表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『現代悪魔の異世界転移(仮)』  作者: 物書き組(六錠黙・じゃむと・トリ)
9/9

《入学式Ⅳ》 筆:六錠 黙

六錠です。

今回のお話は結構説明っぽくなってますが、付け焼刃の知識ですのでご容赦ください。

──ガキィィィイイイイン!!


 白銀の騎士の剣がレイの渾身の一撃を防ぎ、受け流した。


「なっ!?」


 いとも簡単に自身の全力を受け流されたレイは、勢い余って体勢を崩した。そんな絶好のチャンスを目の前の男が逃すはずもない。レイは前のめりになっている体勢を立て直そうと体を強く捩じる。

 そして見たのは、既に追撃を加えようと物理法則を無視したかのように向かう方向を変えた白い剣の剣尖。レイの体を的確に捉えて向かってくる。

 だが、その刃がレイに届くことはなかった。攻撃を中断したオリスが急に攻撃を止めてその場を立ち退いたからだ。

 その直後、直前までオリスがいた空間を場所を炎の槍が貫いた。


「大丈夫か!」

「ええ!」


 初級魔法フレイムジャベリンを放ったヴァルに答えると直ぐにその場を離れようとするレイ。だが、見れば既にオリスはまた踏み込んできていた。

 レイはオリスの戦闘に関する並じゃないセンスと技術に驚く。再び迫りくる白刃がレイを捉えた。迎撃が追いつかないことを悟ったレイがせめてダメージを最小限にしようと身をずらし始めたとき、


──バンッ


 見えない何かによってオリスの剣が弾かれる。

 流石に驚いたのか目を見開くオリス。そして、彼に迫る黒い影。

 ルークだ。左手には、既に今しがたオリスの剣を弾いた筈の銃はなく、どこから取り出したのか分からないが細見の西洋剣が握られている。

 

「ハッ!」


 そして高速で突き出される剣は一直線にオリスへと迫り──


「そこまで!」


 鋭い一声。と同時にルークとオリスの体が不自然に停止する。

 そこでルークたちが見たのは、ルークの突き出す剣に添わせるようにして置かれたオリスの剣。その剣先がルークの首筋から一センチほどのところで停止している。

 直前まで戦闘していたのが嘘のようにあっさりと剣を引き、声のした方を向いたオリス。それにつられるようにルークたち四人も同じ場所をへと視線を向ける。

 そこにいたのは──


「学園長……」

「これにて実技試験は終了じゃ。結果発表は後日改めて行うからの。四人とも試験開始地点まで戻れ」


 それだけ言って踵を返した学園長が、ふと足を止めて振り向いた。


「それと……オリス、許可したとはいえ限度というものがあるぞ。貴様からは後でしっかりと話して貰うからの」

「……」


 再び歩き出した学園長をオリスは一瞥し、手にしていた剣を納めた。


「確か……ルークといったか。貴様、そのままでは全てを失うぞ」


 突然そう警告されたルークとそれを見ていたレイたちは、そのままどこかへと行ってしまったオリスをただ茫然と眺めることしか出来なかった。


「……一先ず、戻るか」


 そう呟いたルークの声に従って、一同は一先ず学園長の指示通り試験開始地点へと戻った。





Sideルーク


 開始地点へと戻ると、そこにはもうほとんど誰も残っていなかった。俺たちを見つけるとに近づいて「貴方たちで最後ですね」といってきた恐らく試験の集計の係の女性に聞けば、どうやら新入生は試験が終わり次第帰っていいことになっているらしい。

 これはつまり、途中それなりのところで脱落しておいた方が楽できたってことこか。失敗した。

 というわけで、俺は今レイとロッサとは別れて、ヴァルと学園内を歩いていた。勿論、行先は寮だ。

 さっきからどこからそれだけ話の話題が出てくるんだと驚くくらい口の止まらないヴァルと話しながら、俺の思考は先ほどの戦いの内容、特にオリス自身についてに占められていた。

(確か……グラシェニレア聖教中央地区管轄聖教騎士第Ⅰ位と言っていたな……)


「なあ。さっきのオリスっていうヤツが言っていたグラシェニレア聖教中央地区管轄聖教騎士っていうのはどういったものなんだ?」

「ああ、グラシェニレア聖教の騎士団の中でも中央地区、つまり宗教自治区レイナスの騎士ってことだ。ま、言ってしまえばエリート中のエリートだな」

「宗教が独自の武力を持っているのか」

「そりゃあ、だって地域の治安維持とかを誰がしてるかっていったら専ら騎士団だしな」

「治安維持は国の仕事じゃないのか?」

「確かに各国にはそれぞれ治安維持のための奴らはいるけどよ、そういう組織も騎士団がいる前提で作られてるから聖教騎士ほど荒事に強くはないんだ。ちょっとした事件ならともかく、腕力とかが強い種族が暴れてるとかってなると教会の騎士団が駆け付けるまでどうにかするような場合が多いし」

「ふーん……」


(世界中の都市で治安維持の中核をになっているわけか)


 ヴァルから聞いた情報から推測していく。


(世界中で広く信仰されている宗教が持つ大規模な騎士団のエリート、その第1位……。なんというか、いきなり大物すぎるだろ……)

(にしても、流石というべきか? あいつの攻撃は地球の方でも滅多に見ない程洗練されていた)

(あの極限まで効率化された動きは見せるモノじゃなく、明らかに実戦で研ぎ澄まされたものだった……)

(魔法の方の実力はそこまで見れなかったが、あの学園長とかかわりのある人物だ。それなり以上のものだと思っておいた方がいいだろうな)

(彼は何者なんだ? いや、何者かはあらかた分かった。知りたいのは何故、か。教会も魔王の件に関わりがあるのか?)


「そういえば、ルークがさっきの戦闘で使ってた黒いヤツってなんなんだ?」


 ヴァルがそう言って指で「こんな感じの形の~」と微妙に分かるような分からないような形を作っている。


「ああ、拳銃のことか」

「ケンジュウ?」

「ああ」


 地球では、長い歴史の中で魔術と武器を組み合わせた戦闘スタイルは数多く生み出されてきた。

 剣は勿論のこと、戦斧、槍、ナックル、棍棒、盾、鞭、鎌……様々な武器で検証がなされてきた。場合によっては表の(魔法のない)歴史上ほとんど活躍しなかった武器が強力な武器になることだってあった。

 だが、現代では白兵戦に関してはどんな武器でも次から次へと別の魔術を付与していくことで弱点を突かせないQWW(Quick Wizardry Weapon)と呼ばれるスタイルへと収束しつつある。その結果、白兵戦はどれだけ早く敵対する者が次に武器に付与する魔術を予測できるか。そしてどれだけ早くそれに対して有利な魔術を自らの武器に付与できるかという状態になっている。

 俺は銃を取り出し、ヴァルに見せた。


「この銃口って穴から金属の塊を高速で撃ち出して攻撃する飛び道具だ」


 それに対して飛び道具は違った。弓や短剣、手裏剣。そして銃。

 特に銃の存在はもともと魔術での戦闘にとっても革命的だった。銃の圧倒的な射程と速度は魔術を使ってもなかなか到達できない域にあったのだ。

 拳銃であっても的が静止していれば数十メートル離れたところからでも命中させられるのだ。狙撃を目的として作られたものであればその射程は数百メートルにも及ぶ。そして、魔術を併用すればその射程は実に千メートル級の狙撃をも可能にする。

 そして一般的な拳銃から放たれる銃弾の速度はおおよそ秒速350m前後である。比較対象としてはは中学でも習うだろう音速340m/s(15℃、1気圧)が分かりやすいだろう。そう、銃弾は音速を超えるのだ。そしてこれもまた狙撃用の銃弾ともなると更に上がり魔術なしでも音速の数倍の速度で飛んでいくのである。

 そしてもう一つ。銃弾自体も、非常に魔術と相性の良いものだった。どの銃の銃弾も、どんなに大きくても片手で持てるサイズだ。故に、圧倒的な携帯性を実現している。装弾数の多い銃なら数百と一度に携帯、連射ができるのだ。

 現代魔術は発展したとはいえ数秒で何十と放てるものではない。予めの用意が必要とはいえ、速射力に富む銃はその点においても魔術を上回るのだ。そして、たとえ単発銃でも、引き金を引くだけで予備動作無しに放てるアドバンテージは大きい。

 視認できない場所から認識できない速度で飛んでくる自分に抜群の効果を示す銃弾。それはQWW戦闘における読み合いを全く無視した一撃となるのだ。

 そのうえ、視認できても、予備動作がほとんどない故に対処しづらいとくれば魔術を使う者たちがこぞって持ち歩くのも頷ける。


「へー、珍しい武器だな。だけど、そのサイズで剣を弾ける威力ってのはスゲーな」

「まあ、いろいろと弄って強化してあるからな」


 さて、そして現在俺が持っているものだが回転式拳銃、いわゆるリボルバー拳銃だ。だが、その銃身には傷が目立つ。それもその筈、これはもともと親父が所有していたものだった。名前はコルト・パイソン、6インチモデルだ。誰もが一度は耳にしたことがあるだろう名銃だ。

 コルト・パイソンは1955年にコルト社が発表したもので、構造はや調整が難しい故に他の拳銃と比べると高価なモノとなっていた。だが、その結果「リボルバー界のロールス・ロイス」などとも言われ、その特徴を支持するユーザーもそれなりにいたのだという。

 正直言って銃としての性能はそれほど高くないのだが、日本に住んでいた俺には独自に入手する手段はあまり持っていなかったため、渋々父親がファンだったこの銃を一丁貰って使っていたのだ。

 だが、一つだけ言えることがある。リボルバーは魔術との相性が抜群にいいのだ。それはもう、他の拳銃が幾ら威力が高かろうと気にならないほどに。

 魔術においてサークルは大変重要な図である。全ての魔術の外側に敷くことで魔術全体を安定させる役割を果たすのだ。故にシリンダーの形は魔術にとってとても相性がいいのだ。

 現在、俺のもつコルト・パイソンは魔術によって大幅に強化されて、性能的にはコルト・パイソンとは全くの別物となっていた。


「とはいえ、魔法アリでの戦闘でメインウェポンとして使うには力不足だ。もしそうするなら事前準備が必要になる」

「確かに、直接魔法を撃った方が攻撃力は高そうだしな」

「ああ」


 だがそれでも、俺はこれを常に持ち歩いているのは決して補助武器としてなんかではない。

 そう、この説明は順序が逆なのだ。

 言ってしまえば、銃は事前に準備さえしていればどんな相手に対しても「最強の切り札」になれる。

 まあ流石に、こんな世間話でわざわざ教えるような事ではないので言わないが。


「お、丁度俺の寮に着いたようだな。じゃあ、ヴァル、またな」

「おう。んじゃまたな」


 俺は丁度寮に着いたことを理由に話を切り上げ、ヴァルと別れた。

 さて、寮は二人一部屋らしいが、どんなルームメイトなんだろうか。まあ、あんまり期待しないでおくのが得策か。

 俺はそんなことを考えながら寮へと入っていった。

感想欄での銃に関する指摘は受け付けて……いや、怖いのでするのならやんわりとご指摘いただけると幸いです。

出来る限り対処いたします。

……言い訳、というかあとから付けた設定ですが、ルーク自身もそこまで銃に詳しいわけではないと思われます。多分、「武器なんて使えればいい」とか言いそうですし。

幾らコルト・バイソンが高級な骨董品の銃でも、きっと最新の高性能銃が手に入れば一瞬で捨てるでしょうね。

あと、もう一つ。作中のQWWも結構雑な設定ですが、これに関しては現在これ以降触れる予定はありません。だって、現代の描写とかする予定ないし。まあ、出てきても相当あとでしょうね。


次回投稿予定は8/16です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ