旅立ってみた
これで一区切りです。
ある程度書きたまったところで、また連続投稿していきたいと思います。
明日はまだ閑話を一つはさみます。
あの戦いの翌日。ポチは妖精たちが集う泉に来ていた。
『モモ、仇は取ったぞ。結局お前の力を借りちまったけどな』
あの後ユーリスは姿を消した。あの試合を見ていたプレイヤーによって『休日の楽園』中にユーリスの件は伝わってしまった。自業自得ではあるが、これから先ユーリスがこのゲームをすることは難しいだろう。
『最初はこんな風にゲームで苦しむとは思ってなかったけど、それでもモモに会えてよかったよ。また、ここに会いに来てもいいよな』
ポチはアイテムボックスから『白虎の雷上布』を取り出した。すると、森の至る所から妖精たちが現れ、布の端を持ってふわりと持ち上げた。
『お前もここなら寂しくないだろう』
妖精たちの手によって『白虎の雷上布』が泉の中へと沈められていく。その景色はまさに夢のような世界だった。
ポチはそれからしばらくの間、泉を見つめていた。
『これでよろしかったのですか。あれはモモとの繋がりの一つでしょう』
『いいんだよ、これで』
あの試合の後、『モモの心結晶』は輝きを失っていた。まるであの戦いですべて使い切ってしまったかのように。
もう、モモの姿になってもあの戦いのように全能力をコピーすることは出来なくなっていた。
『ミミ、まだ目が赤いぞ』
『それはポチ様も変わらないでしょう』
この泉にモモを葬らせてほしいというポチの願いを叶える前に、ナナの身体に魂と言うべきものを返していた。
目を覚ましたナナの第一声は、「お腹がすいたなの」という気の抜けたものだった。
まあ、それがナナらしい、と見守っていた誰もが思っていたが。
その時に、珍しくもミミは泣いた。それをポチに見られてしまい、ミミは少し恥ずかしげにしている。
『泣きつくしたと思ったんだけどな。そうでもなかったみたいだ』
『もう、行ってしまわれるんですか』
森を出て行こうとするポチの背に、ミミは声を掛けた。
ポチは足を止める。
『今の白虎には会わなくてもいいんですか』
ポチは振り返って笑った。
『もう散々泣いて吹っ切れたよ。それに、モモはあいつだけだから。あいつに馬鹿にされないよう、笑って前に進むさ』
そう言ってポチはどこかへと行ってしまった。
『笑顔が下手くそですね』
威嚇するようなポチの顔にミミは笑った。
***
『さあ、次の町に行こうか』
せっかくモモに助けられたんだから、このゲームを遊びつくそう。
そう考えたポチは、始まりの街を一路西へ向かう。
その先にはまた違う景色と街並が広がっているはずだ。
『まだ見ぬ日向ぼっこのベストプレイスを探して出発だ!』
初心に帰って、ポチのVRMMOライフはまだ始まったばかり。
読んでいただきありがとうございました。
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