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二話「視察」

二話「視察」

「まずは皆に言っておきたいことがある。今日から

 七日間、教団の騎士による授業視察がある」

 カズキはその言葉に驚く。教団系統の学校ではよ

 く行われていることらしい。だが、あんなことが

 あった後での視察だ。ただの授業視察ではないだ

 ろう。

「廊下で騎士に会うこともあるだろうが、失礼の無

 いようにな」

 そう言う担任の顔はかなり険しかった。明らかに

 視察を不愉快だと感じている証拠だ。あのファン

 トムでの襲撃は生徒には知られていないが教員は

 全員が事実を知っている。一時間目の授業中カズ

 キは姿を消して傍にいるリンに尋ねた。

「教団の騎士には会ったのか?」

『一人だけなら・・。旧校舎の入り口にいましたけど』

「やっぱりな・・」

 旧校舎は今は使われていない建物だ。授業の視察

 ならあそこに行く必要はない。やはり別の目的が

 あるのだ。リンが昨日聞いた会話と関係があるの

 だろう。この学院に運び込まれた何か。それを教

 団は探している。

(一体・・何なんだ?)

 その日の放課後、カズキは生徒会室に向かう途中

 一人の男に呼び止められた。

「君、生徒会の人間かね?」

「いえ、違います。生徒会に用事があるだけですが」

「そうか。この学院には公安部というものが存在す

 るようだが・・どこに行けば会えるか知らんかね?」

 カズキは知りませんとだけ答えた。男はそうかと 

 言って反対方向へと歩いていく。教団の騎士だ。

 それはすぐに理解できた。問題は何故公安部を

 探しているかだ。カズキは公安部の部室に入ると

 先ほどのことを輝彦達に話した。

「前の事が絡んでいるんだろうな・・」

「敵視されているってわけか?」

「多分な・・面倒だが」

 輝彦達はため息をついた。輝彦達は自分の命を守る

 ために教団の送り込んできたファントムと戦っただ

 けである。だが、教団の人間からすればそれは教団

 に逆らっていると解釈できるのだろう。かなり迷惑

 な話だ。

「そういえば・・学院の近くの森で戦闘の跡らしき物

 が見つかったらしいな」

「森の中で?」

 信雄が頷く。信雄が聞いた話では、ファントムの残

 骸も確認されているらしい。教団関係者の見解は教

 団に対して反感を抱いている人物がやったことらし

 いが。

「反感ね・・。それで具体的に人物名とかは?」

「学院長とあの人の名前があがってた」

「!?」

 輝彦達は全員が驚いた。学院長、本名は高坂昌吾。

 かなり教団よりの考えの持ち主だ。そしてあの人

 というのは三好武彦という人物だった。カズキと

 リンの騒動では学院長である昌吾と知り合いとい

 う理由で協力してくれた人物だ。教団、国際魔法

 機関の両方から危険人物とみなされているという

 噂を耳にしたことはある。精霊殺しと言われるア

 カツキですら勝てないほどの腕の持ち主だ。

「武彦さんの方は数年前からいろいろとやってるら

 しいからまだ分かるけど・・学院長は・・」

「偽装なんだよ、あいつの場合は」

 誰もがその声に振り返る。公安部部室の扉の前に

 はいるはずの無い人物がそこにいた。三好武彦だ。

「・・どうしてここに」

「視察中学院の護衛を頼まれてな。ま、アカツキ達

 だけで十分とは思うがね・・」

 武彦は笑いながら言った。アカツキは前回の騒動

 で学院を襲撃する作戦の事を知った時に教団を抜

 け、武彦の部下となった人物だ。

「ここに来たのは忠告しにきたのさ。・・あんまり

 今回の事には関わらない方が良いぞ」 

 その方が身のためだと武彦は言った。真剣な表情

 で。輝彦達は何が起こっているのかを尋ねたが当

 然武彦は答えない。

「視察期間は出来る限りおとなしくしとけ」

 それだけを告げると武彦は部屋から出て行く。本

 当に忠告だけしに来たようだ。武彦の真剣さから

 推測するに今回は相当危ないようだ。この前のも

 かなり危なかったがそれ以上なのだろう。

「俺達から巻き込まれに行くつもりはないけどな」

「巻き込まれないことを祈るしかないか」

 そのころ武彦は廊下を歩いていた。教員が着てい

 る服を借りて、目深に帽子を被っているので教団

 の騎士とすれ違ったが、気づかれはしなかった。

『巻き込まれないといいがな・・』

「教団は彼らを敵視しているかもしれんが・・理由

 もなしに拘束は出来ん」

 だが教団の幹部達は何か理由を作ろうとするだろ

 う。だが一番危ないのは輝彦達より昌吾かもしれ

 ない。昌吾はこれまで教団支持の立場を維持して

 きた。それを偽装であると知るのは武彦のような

 ごく一部の人間だけだ。しかし、そろそろ教団も

 気づく頃だろう。

「昌吾が拘束され、連行されればここの維持も難し

 くなるからな」

『・・では俺は学院長室を張っておくことにしよう』

 武彦は相棒である、デュフォンに頼むと言った。

「さて・・俺もいろいろと準備をしないとな」

 学院を教団から守るための武彦達の作戦が始まろ

 うとしていた・・

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