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日本男子、異世界に立つ  作者: 忠柚木烈
日本男子の探求
106/154

日本男子、縋り付く

 俺は今、新たな領域へと踏み出していた。


 俺の魔法には、明確な弱点がある。

 それは魔法を制御しきれないという事。

 奇跡の魔法少女、シャーシャちゃんと比べるとよくわかる。


 雷の魔法自体は俺も行使できる。

 ただし、発現させた雷は制御下になく、通電可能なものを媒介して、宙を縦横無尽に駆け巡る事になる………筈。

 行使できると言ったものの、只の予想だ。

 思い通りにならない事が、目に見えているので試した事はない。


 しかしシャーシャちゃんは違う。

 雷を完全に制御下において発現させる。

 狙ったところを、針穴を通す様な正確さ(ピンポイント)で狙い撃てる精度だ。


 炎の魔法もそうだ。

 俺の炎は、発現すれば酸素や風の影響を受ける。

 例外的に、完全燃焼(アオカラークロエ)の魔法は、安定した蒼い炎を作り出す。

 だが、これは別途周囲の空気を操作しているからで、炎自体はあくまで、俺の制御を離れた只の自然現象に過ぎない。


 シャーシャちゃんの奇跡の炎は、完全にその制御下にある。

 自由な規模で発現し、外界の一切の影響を受けずに、独立した炎だ。


 実はシャーシャと比べるまでもない。

 他人の魔法を観察していて気付いたが、この世界の標準的な魔法というのは、むしろ全て制御下にあるのが普通だ。

 魔法は集中から、能動的に発現する。

 人の意識に依って維持され、その集中の霧散と同時に魔法自体も消え去る。

 魔法の下手くそなあのグララすら、魔法の発現を制御下に置いている。


 魔法の発現は完全制御(フルコントロール)なのが基本だ。

 発現後、制御から離れるというのは俺の魔法の弱点と言える。

 もしも予期せぬ結果となったからといって、思い通りに消す事はできない訳だ。


 しかし、この弱点。

 弱点といえば弱点なのだが、非常に大きな優位性(アドバンテージ)も有している。

 何せ俺の魔法は制御下にないのだ。

 つまり、()()()()()()()()()()()()


 通常、魔法とは一から十まで、全てに渡って術者に制御されている。

 その制御から離れれば、その力を維持できず霧散する。

 術者は魔法を維持する為、1つの魔法に掛り切りになり、全ての集中を注ぐ事になる。


 だが俺は違う。

 魔法を制御下に置いてない為、並行して魔法の発現が可能だ。

 その結果、常に無害化(サニタイジング)バリアを発動させ、英雄降臨(セギノミカタ)真・自由落下(クーチュフーユ)、その他の魔法を同時使用できる。

 これが俺の圧倒的な優位性だ。


 ちなみにシャーシャちゃん、奇跡のホバー移動を肉体に拠る、純粋な運動の延長線上として捉えているらしく、他の魔法と同時発動できる。

 普通、魔法の維持に極度の集中が必要な事を考えれば、魔法の同時使用は本当に規格外だ。

 しかも俺の様に「発動した後は制御を切り離して、その効果時間の間に別の魔法を発現させる」訳ではない。

 ごまかしや工夫ではなく、複数の魔法を完全制御しながら、同時に使用するのだ。

 多分将棋しながら、麻雀しつつ、お米粒に写経を施し、ブレイクダンスを踊る事ができるぐらい、思考のリソースに余裕があると思われる。ごめん、適当言った。


 さて、この俺の強み。

 実は俺が自力で発見した訳じゃない。

 人から教えてもらったのだ。

 まぁ便宜上『人』と言ったが、人ではない。




 旧イテシツォ子爵領こと、俺が無政府状態に貶めた町。

 この町をどうにかしなければならないと思った。

 シャーシャちゃん達と別れての単独行動による状況確認。

 正直、街の様子は予想より遥かに酷かった。


 取り締まる権力がない事で、あらゆる犯罪行為は犯罪でなくなった。

 強者が弱者を搾取する、醜悪な地獄の出来上がり。

 性善説なんて幻想でしかない事が、ひと目で分かる光景。

 たかが数週間から1ヶ月程度の時間が経っただけで、ここまで様変わりするとは思ってなかった。


 この浅ましい地獄を作り出したのは俺だ。

 他の誰でもなく、この俺がどうにかしなければなるまい。

 だがしかし。

 たかが個人である俺に何が出来る?


 ラノベの主人公の様に、妙案で町を再興する?

 無茶を言うな。

 定番の農業革命も、産業革命も、手法が思い浮かばない。

 黒色火薬の作り方も、何も知らない。

 そんな俺に何が出来る?


 やらなければならないという責任。

 やるだけの能力・手段がないという矛盾。

 そんなとき、俺は何を思ったか?


 逃げたい、と思った。

 どうして俺が?

 できない、嫌だ、と思った。


 心底嫌で。

 嫌で嫌で嫌で。

 心の奥底からこう思った。


 ()()()()()、と。


「かしこまりました。貴方をお助けして差し上げます」

 それはとても耳心地の良い、澄んだ女性の声だった。


「全く、仕方ないねぇ」

 それはどこか艶を感じる、独特な弾みのついた声だった。


「無敵日本の(いさおし)を穢すつもりか?大和魂を何処に置いてきた?」

 それはとても凛とした、心地の良い声だった。


 突如、俺の耳に声が響いた。

「―――え?」

 周りには誰もいない筈なのに?

 聞こえる?


 それどころか?

「―――見え、る?」

 俺の前には、3人の女性が立っていた。


 最初に声をかけてきたのは、1番背の低い女性だった。

 シャーシャちゃん達よりも、ちょっと高いぐらいか?

 腰まで届く長く美しい、艶やかな髪。

 柔和な微笑みを絶やさない、優しげな顔つきは包容力を感じさせる。


 まぁ包容力という単語で、ピンと来たかもしれないが………彼女は巨乳だ!

 彼女に比べればグララの胸なんて、児戯に等しい!

 子供の様な背丈に似合わず、その胸は豊満だった!

 これがマイクログラマーというやつか!


 俺は兼ねてよりロリ巨乳というジャンルに否定的だった!

 ロリはロリ、巨乳は巨乳として別々であるべきだと!

 ………頭ごなしに否定するばかりの俺が浅はかだった!

 そう悔いる他のない、圧倒的な魅力だった!


 カレーはカレーでうまい!

 しかし、チーズカレーもうまい!カツカレーもうまい!

 カレーをうまいと思う事と、カレーと何かを組み合わせるのを否定する事は、イコールではない!

 ロリの中、巨乳を取り入れるキャラがいてもいい!属性とはそういうことだ!


 それはまるで奇跡!

 俺の新たな性癖(とびら)を開く光!

 その光の名はロリ巨乳!

 そして俺を導く光はそれだけに留まらない!


 後ろでポニーテールにした豊かな髪!

 3人の中では真ん中に来る背丈!

 ついでに胸も!

 先程見た大きさと比べれば、その衝撃は随分と劣るが、それでも立派な大きさだ!


 1人目の女性と同じく、その顔からは笑みが消えない!

 しかしその笑みは柔和なものではない!

 少し細められた目と、どこか赤らめられた頬に、薄い笑みに引き上げられた赤い唇!

 それは妖艶さを感じさせる蠱惑的な笑みだ!


 トドメは顔の真ん中にハラリとかかった一筋の前髪!

 全体的に何かを期待してしまうぐらいエロティック!

 手取り足取り腰取り色々実地で教えて下さい!


 そして3人目に控えるのは、最も背が高い女性!

 その背丈は俺と並ぶ程高い!

 つまりは身の丈175センチ前後!


 女性としては大変大柄だが、野暮ったい印象は皆無!

 何故なら服の上からでもわかる程その体は細く、洗練された繊細さを感じさせるからだ!

 まぁその分胸の方も、3人の中では小ぶりだが!

 しかしそれでも世間一般の平均はある!

 あくまで前者2人が恵まれ過ぎているだけだ!


 髪の毛はシャギーの入ったショートカット!

 俺はその昔、ロングヘアであらねば女に非ず、を標榜としていた!

 だがその認識はある時期を機に改めた!

 ショートカットが似合う女は、本当に可愛いと気付いたからだ!


 ロングヘアは「コイツ髪短かかったらそうでもないな」がある!

 逆にショートカットはごまかしが効きにくいので、可愛いと思ったなら絶対に可愛い!

 信頼性抜群!産地偽装一切なし!安心安全健康新鮮!

 目の前にいる女性も、360度何処から見ても恥ずかしくない美貌ぶり!


 口を引き結び、顎を引いた無表情!

 顎を引いている関係で、常に睨め上げる視線を送る冷ややかな眼差し!

 普通に考えて魅力に乏しいそんな表情すらも、美しさがあればクールビューティという魅力に変わる!

 美人は正義!不細工は悪!


 あー………こういうと胡乱な女性団体から抗議とかされるんだろうか?

 ちゃんとフォローしとくか、一応俺フェミニストだし!

 不細工な女にだって価値はあるさ!

 金を稼がない中年男性ぐらいの価値は!

 生きる権利はあるらしいぞ、強く生きろ不細工!


「大和さん、大丈夫ですよ。私が貴方をお助けします」

 特に価値のない女をフォローしてる間に、俺は優しさに包まれた!

 俺は全てを吸い込む、マイクロブラックホールに吸い込まれたと言い換えてもいい!

 つまり直接的に言うと、1番目(ロリ巨乳)さんが俺の頭に手を伸ばし、そのフカフカの胸に抱きしめていた!


 おほーっ!俺の中の野生が目覚め、ゴリラの如くドラミングしたくなった!

 超柔らかい!超いい匂い!超幸せ!

 俺の体中に全能感が満ちていた!

 今なら素手で電話帳を真ん中から引き裂ける気がする!


 っていうか、もっと堪能したい!

 でも、動いたりしたら察知される!

 なんせ密着してるんだからバレない理由がない!

 でも、堪能したい!(切実)


 ………だけ!

 ………ちょっとだけ!

 ちょっとだけ顔を動かして、谷間の奥底(エルドラド)を目指すぐらいなら大丈夫だよね?

 うん、そうに違いない!先っちょだけ!先っちょだけだから!


「あっ、んぅ!」

 うわ速攻バレた!

 耳が溶ける様なエロ可愛い悲鳴を上げられた!


 ってか普通に考えて、そんな雰囲気出した悲鳴を上げるなんて無理だ!

 身を固くされて無言になるか、チッと舌打ちされるのが普通の反応だろう!

 それがサービス精神満点な悲鳴!

 もしやこれが天使という奴か!


「ふふ、私ならいいですよ」

 まさか邪な企みを見透かされた上で許された!

 これは只の天使(エンジェル)じゃねぇ!智天使(ケルビム)だ!


「はい、ぎゅー♪」

 さらにより強く深く抱きしめられる!

 おほほほほほーっ!

 俺の中の野生(ゴリラ)が爆発!

 全身の血液がマッハで駆け巡る!


 もはや智天使じゃねぇ!痴天使だ!

 男の子はおしとやかな感じが好きとか言ってても、積極的な女の子が大好きです!

 後頭部をよしよしされるのが超気持ちいい!至福!

 

「全くだらしないねぇ」

 呆れた様な声が耳を打った!

 呆れた様な、というか十中八九呆れてるんだろうが!

 そうだった、人の目があった!

 慌てて身を起こす!


「あ、もうおしまいなんですか?」

 どこか残念そうな響き!

 おほーっ!俺も残念です!


 ………っていかん!

 今醜態を晒したばっかりだ!

 そう思って振り向いた途端、謎の感触に包まれた!


「私の胸ならどうなんだい?」

 おほほほほほーっ!

 醜態アゲインッ!

 大変結構なお手前です!


「ふぁ!?」

 そして思わず声が漏れた!

 左耳の凹凸に沿って、指が這う感触あり!

 うわやべぇ!超ゾクゾクする!


 ってか何事?

 なんで俺はさっきからこんな天国体験してるんだ?

 俺死ぬの?

 ………死んでもいいな!(悟り)


「きゃん!?」

 そして超可愛い悲鳴が聞こえた!

 死んでもいいと思った俺は、大胆に耳を攻め返した!

 その結果が先程の悲鳴である!


 エロに奔放そうな姉御口調で、そういうギャップがあるとか好物です!

 表情マニアの俺にとって、余裕そうな表情を崩すのは至高の瞬間!

 この子にすげぇちょっかい出しまくりたい!

 さっきの子のすべて受け入れる包容力も評価高いが、この子もかなり好みだ!

 アレか!これが人生に3度あるとかいうモテ期か!


「全く嘆かわしい」

 そこに苛立った声が聞こえた!

 最後に残った堅物そうな人だ!

 あ、貴女はイメージ通りなんですね!


 後ろめたいところはあったので、ビクっとして体を離す!

 声がした方向を見れば、先ほどと変わらない若干不機嫌そうに見える端正な顔立ち!

 冷たい美貌が俺を貫く!


「そこまでにしておけ、話が進まん」

 そして毅然と言い放つ!

 短い言葉で場を支配した彼女はそのまま言葉を続けた!


「どうしてもというなら、その………後で、私のを触っても、いいぞ?」

 途端に色白の肌を真っ赤に染めて視線を逸らす!

 恥ずかしがって口元を抑えて俯いた表情が超可愛い!

 表情マニアの俺も納得の可愛さです!


「あ、でも私のは2人程大きくないから………嫌か?」

 自信なさげに聞いてくる?

 何だそりゃ?

 美少女の胸揉みしだいていいって言われて、ポーズじゃなく嫌がる奴なんていんの?そいつホモじゃね?


「いや、触りたいぞ、うん」

 だから俺は正直に答えた!

 ………正直過ぎないか?

 触りたいとか、いくらなんでも直截に過ぎる!


 いや、言い訳させてくれ!

 さっきから思考力を溶かす緊急事態(エロハプニング)が目白押しで、建前をどうにかする余裕がなかったんだ!

 童貞があんな巨大要塞(おっぱい)からの侵攻を受けて、陥落せずに(冷静で)いられる訳ないじゃないか!


 俺絶対悪くない!

 乳触りたいという直球な告白だって仕方ない!

 自己弁護に次ぐ自己弁護を繰り返す俺!

 そして童貞の叫びを聞いた彼女は………!


「良かったぁ………」

 何故かトロける様な、安心しきった笑みで俺を見ていた!

 お!前!も!天!使!か!

 最初の印象と違ってこの人、そんな堅物じゃない!

 いや、堅物なのかもしれないけど、そのせいでペースを乱されやすいんだ!


 普段の表情が整っている分、表情が崩れた時のギャップが激しい!

 途端にあどけない表情になる!

 表情マニア的にはこの人が1番高得点!

 色々ちょっかいかけたい!


 鉄壁のマイクログラマー!

 エロ方面完備のバランス型!

 堅物に見えて意外と百面相!




 ちなみにこの人達、ある共通点がある。

 まず1つ目。綺麗で癖のない、艶やかな黒髪をしている。

 続いて2つ目。全員白い鉢巻を巻いている。

 そして3つ目。飾緒と肩章の付いた服を着ている。


 飾緒(しょくちょ)って何って?

 肩からぶら下がってる紐の事だ。

 軍服を思い浮かべて、名前の分からない紐があったらそれで多分間違いない。


 下はスカートではなく、空挺師団や飛行機乗りみたいな太ももの広がったズボン。

 そして磨き上げた編み上げのブーツ。

 そう、彼女達の装いは、どこか軍服を彷彿とさせる。

 っていうか。

 そもそも彼女達は誰か?


「えっと、もしかして、違っていたら悪いんだが」

 俺は彼女達の正体に心当たりがある。

 確証はないんだが。


「君達は雷、神通、長門か?」

「はい、そうですよ」

「あぁ、そうさ」

「うむ、いかにも」


 あぁ、合ってた。

 やっぱりそうか。

 ロリ巨乳は雷。

 エロ姉御は神通。

 堅物は長門。


 3人は()()じゃない。

 ()()だ。

 神刀に宿った疑似神格。

 先日シャーシャちゃんが発現させた雪風(ユ・カッツェ)と同じ様に。

 俺もまたその真の力を開放したのだ。


 魔法の根源は信じ切る事、思い描く事。

 心底誰かに助けてもらいたいと他力本願した事で、最も頼りになる偉大な軍神の力が、俺にとって都合のいい形で発現した。

17/8/12 投稿

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