何の気ない会話
あるところに、頭髪に悩みを抱える男がいた。
「このあいだの子、なかなか好感触だったと思うんだよ」
昼時の飲食店。男は先日紹介された女性について、友人と話し合っていた。
友人が渋い顔で応える。
「うーん、お前には悪いが気が無いように見えるけどな」
「俺の毛が無いように見えるのは今言うことじゃないだろ」
男は友人を睨んだ。
「いや、そうじゃないって。期待が薄いって言ったんだよ」
「ひたいはそんなに薄くねえよ! よく見ろまだちゃんと生え際あるだろうが!」
男は立ち上がって、声を荒げた。周りが彼らに注目する。
「だから違うって、なに大声出してんだよ。もう恥ずかしいんだからやめろよな」
「毛髪が死んだからやめろだと!? 喧嘩売ってんのか!」
今にも男は殴りかかってきそうだ。
「そんなこと言ってないだろ。そうだ、今度合コン開いてやるからさ。機嫌直せよ」
それを聞いた男は、さらに顔を真っ赤にした。
「馬鹿にするな! お前に毛根開いてもらいたくはねえよ!」