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三話「事件」

三話「事件」

 それは教団の騎士による視察の三日目に起こった。学院の

 旧校舎の入り口付近で騎士一人が殺されていた。学院長は

 旧校舎付近には立ち入る必要はないはずと言い切ってこの

 事件については何の捜査の必要も無いと言った。しかし教

 団側は旧校舎に何かあるのではないかと旧校舎への立ち入

 り捜査を求めた。

「必要ありません。今回の視察の目的はあくまで授業がどの

 ようなものかを見るためのもの。現在使われていない校舎

 をあなた達に見せる必要などないはすですが」

 学院長の言葉に騎士達は黙る。学院長は視察の中止を訴え

 た。旧校舎付近をうろうろするなど、本来の目的とは違って

 いるからだ。学院長を含め教員が視察を認めたのはあくま

 で授業内容についてのみ。旧校舎の視察など教団は言って

 いないし、認めてもいない。

「・・お前達の判断はいずれ後悔を生む事になるぞ」

「またあの時のようにここを襲撃ですか・・。懲りないもの

 ですね。貴方達も」

「貴様・・」

「拘束しても構いませんよ。あの事を公表できるのなら」

 学院長は笑った。出来るはずもない。あんなことが知れ

 渡ってしまえば、教団の立場はますます危なくなる。騎

 士達が去った後、学院長室に武彦はやってきた。

「そろそろ本性を出す時か?」

「かもしれませんね」

「アカツキ達を追撃していたのはヘレンという教団の幹部だ」

 武彦は一枚の写真を見せる。そこには一人の女が写って

 いた。銀髪の女が。教団の幹部で、裏切ったアカツキの

 後任としてここにやって来た。武彦はアカツキからの報

 告後、いろいろとこの人物について調べた。分かった事 

 は二つ。アカツキと同じ部隊にかつて所属していた事と

 ヨーロッパでは狩人と言われるほどの術の使い手らしい。

 ただ、今まではヨーロッパで教団施設の防衛の任務につ

 いていたらしく、他の地域ではあまり知られていない。

「これからどうするのです?」

「教団はすぐにでも部隊を編成して来るだろうな。今の内

 に生徒を家に帰したほうがいいんじゃないか?」

「学院の周囲に結界を張ります。その外で戦えば大丈夫です」

 武彦は地図を取り出した。学院の周辺の地図だ。学院は

 四方を森に囲まれている。この森は学院長である昌吾が

 魔力で生み出したものだ。生徒や教員以外の部外者には

 かなり分かりにくい地形となっている。鬱蒼とした森な

 のでかなり視界が悪い。武彦は学院の右に広がる森を指

 さした。

「一番分かりやすい入り口はここだ。多分今回の視察の時

 もここから出入りしているはず」

「ではそこに重点的に戦力を置く・・と」

「ここにアカツキと日下部の部隊を置く」

 後はまばらに戦力を置けば問題ないはずだと武彦は考え

 ていた。他のルートからの場合教団の騎士達が迷い学院

 まで到着しないという可能性もある。

「お前は公安部の連中と一緒に謎解きでもやってろ」

「・・そうですね。それが一番いいかもしれませんね」

 昌吾はすぐに公安部の部屋へと向かう事にした。武彦は

 アカツキ達と合流するために森を目指し歩き始めた。

 そのころ公安部の部室では情報整理が行われていた。

「旧校舎で騎士の死体が発見された・・か」

「あの校舎って数年前から使われてないだろう?」

 何故そんな場所を見る必要があったのか。それが分から

 ないのだ。あの場所に騎士達が探している何かがあると

 いうのだろうか。だがこれ以上調べればそれは自分達か

 ら巻き込まれに行くようなものだ。

「・・輝彦、お前はどうするんだ?」

「生徒会からも教員からも要請は無いんだ。これ以上関

 わることはないと思う」

 輝彦はそう述べた。それが一般的な考えだ。生徒会は

 今回の件は生徒が関わるべき問題ではないとしている

 し、教員達もすでに解決済みと言っている。どこも公

 安部に依頼はしていないし、今回の件については公安

 部が関わるべき問題ではないということは輝彦達も理

 解はしている。

「では、依頼があれば手伝ってもらえるという解釈でよろ

 しいですか?」

「え?」

 全員が扉の方を向く。そこには昌吾が立っていた。呆

 然とする輝彦達を見て、昌吾は公安部に依頼をはじめ

 た。

「旧校舎に運び込まれたという荷物が本当にあるのかど

 うか調べて欲しいのです。もちろん調査には私も付き

 添いますし」

 危険はないはずだと昌吾は述べた。旧校舎の周囲には

 結界が張られており、教員以外は入れないので教団と

 激突することもないだろう。

「では、明日から数日の間公安部のメンバー数人は授業

 を受けずに、旧校舎の探索を行ってもらいます」

 この旧校舎の探索が思わぬ結果を生むことになろうと

 はまだ誰も想像もしていなかった・・

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