!」
叙述トリックとはなんぞ?
どうも聞いた事のない言葉ばかりなのだ!
「見事!オシャンゴッド大賞の座に輝いた貴方には!」
「貴方には?」
「オシャンの女神がほくそ笑むんじゃない?」
「なんで賞品とかじゃなく、そんな残念な感じなんだよ………」
ぬー!
よく分からぬのだ!
オシャンの女神とはなんぞ?
そやつにほくそ笑まれるというのはどういう事なのだ?
「千里の道もオシャンから!司会はお馴染みウルトラスタイリストのNA-NAとー?」
「この門をくぐる者は一切のオシャンを捨てよ!解説のスーパーコーディネーターのYAMATOです」
「スーパーコーディネーターのYAMATOって………また無意味に危ない橋を渡ったね」
「気にするな!虎穴に入らずんばオシャンを得ずという奴だ、それぐらいはやるだろう」
むぅ!全く訳が分からぬのだ!
「じゃあ番組開始前に、なんと!皆知ってるあの方から、お祝いの言葉を頂いてるから紹介するよ」
「ほう、何処のどちら様がなんて言ってんだ?」
「オシャン高原に住んでるクソダサゴリラの、スケベー・スケコマシーニさんから『勝手にやってくれ』ってさ」
「何処から突っ込めばいいのかわかんねぇ………」
ヤマトー殿が眉間を抑えて、俯きおったのだ!
「それでは、今週のオシャンチルドレンの皆さんを紹介していくよー!エントリーナンバー1番!」
「へ、アタシ?」
ミミカカ殿が突然指さされて、自分の顔を指差しておった。
「『私がオシャンに目覚めていなければ、オシャン界の今後300年は停滞の歴史となっていただろう』のセリフでお馴染みのファンキーファッキンファッションリーダー、ミミカカさんです」
「ファンキーファッキンファッション?」
紹介された様だが、意味がよくわからぬのだ!
「続いてエントリーナンバー2番!『今のはオシャンではない!我の普段着だ!』のセリフでお馴染みのマキシマムマッドネスマーダーレディ、グララさんです」
「マキシマムマッドネスマーダー?」
我の事らしいが、やはりよくわからぬのだ!
「うん、最早オシャン全く関係ないな」
ヤマトー殿だけはウンウン頷いておるのだ!
「そして皆が待ってたエントリーナンバー3番!『ちょっとはにかんだだけでなんか世界が平和になった』ことでお馴染みのロードオブロイヤルロリータ、シャーシャちゃんだー!」
「シャーシャちゃーん!!」
「………?」
紹介と同時に両手を口に当てて名前を呼ぶヤマトー殿!
それを見返して、ゆっくり手を振る妹殿!
「流石優勝候補筆頭!立ち振舞から余裕が感じられるね!」
「あまりのオシャンぶりに、他の参加者が戦慄しているな!」
「じゃあ本日も張り切って~?」
ナーナ殿がグッと溜めを作りおった!
「オシャンシャンシャンオシャンティー!」
「………」
1人手を振り上げるナーナ殿!
黙りこくっておるヤマトー殿!
「ちょっとお兄さん!なんでボク1人にやらせるのさ!恥ずかしいじゃん!」
ヤマトー殿に詰め寄って胸をポカポカ叩くナーナ殿!
「事前の打ち合わせ無しにあんなんできるかアホ!一応事前に言ってくれてたら俺だってちゃんと付き合ってやってたわボケ!」
「ホント?嘘ついてない?」
「ホントホント、先っちょだけ、先っちょだけだから」
「うーむ、その先っちょだけって言葉を信じた!じゃ、もっかい行くよ?じゃあ本日も張り切って~?」
ナーナ殿がグッと溜めを作りおった!
「オシャンシャンシャンオシャンティー!」
「………」
1人手を振り上げるナーナ殿!
黙りこくっておるヤマトー殿!
「お兄さんてめぇ!ケツ叩きまくってミツバチか、クソもらしてこんもりしてる人のようにしてやる!」
「ふざけんなバカ!一本拳でケツ叩こうとする奴があるか!」
「お兄さんの先っちょだけって言葉を信じたボクの純血を返せ!」
「人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ!っていうか純血って血に混ざり気がない事じゃねぇか!純情って言えし!」
「ボクの純真無垢な乙女心を踏みにじった報いだよ!」
「なんか俺鬼畜野郎みてぇじゃねぇかその言い草!許せよオシャンシャンシャンオシャンティー!」
「うるせぇ!今更言うんじゃないよ!ボク恥ずかしくって穴があったらお兄さんを埋めたい!」
「怖ぇよ!未だかつて埋めるなんて脅し文句耳にした事ねぇよ!この猟奇犯罪ロリータ!」
「こっちこそ猟奇犯罪ロリータなんて、凄まじく反社会的な名前で呼ばれたのは初めてだ!」
「こうなったら!」
「「来週の放送でベルトを掛けたタイトルマッチだ!ペイパビュ!」」
ひとしきり言って満足したのか、お互い頷き合って握手しておった!
なんなのだ!
「じゃあ早速みんなのオシャンぶりを見せてもらおうかな?」
「はい、という訳で俺が色んなジャンルの服を召喚しておいたぞ」
ヤマトー殿がそういうと、周りに色とりどりの布が重なっておった!
これが全部服だというのか!
「色んなジャンルってどんなのがあるのかな?」
「いわゆるギャル服とか、お姉系のフェミニンなやつとか、普通にガーリー系とかシンプル系なやつとか、スポカジ、パンキッシュ、ブリティッシュ、ゴスロリ、甘ロリ、サイケ、レトロ、エスニック、オリエンタル等、とにかく思いつく限りだ」
「お兄さんってホンット気持ち悪いよね、ちょっと引く」
「この言い草!だから俺は女性向けファッションブランドを立ち上げるゲームが好きだったんだって」
「なんでそのゲームやろうと思ったのさ!ボクも多分知ってるけど、アレ、基本的に女児向けのゲームでしょ?」
「いや、結構老若男女を問わずにやられてると思うけど。ネトゲでゲームよりも、キャラ作成してる時間の方が楽しいとか、カスタマイズできるロボットのゲームとかが好きな、俺みたいな奴が普通にハマる」
「むぅ………まぁいいや、そんなお兄さんが服の見本を大量に召喚してくれたから、気に入った奴を選んでね?サイズとか色違いは、言ってくれたらボクとお兄さんが召喚するからさ。着替えは専用のテントを設置してるから、その中でやってね。それで好きな服を組み合わせて、1番オシャンティーな人がオシャンゴッド」
「1番オシャンレスな奴がオシャンマゴットな訳だな」
「オシャンの女神が微笑むのは誰になのか!」
「お手並み拝見といこうかな」
よくわからんかったが………要は好きな服を着て良いという事か?
ふむ?
試しに手近にあった布を手にとってみたのだ!
「………」
「………」
「………」
我等は皆、同じように固まっておったのだ!
………これはそもそもなんなのだ?
「んー、魔法使いのお姉さんが、チューブトップを手にとって固まってますね。どう見ますか、解説のヤマトーさん?」
「えー、アレはおそらく、チューブトップが何処に身につける服なのか、わからないんじゃないかと思われますね」
「あー、なるほど」
「アイテム・色の組み合わせ以前に、正しく着られるかどうかも勝負のポイントとなりますね」
「これは立ち上がりから不安が募りますね」
「まぁ面白いんで見ていましょう」
「もしかしたら奇跡の着こなしが見れるかもしれないしね」
「お、早速動きがありま………ブフッ!」
「ちょ、お兄さん、笑っちゃブハハハハハハハ!」
盛大に笑いだしたヤマトー殿達!
しかし2人が何故笑っておるのか、サッパリわからぬのだ!
どうも2人は以前から、2人にしか分からぬ事で笑う事がよくあったのだ!
「あのー、コレ、足にはくやつ、ですよね?」
「あー、うん、そうだな。靴下という」
「アタシが履ける大きさのやつ、ありますか?」
「わかった、一応色の指定はあるか?」
「真っ白がいいです!」
「そうか………ほら、これだ」
そんな2人の元へミミカカ殿が白い小さなのを持っていって、自分にあった大きさのものを出してもらっておったのだ!
ヤマトー殿からそれを受け取ったミミカカ殿は、その場でそれを履いて、また服選びに戻っていったのだ!
「いやー」
「いやー」
「「辛かった………」」
「笑っちゃダメな場面って、なんであんなに面白いんだろうね?」
「不謹慎は蜜の味っていうか、お葬式とか無性に笑いたくなる時あるよなぁ………俺だけ?」
「本当に不謹慎だけど、お兄さんだけって事はないんじゃないかな?」
「そうか。しかし、真顔であんなアイテム持ってくるとか、拷問かと思ったぞ」
「うん、アレはないよね………」
「シャーシャちゃんが選ぶ事を想定して用意しておいた、ロリータ御用達の白いフリルソックスを、まさかミミカカが選ぶとはな」
「うん。あんなの履いてるの、ロリモノのAV女優でしか見た事ないよね」
「ブフッ!痛々しさが浮き彫りになるからやめろよ!」
「しかも靴履いてないし、服は元のまま民族的なボヘミアン調で、ミスマッチ感凄いよ」
「エッヒヒヒヒヒヒヒ!や、やめろし!あらゆるところで完璧なんだから、どこ切り取っても面白いに決まってんだろ!こんなん!」
「っていうお兄さん!」
「ん、どうした?」
「お姉さん見て!」
「ん?………ブッ!」
「死ぬ!死ぬ!死ぬ!お兄さんボク死んじゃうよ!」
「ちょ、ダメだ!俺も死ぬ!こんなん保つ訳ねぇよ!」
「これの白いやつあります?」
「あ、あぁ、これの白だな」
「はい」
「うむ…………これだ」
「はい!」
またもや白い服を持っていったミミカカ殿!
ミミカカ殿は、フリフリが付いた白いものを選んでおるのか?
前にサンダルの紐も白を選んでおったしな!
「いやー」
「いやー」
「凄かったね」
「凄かったなぁ」
「番組が終了する時間には、超戦士が出来上がるね」
「グッ、やめなさい!」
「いやー、お姉さんってば、焼けた肌と脱色したみたいな髪に似合わず、思いっきり少女趣味だねぇ」
「アイツの見てるアイテムの傾向からいって、出来上がりは思いっきり白ロリになるぞ、コレ」
「いやぁ、勇気あるよね。ボク絶対できないよ」
「まぁ………ミミカカは容姿が優れてる方だし、先入観なしで見たらまだ………」
「ボクあの靴下見ただけで笑うよ」
「ブフッ!ゲヒハハハハハハハハハ!ダメだ!俺死ぬ!俺死ぬ!」
「っていうか、あのファッションで弓構えるのかな」
「アッヒヒヒヒヒヒヒ!白ロリアマゾネスかよ!ヤバイわ!そんなビジュアルの絵、俺見た事ねぇわ!アヒヒヒヒヒヒヒ!」
むー!
我はどんな服を選ぶとするかな!
17/10/14 投降・誤字の修正