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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
ギルドとモンスター
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遺跡を探索してみた

最近忙しいです。

そのせいで全然書きたまっていないです。

なので、また少しお休みをいただくと思いますので、お楽しみに!

 ポチが逃げ込んだのは元教会らしき遺跡だった。カリグラ平原の遺跡群の奥まったところにあるそれは、崩れかけた様子では確かにあるものの未だ当時の威容を随所に残していた。入り口には巨大な柱が立ち、所々削れてしまっているが美しい彫刻がなされている。中は学校の体育館より少し広いほどで、石でできた簡易的な椅子がいくつも置かれたさらに奥にも続いているようだった。

 しかし、逃げているポチにそんな遺跡に感動する余裕があるはずもなかった。


『ナナ、まだあいつら追って来てるか?』

『だ、大丈夫そうなの。この遺跡に入ったら追ってくるのをやめたなの』

『本当か? 確かに、遺跡の入り口でぐるぐるしてやがるな』


 背後を確認させたナナの安全宣言に釣られて、ポチも足を止めて振り向く。すると、教会遺跡の入り口からゴブリンライダー達が入ってくる様子はない。何かに怯えているようにも見える。それでも、まだポチを狙っているのか入り口前から離れる様子はなさそうだが。

 入ってきたところから出る、という訳にはいかなそうだとポチはため息をついた。


『せっかくだから奥まで入るか。あいつらも少しして俺達が出てこなかったらどこかに行くだろ。ゲームにありがちな宝箱とかがありそうな雰囲気だし、少し探索するのもありだしな』

『宝箱……。良い響きなの。きっとおいしい物がいっぱい入ってるなの。レッツ探索なの!』

『いや、古い教会に残された宝箱に食べ物は……ゲームならありえるか。あんまり勝手に飛んでいくなよ。ここにもモンスターがいるかもしれないからな』

『はいなの~』

『それから、宝箱見つけても勝手に開けるなよ。開けて、食べ物入っててもすぐに食べるなよ。腹壊すからな』


 ポチの言葉を最後まで聞かずに、ナナはキラキラと体を光らせながら教会の奥へと入って行った。ポチはそれを見送って、ゆっくりと中を見て行くことにする。

 壁や天井に残されたボロボロの絵や彫刻をどうにか読み取ると、どうもこの教会は神様がお休みを取った後に建てられた物らしいと分かった。


『ナナから聞いた話を描いているってことなのか』


 そこに描かれているのは、モンスターと人が共存している姿から徐々に険悪になっていく様子だった。それは次第にヒートアップしていき、最後には人とモンスターとが全面戦争を行っている姿が描かれていた。

 そこで、終わってしまっている絵は全面戦争がどのようにして終結したかを描いていない。


『まだ終わってないって事なんだろうなあ』


 ポチはその絵を見ながら思った。

 人とモンスターがいがみあう必要はあるのだろうかと。モモの事が脳裏によぎる。言葉が通じる相手なら、敵対する必要なんてないのではないか。


『……ゲームでいちいち考え過ぎか』


 とりあえず、自分の近くの範囲だけでも護れるようになりたい。どこかに飛んで行っていしまった妖精の笑顔をポチは思い出していた。

 そろそろ、ナナを追いかけた方がよさそうだ。そう思ったポチが視線を奥に送つと、そこに描かれたもう一つの絵に気が付いた。それは切りだしただけのような石の椅子。そこに模様のように描かれていた。猫の目の高さが出なければ、ただの模様だと気にもとめなかっただろう。


『これは……』


 そこに描かれていたのは、人とモンスターが共存している姿。ただし、壁に描かれた物と違うのは、共存している様子の彼らがモンスターからだけでなく、人からも襲われている様子が続けて描かれている事だった。


『この教会は神様がいなくなった後も、それ以前の生活を続けようとした人たちの祈りの場所だったのか……』


 ポチはこれがゲームであるという事を忘れて、この教会に残された歴史に感じ入った。


『ここに描かれているのは……何だ?』


 ポチはそのまま椅子に描かれた模様を見て行く。すると、戦いの場面には決まって登場する姿があった。


『これは、ド――』

『猫さん、大変なの! こっち来てなの!』


 ポチの独り言を遮るように、ナナの声が教会に響いた。

 ポチは声が聞こえた方に急いだ。


『どうした、ナナ。何か見つけたのか』

『ここを見るなの。大発見なの!』

『お。おい、髭を引っ張るな。やめろ』

『猫さん、早くなの!』


 ナナに引っ張られる形でポチが連れて行かれたのは、元は食糧庫と思しき地下室だった。

 まず食糧庫に飛び込む辺り、ナナの食い意地は筋金入りだと言えた。

 中に入ってポチも驚愕に声を上げた。


『これは隠し扉か?』


 食糧庫に入って右側の壁が少し横にスライドしていた。元からそうではなかった証に、開いた部分にはスライドした壁で出来た傷が残っている。扉の向こうには下へ続く階段が続いていた。


『凄い発見なの。きっと宝箱がざっくざっくなの』

『いや、それはないと思うぞ。この扉最初から開いてたんだろ?』

『そうなの』

『じゃあ、もうとっくの昔に誰かに開けられた後って事だろうな』

『う~、残念なの』


 しょぼんとしたナナは、ポチの背中に軟着陸した。そして、もう宝箱探しには飽きたらしく、あくびを一つした。


『日向ぼっこするなの。眠くなってきたなの』

『本当にナナは子供みたいだな。俺もその意見には賛成だが、せっかくならこの扉の向こう、階段を降りたところまで見てからな』


 ポチはスキル【猫の目】を使って階段の下を覗き込む。うっすらとだが地面らしきものが見えた。危険なモンスターは今の所見えていない。

 ポチはひょいと跳んで、階段を駆け下りて行った。

 不思議なことに降りた先は鍾乳洞になっていた。


『てっきり隠し部屋に続いているかと思ったが、どちらかと言えば緊急時の逃走用だったのかもな』

『地面からアースランスみたいなのがいくつも生えてるなの。すごいなの』

『石筍のことをそんな風に例えるな。情緒がないだろ』


 アースランスというのは土系魔法の一つで、文字通り地面から土でできた槍を生み出すものである。

 そんなバカなことを言いあいながら、二匹が鍾乳洞内を進んでいくと二股に分かれている道があった。


『一本道って訳にはいかないよな』

『ん~、右がいい気がするなの。妖精の勘なの』

『じゃあ、その勘に従いますか』


 ポチはナナが指さした右の道に入って行った。


『左なの』

『真ん中なの』

『左なの』


 それから何度も分かれ道に逢う度にナナの言う方に進んだが、いつまで経っても外に出られる気配がない。最初は綺麗に見えていた石筍も、本当にアースランスなのではないかと錯覚してしまいそうなほどに見飽きてしまった。

 そして、また分かれ道が現れる。


『もう疲れたなの』

『歩いていない癖に良く言えたな。それで、次はどっちだ?』


 ナナは少し考えてから、右を指した。そちらは少しだけ上り坂になっているため、もしかしたら地上に繋がっているかもしれないと判断したらしい。

 もう妖精の勘でもなくなってきているが、ポチは気にせず右の道に進んだ。

 しかし、いい加減外に出たいという二匹の想いとは裏腹に、そこに待ち受けていたのは地上ではなかった。


『おい、何か争っている音が聞こえないか?』


 ポチの猫耳がすっと立ったかと思うと、ぴくぴくと動いた。ナナには聞こえていないらしく、不思議そうに首を捻っている。


『やっぱり聞こえる。ちょっと急ぐぞ』


 ポチは走り出した。良く分からない何かに突き動かされるように。

 道を抜けた先、大きな広場では戦いが行われていた。襲っているのはおそらく中級レベルほどと思われる六人パーティー。襲われている方は頭に小さな葉っぱを乗せた少女一人と彼女を取り囲むモンスター達。

 しかし、一番目を奪われたのは、少女の背後に佇む巨大な影。


『ドラゴン……』


 それは、どう見てもドラゴンだった。


読んでいただきありがとうございました。

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