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こてつ物語5  作者: 貫雪
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「ハルオ、こいつは私に任せて、香を車に連れていきなさい」土間がハルオに指示を出す。


「いやだ! こいつだけは俺が相手になる!」

 ハルオは顔を高揚させてむきになった。しかし土間は取り合わない。


「ハルオは何が一番大事なの? なんのためにあんたに私のドスを持たせたと思ってんの? あんたの大事な人たちを守るためでしょう? こんな屑に仕返しするために使うってんなら、そのドス、とっとと返してもらうわよ」


 ハルオは関口を睨みつけると、香の顔を見た。傷口に血がこびりついている。腕からはうっすらと血がにじんでいた。


「私なら大丈夫よ。両足は何ともないんだから。自分で歩けるわ。あんたが納得できる行動をしてよ」


 香はそういったが、刀傷特有の痛みがない訳がない。青い顔が痛々しい。気力だけでも相当堪えているはずだ。


 ハルオは香を自分の背中に背負った。抱えあげるにはハルオの体格はいささかきついものがあった。かっこをつけている場合ではない。襲ってくる奴には礼似が援護をした。



「あんたが、息子の代わりって訳か」関口が土間に向き直る。


「相手として不足は無いでしょう?」土間もかまえる。


「まあな。女子供に気が弱くなる奴なのは気に入らないが、腕は認めてやるよ。だが」

 関口はそのまま斬りかかった。


「腕だけじゃ、殺し合いは出来ねえぜ!」


 土間は、その刃をひらりとかわすと、次の刃もあっさりと跳ね返した。体制が崩れた関口に柄元をたたきつける。


 倒れた関口に刃をちらつかせていった。


「殺し合いをする気なんて、サラサラないわ」

 関口の胸ぐらをつかみ上げる。


「勘違いも甚だしいわ。私は弱くなって男を捨てたんじゃない」

 関口の頬を殴りつける。


「より、強く生きるために、女を選んだのよ」

 関口は横倒しに倒れていく。


「たとえ、自分の子に、どんな目で見られようともね」

 土間は関口を見降ろした。


「ハルオはあんたより強いわ。あの子は刃物に呑まれたりしない。殺し合いなんて必要ないの」

 あの子はあの子のままで強くなれるわ。私と違って。


 土間は最後には自分の心に言い聞かせながら、香を背負ってスタジオを出ていくハルオの姿を見送っていた。



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