お邪魔してみた
短めです。
物足りない部分で終わっていると思いますが、続きはすぐに書く予定です(つまりはまだ書いてない)。
ポチとリラインが湿地帯を抜けて数日が経った。当初の目的通りパーティーを組んだポチがモンスターを倒すことで、リラインのレベルも三つほど上昇していた。
二人はそこで一旦レベル上げを中断し、リラインが借りているとある宿場町の一角の牧場に来ていた。
『すいません。そろそろ手持ちの回復薬とかが足りなくなっていたので……』
自分の都合で冒険を一度止めてしまった事を謝るリラインだったが、先ほどまでポチがいた場所には誰もいなかった。視線を牧場の方に向けると、ものすごい勢いで厩舎におかれた藁に突っ込んでいくポチの姿があった。
『おお、チクチクするけど、これはいいな! リライン、ここで少し日向ぼっこしてもいいか? いやあ、牧場の藁の上ってのは完全に忘れてたな。日向ぼっこの絶好スポットに決まっているのに、俺としたことが……』
『久々に猫さんが日向ぼっこに燃えてるなの』
『ゲームだから戦うのもいいけど、俺は元々日向ぼっこするためにゲームを始めたんだからな。はー、このチクチク感がたまんねえ』
『……』
そのとろけそうな顔をして藁に突っ込むポチの姿にリラインは言葉を失った。
本当にポチさんは人なんでしょうか?
目を離した瞬間には動きだし、もう早速寝てしまっていた。ナナも止める気はないようで、すぐさまその隣に降り立って横になった。どうやら一緒に日向ぼっこをするつもりらしい。
「ゲームで日向ぼっこするって、凄い時間を無駄にしているような……」
リラインはそう呟きながら、しかし、満足そうに寝ているポチの横顔に何も言えなくなる。とりあえず、一周回って贅沢な時間の使い方だと、思うのだった。
寝ている間に今日やりたいことは終わらせておこうと、リラインは自分の仲間たちの名前を呼んだ。
すると、どこからかモンスター達が姿を現す。ファングやウィル、アンナ以外にも手乗りサイズの子犬型モンスターや、鹿型のモンスターなどがいる。
『みんな、いつも狭い所に入れていてごめんね。今日一日はこの牧場で体を動かしてください。ファングとウィル、それにアンナは無理しないようにね』
その言葉を境にして、呼び出されたモンスターは一旦リラインに身体をすり寄せるなどしてから、牧場中に広がっていった。走り回るもの、草を食むものなどそれぞれの個性が出ていた。
その微笑ましい様子に満足そうに頷くと、リラインは牧場に隣接する建物内にある自分の部屋に入って行った。
テイマーはテイムしたモンスターを専用のスキルでいつでも呼び出し可能なのだが、時折外に出してやらないとモンスターにストレスがたまる。ストレスがたまると命令を聞かなくため、テイマーは一定時間ごとにモンスターを外に出さなければならない。しかし、街中でそう簡単に出すわけにもいかない。故に、テイマーは多額のマネーで牧場付きのプレイヤールームを借りるか、モンスターの数を減らしローテーションで戦闘参加させることでこの問題を解決している。多くが後者で、リラインは珍しい前者のパターンだった。
運営が用意したテイマー救済用のイベントを通して、リラインはこの牧場を格安で借りているのだった。
リラインは久々に戻ったゲーム内の自分の部屋の薬草の匂いに、懐かしさを覚えていた。
(たった数日来なかっただけなのに……。ポチさんと一緒に冒険しているから、いつもより長く感じたのかな?)
リラインは整頓された部屋に採取した薬草などを置きながらそんな事を考えていた。
人としゃべるのが苦手で、モンスター達に守られてソロで冒険してきた頃とは違う日々にしばし思いを馳せた。
ぼうっと考え事をしながらだったからか、リラインは幾つ目かのオブジェクト化した物を落としてしまった。
「はわ!」
慌ててリラインは手を出すも、その瓶はリラインの手を避けるようにして地面にぶつかり、割れることなく転がった。どうやら背の低いリライン用の机だったことが功を奏したらしかった。
「せっかくポチさんから頂いたものですから、慎重に扱わないと……」
リラインは瓶を拾って、今度は倒れないように置いた。
それからも幾つかのアイテムを取り出しては並べていく。机の上が一か所を除いてアイテムで埋まると、リラインはよいしょと腕まくりをした。
「それでは調合を始めます」
掛け声を入れると、リラインは目の前におかれた薬研に薬草を入れた。
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