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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
出会いと旅立ち
23/83

新たな妖精と話してみた

ここで新キャラ登場はいったん終わりです。

次話はゲーム外の話になる予定です。

『お前たちは本当にAIなのか?』


 その質問に答えたのはナナとは別の妖精だった。


『この一人と一匹は人工知能について知りませんので、私が簡単に説明させていただきます。よろしいでしょうか』


 ナナ達の真剣だと思った顔は、どうもAIという言葉を知らず、ポカンとしていただけらしい。紛らわしい事この上なかった。


『私はピクシー03です。ポチ様、お見知りおきを』


 そう自己紹介したのは、ナナと同じ妖精だった。背中の羽はナナと変わらなかったが、見た目だけは大人っぽいナナと違い、彼女は幼女だった。小さい妖精ながらさらに小さく、体の起伏がない。ただし服装は羽衣ではなくピシッとしたスーツであり、黒縁の眼鏡をかけた顔は笑えば一躍スターの仲間入りが出来そうなほど整っているのに、感情の発露が乏しくクールな印象を与える。

 少し話しただけで分かる。この子は頭の回転も速く、しっかりしたタイプだ。

 ナナと中身を変えてくれないだろうかとポチは切に思う。


『先ほどの質問に答えますと、我々は紛れもなく人工知能つまりAIで動いています。と言いますより、この世界の全ての生物にAIは組み込まれています』


 ピクシー03と呼ぶのも面倒だから、ポチは彼女の事をミミと呼ぶことにした。ミミはとりあえず喜んでくれたようだった。何故か、白虎がポチの事を睨んでいる。


『それなら何故ミミたちだけがこれほど完璧に喜怒哀楽を表せるんだ。他のモンスター達にはそれほど高い知性とかは感じなかったが』


 同じ人工知能にしてはその性能が違いすぎるのではないだろうか。

 ミミもその質問が来ることが分かっていたのか、軽く頷いてから説明を始めた。


『それは単純に起動時間の差、ありていに言えば学習時間の差の問題だと思われます』


 そう一言前置いてから、具体的な例をミミは上げだした。


『私たちには最初からその役割に準じた知識が与えられています。私たちはかなり特殊ですが、例えばこの森の下級モンスターならこの森から出るなや、プレイヤーを襲えなどの簡単な思考能力のみしか与えられません。それが上位になれば思考パターンも増えていきます。しかし、より大事なのは人間と同じく学習なのです。特に私達のAIも「擬似的神経」を用いた人の脳の電子的再現ですので、使えば使うほど人で言う脳細胞を刺激し神経細胞を繋いでいきます。だから長くこの世界にいればいるほどその知能はより複雑になるのです』


 だから私も最初はこれほど感情豊かではありませんでした。そうミミは無表情で言うのだが、ツッコミ待ちだろうか。


『『おお~(なの)』』


 隣ではその話を聞いて納得の表情を浮かべているのがいるが、少なくともナナはこのことを知っていないとおかしいのではないか。


『ああ、ナナはつまりまだ生まれたばかりで、学習中ということなんだな』


 なるほど成長することでナナもミミみたいに落ち着いた雰囲気になっていくのか。

 その様を想像すると楽しそうだった。


『いえ、まことに残念なのですが、ナナはあれで製作番号一桁。……私と同じ最古参となります』


 それはそれは残念ですが、というのがビシビシ伝わってくる。ポチも同じ思いだった。


『どうしたなの?』


 ハハハ、無邪気に笑いやがって。


『な……なの。どうして威嚇しながらネコパンチするなの。ビックリするなの』


 笑いながらのつもりだったようだが、まだポチに笑顔は難しいようだった。

 ナナほど頭は悪くないのか、白虎は本当に納得しているようだ。


『つまり僕も長く学習を繰り返してきたってことか。……確かに、思い返してみれば最初はプレイヤーと見れば襲い掛かっていたような気がするよ』


 人間で言う所の若気の至りってやつかな。……違うか。


『そういえば死んじまった場合はどうなるんだ。受け継がれるのか? それともリセットされるのか?』

『基本的にはリセットです。ですからポップしてはすぐに殺される下級モンスターの知能が上昇することは稀ですし、ボスモンスターでも最初と撃破後では強さが変化するという調査があります』

『それはつまり、最初に撃破されたボスは学習を繰り返してAIを発展させている分戦闘とかに幅があるが、それ以後はそれだけの学習時間がないという事か』


 すぐにやられることで戦闘経験もAIに蓄積されないという事もあるのだろう。


『はい。他にも街の中のNPC達は死亡することがないため、比較的知能が高くなる傾向にあります』


 街猫たちの感情豊かな一面もそこにあるのか。

 面白そうに話を聞く俺と白虎の隣で、もう飽きたのか分からなくて放り出したのかナナがかってに遊び始めた。もうここらでこの話は終えた方がよさそうだった。


『ありがとうな、ミミ。そういえば、わざわざここに何か用でもあったのか?』


 ポチの何気ない一言を聞いて、ミミは身体を一瞬硬直させ、冷や汗を流した。


『ピクシー01から、ナナを連れてくるよう命令されていたのでした。予定時刻を五分ほど超過いたしました』


 どうも、ポチのせいで遅刻らしい。

 謝らせてくれないかと聞いたが、


『いえ。我々の責務はプレイヤーの方々に安全にそして楽しくゲームをプレイして頂くこと。きちんと説明すれば私のことはピクシー01も分かってくれるでしょう』

『そうか、ありがとうな』

『いえ。それではポチ様、白虎様。ほら、行きますよ。ナナ』

『えー、いやなの。01のお叱りは怖いなの。猫さん、助けてなの~』


 さらりと自分だけ逃げ道を用意していたミミは礼儀正しくお辞儀をして去っていく。ポチはその手につままれて泣きながら連行されるナナに向けて手、いや足を振った。隣では白虎も同じようにしていた。

 その後はまた何でもないことを話し、今度良い日向ぼっこの場所を案内してもらう約束をして、ポチはログアウトしようとした。


『どうかしたか、白虎?』


 しかし何かを言いだせないといった感じで、白虎がポチを見つめている。何か変な所でもあるのだろうかと、ポチは体を曲げて背中を見たり、臭いを嗅いでみたりするが、おかしなところはない。

 覚悟を決めたのか、白虎はじっとこっちを見て口を開いた。


『僕にも名前を付けてくれないか!』

『へ?』

『いや、ナナやミミが名前をもらっていることが、羨ましいとかじゃないんだよ。だけど、せっかくなら僕にも欲しいなって。僕たち友達でしょ』


 大きな体をワタワタさせたせいで、軽く地面がえぐれてた。流石最強の守護獣。余波だけでポチを吹っ飛ばしそうだ。

 それに耐えていたポチがどうも困惑しているように見えたらしく、動きは止まったが、今度は悲しそうな口ぶりになった。


『もしかしてAIの僕とでは……友達になれない……のかな』

『そんなわけないだろ』


 それは即答で、間違いなく本心だった。他から見ればゲームのキャラが友達とかおかしいことかもしれないが、目の前の白虎には紛れもなく魂がある、そうポチは思っていた。


『もう友達さ』


 ポチにとって友達は量より質。ああやって楽しくバカ話が出来るなんて、そうそういないのだ。ポチが白虎と友達になることに否やなどあるはずもなかった。

 後は名前か……。どうするか。ナナ達みたいに数字でやる訳にはいかないし。

 むむむ、と猫の小さな頭を捻る。


『モモ……モモなんてどうだ。守護獣にぴったりの神聖な果実の名前だ』


 思いつきで言ってみたが、どうだったろう。

 白虎は何度もその名前を呟いて、咀嚼していく。そして、


『モモ……モモか。うん、気に入ったよ。ポチ、これからもよろしく』

『ああ、モモ。こちらこそ』


 この日ポチは死にかけて、そして『休日の楽園』で新しい友達を手に入れた。

 それも守護獣というとってもすごい友達をだ。


読んでいただきありがとうございました。

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