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人通りの激しい駅前の表通りから、ビルの隙間をわずかに入ったところで、関口は男から書類を受け取った。
「これが真柴組のハルオを調べた資料です。こんな奴調べてどうするんですか? 関口さん」
関口が懇意にしている情報屋の男は怪訝そうな顔をして尋ねた。
「いや。こいつ、意外と厄介者になるかもしれない気がしたんだ。勘が働いてな」
渡された資料を丹念に目で追って行く。
「常に千里眼や良平の使いっぱしりに近いことをしているな。実働隊としての能力は高そうな奴だ。大きな乱闘に出ても、傷一つ負った事がないのか。乳児の時から組にいたんだな」
関口はハルオの経歴をざっと確認する。乳児の頃に組に預けられて、地元の高校までを出ていた。
「真柴はそういう人間も多いですよ。捨て子や施設上りの人間も積極的に受け入れていますから」
「しかし乳飲み子の時からいるのは珍しいだろう。真柴の組長の亡き妻が育てたんだろうが、彼女の子ではないはずだ。確か子供は産まなかったはずだ。こいつの両親は調べたのか?」
「それが。不思議とハルオの両親は、いくら調べても情報が出てこないんですよ」
「出てこない? 誰かが情報を抑えているってことか?」
「おそらく。なにか、訳ありの子だったんですかね?」
組に預けられるような赤ん坊なら、それなりの訳があって当然だ。しかし情報が出てこないとなると事情が変わる。
この世界で情報を抑えなければならない程の訳ならば、これは意外と勘が当たったのかもしれない。
「そうだろうな。悪いがハルオが生まれた頃に真柴夫妻の周辺で、出産した子供について調べてくれ。どこかで真柴に預けられた子供に辿り着くはずだ」
「それはかまいませんが。こいつ、そんなに気にするほどの奴ですかね?」
情報屋の男は、まだ懐疑的だ。
「あいつが刃物を握った瞬間に、何か普通ではない感じがあった。あいつは何かを持っている。厄介な刀使いになる前に、つぶす必要があるかもしれない。よく調べ直してくれ。頼んだぞ」
関口は懐から追加の調査料を男に手渡した。男はそれを確認すると、すっと雑踏の中に身を消していった。
ハルオの出生についての情報がまとまるまでは意外と時間がかかった。関口の手元に資料が届けられたのは、結局あれから一週間の時間がたってからだった。
だが、それだけ待つだけのかいはあった。情報屋は開口一番、興奮気味に口火を切った。
「大変です。関口さんの勘は当たってました。こいつ、とんでもない奴の息子です。あの、華風聡次郎の子供でした」
「聡次郎? あの、血祭り聡次郎の子か? 華風組の」
「その通りです。しかも母親は先々代の華風組長の妹でした。これはタダモノじゃないでしょう」
あの聡次郎の子なら、刀使いになる素質は十分にあるはずだ。華風の血を引いているなら後々胆も座って来るかも知れない。これは早いところ潰しておかないと厄介な事になる。腕が磨かれてからでは遅いかもしれない。
「それにもう一つ、聡次郎が今何をしているかご存知ですか?」
「いや。妻が逆恨みから刺殺されて以来、刀を置いて行方不明になったと聞いたが。その後の噂は聞かないな」
「土間ですよ」男は声を低くして囁いた。
「何?」
「華風組の土間、富士子ですよ。現在の組長の。彼女は聡次郎です」




