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ネコでもできるVRMMO  作者: 霜戸真広
出会いと旅立ち
11/83

妖精の名付け親になってみた

妖精の口調がうざくないか心配です。


注意

「猫好きに撫でられてみた」と「目にいたい男を引っかいてみた」との間の一話が投稿できていませんでした。

投稿し直しましたので、お手数ですが戻って読んでいただけるとありがたいです

「寝てて何も知らないなの?」

「ああ、さっき耳元でファンファーレが鳴るまでぐっすりだったぞ。お前が来なかったら二度寝できたんだけどな」

「猫さん、寝過ぎなの……」


 とりあえずポチは正直に日向ぼっこしていたことをフェアリー07に伝えた。そしてそのまま考え込む。

 フェアリー07は首を傾げてうんうんうなっているポチを、不思議そうに見つめた。つんつんとその触り心地のいい毛並みに触れながら、ポチが会話に戻ってくるのを待っていたが、唸る声にかすかな寝息が混ざった時点でいい加減じれったくなったらしく、声を張り上げる勢いでその耳を引っ張った。


「猫さん、いい加減にしてなの。まだ話は終わってないなの!」

「ああ、すまない。ちょっと考え事しててな。ずっとお前の事をお前って呼び続ける訳にはいかないからな。どうしたもんかと」


 そう言って引っ張られた耳を器用に後ろ足で撫でながら言うと、また少し考え込んでしまう。

 しかし、フェアリー07はその言葉を耳ざとく聞きとめると、興奮したかのように羽を大きく羽ばたかせた。


「それなら、私に名前を付けて欲しいなの。猫さんは私の初めての猫の友達なの。だから、わたしの命名権を授与するなの」


 フェアリー07は何故か偉そうに胸を張って言いきった。驚くほど自信満々な顔をしている。

 ポチはその姿に一瞬呆れたが、名前を付ける方が楽でいいかもと思い、考える。

 そして、考え付いた名前は何の捻りも無い物だった。


「じゃあ、お前の名前はこれからナナだ。よろしくなナナ」

 

 そう言って差し出された肉球に、フェアリー07改めナナは大きく頷いてから力いっぱい抱き着いた。そして照れた様子でくるくる回って見せたので、ナナはどうもその名前を気に入ったようだった。


「そういうことだから説明してくれ、ナナ」

「わ、わっかりましたなの」


 初めての名前だとかで翅をパタパタさせてはしゃいでいて、ナナと呼ぶだけで機嫌がよくなる。思ったことが全部顔や動きに出るためとても分かりやすい妖精だった。


「ちょうど二時間前にこの町全域を舞台に、妖精王が主催のゲリライベント『サバイバル鬼ごっこ』が始まりましたなの」


 ナナが説明したところの『サバイバル鬼ごっこ』のルールは単純である。

 プレイヤーの中からランダムで選ばれた全体の5%が鬼となり、鬼じゃないプレイヤーを追いかける。鬼がプレイヤーに触れた場合、プレイヤーは即失格の上、街から安全な場所に強制テレポートさせられる。またプレイヤー側が鬼を倒すことも認められている。制限時間終了後、プレイヤーが一人も残っていなかったら鬼の勝ち。生き残っていたらそのプレイヤーの勝ち。勝ったものにはクリア報酬が与えられる。ルール上鬼の条件が厳しいため、鬼に選ばれた場合参加報酬が払われる。

 ポチが寝ていた間にそんなことがあったようで、周りに人がいないのもそのせいだった。


「今回は鬼の側に凄腕がいたらしいなの。猫さんを除いてみんな捕まったなの。勝利者は猫さん一匹で、すっごいラッキーなの」


 ラッキーか……。多分このアバターのせいだろうな。

 ポチは改めて自分のアバターを見て、そう確信した。どこからどう見ても猫。右手が白いのだけが他とは違うが、完全にただの黒猫である。鬼もこれがプレイヤーであるなどとは思わなかったようだ。

 何だかズルしたみたいで嫌だな、とポチはなんとなく思った。


「早く報酬を受け取るなの!」


 そんなことを考えて報酬を受け取るか迷っているポチがじれったかったのか、叫んだナナがポチに何かを飛ばしてきた。どこから取り出したのか、ナナと変わらない大きさの封筒、しかもわざわざ妖精の横顔をした蝋で封印されている。

 それはそのままポチに吸い込まれて行った。


『イベント報酬を受け取りますか。 Yes or No』


 次の瞬間にはポチの目の前にその文字が映った。ポチはまだいまいちよく理解できしていなかったが、ナナに睨まれながらとりあえず『Yes』を選んだ。

 ……肉球だと押しづらいというのが地味に判明したようだった。


『タラリラッタラー、レベルが四になりました』


 耳元でファンファーレと共にその声が響いた。魚屋の大将や猫たちとの戦いで二度ほど鳴り響いた事がある。この音はレベルアップの時の音だった。


「本来なら十数人、もしくは百人単位で分配するはずだった経験値なの。すごい量なの」


 はしゃぐナナを尻目に、レベルアップは止まらない。


『タラリラッタラー、レベルが……』

『タラリラッタラー、……』

 ……

『タラリラッタラー、レベルが八十四になりました』


 そこでやっと音は止まった。


「すごいなの。これで猫さんもトッププレイヤーの仲間入りなの」

「……いくらなんでも上がりすぎじゃないか」


 ナナ曰く、元々猫のアバター自体が運営側のネタで入れられたもので、これを使う奇特なプレイヤーもいないだろうという事と、元々のステータスが低いということもあって、必要経験値がかなり低く設定されていたらしい。

 ちなみに経験値以外にもクリア者の数に応じたクリア報酬のアイテムがいくつか設定されていたのだが、猫のアバターで使えるような物はなかった。


「つまりレベルだけならトッププレイヤーだけど、ステータスは……」

「全然駄目なの」


 ナナはまったく隠そうともせずに正直に答えた。妖精らしいと言えば、妖精らしい可愛らしさである。


「でも大丈夫なの。ここで手に入れたスキルポイントで強力なスキルを取得するなの」


 言われて確認すると、確かにスキルポイント\SPの欄に1083という数字が見える。


「なるほど」


 ポチは猫の体でできうる限り深々と頷いた。そしてナナに向かって言った。


「スキルポイントって何?」

「それも知らないなの! 私達ピクシーが懇切丁寧に説明するチュートリアルは受けなかったなの?」

「ああ、あれね」


 そういえば、甲斐にも受けておけって言われてたな、と遠い記憶をポチは思い出していた。


「その前の説明のところから寝てた」

「猫さんは馬鹿なの~」


 よろよろと落ちてきたかと思うと、ナナは可哀想な人を見た時の様に、よよよと目の辺りを押さえるようにして横に倒れ伏した。

 何でこうなっても肝心な部分は見えないのか。妖精の羽衣手強い。

 そんなポチの視線に気づいたのか、ナナは羽衣を整えるようにして正座になった。


「今から私が全部教えて差し上げますなの。猫さんも正座するなの」

「いや、スキルポイントだけで……はい」


 美人が泣きそうに睨みつけるとか反則だよね。体は猫でも中身は普通の高校生だから俺。

 猫に正座は難しいので、とりあえず普通に座って話を聞くことにした。

 ……ああ眠い。

 ポチはそっとあくびを噛み殺した。


読んでいただきありがとうございました。

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