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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
ギルドとモンスター
63/83

立ち会ってみた

完全にストックが切れました。

とりあえず出会いの話は終わりです。

これからはリラインとポチが一緒に冒険していくような展開になっていく、予定です。

次の更新は遅くなるかもしれませんが、少しお待ちいただけると幸いです。

『あの、ありがとうございました。私はリライン・パックスと言います。この子たちはウィル、ファング、アンナです。えーと、猫さんの名前はポチ君? でいいんですよね。すごく強いんですね。こんなに強い猫さんがいるなんて全然知りませんでした。本当に助太刀してもらって助かりました。この子たちが誰一人欠けることなく一緒にいられるのはポチ君のおかげです』


 戦いが終わるとリラインはモンスターたちを集めてひとしきり傷がないことを確かめた。それからポチに向かって頭を下げた。感謝を伝えようとしているのか、炎蛇のウィルはすっと頭の位置を下げ、ツイストタイガーであるファングはがるると鳴き、リビングアーマーのアンナは騎士のように膝をついた。


『まあ、偶然立ち寄ったところで、戦っている姿が見えただけだから気にしないでいいさ。借りを返そうと思っただけだから、そんな硬くならないでくれ』

『ふふん、感謝するなの! 猫さんがいなかったら今頃はお前たちは経験値なの』

『なんでナナが偉そうなんだよ。お前は何もしてないだろうが。えいっ』

『なの~! 羽を肉球でモフモフしないでなの。くすぐったいなの』

『ははっ』


 ふらふらと逃げるナナをを追っては前足でじゃれつくポチの姿に、リラインもようやく安心したのか笑みを浮かべた。


(やっぱり笑うと可愛いな)


 ポチがちらりと様子を伺うと、リラインは体の大きなモンスターに守られるように囲まれていた。一歩間違えれば今にも食べられそうな少女の図になるはずだが、天使爛漫といった笑みを浮かべる姿にそんなおぞましさは感じられなかった。

 きっとドラゴンが自分を守ってくれるように頼んだのも、目の前の姿が理由なのだろう。もしかしたら、上の教会で見た人と共に暮らしたドラゴンが目の前にいる存在と同一なのかもしれない。

 人とモンスターが争うことなく触れ合う姿に、ポチは目を細めた。


(俺とモモが一緒だった時にもこんな風だったのかな)


 今はいない親友を想うポチに、その姿はまぶしく見えた。


『猫さんには私がいるなの』

『……それは反則だろ』


 リラインたちのほうを見て動きを止めたポチの姿から何かを感じたのか、ナナはそう言ってポチの顔にギュッと抱き着いた。

 それはナナがポチを受け止めているようにも見えた。


 ***


『それで、さっきのPKってのか? あれはどういう理由で起きたんだ? やっぱり後ろのドラゴンと関係あるのか?』


 ポチは急に恥ずかしくなったのか、ナナを強引に引き離してリラインに声をかけた。ナナがニマニマ笑っているが、見ないふりを決め込んだようだ、

 その様子にリラインはさらに笑みを強めた。


『はい、実はこのドラゴンさんが生まれなおし、というものをするらしく、その間守っていてほしいと頼まれたんです。ただ、その会話をあの人たちに聞かれていたみたいで……』

『ドラゴン目当てで襲われたと』

『はい』


 私がもっと強かったらこんなことにもならなかったんでしょうけど、とリラインは悲しそうに目を伏せた。慰めるようにモンスターたちが体を摺り寄せる。鎧のアンナだけはそうすると痛いので、優しく頭をなでていた。

 本当に仲が良い様子で、リラインが末っ子のようにすら見えた。


『俺は話したことがないけど、後ろのドラゴンがリラインを認めたんだし、結局守れてるんだからいいのさ。こんな機会が次いつあるかわからないからな、ドラゴンの生まれなおしっていうのをしっかりと見ておこうぜ』

『ナナも見たいなの』

『そうですね』


 じゃあ、せっかくなので料理をご馳走しますね。と、リラインは言うやいなや、アイテムボックスから取り出したレジャーシートを広げた。慣れているのかシートが飛ばされないように、ウィルたちが素早く石を四隅に置いていく。

 あれよあれよという間に、簡易キッチンのようなものが現れ、フライパンや食品が出てくる。

 ナナはすぐさまご飯なの! と叫んで飛び回り始めたが、ポチはさすがにあっけにとられいる。


『……準備が良すぎないか?』

『この子たちの食費がすごいので、自炊しないと間に合わないんですよ。今のコロポックル族に進化したのも、食べられる薬草を採取していたからですし』

『意外と苦労してるんだな』

『いえ、全然。いつもこの子たちが一緒でしたから。モンスターといってもちゃんと心を込めてあげれば意思疎通できる私の友達ですから』


 ポチと話をしながら、リラインは料理を始めた。さっき狩ったルイン・フォックスからドロップしたという、キツネ肉を炒めながら、どんどん見たこともないような野菜が投入されていく。原色のカラフルなものに始まって、黒い瘴気みたいなものを放っているキノコや、けたけたと笑い声をあげる何かなどが適当にカットされていく。


『えっと、リライン? 何を作ってるんですか?』

『戦ったばかりですからお腹空いてますよね? がっつりお腹にたまるチンジャオロースです』


 チンジャオロースの要素がどこにあるんだろう。ポチは頭を悩ませた。


 見た目の割に意外と美味しかった料理を食べ終え、リラインが一度ウィルたちをスキルで格納した時、変化が起きた。

 始めに気が付いたのは、満幅の腹を抑えてぷかぷかと空に浮いていたナナだった。


『猫さん、ピシリって音がしたなの』

『本当か! リライン、ちょっとこっちに来てくれ』


 料理の片づけをしていたリラインがポチの言葉を受けてドラゴンの元に駆け寄る。ポチが最初に見た時にはまだ光の膜の中が透き通っていたが、今はもう中を覗くことは出来ない。完全な繭の形になっていた。

 ポチが耳をパタパタと動かす。


『間違いない。繭が少しずつ割れていく音が聞こえる』

『大丈夫でしょうか……。ドラゴンさん、頑張ってください』


 リラインは巨大な繭を前にして祈った。しゃらりと真っ白な着物を揺らして、手を合わせる。その姿はまるで神に奉げられる巫女の様だった。薄らと発光する繭に照らされて、神聖さが数割増しだった。

 まるで美しい宗教画のような風景にポチは、ほうっ、と感嘆のため息をついた。

 いつまでも続くかと思われたその情景は、一瞬で終わりを告げる。


『わ、割れるなの!』


 ナナの悲鳴に呼応したかのように、繭の真ん中に一際大きな亀裂が縦に走った。そして、まるで砕け散るように繭が光の欠片に姿を変える。

 繭が元々あった場所の中心に、それはいた。


『はあ、生まれ直しってのはここまで小さくなる物なのか』

『そうみたいですね。でも、無事に終わってよかったです』

『むむっ、悔しいけど可愛いなの。でもナナの方がもっと可愛いなの』

『変な所で張り合うなよ。お前はもう少し少し静かにしていろよ。起きちゃうだろ』

『ふふっ、可愛い寝顔です。あのドラゴンさんとは思えませんね』


 生まれ直したことで老竜は小さな竜の姿になっていた。地面の上で体を丸めたその大きさはポチと然程変わらないだろう。元のどっしりとした竜の威厳は無くなっていたが、透き通るような水晶の鱗を纏い、額から同じく水晶のような角を生やした姿はそん所そこらのモンスターには感じられない力強さを発していた。


「キュア~」


 それはどんな寝言だったのか、一声鳴いてから幼い竜は深く眠りにつくのだった。

読んでいただきありがとうございました。

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