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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
出会いと旅立ち
9/83

閑話 「ローズの冒険」

ローズたちの話になります。

閑話なので短いですが、もし彼女たちのバトルとか読みたいというご希望等あれば教えてください。

「ああ、ポチ。また逢えるかな」

「さっき会ったばかりなのに、まだ言ってるの?」


 ローズの独り言に一々リオンは反応していた。ただこういうのはローズにとって嬉しい時と、イラッとする時がある。

 今日は後者だった。

 エルダードワーフで前衛職を受け持つ小柄な少女の頭に、ローズはチョップを当てる。


「最近は勉強のせいでログインできる時間が減っているんです。そのせいでポチと会える時間は貴重だというのに」


 ローズがただ普通に呟いただけのつもりでも、その表情が変わらないせいでまるで怒っているように見える。ローズの発達していない表情筋は、顔を無意識にしかめっ面にしている。

 ただこのパーティーの他のメンバーはそれを全然気にしていないようだった。だから一緒に居られるのだろう。

 まるで街中を歩いているように二人は会話をしているが、その場所は照り付ける陽射しがプレイヤーの肌を焦がす砂漠エリア。しかも、その最奥。飛び出してきたトカゲ型のモンスターをリオンが無造作に繰り出した鉄棒が弾き飛ばしている。


「そうか。ローズは学生だったな。スキル【居合切り】」

「にしし、どうも授業中に居眠りしているらしいですよ。スキル【風爪】」


 初めの男っぽい雰囲気なのは刹那。エルフ族の侍で青い着物を粋に着崩している。パーティーのリーダーを務めているみんなのお姉さん役といった所か。次に茶化すように笑ったのは斥候役をかって出る虎人の盗賊、リアン。リオンの双子の妹で、いつも意地悪そうな笑みを浮かべている。種族差のせいで身長はリアンの方がかなり高い。

 この二人も軽口をたたきながら武器を無造作に振り回して、何匹も湧いてくるサソリ型モンスターをまるで気にした様子も無く倒していく。刹那の手が刀の柄に触れたかと思えば、次の瞬間にモンスターが真っ二つになる。リオンが伸ばした爪を振りおろすと、風が刃状になってモンスターを切り裂いた。


「居眠り……駄目……。『凍結』」


 最後の一人は人族の魔法使い、『ryuryu』。意地悪い魔法が得意で、その特殊な魔法故に口数が少ない。THE魔法使いという風な紫ローブを羽織っている。そしてリューリューの言葉に従うかのように、上空から襲おうとしていたモンスターが急に凍りついたようになって地面に落ちた。


「私だって駄目なのはわかってる。ただ前に座る男があまりにも気持ちよさそうに眠るから、つい」


 ローズが今年クラスメイトになったその男子は、周りから『居眠り拡散機』と呼ばれていた。常日頃から日向ぼっこが趣味だと言い続けている変人である。

 しかもそれでいてローズよりテストの点数が高いというのも、目の仇にする理由だった。ローズは委員長気質であるが、それに学力がそれほどついていっていないのだ。

 プルプルとメイスを握った拳が震え、ローズが八つ当たり気味に振り下ろしたメイスがリューリューによって凍らされたモンスターを粉砕した。


「ああ、これじゃダメですね。やっぱりこのイライラはポチにあってモフモフしなくては」


 ローズはあの至福の時を思い出して、メイスを握ったまま相好を崩した。


「何でもいいですが、油断はしないでくださいよ」


 刹那さんに、ローズは元気にはいと答えた。ただ、思考はポチの方に飛んでしまっているようで、手が何かを求めているように動いている。

 その瞬間、蜃気楼のように突如としてオアシスが現れ、その中央の湖の中から砂漠には似つかわしくない竜が水を吹き飛ばしながら出現した。太陽の照り返しも眩しい銀色の鱗が神々しい。


「さあ、ボス狩りです。軽口はここまでにしましょう」

「おお」「はい」「にしし、了解」「……(こくり)」


『蜃気楼湖の隠れし銀鱗竜 ミラージュ・ドラゴン』 vs 『死出誘う乙女(ヴァルキューレ)』 


 数十分後、断末魔の声を上げ倒れたのは美しき竜。まるで竜の血を吸ったかのように赤く薔薇を咲かせた蔦をその体に絡ませ、鱗は至る所に無残に切り裂く刀傷やへこませた打撲痕が残り、片目は凍らされ、片目は短剣で貫かれている。誰もが死んでいると確信できる姿をした銀鱗竜はその体を光の粒子に換えて消え去った。

 残されたのは防具に汚れこそ目立つものの傷らしい傷を負っていない戦乙女五人だった。

読んでいただきありがとうございました。

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