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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
ギルドとモンスター
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賢樹様に逢ってみた

とりあえずストックはここまで。

過去の自分が頑張ってたら、明日も投稿される筈。


「そういうわけだから、明日そっちにいくよ。ローズにポチ成分を吸わせるついでに、その竜の話も詳しく聞きたいしな」

「よろしく頼むよ。お助けモンスターが全部狩られるようなことにはなってほしくないからな……」


 ポチの気持ちを察しつつ、リオンは別れの言葉を告げた。そして、彼女を写していた画面が消える。

 それを見たリラインが恥ずかしさから戻ってくる。


『お話し、終わりました?』

『ああ、無事な。勝手にクリスタの事を軽く臭わせちまったけど良かったか?』

『はい。ポチさんが信頼を置く方なら、別に……。他でも同じことが起きてるなら、助けてあげたいですし……』

『そっ『リラちゃんはなんていい子なの~。こんないい子他にはいないなの! 偉い妖精であるナナが褒めてあげるなの』


 しんみりとした所に、ポチの言葉を遮るようにナナが姦しさを連れてやって来た。リラインの照れながらのありがとうという言葉に、感極まったようにナナは抱き着く。頭から双葉を生やした少女と妖精のツーショットはまるで絵画の一幕だった。

 しかし、そんな状態が続くわけもなく。


『ナ~ナ~』

『ね、猫さん、そんな警戒する猫みたいにナナの名前を呼ばないでほしいなの。いやー、引っ張られるなの~』

『空気をちょっとは読むことを覚えやがれ』


 ポチの【招き猫】であえなく撃沈するナナだった。


『くすくす』


 それをみてリラインは笑い、ファングたち他のモンスターたちは呆れているのだった。


《お主ら、楽しそうじゃのう》


 そんな和気藹々とした雰囲気の中に、まるで優しい老人のような声が響いた。


『誰だ!』


 近づかれていたことに全く気が付かなかったと、ポチとファングが鼻をひくひくさせながら辺りを見渡す。

 しかし、どこにもその声を発した者はいない。

 空耳か?

 全員が疑問に思い始めたころ、再度声が響いた。


《すまぬが、わしはそこにはおらんよ。わしは動くことができなくてな。お主らさえよければ、こちらに来てはくれないか》


 どうする、とポチは目でリラインに確認を取る。

 リラインは何故か興奮しだした、クリスタを宥めながらこくんと頷いた。


『分かった。招待に応じよう』

《ありがたい。わしの言う道順に従ってくれ》


 その声の案内に従っていくと、急に森にぽっかりと空間が開いていた。その真ん中には大の大人が十数人かかっても囲み切れないほどの巨大な木が立っていた。


『誰も、いませんね……』


 おっかなびっくりという形で、ファングの背中に隠れながら進むリライン。その前を警戒しながらポチは進む。そして、あまりにも大きな木に視界が埋まってしまったころ、突如木の表面が動いた。


《よく来てくれたのう》


 声は目の前の木から聞こえていた。


『あんたが俺達を……?』

《そうだとも。わしはこの森の長老。周囲からは賢樹などと呼ばれておるのう》


 声を掛けていたのは、この森を守るセイクリッドトレントであった。この森の名前にある賢樹というのは、ポチたちの目の前にいる老木を表す言葉でもあった。

 ポチたちは知らなかったが、プレイヤーの間では有名なお助けモンスターである。出会うことができれば、色々と情報をくれるだけでなく、珍しい植物系のアイテムをお土産にくれるのだ。

 ただし、出会う条件は難しい。先ほどのポチたち同様に、賢樹様が興味をもったプレイヤーを自主的に呼び寄せるか、森林踏破能力の高いプレイヤーの先導のどちらかが必要になるのである。前者は完全にランダムであり、後者も一握り。多くのプレイヤーはその存在を知りながら、逢うことなくこの森を去ることの方が多い。

 ただ逢った者たちが共通して言うのは、とっても癒される雰囲気を持っていた、という事だった。


『戦闘は必要なさそうだな』

『そうですね。ファング達も安心したように、くつろいでいますし……』


 ここにきてすわボス戦かと、身構えていた二人だったが、ごろんと横になったファングや、とぐろを巻き始めたウィルの姿を見て、そうではないようだと気付いたようだった。

 そうなると、何故自分たちが呼ばれたのか気になってくる。


『賢樹様。お、およびくださりありが、ひゃう』

『リラちゃん、慌て過ぎなの。落ち着いて挨拶するなの』

『ナナちゃん、ありがとう。賢樹様、私たちをここへ呼んで下さり、ありがとうございます。何故、私たちをこの場に?』

《ふむ。面白そうな一行に思えたからよ。わしはこの場から動けぬ。長い時を暮らす中で、この森の外から来た様々な者達と語り合うことだけが生きがいになったのじゃよ》


 それはシェルナーラの森で出会ったお調子者の猫を思い出させるような理由だった。


《故に、楽しそうな話をしてくれるものに声を掛けておるのよ。わしも長く生きておるが、そのような小さな猫の姿で戦う者など見たことがない。傍らには猫の言葉をしゃべり、多くのモンスターと友達のように接する人がおる。空には妖精まで飛んでおる。興味深いと思うのも普通じゃろう。……それに、懐かしい雰囲気の者もおるようだしの》

『最後何か?』

《いや、大したことではないよ。どうじゃ。年寄りへの手向けとして、少し旅の話を聞かせてはもらえぬかの》


 その声音はまるで孫に優しく声を掛ける、老人のような優しさに包まれていた。

読んでいただいてありがとうございました。

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