日本男子、また占ってみる
俺は今、仮説に思いを馳せていた。
さぁ引き続いてタロット占いだ。
やっぱ魔法がある以上、占いにもこじつけ以上の意味があるのかねぇ?
アーパーラリパッパノータリンクソビッチこと、ミミカカの占い結果はそれだけ納得行くものだった。
俺はミミカカの事が嫌いだ。
すごく嫌いだ。
許せないと言っていい。
何故かって?
あいつは俺を裏切ったからだ。
村の子供を助ける為、単身で化物の前に躍り出た。
精霊を見る目を持ち。
素晴らしい弓の腕を持つ。
光と永久に頂く尊い天皇陛下の御威光を知った。
日本国民になりたいと自ら言い出した。
それがどうだ?
この体たらく。
あいつは何をしていた?
誰より進歩が見られない。
村から出る前と後で、能力がほぼ変わっていない。
僅かな魔法が使えるようになったばかり。
その魔法も人の模倣に尽き、なんらミミカカである必然性がない。
そればかりか、いるだけで害悪ですらある。
自分より遥かに優れたシャーシャを見下し。
俺達の横で何もせず時間を無為にするだけ。
人が真面目にやってる横でサボってやがる。
意欲と集中力を削がれる事甚だしい振る舞い。
何なんだコイツは?
お姫様なのか?
特権階級なのか?
………ふざけるなよアーパークソ女が!
せっかく授けた神刀である皐月も、未だ疑似神格を発現していない。
精霊を捉えられる目、弓の腕、神刀。
つまりミミカカは、与えられた全ての力を腐らせた訳だ。
何が日本国民になりたいだ。
自助努力の意識に欠け、いつも口先だけ。
頑張ります、次はやります。
お前は何時になったら頑張るんだ、やるようになるんだ?
人間口だけなら、なんとでも言える。
ミミカカは、余りに中身が空っぽだ。
とんだ地雷女である。
全く信頼を裏切られた気分だ。
気を取り直して、タロット占いの続きだ。
カードをよくシャッフルする。
「さぁ汝、何恐れんや、魔法の士」
再びインチキ古語口調で、グララにカードを選ぶよう促す。
奇跡の魔法少女であるシャーシャは無論として。
案外、グララも頑張っているのである。
魔法に持っていた苦手意識を取り除くため。
魔法を発動する媒体として、でんでん太鼓を渡した。
それ以来、グララは毎日魔法を試していた。
グララはいわゆるアスペルガー症候群の疑いがある。
人との共感能力に欠け、コミュニケーションが極端に苦手。
だが逆に、その性質故に、1人でも黙々と努力できる人間でもある。
そういう人間は、1度でも思考の袋小路に嵌ってしまうと、中々抜け出せないジレンマがある。
だがそこは俺がいる。
グララはそういう人間だとわかっている以上、根気強くアドバイスしてやる事ができるのだ。
グララの一見、何故飛び出たかわからない発言に、イライラする事は正直多い。
だが根気強く付き合って、意図を問いただせばグララも答えてくれる。
彼女は別に、わざと人を怒らせようと思ってる訳ではないのだ。
理解しがたくとも、彼女なりに導かれた思考の経路というものがある。
それらを踏まえた上で、より適切な発言を教え込めば、彼女は覚える。
別に学習能力が欠如している訳ではないのだ。
飽くまで、その独特の思考と発言で、人とのコミュニケーションに齟齬が生まれるだけで。
確かに彼女は、1度注意した事を何度も繰り返す事もある。
だが、それの何が悪い?
よく会社で新人教育の時に「それこの前も言いましたよね」と注意する先輩がいる。
正直、教育係としては最悪の発言である。
無論、覚えられなかった新人にも問題がないではない。
だが、覚えられなかったのは事実であり、現実なのだ。
もし1度教えられた事の確認を許されないのであれば?
誤っていようと突き進めるか、放置するしか手段がなくなってしまう。
1度で覚えられなかったのなら、覚えるまで教えればいいだけの話だ。
注意して萎縮させる事に、精神的な満足を得る以上の意味はない。
まぁ余りに学習しないようでは困るが、たかが1度や2度なら、笑って教えてやればいいだろう。
そう思う以上、グララとは根気よく付き合おうと思う。
まぁ、そう思える様になったのは、ミミカカのお陰かもしれないが。
新人教育の例で言えばこうだ。
一見愛想よく、その場で「わかりましたー」と言って、何も学習しないミミカカ。
一目見て要領と物覚えと歯切れが悪いグララ。
それでもグララはきちんと学習しているのだ、どっかのアーパークソビッチとは違って。
多少要領が悪かろうと、真面目な人間を評価したい。
………俺も人間である以上、ストレスを感じる事はあるが、な。
事実、グララは発言する前に、多少の逡巡を覚える様になった。
過去の発言で、俺が矯正しようとした内容を、本人なりに治そうとしている痕だ。
そして、本人に魔法を覚える意欲がある。
シャーシャちゃんの様な、日進月歩の成長は見られないが、グララはきちんとコツコツ努力している。
魔法をパクるだけのミミカカと違い、グララは自分のものとして昇華しようとしている。
なまじ精霊を見るという才能を持ってない分、グララは真面目なのだ。
そういう性格の方が、人間として好ましいと思う。
その考えはそんなに異常か?
俺にとっては当然の帰結なのだが。
まぁそれは置いておいて、グララのタロットだ。
「ぬー!」
タロットを睨みつけて、眉間にしわを寄せるグララ。
関係ないが、グララのいかにも魔法使い然とした格好。
俺より占い師っぽい雰囲気があるな。水晶玉とか似合いそう。
しかしグララは何のカードを引くだろう?
そのままずばり、魔術師のカードか?
「えーい!これなのだ!」
たかがカードを選ぶだけで、勢いのある言葉だなぁ。
まぁそれは置いておいて、選んだカードの内容だが………。
カードの下には黄色い球体が、幅いっぱいに広がっていた。
そしてカードの上部には、逆さまになった子供が描かれている。
絵の子供は元気いっぱいといった様子ではしゃいでいる。
「太陽のカードか………」
俺の前に突き出されたカードは逆さまになっていた。
こういう状態のカードは、逆位置という。
タロットカードは多くの流派で、正位置の暗示と、逆位置の暗示という2種類の意味を持つ。
逆位置のカードは、本来の暗示と正反対の性質を持つ事が多い。
多い………のだが、俺はそれを考慮しない。
多くの流派でといった通り、占者によっては考慮しない場合もあるのだ。
それに考慮する流派の場合でも、その意味がまちまちだったりする。
占者のセンスに依存している訳だ。
タロットカードを読み取る上で、大事なのは直感だ。
そのカードを見て、反射的にどう思ったかが重要なのだ。
細かい流派の違いを考慮するより、素直な発想でものを見る方がよい。
俺はそう思っている。
「ヤマトー殿!これはどういうカードなのだ?」
カードを引いたはいいが、太陽の暗示が何かわからないグララが聞いてきた。
「どうせグララが引いたカードなんだから、悪い意味のカードでしょ、ヤマトーさん」
で、ミミカカがここぞとばかりに割り込んできた。
………コイツ、本当にクソ女だなぁ。
「それは太陽のカードだな」
「太陽だと?」
マジマジとカードを見るグララ。
「どんな意味なんですか?汗をかくとか、のどがすごいかわくとか………ひからびて死ぬとかですか?」
なんとかして自分と同じポジションまで、グララを落とし込もうとクソ女が喋ってる。
日本の未成年の様に、教育を受けておらず。
日本の文化の様に、譲り合いと調和を美徳と思わず。
そんな異世界人共は、基本的に自分本位で利己的だ。
俺が俺が、私が私が、と周囲を押しのける気質を持つ。
特に弓の才能と優れた目を持つ事で、不自由のなかったミミカカは顕著だ。
正直言って、一緒にいて疲れる、ウンザリする。
それに比べてシャーシャちゃんもグララも雲泥の差だ。
2人は種類こそ違うが、苦労を抱えてきた経験がある。
思い通りにならないという挫折を知っている。
だから、平均的な異世界人に比べて前に出ない。
アスペルガー症候群の疑いのあるグララは、空気を読む能力が低いので、若干失敗するが、それでも前に出るのは控えめなのだ。
少なくともミミカカ程にウザくない。ミミカカウザイ。
「あれ、太陽のカードって、かなりいいカードじゃなかったっけ?」
そこにタロットの心得があるらしいナーナちゃんが口を挟んできた。
そう。
19『太陽』といえば、数ある大アルカナの中でも屈指の、強い肯定的な意味を持つカードである。
電気等ない昔の時代、人は太陽と共にあった。
活発な活動は、太陽の昇る日中に行う。
つまり、カードの暗示もそこにある。
「ナーナちゃんの言うとおりだな。太陽のカードが象徴するのは、活発な活動、恩恵、生命力、エネルギーだ。またその延長上で、成功や達成という意味も持つ」
「おぉ!何やら凄いのだ!」
カードの暗示を聞いて、グララは無邪気に喜んでいる。
「………」
グララが自分と同じ穴の狢にならなかった事に、ミミカカは苛立っている様だ。
呆れる程のクソ女ぶりである。
しかし、本当にうまい事できてるなぁ。
まさかグララが太陽のカードを引くとは。
何せ第1種永久機関だと目される存在だ。
エネルギーの象徴たる『太陽』の暗示を引くとは、余りに出来過ぎている。
しかもお誂え向きに逆向きだ。
俺の手法では本来、逆向きによる意味の変化は考慮しない。
しかし活動、エネルギーの逆位置の意味。
無限にエネルギーを奪う、逆に稼働させた第1種永久機関を彷彿とさせる。
やはりタロットというのも馬鹿にならないな。
本気でイメージしたものが魔法になるなら、本気で縋った占いもまた、即物的な魔法に成り得る。
人間、自分でたどり着いた答えには、過剰な信頼を寄せるものらしいが、俺もそうらしい。
仮説は証明されつつあると、そう思わずにいられない!
「じゃあ次は………」
気を良くした俺は、続けて占おうとする。
「………ん」
今度はシャーシャちゃんだ。
ここまでドンピシャで占いが当たっているなら、シャーシャちゃんは何を引くのか?
何と言っても奇跡の魔法少女。
やはり21『世界』のカードか?
完成、完全、調和、成功、円満。
とにかく全てが満たされた、究極の状態を暗示するカードだ。
………いや?
シャーシャちゃんは未だ、完成形ではない。
未だにその能力を発展させ続けている最中だ。
これ以上の発展がない『完成』の暗示ではおかしい。
そういう意味では10『運命の輪』、或いは14『節制』が相応しいか?
『運命の輪』は好転、幸運、変化を表す。
自分の意志を超えたところにある、大きな力の介在を示してもいる。
意に沿わない変化でも、受け入れる事で事態が一変するという啓示だ。
『節制』は慣れていないと、少し暗示を読み取りにくい。
タロット入門の本では浄化等と書かれており、直感的に把握しにくい為だ。
浄化とは悪いものが洗われた状態であり、いいところしか残ってないと言える。
つまり、安定、順風満帆を表す。またその様な満たされた状態である事から、心静かな様子も表している。
どちらにせよ、奴隷の身から一転して、世界最強の魔法少女の座に躍り出た、シャーシャちゃんの現在と符合する。
その能力を考えれば、7『戦車』や8『力』というカードもなくはない。
『戦車』は軍隊の行進を表したカードで、前進、勝利、撃破を暗示する。
『力』は女性が猛獣を従えている構図のカードだ。
『力』と言っても、物理的な腕力ではなく、人の意志の強さ、信念を暗示する。
しかし両者とも積極性を表すものであり、物静かなシャーシャちゃんにはあまり合わない。
微妙にどのカードもシャーシャちゃんの今と合致しないな。
まぁ実際に引かせてみればわかる事か。
「さぁ、汝。内なる声に従いて、運命を示しや」
テキトー古語も忘れない。
シャーシャちゃんはカードを見て迷っていた。
どういう事を思っているのか、多少興味深い。
「………これ」
やがて1枚のカードを自信なさげに選んだ。
「これはー………」
その絵を見せられた俺は絶句した。
そうか、これがあったか。
シャーシャちゃんを示すものとして、これほど相応しいカードもないな。
立派な馬に乗った鎧騎士。
手には軍旗を掲げ行進している。
誰にも阻まれる事なく。
「このカードって、鎌は持ってないけど、もしかして………」
何のカードかわかったらしい、ナーナちゃんが反応した。
「よくわかったな、ナーナちゃん」
感心して答える。一般的に連想される絵と、俺が今回使ったタロットは異なっているのだ。
ナーナちゃんが言った通り、巨大な鎌を持って、
襤褸を纏っている絵の方が有名だ。
この差は今回使ったカードがウェイト版という物だからだ。
ライダー版とも呼ばれるこのタロットは、古くから存在するタロットである、マルセイユ版を整理・統合したものだ。
マルセイユ版のタロットは、合理化されてない面が多い為、俺はウェイト版を用いる。まぁ細かい事は他に譲るが。
両者のタロットで、このカードに共通しているのは、番号が13番である事。
そして描かれているのが骸骨である事。
そう、このカードは………。
「やっぱり、死神のカードなんだね」
ある意味最も有名なタロットカードである、13『死神』である。
「………しにがみ?」
シャーシャちゃんが不安そうな顔で聞き返す。
世間一般的に『死神』は不吉であるとされている。
それはカードの暗示に、直接的な死が含まれている為だ。
また、直接カードの解釈とは関係ないが、ある殺人事件の現場に、このカードが残されていた事も、不吉さに拍車をかけている。
「よーし!やった!」
出たカードが『死神』と聞いて、どっかのクソ女が喜んでいる。
その顔には低い地位の者にありがちな卑屈さと、その位置に他の物を引きずり込んだという暗い愉悦が見える。
ホント、いっそ清々しいと言っていいレベルのクソ女ぶりだ。
「シャーシャちゃん、そんな顔をしないで下さい」
俺はシャーシャちゃんの不安を取り除く様に言う。
「『死神』は別に、悪いカードではありませんよ」
そう、『死神』はどっかのクソ女が引いた『塔』とは違う。
「『死神』は当然、死を司ります。タロットも当然、終焉、結末を暗示しています。魔法少女であり、決定的な力を持つシャーシャちゃんの暗示が、死神になるのはある種当然です」
「………んー」
シャーシャちゃんは納得行ってない様だ。
まぁ『死神』の本質はそこにはないし当然だが。
「そして終焉とは、死の1つの側面に過ぎません」
「………側面?あのね、それだけじゃね、ないの?」
興味を示したシャーシャちゃんが聞き返す。
「シャーシャちゃん、自然に於ける死とは、只の終わりではないんです。例えば動物が死んだら、その死体が残ります。その肉を食べて、他の生物が生きます。また、生き物は死ぬ前に、自分の子供を残します。死というのは、大きなサイクルの中の1つの状態に過ぎないのです」
「………サイクル」
「つまり『死神』が暗示する本質は、再生、回帰、循環です。また、やり直し、再出発、再挑戦という意味もありますし、究極的には無限大であるとも言えます。今までの人生を昇華し、魔法少女となったシャーシャちゃんに、これほど相応しいカードもありません」
「………無限大?」
シャーシャちゃんに説明した通り、死の暗示は再生を示す。
夢診断でも、死は只の終わりではなく、その先にある生に意味がある。
まぁかのユング先生の夢診断では、大抵のものを『性的なメタファーである』としているが。
心理学にはいくつかの派閥があるが、いずれも当然、提唱者の経験に基づく教えを示す。
要するにユング先生は、医者として治療に当たった経験の中で『人なんて性的な事ばっか考えてる』と結論づけた訳だ。
まぁユング先生は置いておいて。
シャーシャちゃんは全天候型死神魔法少女としてある種、引くべくして『死神』を引いた。
次は………。
「みんなが待ってたボクの出番!」
ナーナちゃんが自信満々でカードを引こうとする。
………コイツが1番読めないんだよなぁ。
「んー、と………これさ!」
スパッとカードを選んで俺に提示する。
「ん?こりゃ………」
「え、何が出たの?」
俺が怪訝そうな顔をしたのを見て、ナーナちゃんも自分でカードを見る。
そこには首から縄を伸ばし、逆さ吊りにされた男が描かれていた。
「吊られた男、だね」
「暗示の解説は必要か?」
どうもタロットが読めるらしいナーナちゃんに一応聞く。
12『吊られた男』。
見た目通りの身動きが取れない不自由な状態、障害、困難、犠牲、忍耐を表す。
ただしこのカードは、北欧神話の主神、オーディンのエピソードを元にしている。
オーディンはユグドラシルで首をくくる事で、ルーン文字の解読方法を知るのだ。
その為に、対価、献身といった意味も持つ。
「「………」」
俺もナーナちゃんも黙っている。
カードの暗示の意味が理解できなかったからだ。
と思ったら………。
「てい!」
「お前………」
コイツ、カード引き直しやがった!
そして引いたのが………。
「「愚者、か」」
0『愚者』のカードには、身軽な格好をした若者が、犬とともに軽やかな足取りで、崖に向かって踏み出す絵が多い。
無知さ、未熟さ等、経験のなさも示すが、それ故に、恐れ知らず、挑戦、可能性も暗示する。
名前ほど悪いカードじゃないのだ。
「てい!」
って、またカード引きやがった!
「んー、なんか納得行かないなぁ」
そう言いながら裏返したカードには、見つめ合う裸の男女が描かれていた。
6『恋人』。
恋愛、友情、魅力を暗示するカードだ。
「いや、何度も引くのは無しだろ」
「だって、みんなと比べて、ボクのカードだけいまいちだったしさぁ」
結果が気に入らないからって何度もする奴がいるか。
最低1日はインターバルを置け、占いの基本だ。
「じゃあお兄さん引いてみてよ!どんなに悪い結果でも受け入れてね!」
「ふん、いいだろう!俺の圧倒的な引きの強さを見るがいい!」
とりあえず煽るだけ煽って引いてみる。
これで塔が出たらどうしよう。
「とりゃ!」
とりあえず自分では見ずに、ナーナちゃんにカードを突きつける。
「お兄さん!君にはガッカリだよ!」
「ひぃ、すいません!」
なんかナーナちゃんに怒られた。
気になってカードを裏返してみたら、そこには杖を掲げる男が描かれていた。
自信ありげにまさに今から魔法を行使するという様子だ。
これは1『魔術師』、なるほど、確かにがっかりだ。
俺が魔術師って、人間って書かれた名札をしてるぐらい、無意味な暗示だな。
ちなみにカードの暗示は才能、知恵、創造。
アホでならした俺とは程遠い暗示だ。シャーシャちゃんの様に奇跡の魔法を創り出せる訳でもないし。
しかし『魔術師』の暗示には、別の側面もある。
魔法なんてある訳がないという前提から考えればわかる。
このカードの男は魔術師ではなく、手品師、或いは詐欺師の類なのだ。
できもしない事をごまかし、騙す者。
カードの暗示は虚栄、まやかし、失敗、自信過剰。
またタロットの大アルカナの番号は、人生の縮図ともされている。
人は0『愚者』から始まり、21『世界』となって終わる。
つまり『愚者』を除いて、最も若い『魔術師』を引いた俺は、精神的に最も未熟という事になる。
どちらかというと物静かな俺は、人から老成しているとか、達観していると言われる方だったんだがなぁ。
所詮占いは占い。
信じ過ぎないに越した事はないな。フン。
憤慨する俺とナーナちゃんを尻目に、またカードをひっくり返している奴がいた。
「えー!また塔出たしー!」
2度引いた挙句塔を出したとは。
当たるも八卦当たらぬも八卦。
17/9/23 投稿・文章の微修正